Web担当者が経営層に参画する時代

「CDO」という言葉をご存じだろうか。「Chief Data Officer(チーフデータオフィサー)」の略称だが、日本語では"最高データ責任者"となる。Chief Development Officer(最高開発責任者)やChief Digital Officer(最高デジタル責任者)の略として用いられることもあるが、データオフィサーとデジタルオフィサーの明確な相違点として、前者は企業が得るべき情報を選択・保持し、どのような目的に利用するか決定する役割。後者はビジネス上の責任というよりも、格納データの処理に対するシステムの責任を負う。このあたりの定義はいまだ曖昧ながらも、ビッグデータを元に分析や発掘によって洞察を得るために、多くの企業が注目している。

PwCコンサルティングが、グローバルの大手上場企業(2015年までは上位1,500社。2016年からは2,500社。なお、2016年は7月1日まで)を対象に、CDO(ここではデジタルオフィサーと定義)の就任年を調査したところ、2012年就任は27名、2013年は47名、2014年は75名、2015年は145名、2016年は半年で138名と加速度的に増加している。日本に目を向けると三菱ケミカルホールディングスなど、CDOを設ける企業が少しずつ増え始め、同調査では88%の企業がデジタル化を推進していると回答(従業員500人以上2,056件回答)。CDOの波は確実に日本へ打ち寄せている。

ビジネス・フォーラム事務局が2017年7月14日に開催した「CDO(Chief Digital/Data Officer)フォーラム2017~デジタル変革に挑み、企業競争力に変える」に登壇したCDO Club CEOのDavid Mathison氏は、CDOについて「CDOを経てCEOになる人材が増えている。我々の調査によれば100人を超えた」と述べつつ、CDOという役割の重要性を強調した。CDO ClubのHall of Fameを見ると、MTV PresidentのSean Atkins氏(2015年)やBBC Global NewsのNED(非執行役員)を務めるJonathan Miller氏(2013年)など、そうそうたる顔ぶれが並ぶ。一昔前はWebなど担当していたデジタル担当が経営層に参加する道筋は皆無だったが、現在ではこのようなキャリアパスが現実に存在するのである。

CDO Club CEO David Mathison氏

周辺環境から得たデータをビジネス活用へ

他方でデータの重要性に違う角度から迫るのは、日本マイクロソフト 執行役員 最高技術責任者の榊原彰氏。2017年5月に同社が開催した開発者向けカンファレンス「de:code 2017」のセッションで、「現代のビジネスは『データコレクションゲーム』である。アンビエント(周囲)環境は無限のデータ収集環境であると同時に、フィードバック環境だ」と定義し、より実践的なデータビジネスについて言及した。昨今増えつつあるAIスマートスピーカーで実現する「音声インタフェース」が次世代の重要な鍵となると述べながら、各家庭から得られるデータエントリーはデータコレクションの入り口となるため、多くの企業が注目していると説明する。

日本マイクロソフト 執行役員 最高技術責任者 榊原彰氏

一例として「コンピューターに利用者の生活行動を認識させることで、帰宅時間にエアコンの電源を入れて部屋を冷やすなど、行動を先回りすることが可能になる」(榊原氏)と説明。このソリューションを実現するには、データ収集と学習、そして利用者などからのフィードバックを元にしたライフサイクルが欠かせないという。その上で利用者の意図を先回りするパーソナルアシスタントシステムと共にデータ収集が可能になると述べていた。同セッションは開発者を対象にしているため、システム開発の現場に焦点を当てたものだが、榊原氏は開発(Development)と運用(Operations)を組み合わせた混成語を元にした造語「DataDevOps」を提唱。企業は明確なデータ戦略を明確にしないと収集した「データが宝の山とならない」(榊原氏)。IoTや自動運転車など溢れんばかりのデータを効率的に活用するビジョンと施策が必要になるのだろう。

日本におけるデジタル活用は世界最下位

前述のとおりデータ活用は分析や発掘によって得た洞察を、既存ビジネスの改善や新たなビジネスチャンスに活かすというものだが、その取り組みは「欧米諸国に比べると日本は導入が遅れている」と、日本テラデータ 執行役員 Think Big アナリティクス・ビジネス・コンサルティング・プラクティス 森英人氏は語る。同米国本社が日欧米など9カ国の経営層900名を対象に調査したところ、「98%の経営者がデータアナリティクスを将来的な成長の鍵と捉え、37%の経営者はデータ活用を全社的な戦略と位置付け、推進を目指している」。だが、自社のデータ管理やビッグデータ導入といった個別要素に対する回答になるの、日本企業は世界最下位。データウェアハウス活用は最下位から2番目という有様だ。

日本テラデータ 執行役員 Think Big アナリティクス・ビジネス・コンサルティング・プラクティス 森英人氏

日本テラデータはアナリティクスに焦点を当てた企業だが、森氏はとある事例としてクラウド活用した分析業務フローを次のように説明した。「従来と異なるのはデータサイエンティストが加わったことで、試行錯誤が容易になった」(森氏)という。下図は同社が示したスライドだが、「BS(ビジネスコンサルティスト)が仮説を元にDS(データサイエンティスト)に分析を依頼」「DSはプライベートクラウドで検証を行う」「BSへフィードバック」「BSが示す説明変数を変更して再度DSが検証」「確認を経てDE(データエンジニア)に開発を依頼」「検証を経て本番環境への展開を行う」という流れを説明している。とある企業ではKPI(重要業績評価指標)を90%以上の精度で改善したという。もちろん試行錯誤の結果として使えないケースも散見されるが、「ダメならすぐ捨てられる」(森氏)というクラウドが持つ柔軟性を活かすことがポイントだと述べていた。

データアナリストとクラウド活用で変化するビジネスコンサルティング

自社の強みとして日本テラデータは、「クラウドプラットフォームを保持していない」(森氏)点を強調する。森氏の説明によれば、多くのクラウドベンダーはビジネスにおいてコモディティ化しており、IBMならWatsonやBluemix、AWS(Amazon Web Services)ならRedshiftなど、自社クラウドを利用させるような紐付けを用意し、顧客をロックインしているという。だが、同社はオープンソースや自社製品であるEverywhereシリーズはどのクラウドでも構築できるため、ベンダーのロックオンを阻止できる自由度を供える。

各社を取材して共通しているのが、データ活用の重要性を強く強調している点だ。2011年に世界経済フォーラムがまとめたレポートでは「パーソナルデータは新しいオイル、21世紀の価値ある石油」と指摘したが、その予見どおり多くの企業がビッグデータの取得や、非構造データの格納先となるデータレイクの確保、そして分析を行う様になった。今、世界のデータビジネスは過渡期に突入しつつある。

阿久津良和(Cactus)

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

2019.01.22

セブン、ローソンに続きファミマも成人誌を販売中止

インバウンドの増加、オリンピックの開催も影響か

コンビニ最大手のセブン-イレブンと業界3位のローソンが成人向け雑誌の販売中止を発表したのに続き、業界2位のファミリーマートも同様の方針を打ち出した。大手3社の足並みがそろい、日本国内のほとんどのコンビニ店頭から成人誌が消える。

国内のセブン-イレブン店舗数は2万店を超え、ローソンとファミマが1万5,000店前後でこれに続く。それぞれ今年の8月末までに取り扱いを原則中止するという。これまで一部店舗で成人誌の販売を中止していた例はあったが、今回は各社全店舗で取り扱いを中止する。業界では昨年1月から、ミニストップが他社に先駆けて全店で取り扱いを中止していた。

もともと諸外国にくらべ、女性や子どもの目につきやすいコンビニ店頭などに成人誌が置かれている日本のゾーニングの現状は特殊であるとの批判があった。また、インバウンドで訪日外国人が増え、この論調に拍車がかかっていたほか、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、イメージ低下を防ぐ要請が強まっていたという背景がある。

コンビニでの成人誌の購買層は近年、高齢男性に偏るとともに売り上げの減少も顕著であったといい、ゾーニングの問題が取り扱い中止の大義名分になったという見方もある。ある出版関係者は、「一部では電子版などネット展開を強化している流れはあるが、今でもコンビニは重要な販路なので、相当な混乱があるだろう」と話す。どちらにせよ、日本の成人誌は岐路に立たされることになる。