iPhoneが大きく変えた、キャリアとメーカーのスマホ開発・販売

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第4回

iPhoneが大きく変えた、キャリアとメーカーのスマホ開発・販売

2017.08.26

大手キャリアから提供されるスマートフォン。それを作っているのはメーカーであり、メーカーのブランドが前面に出ている機種も多いが、それらはあくまでキャリアの製品として販売されているものだ。端末の販売を巡る複雑な仕組みの理由に迫ってみよう。

実はメーカーはキャリアの下請け?

我々がキャリアから購入するスマートフォンには、「Xperia」「Galaxy」「AQUOS」などさまざまなメーカーのブランド名が付いている。それゆえ一見すると、メーカーがキャリアの販路を使って端末を売っているように見えるのだが、実はどのメーカーの製品であっても、それはあくまでキャリアの製品として、キャリア自身が販売している。日本において多くのスマートフォンメーカーは、キャリアに開発した商品を納品する、いわば下請けというべき立場なのだ。

大手キャリアが販売するスマートフォンは、実はメーカーの製品ではなくキャリアの製品である

なぜこのような仕組みがとられているのか?という理由を知るためには、フィーチャーフォン時代にまでさかのぼる必要がある。フィーチャーフォン時代は通信規格があまり統一されていなかったことから国や地域によって通信方式にばらつきがあり、利用するサービスや端末が国によって違うなど、全世界の人達が同じスマートフォンを使い、同じSNSを利用する現在とは大きく異なる状況だったのだ。

それゆえ当時は、キャリアがネットワークだけでなく、サービスから端末まで全ての開発を手掛ける必要があったのだ。特に日本では元々高度で高品質な通信サービスが求められる傾向が強いことから、キャリアが軸となって独自のネットワークやサービスを開発し、それに合った端末をメーカーと共同で開発。それをキャリアが買い上げ、自社製品として販売するという手法を採っていたのだ。

それゆえフィーチャーフォン時代にキャリアから発売される携帯電話は、現在のようにメーカーのブランドロゴはあまり入らず、代わりにキャリアのロゴが大きく入っているものが多く見られた。型番や機能、デザインなどに各メーカーの特徴が見える部分はあるものの、あくまでキャリアの製品であることを強く打ち出していたのだ。

スマートフォン以前の携帯電話端末。メーカー名よりもキャリアのロゴが前面に出ているものが多かった

だが実はこの仕組みには、キャリアだけでなくメーカー側にも大きなメリットがあった。それは開発した端末をキャリアが全て買い取ってくれることから、ビジネス上のリスクが非常に小さいことだ。小さいリスクで高い機能の端末が開発できることから、日本のフィーチャーフォンは、インターネット接続機能が世界で最も早く普及するなど、非常に高度な進化を遂げることとなったのである。

iPhoneの影響でメーカーが前面に出るように

だが通信方式が第2世代(2G)から第3世代(3G)、そして現在の第4世代(4G)へと進化するに従って、世界的に通信方式の共通化が進められていった。またスマートフォンの登場によって、キャリアに代わってOSを提供するアップルやグーグルがサービスを主導する立場になるなど、年を追うごとに端末開発を取り巻く環境は大きく変化していったのである。

中でもキャリアとメーカーとの関係に最も大きな影響を与えたのは、ソフトバンクモバイル(現・ソフトバンク)が、アップルから調達したiPhone 3Gを、一切のカスタマイズを加えることなく販売してヒットをもたらしたことだろう。このことは多くのキャリアやメーカーに衝撃を与え、iPhoneに対抗するべく端末開発のあり方を大きく変えることとなったのだ。

キャリアがカスタマイズせずに販売したiPhoneが人気となったことは、キャリアとメーカーの関係に大きな影響を与えるきっかけとなった

その最も大きな変化は、メーカーの存在を前面に押し出すようになったことだ。iPhone以外のスマートフォンは、現在も従来同様共同開発の形がとられており、周波数帯や日本向け対応など、いくつかのカスタマイズも施してはいる。だがiPhoneに対抗するため、端末の機能やデザインはメーカーが主導するケースが増え、ブランドもキャリアではなくメーカーのものを前面に打ち出すようになるなど、スマートフォンの市場環境に合わせてキャリアが端末開発に関与する部分が減っていったのだ。

キャリアにとっても、カスタマイズする要素が少ないほど、開発にかけるコストが減り、調達コストが下がるというメリットがある。既にアップルやグーグルにサービスの主導権が移っていることもあり、キャリアは自前で全てを用意するよりも、既存のものを活用してコストを下げることを重視するようになったといえるだろう。

とはいうものの、実は現在も、キャリア主導で開発されたオリジナルモデルはいくつか存在する。NTTドコモの「らくらくスマートフォン」や「MONO」、KDDI(au)の「Qua」シリーズなどがその代表例として挙げられる。

使い勝手と手ごろな価格を重視したauの「Qua」シリーズなどは、auが主導しさまざまなメーカーが開発している、従来型のオリジナルモデルだ

多くのメーカーは、スマートフォンを積極的に利用する層に向けた、売れ筋の端末を開発する傾向にあり、例えば子供向けやシニア向けなど、ニッチなターゲットに向けたスマートフォンは、台数が出ないためあまり開発したがらない。そうした特定層を狙った、市場にあまり存在しない端末をキャリアが提供するには、キャリア自身が端末開発に積極関与し、買い取りすることで、メーカーにリスクをかけることなく開発してもらうという、従来の共同開発の仕組みが役立っているのである。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。