冬の時代が続くMVNO、生き残りに向けた今年の取り組み

冬の時代が続くMVNO、生き残りに向けた今年の取り組み

2018.05.03

大手キャリアの顧客流出措置によって、昨年に入りこれまでの絶好調から一転して、苦境に陥っているMVNO。LINEモバイルがソフトバンクの傘下になるなど引き続き大手キャリアの攻勢が続く一方、「強いMVNO」となるべく新たな戦略を打つMVNOも出てきている。

LINEモバイルがソフトバンク傘下に

一昨年まで大手キャリアから顧客を奪い絶好調だったMVNO。だが昨年、大手キャリアがグループ外への顧客流出阻止を徹底したことにより、MVNOへと流出する顧客が大幅に減少し、一転して苦境に立たされている。その傾向は今年に入っても大きく変わっておらず、むしろ大手キャリアの攻勢が目立つくらいだ。

そのことを象徴しているのが、ソフトバンクが4月に、LINE子会社の「LINEモバイル」と資本業務提携し、実質的に傘下に収めたことだ。LINEの子会社として、2016年よりMVNOとしてスマートフォン向けの通信サービスを提供。LINEなど特定のサービスを利用した時の通信量をカウントしない「カウントフリー」を大きな特徴として打ち出し、鳴り物入りで参入したものの、市場環境の厳しさを受けてか単独での生き残りを断念。ソフトバンクの傘下に入ることとなった。

ソフトバンクはLINEモバイルを傘下に収めたことを発表。「LINE」の高いブランド力を活用し、ソフトバンク回線の契約獲得を推し進めるものと考えられる

LINEモバイルはソフトバンクの傘下となったことを受け、現在のNTTドコモの回線を利用したサービスに加え、ソフトバンクの回線を用いたサービスも展開することを表明している。一方でソフトバンク側は、知名度が高い「LINE」のブランドを活用したユーザー獲得ができるようになったほか、ワイモバイルで提供している「Android One」のオリジナルスマートフォンを、LINEモバイルでも販売することなどを表明。ソフトバンクの後ろ盾を得たことでLINEモバイルの会員獲得が強化され、ソフトバンク外へのユーザー流出阻止に大きく貢献する可能性は高い。

また4月27日には、NTTドコモが5月より、新しい料金プラン「ベーシックパック」「ベーシックシェアパック」を提供することを発表。これはauの「ピタットプラン」と同様の、通信量に応じて通信料が変化する段階制のデータ定額サービスで、NTTドコモはデータ通信量が少ない人向けの料金プランを、両プランへと一本化する方針を表明している。

NTTドコモは通信量に応じて料金が変わる新料金プラン「ベーシックパック」などを発表。他の割引サービスを適用し、家族で月額1980円で利用できる低価格を打ち出す

同日に実施された決算説明会で、NTTドコモ代表取締役社長の吉澤和弘氏は、「利用者分析の中で、通信料が少ない人の流出が少し多くなる兆候があった」と話している。そうしたことから両プランの提供も、顧客流出阻止の新たな取り組みの一環と見ることができ、大手キャリアのグループからの顧客流出を見込むMVNOにとっては一層厳しい状況になったといえる。

限界が見えた総務省の“大ナタ”

そうしたMVNOの苦境を受けて実施された、総務省の有識者会議「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」も、MVNOの期待に応えたとはいえない結果となった。その最大の理由は、MVNOが最も警戒しているソフトバンクの「ワイモバイル」ブランドや、KDDI傘下のUQコミュニケーションズが展開する「UQ mobile」など、大手キャリアのサブブランドに対する追及が空振りに終わったことだ。

今回の有識者会議ではサブブランド、特に他のMVNOと同様、MVNOとしてサービスを提供しているUQ mobileに対し、昼間の通信速度が他社より高速であるなど、ネットワーク面で親会社となるKDDIから何らかの優遇がなされているのではないかという点に大きな疑いがかけられていた。だがUQコミュニケーションズ側は実際の資料によって、基本料を高く設定して接続料を多く支払い、他社より多くの帯域幅を借りているためビジネス上問題がないことを証明したのである。

1月22日に実施された「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」の第3回会合。キャリアやサブブランドへの問題追及がなされたが、実質的に空振りに終わった

そうしたことから総務省は、サブブランドに対し引き続き優遇がないか注視していくとしながらも、規制につながる具体的な策を打ち出すことはできなかった。ゆえにサブブランドは従来通りのビジネスを継続すると見られ、MVNOにとっては非常に大きな脅威として立ちはだかり続けることとなる。

それ以外の議論の結果に関して見ても、中古スマートフォン市場の活性化に向けた措置や、キャリアに対する2年縛りの改善の要求などがなされることは明らかとなっている。だがかつてのSIMロック解除義務化や、実質0円販売の事実上禁止措置などといった、MVNOの優位性が圧倒的に高まる“大ナタ”というべき措置につながるものは見当たらない。

MVNOは総務省の優遇によって大きく伸びてきた経緯があるが、今回の有識者会議を見ても、総務省ができることに限界が見えてきているのも事実。それだけに、MVNOが生き残るには自身がより一層強くなることが求められるようになったといえよう。

サバイバル時代に向けたMVNOの生き残り策

ある意味で、生き残りのため自身が強くなることを目指す動きの象徴といえるのが、ソフトバンク傘下となったLINEモバイルや、1.7GHz帯の周波数帯を獲得し、キャリアとして携帯電話事業に参入することを表明した楽天である。だがもちろん、あくまで従来の独立系MVNOの立場を維持しながらも、強いMVNOとして生き残ろうとする動きもいくつか見られるようになってきた。

実際、「mineo」ブランドのケイ・オプティコムは、サービスを安価に利用できるキャンペーンを積極展開するなどここ最近攻めの姿勢を貫いており、その結果として4月10日に100万回線を突破したことを発表。MVNOとして大手の座を確固なものにしつつあるようだ。

また、カルチュア・コンビニエンス・クラブ傘下のトーンモバイルは、従来端末とサービスを一体で提供することにこだわっていたが、4月26日から新たに、iPhone向けの「TONE SIM(for iPhone)」の提供を開始。iPhoneが安く利用できるだけでなく、子供の見守りなどトーンモバイルならではの安心・安全サービスを利用できることを訴求することで、国内では圧倒的多数を占めるiPhoneユーザーの獲得へと乗り出し、契約数の拡大を推し進めようとしている。

トーンモバイルは新たに「TONE SIM(for iPhone)」の提供を発表、自社端末では獲得が難しかった、iPhoneを欲するユーザーの獲得に乗り出している

また強いMVNOとなった企業は、さらに次のステップに進もうとしている。個人・法人合わせて200万契約を獲得するなど、MVNOとして最大手ともいえるインターネット・イニシアティブ(IIJ)は、今年3月に、自身でSIMを発行できる「フルMVNO」としてサービスを提供することを発表。同社はフルMVNOとしてのサービスを、主として法人向けに展開するとしている。

IIJは3月より、フルMVNOとしてデータ通信のサービス提供を開始。法人向けのサービスを強化することで、借りた帯域を有効活用しサービス改善につなげる狙いがある

その理由は、MVNOの利活用の幅を広げることで、早朝や夜間など余っている時間の帯域幅を有効活用するためだ。MVNOに貸し出される帯域は時間帯によらず一定であるため、昼間のトラフィックに合わせて広い帯域幅を借りると、他の時間帯は無駄が生じてしまう。その無駄な時間帯を減らして収入につなげることができれば、より多くの帯域幅を借りて通信速度を向上しやすくなり、他社より一層優位な立場に立つことができる訳だ。

仮に大手キャリアの反転攻勢がなかったとしても、既に700以上のMVNOが参入している現状、競争激化と淘汰の波から免れなかったのは確かだろう。それだけに、今年はMVNOがどのような戦略をとることで、生き残りの道を模索するかが注目されることになりそうだ。

LINEと比較されがちな「+メッセージ」は独自の価値を打ち出せる?

LINEと比較されがちな「+メッセージ」は独自の価値を打ち出せる?

2019.04.25

携帯3社が「+メッセージ」の機能拡充を発表

LINEと比較した強みは「信頼性」

金融サービスと連携し、住所変更手続きが容易に

NTTドコモ・KDDI・ソフトバンクの携帯大手3キャリアが「+メッセージ」(プラスメッセージ)の機能拡充を発表した。

国内大手3キャリアが「+メッセージ」の機能拡充を発表

サービス開始から1年が経過した「+メッセージ」だが、広く普及した印象はない。「メッセージならLINEで十分」との声も多い中で、普及する可能性はあるのだろうか。

「LINE」とは異なる可能性を秘めた「+メッセージ」

2018年5月に大手3キャリアがサービスを開始した「+メッセージ」は、2019年4月までに利用者が800万人を突破したという。だが「使ったことがない」とか、そもそも「名前を知らなかった」という人もいるのではないだろうか。

+メッセージの利用者は800万人に

「+メッセージ」とは、国際規格のRCSに準拠したメッセージサービスだ。従来のSMSを置き換えるサービスとして、短いテキストだけでなく長文や画像、スタンプを送れるのが特徴だ。

「+メッセージ」はSMSを置き換える上位サービス

一方、日本国内ではLINEが普及しており、月間利用者数は7900万人、そのうち毎日使うユーザーは6600万人もいるという。日本のほとんどのスマホにLINEは入っており、日常的なメッセージ需要はLINEが十分に満たしている状態だ。

だが、どんなにLINEが普及してもSMSがなくなることはない。サービスのID登録やログイン時など、本人確認を必要とする多くの場面でSMSは使われている。SMSは契約時に身分証明書で本人確認を済ませており、信頼性が高いのが特徴だ。

一般に「+メッセージ」は大手キャリアのLINE対抗策と認識される傾向にあるものの、その性質はやや異なる。「+メッセージ」がSMSの延長にあるという特性を活かせば、SMS認証のような本人確認はもちろん、企業と個人の間でのさまざまな手続きに活用できるはずだ。

こうした背景を踏まえて3キャリアが発表したのが、新サービスの「公式アカウント」や、金融各社と連携する「共通手続きプラットフォーム」だ。

仕組みの共通化やMVNO対応など、課題は山積

2019年5月以降に始まる「+メッセージ」の公式アカウントは、企業向けのアカウント機能だ。利用例としては銀行やレストラン、携帯会社を挙げ、登録住所の変更やレストランの予約、問い合わせといったサービスを実現できることを示した。

「+メッセージ」の「公式アカウント」機能

こうした機能はアプリでも提供されているが、スマホにアプリを入れていないユーザーも多く、パスワードを入れてログインするのは煩雑だ。だが「+メッセージ」なら電話番号だけでユーザー本人とつながり、チャットで手続きができるので便利というわけだ。

銀行やレストラン、携帯会社による利用例

だが、サービス提供に向けた課題は多い。公式アカウントの開設は、大手3キャリアが個別に営業をかけ、各社の基準で審査する方式となっている。一見すると無駄な仕組みだが、独占禁止法への抵触を避けるため、3社が競争している建前になっているという。

3キャリア以外への対応として、ワイモバイルなどのサブブランドやMVNOでは利用できない状況が続いている。サービス開始時から指摘されていた問題だが、1年が経過して何の進展もないのは理解に苦しむところだ。

iPhone対応にも課題がある。アプリを入れることで「+メッセージ」は使えるものの、SMSを送受信する標準のメッセージアプリを置き換えるものではない。ここに手を加えるのはiPhoneの基本的なユーザー体験に影響するため、アップルの判断次第になりそうだ。

また、今後の構想として、金融5社を横断した「共通手続きプラットフォーム」も打ち出された。住所変更手続きなど、各社の競争に直接関係しない事務手続きを共通化し、顧客の利便性向上を図るのが狙いだ。

金融5社と「共通手続きプラットフォーム」に向けた検討を開始

最近、フィンテックやキャッシュレスの新サービスが増え、新たに住所や電話番号を登録して口座を作る機会は多くなった。しかし、それに伴い変更の手間も増している。そこで+メッセージを利用したオープンな事務手続きプラットフォームが実現すれば、1回の手続きで全社に情報が伝播するというわけだ。

「+メッセージ」は、携帯市場で競合する大手3キャリアが共通サービスの整備を進めなければならない。その中で「電話番号でつながる」強みを活かした独自の活用法が、ようやく見えてきたといえそうだ。

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日本の掃除機市場を変革した元外交官、日本市場への本格参入を語る

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日本の掃除機市場を変革した元外交官、日本市場への本格参入を語る

2019.04.25

シャークニンジャ日本法人の社長 ゴードン・トム氏に直撃

「コードレススティッククリーナー」人気の立役者が語る参入秘話

日本向けの製品カスタム、消費者ニーズの取り入れ図る

全米ナンバーワンの掃除機ブランド「シャーク」。日本では、長年スチームクリーナーのメーカーとして知られていたが、2017年6月に日本法人が設立され、翌2018年夏に日本市場に本格参入した。

第1弾として、同年8月にコードレススティッククリーナーの「EVOFLEX」を発売。翌9月にはハンディクリーナー「EVOPOWER」、10月にはスチームモップ3製品、ロボット掃除機「EVOROBOT」と精力的に新製品を日本市場に投入している。

そこで今回は、シャークニンジャ日本法人の社長を務めるゴードン・トム氏を直撃。同社の日本市場への本格参入の意図と、今後の戦略や日本の掃除機市場や消費者について伺った。

シャークニンジャ日本法人の社長のゴードン・トム氏。英国の元外交官で、20年前にダイソンの掃除機を日本に広め、現在の業界の発展につながる市場の開拓の礎を築いた人物だ

「コードレススティッククリーナー」人気の立役者

ゴードン・トム氏と言えば、日本の掃除機市場の変革者と呼んでも過言ではない人物。もとはイギリスの外交官として来日。赴任中の1990年代にダイソンの日本法人の初代社長に抜擢された(編集注:イギリスの外交官には副業を認める制度がある)。

当時国内メーカーの寡占状態であった日本の掃除機市場に“吸引力が落ちない”の謳い文句で同社のサイクロン掃除機を展開し、「ダイソン」ブランドの地位確立の礎を築いた。

ダイソンを退いた後は、エレクトロラックス日本法人の社長に就任し、キャニスター型に代わり、現在日本の掃除機市場において主流となった“コードレススティッククリーナー”の人気を定着させた。

外国人でありながら、日本の掃除機市場を知り尽くした“業界のマシュー・ペリー”的存在のトム氏だが、今度は全米ナンバーワンの掃除機メーカーの日本法人の社長として日本に再上陸したのは、どういった経緯なのだろうか。

「2014年にエレクトロラックス社を退職して、以降はマーケティングのコンサルタントの仕事をしていましたが、2016年の9月ごろにシャークから連絡がありました。当時のシャークの売上は北米が95%、イギリスが5%ほど。中国法人を立ち上げ、代理店経由でメキシコにも進出するなど本格的な国際化戦略を進めており、日本も大事な市場の1つと考えていました。そんな中、私のところに相談があり、翌2017年の1月くらいにボストンの本社へ出向き、エンジニアやデザイナーに会って話をし、3~4月ぐらいに日本に展開する商材や現地法人の設立、取引・流通事情、マーケティング戦略の提案をしました」

日本法人の設立にあたっては、最終的にはトム氏自らが初代社長に就任することになり、これまでの経験をもとに、オフィスの設置場所や人材集めなども自ら担ったとのことだ。

参入にあたり日本向けにカスタム

次に着手したのは、日本市場に投入する商材の選定。氏曰く「これまでで最高の掃除機に出会えた」と評する同社の製品で、日本市場参入第1弾に選ばれたのは、「EVOFLEX」。本国では2017年秋に発売され、ボタン1つでパイプを90°曲げて掃除ができるという独特のギミックで注目を集めた製品だが、日本で発売するにあたっては多くが日本向けにカスタマイズされたという。

日本市場への本格参入の第1弾として2018年8月に発売されたコードレススティッククリーナー「EVOFLEX」。本国でおよそ1年前に発売された製品(左)を、サイズからモーター、操作性に至るまで、日本向けに大幅にカスタマイズした上で登場し

「本国で開発された最初の試作機は、私の目から見たら全然ダメでした。まず、大きすぎて日本人の身体にも家にもマッチしていませんでした」

パイプ部分が90°曲がって家具の下にも潜り込みやすいという、製品のアイデンティティーとも言える独自性はそのまま継承しつつも、パーツの着脱をしやすくするためにボタンの改良が施されるなど、日本のユーザーに受け容れられるよう細かい部分にまで配慮がなされた

そこで実際に、試作機を用いて日本の家庭50世帯で6週間のテストを3回行い、その結果、日本向けの「EVOFLEX」は、原型は同じでありながらも本国の製品とは見た目も中身もかなり異なる製品に仕上がった。「例えば、ヘッドブラシは、畳や木材などが多い日本家屋の床に合わせて柔らかいローラーにしました。ダストカップも中身が見える透明な素材で、中のメンテナンスがしやすいように角を丸くしています」とトム氏。

それ以外にも、高音域のモーター音を好まない日本のユーザーのために音を低減したり、高性能なHEPAフィルターの採用や、取り外しやすいメッシュフィルターを採用してサイクロン部の手入れをしやするなど、掃除機の本質性能だけでなく、操作性やメンテナンス性にこだわった改良が多数施された。

こうした改良点について、トム氏は日本とアメリカの掃除機に対する消費者の根本的な考え方や流通ルートの違いを明かす。

「日本の場合には、掃除機や家電製品の購入は、家電量販店が主流ですが、米国の場合にはウォルマートなどの巨大スーパーで購入するケースが一般的です。そこでは日本のように実際に製品に手で触れて試してみるという機会がありません。そのため、製品への信頼度が重要で、ブランド力というのはとても大事なのです」

日本でも昨秋発売された同社のロボット掃除機。本国ではそのおよそ1年前に発売されているが、ほぼアイロボット社の独占市場であったアメリカのロボット掃除機市場において、初めてアイロボット以外で2桁のシェアに躍り出ている。

2018年10月発売のロボット掃除機「EVOROBOT」。掃除機メーカーとしてのブランドへの信頼性と、十分な機能・性能と消費者が受け入れやすい価格帯で、アイロボットの「ルンバ」以外で初めて10%を超えるシェアを獲得したという

さらに、米国の消費者は「掃除機が必要」という需要があった上で、その用途を満たすための機能と予算を照らし合わせて製品を選ぶというのが購入の意思決定。ゆえに、デザインやメンテナンスといった要素は日本人ほど重視されず、むしろ「さまざまなユーザー層の需要に応えるために、価格によって付属品を選べることが重要なのです」と話す。

20年前の日本市場は「つまらなかった」

一方、約20年前に日本の掃除機市場に乗り込み、「日本の掃除機は紙パックのキャニスター式ばかりで個性がなく、つまらなかった」と当時を振り返るトム氏。業界の“エバンジェリスト”として、日本市場においてシャークブランドのプレゼンスをどのように高めていくのかに注目される。

そこで目を向けたのが、昨年9月に発売された「EVOPOWER」だ。本国での発売後、日本向けにカスタマイズして上陸した「EVOFLEX」とは異なり、日本をメインマーケットとして、日本の消費者のニーズを多く取り入れて開発されたハンディクリーナーで、その後に英国でも発売されているとのこと。

さらに、今年1月には長崎県の無形文化財である「臥牛窯」とコラボレーションし、「EVOPOWER」に絵付けを施した限定商品を発売するなど、"日本発"の掃除機を送り出している。今後もこうした商品展開や戦略を積極的に進めていく方針なのだろか。最後に、シャークニンジャの展望について訊ねてみたところ、次のように語ってくれた。

2018年9月発売の「EVOPOWER」。コンパクトで部屋に設置しやすくサッと使える機動力のよさと、生活感を感じさせない外観でインテリアにもなじみ、部屋に常設しやすいと好評だ
「臥牛窯」とのコラボレーションで生まれた限定の「EVOPOWER」。プロモーションというよりも、どちらかと言うと日本の伝統工芸贔屓のゴードン社長の“趣味”で作られたようだが、今後も相性がよいものがあれば実現していきたいとのこと

「シャークの掃除機は、あくまでユーザーの使い勝手が最優先です。ゆえに、EVOPOWERも持ちやすく、どこにでも置いて使いやすいサイズ・形状を追求したハンディクリーナーですが、空間に置かれた時のこともイメージし、見た目のデザインにもこだわって開発された、これまでになかった商品だと思います。そういう意味ではEVOPOWERのデザインはまさに"機能美"と言えます。臥牛窯は、単に私が好きだと言う理由でやりました(笑)。積極的にとまでは言えませんが、伝統工芸が好きなので、実現できれば個人的には今後もコラボ商品を展開してみたいですね」

ダイソンで日本の掃除機市場に風穴を開け、エレクトロラックスで新たな掃除スタイルを日本に定着させたゴードン・トム氏。掃除機メーカーとして全米で絶対的なブランド力を誇るシャークニンジャを率い、今度はどのような手腕を奮うのか楽しみである。

長年の経験・知見を武器にした"掃除機"を通じた外交で、日本と諸外国をつないで、今後も世の中の掃除・家事スタイルやあり方を変えていってくれることへの期待が寄せられる、ゴードン・トム氏
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