シャープが年間を通して最終黒字。これは本物の復活か!?

シャープが年間を通して最終黒字。これは本物の復活か!?

2018.05.07

シャープが発表した2017年度連結業績は、4年ぶりの通期最終黒字となった。そして、リーマンショック前の2007年度以来、10年ぶりに年間を通じて全四半期が最終黒字となった。

2016年8月に、鴻海傘下で再建を開始して以降、回復基調へと転換し、東証一部復帰などを果たしてきたシャープが、通期最終黒字化によって、新たな再建の成果を示した格好だ。そして、2011年度以来、6年ぶりの配当を実施することも同時に発表した。

プレゼンを行う野村勝明代表取締役兼副社長執行役員

シャープの野村勝明代表取締役兼副社長執行役員は、「新体制に移行して以来、継続的に構造改革、事業拡大に取り組み、配当を実施できるまでに業績を回復できた。戴正呉社長による強いリーダーシップと、それに応えるように社員が経営のポイントにしっかりと取り組んだことが最終黒字につながっている」と自己評価する。そして、「この流れを止めることなく、事業拡大に取り組み、中期経営計画の着実な達成とともに、収益力の強化と財務体質の改善を図る」と意気込む。

2017年度の業績は、売上高が前年比18.4%増の2兆4272億円、営業利益が44.3%増の901億円、経常利益が256.3%増の893億円、当期純利益が前年の248億円の赤字から、702億円の黒字に転換した。

液晶テレビ事業が回復

「売上高および営業利益は、第4四半期における大手顧客の需要変動に伴い、IoTエレクトロデバイスが想定を下回り、赤字となったことで、通期予想には届かなかった」と、iPhone Xの販売不振の影響があったことを暗に示したが、もともとシャープの経営低迷の元凶であった液晶ディスプレイ事業および液晶テレビ事業が回復。これら事業を含むアドバンスディスプレイシステムの売上高は前年比29.0%の1兆865億円、営業利益は前年比10.4倍の370億円と大幅に回復させてみせた。

「液晶テレビ事業は、価格下落の影響があったものの、中国をはじめとする海外での販売が好調であったことから、黒字を継続。また、ディスプレイ事業は、車載用パネルをはじめとする中型パネルへのカテゴリーシフトやコストダウンが寄与し、大きく改善した」という。

同社では、2018年度に予定していた液晶テレビの1000万台の出荷計画を2017年度に前倒していたが、これについても達成したという。「国内でもしっかりとしたラインアップを用意し、出荷台数を落とさないといった取り組みに加えて、海外市場での液晶テレビの販売台数が2倍以上になっているのが大きな成長の要因。中国での成長、欧州での再参入、ASEANでの成長がみられており、これらは、鴻海とシャープのシナジーによるものである」とし、海外でのテレビ販売の急成長ぶりを示した。

2018年の連結業績予想を解説する野村副社長

そして、2018年度業績見通しも、引き続き業績回復に取り組む強い意思をみせた。2018年度の業績見通しは、売上高が前年比19.1%増の2兆8900億円、営業利益は22.1%増の1100億円、経常利益は12.0%増の1000億円、当期純利益は13.9%増の800億円とした。売上高および営業利益は前年比2割前後の成長となる強気の計画だ。

シャープの野村副社長は、「2018年度の業績は、売上げ、各利益とも、2017年度に続き、大幅に伸長する見込みである」とし、さらに、「中期経営計画策定時に比べ、より保守的な想定為替レートを設定しているが、それでも、売上高、利益は、中期経営計画の想定水準を確保できる見込みだ」と自信をみせた。

ここでは、「海外市場における白物家電や、2017年末に発売した8Kカメラなどの新規商材、PCやタブレット、車載用の中型パネルなどの特長デバイスなどが計画を上回る見込みである。液晶テレビも中国だけでなく、ASEANでの販売増加が見込まれる」とし、為替に頼らない回復を強調してみせた。実は、もし、この計画が達成されたとすれば、電機業界ではひとつの変化が訪れる。NECが発表した2018年度の業績見通しは、減収減益の計画であり、売上高は前年比0.5%減の2兆8300億円。つまり、国内電機大手8社のうち、売上高7位のNECを、売上高8位のシャープが逆転し、最下位が入れ替わることになる。

さらに、シャープは、中期経営計画において、2019年度に売上高3兆2500億円、営業利益1500億円を目指しており、この達成に向けて意欲をみせる。次に超えるターゲットは、2018年度見通しで売上収益が3兆9000億円となる富士通だ。富士通は、PC事業や携帯電話事業を売却するなど、売上高を縮小させながらも利益体質強化を進めている。売上高を拡大させる強気の成長戦略を打ち出すシャープとは異なる経営戦略であり、この違いが中期的な電機大手の勢力図にどう影響するかも注目しておきたい。

では、今後の成長における課題はなにか。ひとつは海外ビジネスの成長である。野村副社長も、「日本の市場は伸びしろが少ない。海外をどう伸ばしていくのかが重要であり、ここに成長の軸足を置いていくことになる」とする。シャープの海外売上高比率は、2016年度には7割弱だったものが、2018年度には7割強へと拡大。これを、中期経営計画の最終年度となる2019年度には8割にまで持っていく計画だ。

その陣頭指揮を執っているのが戴社長だ。「戴社長は、いまどこにいるのかという質問をよくされるが、いまもASEANを中心に海外を飛びまわっている」と、戴社長自らが、海外に出向き、現地において、事業拡大の指揮を執っていることを明かす。鴻海流の経営手法で海外での事業拡大に挑んでいるところだ。

決算発表会で質問を受ける野村副社長と、執行役員 管理統括本部 管理本部長 榊原聡氏

2つめは、2017年度実績で、IoTエレクトロデバイスが、特定顧客の需要に大きく影響されたように、この分野において、特定顧客からの影響を受けない体質への脱却が重要な鍵となる。これは、シャープだけでなく、鴻海グループ全体としての課題であり、成長戦略を推進する上でのバランス感がますます重要になるだろう。

市場環境の悪化を懸念

今回の決算発表では明るい材料が示され、着実に回復基調へと転じたことが示されたシャープだが、それでも、戴社長も危機感を持った経営を継続しているのは確かだ。4月6日付けで、社内イントラネットを通じて社員に向けて発信したメッセージでは、「2017年度第4四半期以降、市場環境は急変し、さらに日を追うごとに悪化しており、2018年度は極めて厳しい環境下での戦いを強いられることになる」とし、「現在の想定を上回る環境変化のなかでは、『攻め』に加えて、『守り』となる構造改革をさらに実行し、いかなる状況にあっても、安定的に収益を創出できる筋肉質な経営基盤を構築していくことが、引き続き重要になる」と語っていた。

そして、「このままでは中期経営計画が未達となりかねない」という厳しい見方も社員に示ししていた。今回の決算会見で、野村副社長は、「中期経営計画の1年目が順調に進捗したに過ぎない。ホップ、ステップ、ジャンプのホップが順調だっただけ。中期経営計画を完遂して復活といえる」と野村副社長は語る。

中期経営計画では、高い成長を見込んでいる。その中期経営計画の達成が復活の証だとすれば、その道筋は、まだ一歩目だ。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

ご愛顧いただいた読者の皆様、また関係者の皆様に、編集部一同、誠に感謝いたします。

なお、NewsInsightに掲載中の記事につきましては、引き続きマイナビニュース(https://news.mynavi.jp)へと掲載場所を移管いたします。

掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

○安東弘樹のクルマ向上委員会!
https://news.mynavi.jp/series/andy

○森口将之のカーデザイン解体新書
https://news.mynavi.jp/series/cardesign

○清水和夫の自動運転ソシオロジー
https://news.mynavi.jp/series/autonomous_car

○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
https://news.mynavi.jp/series/game_heisei

○岡安学の「eスポーツ観戦記」
https://news.mynavi.jp/series/e-Sports_review

○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
https://news.mynavi.jp/series/komuginokotoba

○藤田朋宏の必殺仕分け人
https://news.mynavi.jp/series/shiwakenin

○「食べる」をつくる科学と心理
https://news.mynavi.jp/series/food_science

○阿久津良和のITビジネス超前線
https://news.mynavi.jp/series/itbiz

○山下洋一のfilm@11
https://news.mynavi.jp/series/filmat11

○モノのデザイン
https://news.mynavi.jp/series/designofthings

○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
https://news.mynavi.jp/series/mobile_business

○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
https://news.mynavi.jp/series/bungu

○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
https://news.mynavi.jp/series/font-history

○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu