変わりつつある巨人「日本オラクル」の今

阿久津良和のITビジネス超前線 第2回

変わりつつある巨人「日本オラクル」の今

2017.05.11

日本オラクルの名前を耳にすると「JavaやRDMBS(関係データベース管理システム)の会社」と思われる方が大半だろう。筆者も数年前まではそう考えていた。だが、最近の動向を目にすると同社が著しく変化していることに気付かされる。例えば2014年は「Oracle Japan VISION 2020」、2015年は「POCO(The Power of Cloud by Oracle)」をキーワードに掲げて、SaaS(アプリケーション)、PaaS(プラットフォーム)、IaaS(インフラ)分野で各ソリューションを実現する「Oracle Cloud」をビジネスの中核において注力するという変革のアピールと実施を内外に示してきた。

他方で日本オラクル出身のIT業界著名人は枚挙に暇がない。例えば多方面で活躍する西脇資哲氏や、Javaに携わる人間ならその名を知らぬ人はいないといわれる寺田佳央氏は現在、日本マイクロソフトに在籍中。さらに日本マイクロソフトからLINEに移籍した砂金信一郎氏も、職歴の中に日本オラクルがあることは広く知られている。外から見る日本オラクルは、多くの人材を育成する一方で、社から人材を輩出してしまう傾向を強く感じてきた。かつてOracleがSun Microsystemsを吸収合併したように、Oracleも消えてしまうのではないだろうか。そんな推測を払拭させたのが、日本オラクル クラウド・テクノロジー事業統括 Cloud Platform事業推進室 エバンジェリスト 中嶋一樹氏の力強い発言だ。

日本オラクル クラウド・テクノロジー事業統括 Cloud Platform事業推進室 エバンジェリスト 中嶋一樹氏

自社製品に固執しないIT勉強会

現在、日本オラクルのエバンジェリスト(伝道者)である中嶋氏は、自社製品にこだわらないIT勉強会を全国各地で開催している。その活動はDoorkeeperを見ると一目瞭然だが、活動の目的として「技術者ならではの発見、交流、知的エンターテイメントの機会を継続的に提供」と掲げ、そこにOracle Databaseの名前は存在しない。「当初はOracle Cloudを中心的なトピックと考えていたが、エンジニアが楽しめる勉強会の方が面白いという考えに至った」(中嶋氏)という。同勉強会ではR言語を用いた機械学習やIoT、BOT(ボット)などIT業界では話題のテーマを次々と取り上げてきた。また、Oracle Database向けWebアプリケーション開発ツールであるOracle APEXを題材に、クラウドネイティブのアプリケーション開発方法をハンズオンする勉強もある。

このように自社製品一辺倒ではない勉強会を開催する理由として中嶋氏は、「ステルスマーケティングになりたくない」と説明した。大手IT企業の日本オラクルが開催する勉強会では延々と自社製品を訴求されるのでは、と不安視しながら参加したが純粋な技術勉強会であることに安心し、学んでもらうのが重要だと語る。「Oracle Cloud Developersはあくまでも技術コミュニティだが、懇親会などでは(先のAPEXについて)詳しい説明を求められる嬉しい場面も少なくない」(中嶋氏)。その結果は営業部への問い合わせにつながり、「先方も『良い』と感じたからこそ関心を持つ関係性は健全だ」(中嶋氏)。また、このような背景から2017年4月下旬にはAPEX User Groupが新たに派生した。

これまで顧客やパートナー企業に通じたビジネスモデルを中核に置く日本オラクルだが、中嶋氏の活動自体は目新しいものではない。過去の前任者も製品担当者としてエバンジェリスト的活動を行っていたが、異なるのはエバンジェリストという肩書きを持っている点だ。日本オラクル関係者は「Oracleのファンを増やす活動は弊社としても斬新。米国本社も開発者向けイベント『Oracle Code』を世界20数都市で開催しているが、主な目的はエンジニアに関心を持ってもらうことが重要」だと説明する。筆者が改めて述べるまでもなくITトレンドはオンプレミスからクラウドに移行し、Oracle/日本オラクルも2012年頃からクラウドシフトを始めた。同社はSaaS、PaaS、IaaSと一連のクラウドソリューションを実現し、現在はAWS(Amazon Web Services)やMicrosoft Azureをライバル視している。

Oracle Codeは2017年5月18日に東京でも開催する

Oracle Database vs SQL Serverについて

そのMicrosoftはこれまでOracle/日本オラクルから独占してきたRDMBS市場に杭を埋め込もうと必死だ。SQL Server 2016リリース前となる2016年4月20日には、Oracle Databaseの代替案を探しているという顧客に声に応えるためとの理由で、Oracle Databaseなど商用DB(データベース)からSQL Serverへの移行を確約した顧客に対して特別価格(金額は未発表)で提供する「特別ライセンスオファーのご提供」を発表。移行コストを日本マイクロソフトが捻出すると説明していた。続く2016年6月28日にSQL Server 2016を発表した同社はISVパートナーや販売パートナー、ホスティングパートナーとの協業を強くアピールし、基幹系や大規模環境でのSQL Server 2016導入・移行のサポートを発表。直近の2017年4月12日には、データベース移行支援・マーケティング協賛といった支援施策を明らかにした。Oracle Databaseが持つ国内市場30%から10%をSQL Serverで塗り替えるという。「まずはDBのSQL対応を目的に、リフト&シフトでMicrosoft Azureへ。その先には(クラウドDBである)Azure SQL Databaseへの移行を目指したい」(日本マイクロソフト クラウド&エンタープライズビジネス本部 業務執行役員 本部長 佐藤久氏)と自社の戦略を語っていた。

日本マイクロソフトのデータプラットフォーム対応/移行支援施策

日本マイクロソフトが矢継ぎ早に繰り出す施策に対して、日本オラクルは明確なカウンターメッセージを発信していない。この点について尋ねると「今後オンプレミスDB市場が大きく変化するとは考えにくい」(中嶋氏)と答えた。既に環境を構築している顧客が新たなDBに移行するメリットは多くない。現在問題なく動作している環境をクラウド化させても移行費用がかかるだけで、顧客の直接的メリットにつながらないことから、大きな関心事と捉えていないという。

他方でプライベートサーバーの入れ替えに伴うクラウド移行については、「クラウドDB市場は白紙の状態」(中嶋氏)と回答。日本オラクルもミッションクリティカルなオンプレミスDBを、そのままOracle Database Cloudに移行させるのは、今後の課題だと見据えている。「市場感とかけ離れたメッセージを発信しても顧客に伝わらない。チャレンジャーの気持ちを持ちつつ、誠実に取り組んで結果を出していくべき」(中嶋氏)と述べていた。そのクラウドビジネスだが、米国本社では2016年度(15年6月~16年5月)は全体の85%前後、2017年度(16年6月~17年5月)第3四半期終了時点では、全体の120%前後の売り上げを占めるようになり、着実に成長しているという。

エンジニアは「ゾーン」に入った状態が効率的

話を中嶋氏が開催するIT勉強会に戻そう。前述のとおり各勉強会は全国各地で開催しているが、参加者の半数は東京在住が占めている。地方のエンジニアは口を揃えて、「ITの仕事は東京以外に選択肢がない」と嘆くという。さらに技術的上昇志向の強い方ほど情報が集まりやすい東京に仕事も集中するため、地方でエンジニアが働くのは難しい。だが、「米国に目を向けると、西海岸はITビジネスの中心地だが、シアトルやシカゴなどIT企業は点在し、エンジニアには選択肢がある」(中嶋氏)という状況を日本国内でも変えたいという。「以前ヨセミテ国立公園を訪れた時、『四季折々の風情がある長野の方が綺麗』だと感じた」(中嶋氏)。東京で満員電車に詰め込まれて通勤している状況はあまりにも悲しいと語った。

エンジニアがコードを記述する際は、集中して精力的に活動できる状態を示す「フロー」状態(スポーツ分野では「ゾーン」とも呼ばれる)に入った方が効率的だ。中嶋氏は長野県にあるテラスで小鳥の声を聞きながらコードを書くのが最良の状態だと語る。「仕事の生産性も高めながら(精神的に満たされる)豊かな感じは体験しないと分からない」(中嶋氏)。地方創生を通じてこの感覚をエンジニアに伝えたいと説明した。

そもそもエンジニアはコードに集中できれば作業場を選ぶ必要はない。中嶋氏の説明によれば、セブ島にオフィスを設けるなど面白い試みを行う企業や、都内のオフィスをなくして、東京在住の社員もリモートワークを行う企業も増えてきた。その結果、とある従業員は長野に移り住み、仕事前の2時間はスノボーを楽しんでから仕事に取り組むという生活を送っているという。このように各人がフロー状態に入る環境を整えれば必然的に生産性の向上にもつながるだろう。ただし、リモートワークにはいくつかの問題がある。その1つが社員同士のコミュニケーション欠落。取り組み当初は社員同士の雑談が皆無になってしまったという。この点を改善するため、社員同士がSkypeで常時接続するなどして常に改善を図っているそうだ。

ITによる地方創生という取り組みは前述した情報格差や賃金格差などが相まって、一筋縄では行かない状態だが、IT技術は距離と時間を埋めるという大きな潜在能力を備えている。中嶋氏はエンジニアの幸福なライフスタイルを目指しつつ、地方創生をITで推進したいと考える自治体と取り組んで、地方IT企業と自治体をつなげる活動も推進中だ。日本オラクルも2016年から地方創生に注力し、中堅企業や自治体にOracle Cloudの活用で地元のビジネス活性化支援を行っている。

勉強会で用いたピザ注文BOTシステム。Node.js上で動作する

変化し始めた日本オラクル

このように自社製品に固執しない勉強会開催やITによる地方創生に注力するなど、単なるRDBMSに強いIT企業から、ハードウェアやミドルウェア、そしてクラウドとIT総合企業に変化しつつある。その中で社会貢献を忘れることなく、これまで顧客やパートナーとなり得なかったエンジニアに寄り添う声も聞くことができた。

今回インタビューに答えてくれた中嶋氏は日本オラクルを1度退社し、戻って来た"出戻り組"だが、「外から見るとISV製品の多くがOracle Databaseを前提に設計し、1番難しいデータ構造の移行部分を押さえている『強み』を感じた」(中嶋氏)と語る。日本オラクルはオンプレミス製品よりも安価で高機能なOracle Database Cloudを新たな選択肢として顧客やISVなどのパートナーに提供していくが、「DB内に機械学習エンジンを備えているため、DBからエクスポートしてアナリティクスエンジンにかけるためを省ける。データ入力と共に分析や予測が可能なため、例えば予測機能を備えたISV製品の提供も可能」(中嶋氏)と楽しそうに説明していた。

筆者がインタビュー前に漠然と感じていた印象は払拭され、消え去るどころかこの先の10年もIT業界で存在感を示す大手IT企業であることを再認識した。中嶋氏のような活動が受け入れられる風土があれば、日本オラクルは今後も我々にさまざまなITソリューションを示していくだろう。

阿久津良和(Cactus)

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。