電化する中国市場に挑むトヨタ・日産・ホンダ、打ち手は三者三様

電化する中国市場に挑むトヨタ・日産・ホンダ、打ち手は三者三様

2018.05.03

今や世界最大の自動車市場となった中国で、近く始まる「NEV規制」。電気自動車(EV)など新エネルギー車の販売を義務付ける政策だが、トヨタ自動車、日産自動車、ホンダの日本勢はどう対応するのか。前哨戦の北京モーターショーで各社は三者三様の戦略を披露した。

トヨタが北京モーターショーで発表した「カローラPHV」(画像提供:トヨタ自動車)

北京モーターショーで見えた日本勢の違い

日本ではゴールデンウィークだが、今や世界最大の自動車市場となった中国の首都・北京ではモーターショーの真っ最中だ。4月25日から5月4日までの期間中、自動車各社はEVなどの新エネルギー車(NEV:New Energy Vehicle)を巡って熱い戦いを繰り広げる。

トヨタ、日産、ホンダを中心とする日本勢も、プラグインハイブリッド車(PHV)やEVなど、電動の新型車に力を入れ、中国で先行して新商品や技術を投入する方向を前面に打ち出している。だが、北京モーターショーで公開されたトヨタ、日産、ホンダの電動車戦略は、それぞれ微妙な違いを見せた。

トヨタはPHVから、日産とホンダは?

トヨタは、中国では初となるPHVのセダン「カローラ」と小型車「レビン」の2車種を公開した。トヨタ初の海外生産PHVであり、中国の合弁先である一汽豊田汽車有限公司と広汽豊田有限公司で現地生産し、2019年から生産を始めて中国市場に投入する。

日産は日本で発売した新型「リーフ」とともに、「シルフィ ゼロ・エミッション」として新型EVを初公開した。このクルマは中国専用車両として2018年後半に市場投入する。Cセグメントセダンの「シルフィ」は中国で人気のモデルであり、2017年には約42万台を販売し、フォルクスワーゲン(VW)のセダン「ラヴィダ」に次ぐ第2位の販売となった。日産は人気車種をEV化して中国で攻勢をかける。

日産が北京モーターショーで発表した「シルフィ ゼロ・エミッション」(画像提供:日産自動車)

ホンダは「理念EVコンセプト」を初公開した。本田技研科技(中国)有限公司とホンダの合弁先である広汽本田汽車有限公司(広汽ホンダ)の共同開発で、中国市場専用車として初の量産EVとなる。ホンダのコンパクトSUV「ヴェゼル」をベースとし、広汽ホンダの自主ブランドである「理念」のモデルとして2018年内に投入する。

ホンダが北京モーターショーで発表した「理念EVコンセプト」(画像提供:本田技研工業)

実用面で有利なPHVからEVへという戦略をとるトヨタに対し、一気にEV化を進める日産とホンダ。ただし、日産はCセグメントセダン、ホンダは需要が高まるSUVと車種が異なる。このようにトヨタ、日産、ホンダは、中国での電動化戦略を三者三様で進めていく動きを見せる。各社が中国で電動化に注力するのは、同国政府が2019年から導入する「NEV(新エネルギー車)規制」への対応が求められているからだ。

NEV規制とは何か

中国政府は2019年から、PHV、EV、燃料電池自動車(FCV)を一定比率生産・販売することをメーカーに義務付ける「NEV規制」を導入する。これに対応できないメーカーは、対応済みの競合メーカーの余剰分を「クレジット」として買い入れないと、ガソリン車の生産にも制限を受けることになる。

中国のNEVには、日本で人気のハイブリッド車(HV)が含まれないことから、日本車メーカーにとって中国でのNEV規制対応が急務となっている。中国市場は今や3,000万台に迫る圧倒的な世界最大市場。加えて、2017年に売れた計142万台のEVおよびPHVのうち、中国は5割強を占めてNEV市場でも先行している。

NEVにハイブリッド車は含まれない(画像はトヨタ「プリウス」)

中国政府は2019年からのNEV規制実施に加えて、自動車産業の外資規制を撤廃する方針も打ち出した。これは従来、中国で自動車メーカーを設立する場合、外資に対して出資上限を50%以下に定めていたものを、2022年までに全廃するものだ。まずは2018年中にNEV分野に関する制限を撤廃する。

この決定の背景には、国を挙げたEV振興策により、中国メーカーが世界を主導するEV強国としての地歩を固めようという狙いがありそうだ。

欧州勢も中国市場攻略に躍起

一方で、この世界最大市場で存在感を高めたい日・米・欧・韓の自動車各社は、NEV規制対応による販売拡大に意欲を示す。中国市場における日本勢の販売台数は日産、ホンダ、トヨタの順だが、その差は拮抗。2017年の中国市場で各社の勢力図を確認すると、首位はVW、2位がGMで、これを追う中国現地メーカーに日産、ホンダ、トヨタも混ざる構図となっている。

中国市場における電動車の販売台数は増えていく見通しで、2025年には2017年の10倍に近い700万台市場に成長するとの予測もある。この商機を求めて、日本車大手、海外大手、中国勢にEVベンチャーが加わった先手争いが激化しているのだ。

EVシフトで先行する欧州メーカーも、中国での生産・開発を強化している。中国でトップのVWは、2021年までに中国の6工場でEVなど電動車の生産を始める予定。同国では2022年までに、電動化やコネクテッド技術などに対する150億ユーロ(約2兆円)の投資を実施する方針も発表している。BMWはEVやPHVの「iシリーズ」からSUVの「iX3」を初公開し、2020年に中国で世界に先行して投入する計画だ。

BMWは「X3」(画像)をベースとするEV「iX3」を発表

中国・吉利集団の傘下企業となったスウェーデンのボルボも、2025年までに販売台数の半分をEVにすると発表している。モーターショーに「モデル3」を出展したテスラも、外資規制撤廃の波に乗って中国でのEV生産を実現する意向を強めているようだ。

日産にとって中国は米国以上の収益源に?

トヨタは北京モーターショーで「カローラ」と「レビン」のPHV2車種を公開し、2019年から現地生産で発売することを明らかにしたが、これとともに、自社開発のEVを中国で生産して2020年に発売する戦略を明示した。2020年までにPHVやEVなど、新たに電動車10車種を追加し、電動車の中核部品の現地生産も進めるとの考えも打ち出している。

「レビンPHV」(画像提供:トヨタ自動車)

トヨタとしては、中国のNEV規制に対し、まずはPHVを先行投入してEVにつなげていく戦略であり、トヨタEV戦略としてもグローバルで中国から先駆けていくことになる。

日産は、新しい中期経営計画「日産M.O.V.E to 2022」でも電動駆動車の拡充を大きなテーマとし、2022年までに新たに8車種のEVを市場投入する計画を打ち出していた。その第1弾として「シルフィ ゼロ・エミッション」を中国で2018年後半にも投入する。

「シルフィ ゼロ・エミッション」(画像提供:日産自動車)

日産の中国合弁先の東風汽車有限公司は、EV中心の電動車攻勢で2022年の中国総販売台数を2017年実績比7割増の260万台に引き上げる計画を打ち出している。日産としてはグローバル戦略で中国を米国以上の最大収益源としてとらえ、高級車ブランド「インフィニティ」も2025年までに全てを電動車に切り替える計画など、EV転換をいち早く打ち出していくことになる。

兄弟車戦略でコストダウンを図るホンダ

かつては「北米一本足打法」といわれたホンダも、最近では中国を最重点市場へと転換する姿勢が著しい。北京モーターショーでの「理念EVコンセプト」は、ホンダと現地合弁の共同開発によるSUV「ヴェゼル」をベースとし、広汽ホンダの自主ブランド「理念」のモデルとして年内に投入する。

「理念EVコンセプト」(画像提供:本田技研工業)

ホンダの八郷隆弘社長と倉石誠司副社長は、共に中国へ赴任していたこともあり、中国に精通する。同社が中国で採用する「兄弟車戦略」は、現地合弁の東風本田汽車と広汽本田汽車において、1つの車台を用いながら内外装を変えてクルマを作り、異なる顧客層に訴求する手法だ。これがコストダウンにつながる。また、中国のカーシェアリング企業「リーチスター」への出資を通じ、シェアEVとしての可能性も探るなど独自のEV戦略を展開する。

いずれにせよ、世界最大の自動車市場である中国でNEV規制が動き出すからには、自動車メーカー各社としては対応せざるを得ないのが現状だ。日本の大手3社が打ち出した微妙に色合いの異なる戦略からは、各社の思惑を感じ取ることができる。

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

2019.01.21

CESで存在感を放つアマゾンとグーグル、各社の最新動向は?

レノボはGoogleアシスタント、Alexaに対応した新製品を発表

アップルは各社にプライバシー問題を警告、独自路線を貫くか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」で、別格の存在感を放っていたのがアマゾンやグーグルだ。2018年はグーグルがCESに初めて本格出展したことで話題となったが、2019年も大がかりなブースを設置して来場者の注目を浴びた。

ラスベガスのCES会場前に設置されたグーグルのブース

アマゾンやグーグルは音声アシスタントで競争しており、家電製品への組み込みを進めている。2019年のCESではどうだったのか、両社の最新動向をレポートする。

グーグル対アマゾンの音声争いが加速

グーグルは今年もCES会場に「Googleアシスタント」を目玉にした大型ブースを設置。巨大な壁面広告やモノレールのラッピング広告で存在を示し、家電メーカーのブースには白い帽子のスタッフを派遣するなど、CESを乗っ取る勢いだった。

「Googleアシスタント」に対応した家電製品が並ぶグーグルブース

一方、Alexaで先行するアマゾンも展示エリアを拡大。業界やメーカーの枠を越えた「Alexa対応製品」を一挙展示することで、エコシステムの強大さを示した。家庭向けのスマートホーム用途だけでなく、オフィスで使う事例も示すなど、応用範囲を広げている。

アマゾンは「Amazon Alexa」対応製品をブースに集めた

具体的な対応製品として、音声で操作できるスマートスピーカーやスマート電球はもちろんだが、これまでにないジャンルの製品も増えている。たとえばレノボは「目覚まし時計」と「タブレット」の2機種を発表した。

レノボの目覚まし時計「Smart Clock」(左)とタブレット「Smart Tab」(右)

Googleアシスタントに対応した「Smart Clock」は、目覚まし時計の置き換えを狙った製品だ。音声だけでなく画面のタッチ操作にも対応しており、カレンダーの予定や寝覚めのいい音楽、室内の照明と連動した目覚まし機能を提供する。

一方、Amazon Alexaに対応した「Smart Tab」は、一般的なAndroidタブレットとして使えるほか、ドックに置くと音声とタッチで操作するスマートディスプレイに早変わりする。自宅でも外出先でも1台2役で使えるお得さが特徴だ。

アップルが投げかける「プライバシー」問題

CESに両社が注力する背景には、音声アシスタント市場におけるシェア争いがある。「Amazon Echo」や「Google Home」といったスマートスピーカーの売上ではグーグルがアマゾンを猛追しており、2018年第1四半期には逆転劇を果たした(英Canalys調べ)。しかし第3四半期にはアマゾンが再び首位に立つなど、接戦が続いている。

その勢力はスマートスピーカーを越えて、家電全体に広がりつつある。家電の操作といえばスイッチやリモコン、タッチ操作が一般的だが、音声に対応する製品は増えている。これまで独自の音声アシスタント「Bixby」を展開してきたサムスンも2019年にはグーグルとアマゾンとの連携を発表した。

サムスンはスマートTVでグーグル、アマゾンと連携

このまま音声が普及していけば、世界中の人々がインターネットのサービスやコンテンツにアクセスする手段になる可能性がある。音声アシスタントのシェア争いは、スマホOSのシェア争いと同じくらい重要というわけだ。

ただ、音声操作はプライバシーに関する懸念もある。音声操作を受け付けるには、マイクが常時オンになっている必要があるからだ。マイクをオフにする機能はあるとはいえ、家庭内のプライベートな会話を常にマイクに拾われるのは心地よいものではない。

この問題に一石を投じたのがアップルだ。CES会場からよく見えるホテルの壁に意見広告を掲載。ラスベガスの有名なコピーをもじって「iPhoneで起きることはiPhoneの中にとどまる」と訴え、サードパーティと広く連携するアマゾンやグーグルを牽制した。

アップルはCESでプライバシー重視をアピール。元々の言葉は、「What happens in Vegas stays in Vegas.(ラスベガスで起きたことはラスベガスに残る)」というもの

アップルも独自の「Siri」をiPhoneに搭載し、スマートスピーカー「HomePod」も販売している。だがサードパーティとは積極的に連携していないため、音声のシェア争いでは不利な立場に追い込まれている。アップルがこのまま「プライバシー重視」路線を貫くかどうかも、音声アシスタント市場の行方を左右しそうだ。

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第30回

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

2019.01.21

いまや当たり前の「ワイヤレス充電」スマホ

開発も販売も、実は日本が世界初だった

過去にナゼ廃れたのか、今はナゼ流行っているのか

最近、ケーブルに接続する必要なく充電ができる、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンが増えてきている。一時は姿を消していたワイヤレス充電が、ここにきて再び脚光を浴びるようになったのはなぜだろうか。

世界初のワイヤレス充電対応スマホは日本製

スマートフォンを充電する際、多くの人は充電用の電源ケーブルに接続して充電していることだろう。だがここ最近、スマートフォンをケーブルに接続することなく、専用の充電台に置くだけで充電ができる「ワイヤレス充電」に対応したスマートフォンが増えているのだ。

例えばアップルのiPhoneシリーズであれば、2017年発売の「iPhone 8」シリーズ以降からワイヤレス充電に対応している。他にもグーグルの「Pixel 3」やサムスン電子の「Galaxy Note 9」、そしてファーウェイの「HUAWEI Mate20 Pro」など、海外製のハイエンドスマートフォンを中心として、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンは着実に増えている。対応スマートフォンの広まりとともに、ワイヤレス充電をするための充電器も数が増え、家電量販店などで目にする機会も増えている。

ワイヤレス充電対応機種は急増しており、「iPhone XS」など最新のiPhoneもワイヤレス充電に対応している

充電をするためにケーブルに接続するというのは手間がかかるし、何よりケーブルは絡まりやすく取り回しが面倒なもの。それだけに、スマートフォンを置くだけで充電できるワイヤレス充電は消費者にとって非常に便利だ。したがってスマートフォンに搭載するという動きも比較的古くから進められていたのだが、現在のように広く普及するまでにはかなりの時間を要している。

実は、スマートフォン単体でワイヤレス充電ができる機種が最初に投入されたのは日本で、開発したのも日本企業である。2011年にNTTドコモから発売された、シャープ製の「AQUOS PHONE f SH-13C」がそれに当たり、Wireless Power Consortium(WCP)が策定したワイヤレス給電規格の1つ「Qi」に対応。Qi対応の充電器に置くだけで、スマートフォンを充電できる仕組みを備えていたのである。

世界初のワイヤレス充電対応スマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」は、2011年にNTTドコモが提供。専用の充電器も提供していた

しかも当時、NTTドコモはQi対応のワイヤレス充電ができるスマートフォンの開発に力を入れており、「おくだけ充電」という名称まで付けて積極的なアピールを進めていた。さらにシャープだけでなく、NTTドコモと関係の深い他の国内スマートフォンメーカーともQi対応のスマートフォン開発を進め、市場に多くのワイヤレス充電対応スマートフォンが存在した時期があったのだ。

規格や充電性能の問題が解決し採用機種が増加

だが2013年を境に、NTTドコモのラインアップからワイヤレス充電対応のスマートフォンが一時期姿を消し、ワイヤレス充電は急速に存在感を失うこととなる。当時ワイヤレス充電に力を入れていたパナソニックモバイルコミュニケーションズやNECカシオモバイルコミュニケーションズなどが、iPhoneなどに押されてスマートフォン市場から撤退した影響も大きいが、より本質的な要因は2つあると考えられる。

1つは、急速充電に対する消費者のニーズが高まっていたためだ。当時はバッテリーの性能が現在より低かったため、スマートフォンを使っているとあっという間にバッテリーを消費してしまい、不満の声が多かったため、何よりも素早く充電できることが強く求められていたのだ。しかしながら当時のQiは電力の出力が弱く、充電速度が遅かったことから、消費者のニーズとマッチせず姿を消してしまったのである。

そしてもう1つの理由は、ワイヤレス給電規格が複数存在し、業界全体で、どの方式を採用するか方向性が定まっていなかったため、後続するスマートフォンがなかなか出てこなかったことだ。実際、2015年に日本でも発売されたサムスン電子の「Galaxy S6」「Galaxy S6 edge」はQi規格だけでなく、Power Matters Alliance(PMA、現在はAirFuel Alliance)が策定したワイヤレス給電規格も採用することで、ワイヤレス充電に対応させている。

2015年発売の「Galaxy S6 edge」は、当時まだ事実上の標準規格が定まっていなかったこともあり、複数のワイヤレス給電規格に対応していた

そして最近になってワイヤレス充電が再び日の目を見ることができたのは、それらの課題が解決したことが大きく影響している。急速充電に関しては、当初Qiのモバイル機器に向けた「Volume I」という規格では、送信できる電力が5W以下とされていたため充電速度が遅かったのだが、その後10W、15Wといったより大容量の送信ができる規格の策定が進んだことで、より速く充電できるようになったのである。

また規格の統一に関しては、アップルなど影響力の大きな主要スマートフォンメーカーがQiの採用に傾いたことで、Qiがスマートフォン向けの事実上標準規格となった。そのため多くのスマートフォンメーカーがQiを採用しやすくなり、急速に数が増えたといえる。

さらにもう1つ、高いデザイン性や防水性能など、スマートフォンに求められる要素が年々増えていることも、ワイヤレス充電が復活した大きな要因として挙げられるだろう。一方で、かつて必要だったPCへの接続など、スマートフォンに何らかのケーブルを接続する必要性は年々薄くなっている。将来的にはスマートフォンのワイヤレス充電対応が当たり前となり、充電用のUSB端子やLightning端子がなくなることも十分あり得るだろう。