なんであえて間違えやすい社名にしているの!?

夏目幸明の"スッキリする"カイシャの話 第7回

なんであえて間違えやすい社名にしているの!?

2017.04.21

経済ジャーナリスト夏目幸明がおくる連載。巷で気になるあの商品、サービスなどの裏側には、企業のどんな事情があるのか。そんな「気になる」に応え、かつタメになる話をお届けしていきます。

筆者は「社名マニア」。取材で様々な企業を訪ねるとき、いちいち「なんでこの名前に?」と考えるからです。今回から数回にわたり、社名の由来、社名の不思議についてスッキリ! していただきます。

「ニッカウヰスキー」の社名にマッサンの思いが

サイトウさんやワタナベさんにメールを出すとき、ちょっと緊張しませんか? あの人は斉藤さんなのか、斎藤さんか、もしくは齋藤さん? 同様に、社名にも間違えやすいものがあります。例えばニッカウイスキー、キューピー、キャノン……と書きましたが、実はこの表記、全部間違いなのです! 正しくは「ニッカウヰスキー」、ほかはユとヤが大きい「キユーピー」「キヤノン」です。

これは同社のパソコンが壊れていて小さいユやヤが打てず……というのはもちろん嘘で、実は、それぞれにこだわりがあるのです。

そう、うっかり間違えてしまいそうになります……でもその企業の思いが詰まっているんですね

例えばニッカウヰスキーには、同社の創業者でNHKのドラマ「マッサン」の主人公にもなった竹鶴政孝の思いが詰まっています。竹鶴は苦労を重ねながら海外でウイスキー作りを学び、1934年に北海道・余市町の醸造所を立ち上げました。しかしこのとき盲点が! ウイスキーは、原酒を数年から十年以上樽で熟成させてつくります。起業当初は費用ばかりかかり、利益をあげられるのは何年も後なのです。そこで竹鶴は、地元特産のリンゴをジュースにして販売、なんとか会社を存続させました。その当時の社名が「大日本果汁」。略して「ニッカ(日果)」だったのです。すなわち「ニッカ」の部分は、苦難にも負けない竹鶴の情熱が込められていた、というわけ。さらに「ウヰスキー」なのは彼のこだわり。ウイスキーづくりは水が命です。そこで彼は、井戸の「井」の字をつかい、社名を「ニッカウ井スキー」にしようと考えました。ところが当時はカタカナと漢字を混ぜた社名は認められず、彼は当時使われていたひらがな「ゐ」のカタカナで、かつ「井」の字に由来する「ヰ」を使ったとされています。

いかがでしょう? 社名の由来を知ると、急に親しみが湧いてきませんか?

富士フイルムはなぜあえて「フイルム」の名を残す?

キヤノンとキユーピーが小さな“ヤ”や“ユ”を使わない理由は、両社ともにほぼ同じです。ざっくり言えば「商標のデザイン上の理由」。ロゴの文字の大きさをバランスよくするためです。話すときは「キューピー」で問題ないし、取材のときに聞いてみると「正直、ちょくちょく間違えられますよ」とのことでした。

そして両社ともに、社名にも由来があります。

キヤノンのルーツは、戦前に興された「精機光学研究所」。創業者は「日本は資源が少ないから、材料が原価に占める割合が少ない商品をつくろう」と考え、カメラの製造に取り組みました。そして、最初の試作機に「KWANON(カンノン)」と名付けます。観音菩薩のお慈悲によって、世界最高のカメラを創りたい、という願いがこもっていました。そして同社が社名を決めるとき「Canon」になりました。「KWANON」と音が近く、英語では「聖典」「規範」「標準」という意味を持つからです。

次はキユーピー。同社の創業者はアメリカに赴任していた1915年頃、みんなが野菜にマヨネーズを付けて食べるのを見て、国産化を志します。当時の日本人は栄養が不足気味、しかも体格が貧弱だったのです。マヨネーズで野菜を食べ、みんな健康に、と願いを込め、創業者は「キューピー人形のように誰からも愛されるように」とブランド名を決めたと言われています。

ちなみに、ヤやユが小さくならないパターンは意外と多く「シヤチハタ」「三和シヤッター工業」「富士フイルム」「エドウイン」などがあります。ちなみに名古屋に本拠を置くシヤチハタの由来は、設立当初、旗の中に鯱(シャチ)が描かれた商標を使っていたから「鯱+旗」でシヤチハタ。創業社長が日の丸を商標にしようと考えたものの「国旗を商標に利用するのはよくない」と指摘を受け、名古屋城の天守閣にある金のシャチホコを意匠にし「名古屋発の商品が日本一になるように」と願いを込めたと言います。

また富士フイルムは現在、液晶ディスプレイに使用される偏光層保護フィルムや化粧品の売り上げが伸びており、フイルム事業は縮小傾向にありますが、広報いわく「当社の技術は元々フイルムにより培ったもの。それを忘れないように」とのことで、現在も「フイルム」という名称を残しているそうです。ちなみに同社では、フィルムの呼び方も「フイルム」としています。

名前の由来を知る、それは企業の出発点を知ることなのかもしれませんね。

著者略歴

夏目幸明(なつめ・ゆきあき)
'72年、愛知県生まれ。早稲田大学卒業後、広告代理店入社。退職後、経済ジャーナリストに。現在は業務提携コンサルタントとして異業種の企業を結びつけ、新商品/新サービスの開発も行う。著書は「ニッポン「もの物語」--なぜ回転寿司は右からやってくるのか」など多数。
総務省施策が追い風に? 携帯分離の「歴史的チャンス」狙うファーウェイ

総務省施策が追い風に? 携帯分離の「歴史的チャンス」狙うファーウェイ

2019.03.20

モバイル業界を変える「携帯値下げ議論」が過熱

ファーウェイは日本を取り巻く環境を「歴史的チャンス」と発言

コスパ高いミッドレンジ端末でシェア拡大を目指す

20日、NTTドコモが特定の端末の購入を条件に通信料金を割り引く「docomo with」、購入する端末に応じて通信料金を割り引く「月々サポート」を終了する方針を固めたという報道が話題となっている。

国内のモバイル業界では携帯電話料金見直しが進んでおり、3月5日には総務省が中心に進めてきた端末代金と通信料金の分離が閣議決定された。NTTドコモは分離プランを軸とした新料金プランを4月に発表する見込みだ。

日本のモバイル市場を大きく変えるこの動きを「歴史的チャンス」と見ているのがファーウェイだ。2018年末から米中対立が加速する中、ファーウェイが打ち出すメッセージも語気を強めている。果たして日本市場でシェアを拡大できるのだろうか。

逆風吹けども、依然として業績は好調

今年に入り、ファーウェイの周辺が騒がしい。3月7日には、ファーウェイは米国政府を相手取って訴訟を起こした

さらにその内容をFacebookでライブ配信するなど、米国以外の世界市場に向けたメッセージにもしており、そのメッセージをまとめたウェブサイト「Huawei Facts」は、わざわざ日本語版も用意している。

2018年末から続く米中対立を巡る報道は、ファーウェイの業績にどのような影響を与えたのか。MWC19でインタビューに応じたファーウェイ・ジャパンの呉波氏は、「一部の消費者は影響を受けたが、2019年に入ってから売上は大幅に伸びている」と語った。

ファーウェイ デバイス 日本・韓国リージョン プレジデントの呉波(ゴ・ハ)氏

話題の「折りたたみスマホ」でもファーウェイは先行する。

ファーウェイに先立って折り畳みスマホを発表したサムスンだが、こちらはMWCではガラスケース内での「展示」のみにとどまったのに対し、ファーウェイは「Mate X」の実機を用いて報道関係者に折り曲げを試させるなど、製品化で一歩先を行っていることをアピールした。

ファーウェイの折りたたみスマホ「Mate X」。報道陣には手に取って折り曲げてみる機会も用意された

Mate Xは次世代移動通信の「5G」にも対応しており、日本では5Gサービスの開始を待って投入時期を見極める方針だという。

ちなみに3月26日に発表予定のフラグシップ機「HUAWEI P30」シリーズは、例年通りのタイミングで日本市場に投入するようだ。SIMフリーでの発売だけでなく、ドコモが採用した「HUAWEI P20 Pro」のように大手キャリアによる採用があるかどうかも注目したい。

分離プランを「歴史的チャンス」と捉えるワケ

一方、2019年の国内モバイル市場で話題となっているのが携帯料金における「分離プラン」の導入だ。KDDIとソフトバンクはすでに導入済みだが、NTTドコモは4月に発表する新料金プランから本格導入するとみられている。

分離プランの特徴は、NTTドコモの「月々サポート」のように回線契約と紐付けた端末の割引が禁止される点だ。端末の割引自体が禁止されるわけではないというものの、大幅な割引は難しくなる。その結果、10万円を超えるようなハイエンド機ではなく、3〜4万円で一括購入しやすいミッドレンジ機の需要が高まるとの見方が有力だ。

この動きをファーウェイはどう見ているのか。

呉氏は「非常に重要視している。スマホが登場したときや、SIMフリー市場が始まったときのインパクトに引けを取らない、歴史的な瞬間になる」と興奮気味に語る。

日本のSIMフリー市場でベストセラーとなった「HUAWEI P20 lite」を始め、ファーウェイのミッドレンジ機のラインアップは厚い。モデルによってはフラグシップと同じCPUでミッドハイの価格を実現するなど、コスパの高さも特徴だ。大手キャリア向けにさまざまな提案ができる体制といえる。

フラグシップと同じ「Kirin 980」搭載でミッドハイ価格の「HONOR View 20」

また、5G対応も順調だ。

モバイルWi-Fiルーターに強みを持つファーウェイは、MWC19でも5G対応ルーターを多く出展していた。日本ではまだ周波数の割り当てが終わっていないものの、国内大手キャリアは2019年内にもプレサービスを始める動きがある。5Gスマホが普及するまでの間、5Gルーターの需要は高まる可能性がある。

5G対応のモバイルWi-Fiルーターも出展していた

ミッドレンジ市場の拡大を狙って、今年はシャープやサムスン以外にも、ソニーモバイルの参入も予想されている。

この価格帯が激戦区になることは間違いないが、ファーウェイはその中で高コスパの製品ラインアップや、国内での地道な販促活動やブランドメッセージの打ち出しによって対抗していく構えだ。

ヨドバシカメラ梅田店での販促イベントの様子
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2019.03.20

Googleが新しいゲームプラットフォームを発表

配信方式でゲーム機不要、「ゲーム機」の時代の終焉?

2019年内にローンチ、性能はプレステやXbox以上か

3月19日、米国で開催中のゲーム開発者会議「GDC 2019」の会場で、Googleがクラウドベースのゲーミングプラットフォーム「STADIA」を発表した。特定のゲーム機に縛られず、ネットに接続したスマホやパソコン、テレビを通してストリーミング(配信)形式でゲームをプレイできる。

この事業を担当するバイスプレジデントとして、STADIAを発表するフィル・ハリソン(Phil Harrison)氏。そもそも彼からして、元はソニーのプレイステーション立ち上げの主要メンバーで、その後Microsoftに移りXboxを担当したという経歴の持ち主

かねてより、MicrosoftのXbox事業のトップマネージャーを引き抜いた、ソニーでPlayStationのハード開発にかかわったエンジニアが転職したといった噂が頻繁に流れており、「Googleがゲーム市場に本格参入する」という憶測は強まっていた。実際に2018年には、Googleは「Project Stream」と呼ばれるストリーミング形式のゲーム基盤の計画を発表し、米国内でベータテスターを募って技術テストを行っていた。

STADIAは、Project Streamの延長線上にあるサービスと見られる。ユーザーは特定のゲーム機を持っている必要がなく、従来のゲーム機の役割をするのはGoogleの設置するデータセンターだ。簡単に言えばクラウドサービスのように、実際にゲームタイトルが動作しているのはデータセンター側で、ユーザーはインターネットを介してゲームを遠隔でプレイする。

STADIAのデータセンターから配信されたゲームをパソコンでプレイしている様子
パソコンで遊んでいたのと同じゲームを、タブレットやテレビでも同じように遊ぶことができる

このプラットフォームの特徴によって、例えばYouTubeで新作ゲームのトレーラー動画を見ていて気に入ったときには、そのページ内の「プレイする」ボタンを押すだけで、インストールすら不要で、動画を再生するかのようにそのゲームをプレイできるようになる。

そして、STADIAのデータセンターが持つゲーム機としてスペックは、サービス開始時のものとして、GPUの演算性能は10.7テラFlopsに達するといい、これはPlayStation 4 Proの4.2テラFlopsや、Xbox One Xの6.0テラFlopsを大きく上回る。映像品質も4K/60fpsのストリーミングに対応し、将来は8K/120fps対応も予定しているという。

STADIA用の「STADIAコントローラー」も販売する。SNSアップ用のボタンや、Googleアシスタントボタンが備わっている

Googleは2019年中にSTADIAをローンチする予定で、まずは米国、カナダ、欧州でサービスを開始すると説明している。発表を受けた翌20日の東京株式市場では、任天堂とソニーの株価が揃って大きく下落した。投資家たちが、GoogleのSTADIAによって、Nintendo SwitchやPlayStationのビジネスが脅かされると考えたからだ。

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