苦境に立たされる日本のスマホメーカーに明日はあるのか

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第5回

苦境に立たされる日本のスマホメーカーに明日はあるのか

2017.08.28

かつては多数存在した日本の携帯電話メーカー。だがスマートフォンの影響などを受けて淘汰が進み、残る大手メーカーは4社のみ。国内市場が飽和し、海外進出も厳しい状況の中、どうやって生き残ろうとしているのだろうか。

市場変化で撤退が相次いだ日本メーカー

日本市場には現在、多くのスマートフォンメーカーが参入しているが、実はその中で日本のメーカーが占める割合は、年々減少傾向にある。

特に、国内大手キャリア向けにスマートフォンを提供しているメーカーに絞った場合、現在日本メーカーで残っているのはソニーモバイルコミュニケーションズ、シャープ、富士通コネクテッドテクノロジーズ、京セラの4社のみ。フィーチャーフォン時代は10社以上のメーカーが存在したことを考えると、かなり寂しい状況となっている。

なぜ日本のメーカーが減少してしまったのかというと、その理由は市場環境の変化にある。フィーチャーフォン時代、日本メーカーの多くはキャリアとの強いパイプを生かして端末を共同開発していた。このビジネスはキャリアが端末を買い上げ、キャリアの商品として販売するためメーカー側にとってはリスクが小さく、高い性能を備えた端末も開発しやすいメリットがあったが、一方で日本市場に合った端末しか開発できず、海外への進出がしづらいという弱みもあった。実際、先に挙げた4社で海外進出に成功しているのは、ソニーモバイルと京セラのみである。

そうしたことから日本の携帯電話メーカーは、国内市場中心のビジネスを展開していたのだが、スマートフォン時代に入って状況が一変。大手キャリアがスマートフォンの取り組みに遅れたことから、メーカーもその影響を大きく受けたのに加え、そうした隙をつく形で海外メーカーが相次いで日本市場に参入、競争が激化したのだ。

スマートフォン時代に入り、サムスン電子が「Galaxy」シリーズを投入するなど、日本市場に本格参入する海外メーカーが急増した

中でも最も大きな影響を与えたのはアップルで、iPhoneの販売が急拡大し高いシェアを獲得するなど、短期間のうちに日本市場を圧倒する存在となった。そうした環境変化によって撤退するメーカーも相次ぎ、2013年にはNECカシオモバイルコミュニケーションズとパナソニックモバイルコミュニケーションズが、相次いでスマートフォンの開発から撤退している。

フィーチャーフォン時代には全盛を極めたNECカシオモバイルコミュニケーションズも、スマートフォン参入に遅れた影響などもあって2013年に撤退してしまった

だが生き残った4社を取り巻く環境も厳しいことに変わりはない。国内市場は相変わらずiPhoneが圧倒しているのに加え、総務省が昨年、スマートフォンの「実質0円」販売を事実上禁止するなど、キャリアの端末値引き販売に厳しい姿勢を取るようになった。日本のキャリアを主体にビジネスしている日本メーカーにとって、値引きの規制は非常に大きな打撃だ。

一方で世界市場に目を移すと、既にスマートフォンの販売が大きく伸びる時期は過ぎており、現在伸びているのはスマートフォン自体の単価が安い、新興国向けが主体だ。安価なスマートフォンは利益率が低く、世界規模で多数の端末を販売しないと利益が出ない。そうした市場で勝ち抜けるのはサムスン電子などの大手メーカーや、コスト効率や販売力に強みを持つ中国企業などに限られ、規模がものをいう戦いとなりつつある。

独自技術で生き残りをかける

国内外ともに厳しい環境にあるスマートフォン市場で、アップルやサムスンなどと比べ事業規模がはるかに小さい日本のメーカーが、正面を切って戦うのは困難だ。では日本のメーカーは、どうやって厳しいスマートフォン市場競争を生き残ろうとしているのだろうか。

それは技術による付加価値である。規模では大手メーカーに劣るが、日本のメーカーは多くの独自技術を持っている。そうした技術をスマートフォンに取り入れることで、他社にはない付加価値を提供し、特定のターゲットから確実な支持を得るなど、確実な販売につなげる戦略をとっているのだ。

例えばソニーモバイルの「Xperia」シリーズは、ソニーがスマートフォンのカメラに用いるイメージセンサーの最大手であることを生かし、カメラ機能に重点を置く戦略を取っている。実際、最新の「Xperia XZs」「Xperia XZ Premium」は、センサーにメモリを搭載した「メモリ積層型イメージセンサー」を世界で初めてスマートフォンに採用。これを活用することで、業務用カメラ並みのスーパースロー撮影を実現している。

ソニーモバイルの最新機種「Xperia XZs」「Xperia XZ Premium」は、最新のカメラセンサー搭載で、動きのある被写体を従来以上のスーパースローで撮影できるようになった

シャープも自社が強みを持つ「IGZO液晶」をフル活用し、スマートフォンの機能を向上させている。最新機種の「AQUOS R」は、描画が高速なハイスピードIGZOディスプレイを搭載。反応速度が速く、しかもスクロール時の残像が出ないなど、非常に滑らかな操作性を実現している。

「AQUOS R」はハイスピードIGZOディスプレイの搭載による高速描画で、従来以上に反応速度が速く、快適な操作性を実現している

京セラや富士通は、耐衝撃性能を備えるなどスマートフォンの頑丈さに力を入れているようだ。壊れにくいスマートフォンといえば、京セラのアウトドア向けスマートフォン「TORQUE」シリーズがよく知られているが、最近では日常の利用シーンでも、画面割れがしにくいなど壊れにくさが求められることから、スマートなデザインながら、米国国防総省が定めるMIL規格に準拠するなど、非常に頑丈なスマートフォンを実現している。

富士通の最新スマートフォン「arrows Be」は、あらゆる方向から落としても画面割れを防ぐなど、一般的なスマートフォンの形状ながら頑丈さに力が入れられている

8月に入り、富士通が富士通コネクテッドテクノロジーを売却するとの報道がなされていることからも、国内メーカーを取り巻く環境が非常に厳しいことはよく理解できるだろう。もはや規模で勝つことができない日本のスマートフォンメーカーに求められているのは、ニッチな市場であっても確固たる足場を築き、シャープのように外資の資本を受け入れるなど、どのような形であっても今の市場を生き残り、次の大きな市場変化を待つことであろう。多少値段が張ってでも、特定のユーザーやニーズに確実に刺さる価値を提供できるかが、今の日本メーカーにとって重要といえるのではないだろうか。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。