富士通、田中社長が業績目標を取り下げ

富士通、田中社長が業績目標を取り下げ

2018.05.07

富士通 代表取締役社長 田中達也氏

富士通の代表取締役社長 田中達也氏は、社長在任期間中の目標として掲げていた、営業利益率10%以上、フリーキャッシュフロー1500億円以上、自己資本比率40%以上、海外売上比率50%以上について、「達成までの時間軸を見直すことにした」として、事実上、社長在任中の目標達成を取り下げた。

計画は事実上、次期社長へ

これは、4月27日に発表した2017年度(2018年3月期)の連結業績の席上、言及したもので、「私は社長として、引き続き富士通の変革に取り組み、目指すべき姿の実現が確実に視野に入るレベルに到達すべく、努力する」と発言。この計画は、次期社長へとバトンを渡す形になった。

2015年6月に社長に就任した田中氏は、同年10月29日に、新たな経営方針を掲げるなかで、これらの目標を打ち出し、「ICTサービス企業として、グローバルに戦える域に達した数値」と位置づけ、なかでも、営業利益率では過去最高を大きく上回る目標を掲げていた。

富士通の社長在任期間は、前任の山本正己会長が5年間。それ以前の社長在任期間は、社長人事をめぐる混乱もあり、参考にしにくいが、山本会長の任期を当てはめると、2020年度が、目標達成のひとつの目安であったといえるだろう。つまり、これらの目標は、2021年度以降に先送りした格好だ。

だが、田中社長は、「デジタル時代において、グローバル競争を勝ち抜いていくためには、営業利益率10%以上などのレベルに達することが必須である、という考え方に変わりはない」と改めて強調した。

事実上、目標を取り下げた理由は、マイルストーンとして掲げた2017年度の実績、そして、2018年度の見通しが計画と乖離しはじめたことにある。

富士通が掲げていたマイルストーン

田中社長は、2017年度には営業利益5%ゾーン、2018年度には営業利益6%ゾーンを目指すことをマイルストーンに掲げ、営業利益率6%ゾーンに入ることで、過去最高の営業利益率を更新する予定だった。

田中社長は、「2015年度と2016年度でビジネスモデル変革をやりきり、つながるサービスに経営資源を集中した成果を、2017年度以降に利益率向上という明確な形で表していく計画であったが、現実はこの計画とは乖離している。営業利益率は、事業売却益などの特殊要因を除く本業ベースで実現を目指すとしてきたが、2017年度は特殊要因を除く本業ベースでは1296億円の営業利益となり、約550億円の計画未達となった。2017年度の計画未達、2018年度は減収減益予想と期待に反することになり、申し訳なく思う」と悔しさをにじませた。

2017年度の実績と2018年度の見通し

2017年度業績は、売上収益が前年比0.8%減の4兆983億円、営業利益は同55.4%増の1824億円。当期純利益は同91.4%増の1693億円と過去最高になったが、営業利益率は4.5%と目標を下回った。また、発表した2018年度の業績見通しでは、売上収益が前年比4.8%減の3兆9000億円、営業利益は同23.3%減の1400億円、当期純利益は同35.0%減の1100億円とし、営業利益率は3.6%と、2017年度実績を下回る計画とした。特殊事項を除いた本業ベースでは、営業利益で300億円の増益を見込み、営業利益率は上昇するが、6%ゾーンには到達しない。

明らかになった課題

計画未達の要因は、いくつかある。

田中社長は、「『質を変える』取り組みの成果を享受するのに、時間がかかっている。そして、2017年度を通じて、改めて課題が明確になった」とし、「海外ビジネスを含めた先行投資のリターンが不十分であること」、「ネットワークビシネスにおける事業環境変化への対応が遅れたこと」、「想定以上に不採算が拡大したこと」の3点をあげた。

海外事業では黒字転換したものの、1.7%の営業利益率に留まったこと、次世代クラウドへの投資が先行したこと、IoT関連の新規領域拡大に向けた先行投資と戦略商談を進めた影響がマイナスとなったほか、金融分野でのハード一体型ソリーションビジネスでの顧客投資抑制の影響部物流が計画に届かなかったこと、SEビジネスにおける高い目標設定への未達、ネットワークブロダクトにおける国内向け携帯電話基地局の投資が想定以上に抑制された影響に加えて、競争環境の厳しさが加速したことも影響した。

ネットワークプロダクトを含むシステムプラットフォーム事業は、営業利益率が前年の8.1%から5.7%へと大きく減少。とくに、「5Gが本格的に立ち上がる2019年度後半から2020年までは、厳しい状況が継続することを想定しており、2018年度の計画も厳しい所要を前提に計画するとともに、事業の方向性について検討を進めている」と述べた。

そして、金融分野の大規模プロジェクトや公共分野のマイナンバー関連システムの開発ピークアウトなど、2017年度は大規模プロジェクトの端境期に当たったこともマイナスとなった。

想定以上に不採算プロジェクトが拡大したことも打撃を与えた。とくに、2017年度は、従来から不採算プロジェクトが発生しやすかったシステムインテグレーションに加えて、インフラ構築に関するサービスでも不採算プロジェクトが発生した点が想定外だった。

富士通の塚野英博代表取締役副社長兼CFOは、「近年では、単純なインフラ構築から、ネットワークやセキュリティなどのソリューションを組み合わせることにより、付加価値を高めたインフラ構築案件が増加。プロジェクトの難易度が高まっている。過去のインフラサービスの領域では、国内で大きな不採算プロジェクトの発生はなく、アシュアランス部門による関与が弱い領域であった。再発防止に向けて、この領域における対応力強化を進める」と反省する。

そして、田中社長は、「これらが、多額のマイナス影響を及ぼしたことに強い危機感を持っている。2018年度は改めて対策を徹底するつもりであり、その対象領域は多岐にわたる」と語る。

2018年10月に経営方針進捗レビューを発表

具体的な内容については、2018年10月に開催予定の経営方針進捗レビュー説明会で発表する考えだ。

「経営方針の達成に向けたマイルストーンを含めた詳細を改めて発表する。2018年度は、将来的な成長を見据えた、より厳格な投資の集中と、改革を必要とする事業領域の体質強化に躊躇なく手を打っていくものになる」と、田中社長は厳しい表情で語った。

田中社長は、経営方針の軸に、『つながるサービス』の展開を掲げている。

つながるサービスでは、「ソリューションSIやインフラサービスによって蓄積されたノウハウ」、「クラウドやミドルウェアなどの豊富なソフトウェア」、「サーバー、ストレージ、ネットワークといったコアハードウェアのソフトウェア化」にフォーカス。クラウド、AI、ビッグデータ、IoT、そしてセキュリティに注力することになる。

この方針は、つながるサービスにおいてコア事業とはならないPC事業や携帯電話事業、ニフティのコンシューマ向け事業などの売却にもつながっており、田中社長は、「つながるサービスの展開に向けて手を打ってきたことで売却益を加わり、純利益は過去最高益になった」と説明する。

だが、いまは、売却益がプラス要素だが、事業領域が集中したことによる成果は、これからであり、本当の評価はこれからだともいえる。 田中社長体制での3年間は、設定したマイルストーンへの目標未達という点では、厳しい採点をせざるをえない。

一度リセットすることになる中期経営計画では、次の指標がどんな形で示めされるのか。過去最高の更新も大切ではあるが、地に足の着いた計画立案が、まずは大切ではないだろうか。

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

2019.01.17

「eBASEBALL」で初代王者を決めるe日本シリーズが開催された

頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ

はたして“もう1つのプロ野球”で頂点に輝いたのは?

1月12日、東京ビッグサイトTFT HALL 500にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ2018」のe日本シリーズが開催された。頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ。はたして初代王者に輝いたのは、どちらのチームか。

3カ月間の戦いの末、頂点を争う切符を勝ち取った2チーム

「eBASEBALL」とは、野球ゲーム『実況パワフルプロ野球 2018(パワプロ)』を使用した、日本野球機構(NPB)とコナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)が共同で開催するプロリーグだ。

2018年7月より行われたオンライン予選、西日本、東日本選考会を経て、9月末に実際のプロ野球球団による「eドラフト会議」を実施。ドラフトで指名された選手は、プロゲーマーとして各球団に所属する形になった。

11月からは実際のプロ野球のペナントレースのように、セ・リーグ、パ・リーグに分かれて「eペナントレース」がスタート。そして12月に行われた、eペナントレース上位チームによる「eリーグ代表決定戦」によって、パ・リーグの埼玉西武ライオンズと、セ・リーグの横浜DeNAベイスターズが、e日本シリーズへの切符を手にした。

パ・リーグ代表の埼玉西武ライオンズは、eペナントレースを13勝2敗の圧倒的な強さで勝ち抜き、eリーグ代表決定戦でも危なげなく、代表権を獲得。対するセ・リーグ代表の横浜DeNAベイスターズは、キャプテンであるじゃむ~選手のデータを活かした戦術と強力打線、そして巧みな投球術でeリーグ代表権をもぎ取った。

埼玉西武ライオンズのなたでここ選手(写真左)、BOW川選手(写真中)、ミリオン選手(写真右)
横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手(写真左)、じゃむ~選手(写真中)、AO選手(写真右)
会場は超満員。立ち見席も出るほどの人気ぶりで、まさに日本一を決定するのに相応しい舞台となった

一発勝負の決勝戦! 最後に笑うのは……?

e日本シリーズでは、各チーム3名による3イニング交代制の試合を1戦だけ行う。そこで勝利したチームがeBASEBALL パワプロ・プロリーグの初代チャンピオンになるわけだ。

『パワプロ』でお馴染みの選手の調子発表

選手の調子を見ると、埼玉西武ライオンズは、主力に不調の選手がおらず実力を存分に発揮できそうなラインアップ。横浜DeNAベイスターズは主砲筒香の好調が嬉しいものの、桑原、ソトの不調が厳しい。どちらかというと調子具合は埼玉西武ライオンズが優位に見られた。

さぁ、いよいよプレイボール。まず1人目、埼玉西武ライオンズはミリオン選手、横浜DeNAベイスターズはヒデナガトモ選手がコントローラーを握る。奇しくも、ペナントレースで最多奪三振のタイトルを獲得した2人の対戦となった。

そのため、激しい投手戦が繰り広げられたが、3回裏に均衡が破られる。豪打を誇る埼玉西武ライオンズとしては珍しいスクイズで1点を先制すると、そこから怒濤の連打で計5点をもぎ取り、序盤にして埼玉西武ライオンズが大量リードを得た。

スクイズ、スチールと小技も冴え、一気に5点を奪うミリオン選手
センターフライの捕球ミスやスクイズの打者をアウトにできなかったなど、ミスが出てしまったヒデナガトモ選手

2人目は埼玉西武ライオンズがBOW川選手、横浜DeNAベイスターズがじゃむ~選手と、キャプテン対決。じゃむ~選手が2点を返すも、BOW川選手が1点を追加し、スコア「西武 6-2 DeNA」で最終プレイヤーにバトンが渡された。

埼玉西武ライオンズのキャプテンを務めるBOW川選手
横浜DeNAベイスターズの軍師ことじゃむ~選手

最後は、ペナントレースで急成長した埼玉西武ライオンズのなたでここ選手と、横浜DeNAベイスターズ無敗のエースAO選手の対戦となった。

最優秀防御率のタイトルを獲得し、eペナントレースでの失点はわずか3点と脅威の安定感を持つAO選手は、e日本シリーズでもその実力を発揮。打撃3冠を獲得したなたでここ選手をみごとに完封した。しかしながら、3イニングでは1点を返すのがやっとで、最終スコアは「6対3」。埼玉西武ライオンズが優勝し、e日本シリーズを制した。

今回の大会で急成長したなたでここ選手
横浜DeNAベイスターズのエースとしてチームを牽引したAO選手
ペナントレースから実況を担当した清水久嗣アナはe日本シリーズの実況も担当
解説を務めた元ヤクルトスワローズ監督の真中満氏
同じく解説を務めた元中日ドラゴンズ監督の谷繁元信氏
ゲーム解説を務めるぶんた氏
パワプロ・プロリーグ初代チャンピオンの埼玉西武ライオンズ

埼玉西武ライオンズも横浜DeNAベイスターズも、打撃、特に本塁打に期待できる選手が揃っており、その打撃力で勝ち進んでいたなかで、e日本シリーズではホームランが「ゼロ」という、頂上決戦に相応しい緊迫感のある試合だったといえよう。

e日本シリーズでは博多激獅会も応援に駆けつけ、プロ野球さながらの応援が飛び交った

試合終了後は、優勝の表彰とともに、各個人タイトルの表彰も行われたので、その様子も紹介しよう。パ・リーグでは、首位打者、本塁打王、打点王、最優秀防御率の4冠を埼玉西武ライオンズのなたでここ選手が獲得。最多奪三振は埼玉西武ライオンズのミリオン選手が獲得した。

また、セ・リーグでは、首位打者と本塁打王の2冠を広島東洋カープのカイ選手、打点王と最優秀防御率の2冠を横浜DeNAベイスターズのAO選手、最多奪三振を横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手が獲得。そして、MVPには、4冠獲得のなたでここ選手が選出された。

パ・リーグの最多奪三振を獲得したミリオン選手
セ・リーグの首位打者と本塁打王を獲得したカイ選手
セ・リーグの打点王と最優秀防御率の2冠を獲得したAO選手
セ・リーグの最多奪三振を獲得したヒデナガトモ選手
パ・リーグの首位打者、打点王、本塁打王、最優秀防御率の4冠、そしてMVPを獲得したなたでここ選手
e日本シリーズでは12球団のマスコットがそろい踏み。スポンサーであるSMBCのキャラクター「ミドすけ」も登場した

eBASEBALLは試合を重ねるごとに盛り上がりを見せ、決勝の舞台でもあるe日本シリーズでは立ち見が出るほど多くのファンが駆けつけた。プロ野球ファンにとって、オフシーズン時期の楽しみの1つとして、eBASEBALLが定着しそうな気配も感じる。

最後にNPB(日本プロ野球機構)コミッショナーの斎藤惇氏による締めの挨拶にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ 2019」の開催も発表された。来シーズン、さらなる飛躍と盛り上がりに期待したい。

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

2019.01.17

フォルクスワーゲンの「パサート オールトラック」に試乗

これは意外? クルマ好きも納得のスポーティーなクルマ

ステーションワゴンとSUVの“いいとこ取り”

昨今のSUVブームはとどまることを知らない。コンパクトからラグジュアリーまで多様性もみられ、さらに「RAV4」の日本復活など、いくつかの新型車投入のニュースも届いている。しかし、SUVが必ずしも全てのユーザーにとってベストな選択肢とはいえないはずだ。

日常の使い勝手などを考慮すると、セダンとSUVの架け橋である「クロスオーバーワゴン」こそ、真の“いいとこ取り”なのではないかと思うところもある。今回は、フォルクスワーゲンから登場した「パサート オールトラック」に試乗し、この車種の魅力について再考してみた。

フォルクスワーゲンのクロスオーバーワゴン「パサート オールトラック」に試乗した

スバルが普及させたクロスオーバーワゴンという車種

フォルクスワーゲンがミッドサイズモデル「パサート」に新グレード「パサート オールトラック」を追加した。このモデルは、パサートのステーションワゴン「パサート ヴァリアント」をベースとし、SUVのエッセンスを取り入れた「クロスオーバーワゴン」と呼ばれるジャンルのクルマだ。つまり、ステーションワゴンとSUVの中間的な存在である。特徴としては4WD、専用サスペンションで高めた最低地上高、SUVを彷彿させるラギッドなスタイルなどが挙げられる。これらにより、ステーションワゴンよりも走破性が高まっている。

「パサート オールトラック」は最低地上高の高さやSUVを髣髴させるスタイルなどを特徴とする。価格はグレード別に「Passat Alltrack TDI 4MOTION」が509万9,000円から、「Passat Alltrack TDI 4MOTION Advance」が569万9,000円からだ

少しだけクロスオーバーワゴンの歴史を振り返りたい。意外かもしれないが、こういったクルマを普及させたのは日本メーカーなのだ。

SUVのニーズが高まっていた1990年代の北米で、SUVを持たないスバルは大苦戦していた。その打開策として、2代目「レガシィ」をベースとするクロスオーバーモデル「アウトバック」(日本名:レガシィ グランドワゴン)を開発。これが大ヒットとなり、北米市場での巻き返しに成功する。

スバルが2代目レガシィをベースに開発した「アウトバック」。意外にも、歴代モデルの中にはセダン仕様が用意されていたこともある。日本では「レガシィ グランドワゴン」の名で登場。その後、「レガシィ ランカスター」と名称を変更した。先々代モデルからは日本でも輸出名を取り入れ、現在同様の「レガシィ アウトバック」となった

アウトバックがヒットした背景には、ステーションワゴンの高性能化が進み、実用車というイメージが変化して、アクティブなカーライフやスポーティな走りが楽しめる多用途なクルマとして認知されだしたことがあった。セダン譲りの使い勝手と走行性能、そこにラフロードにも対応できる走破性を組み合わせた欲張りな存在として人気を集めたのだ。事実、アウトバックの後にはボルボ「XC70」(後のV70 クロスカントリー)や「アウディ オールロード」といったクロスオーバーワゴンの名車が続々と誕生している。

今やクロスオーバーワゴンは、ステーションワゴンの定番となった。そのパサート版が「パサート オールトラック」だ。

パサート版クロスオーバーワゴンはどんなクルマなのか。試乗で確かめた

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすい?

ラギッドなイメージを高めたエクステリアは、パサート本来の上品なデザインの中に、アグレッシブさを感じさせる。主な変更点としては、アンダーガード付きの前後バンパー、ホイールアーチのブラックモール、シルバー仕上げのサイドシルモールなどが挙げられる。サスペンションは標準車+30mmアップとし、最低地上高は160mmを確保した。

ボディサイズは全長4,780mm、全幅1,855mm、全高1,535mm。コンパクトとはいえないが、日本の道路や駐車場には適応しやすいサイズといえる。最大のポイントは、ルーフレールを装備しながらも薄型とすることで、全高を1,550mm以下としているところ。これなら、多くの立体駐車場に入れられるはずだ。

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすいサイズ感だ

基本的にインテリアはパサートと共通だが、グレーのパネル加飾を取り入れるなど、スポーティーな装いにしてある。装備は上級モデルらしく充実していて、全車速追従機能付きのACCや車線内中央維持支援機能「レーンアシスト」、渋滞時追従支援機能「トラフィックアシスト」などの先進安全運転支援機能をはじめとし、スマートキー機能の「キーレスアクセス」やSSDナビ付きインフォテインメントシステム「ディスカバープロ」、シート&ステアリングヒーター、パワーテールゲートなど快適装備も満載だ。

車内は広々としており、前後席共に快適なスペースが確保してある。ラゲッジスペースは標準で639Lと大容量。後席を折りたためば最大1,769Lまで拡大可能だ。

インテリアはスポーティーな装い。機能はパサート ヴァリアントの上級グレードに近いもので、充実している
後席は3分割の可倒式。折りたためば最大で1,769Lまで積める

これがベストパサート? スポーティーな乗り味を体感

次にメカニズムを見ていく。エンジンは「AdBlue」(アドブルー、尿素SCRシステムの触媒として用いる尿素水のこと)を使用したクリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載。最高出力は190ps/3,500~4,000rpmで、最大トルクは400Nm/1,900~3,300rpmを発揮する。トランスミッションにはDCTタイプの6速DSGを組み合わせる。

最大のポイントは、現行型パサートで初めて4WDを採用していること。さらに、アクセルやパワステ制御などを変更できる走行モードには「オフロードモード」が追加となっている。オフロードモードでは、急な下り坂で車速を一定に保つブレーキ制御「ヒルディセントアシスト」などが作動する。

クリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載する「パサート オールトラック」

試乗したのはパサート オールトラックの最上級グレードである「アドバンス」だ。一言でいえば、かなりスポーティーなキャラクターに仕立てられている。低回転で最大トルクを発揮するディーゼルエンジンの魅力が存分に味わえて、峠道の上り坂も力強く駆け上っていく。元気さはパサートTDIを上回っている印象だ。出力は同等だが、アクセルなどのセッティングが異なるのだろう。

そこに前後のトルク配分が可変となる4WDの「4MOTION」と電子制御ディファレンシャルロック「XDS」が加わることで、コーナリングもグイグイ曲がっていく。それでいて乗り心地も良いのだ。ラフロードに適応すべく、足回りのしなやかさを重視していることが良好な乗り心地につながっているのだろう。

「パサート オールトラック」の上級グレード「アドバンス」で御殿場周辺の峠道を走った

同じパサートのスポーティグレード「2.0Rライン」は、もっとハードなセッティングで乗り心地もやや硬めとなる。一方で、パサート オールトラックのアドバンスはバランス重視のセッティングなのだが、クルマ好きをも納得させるスポーティーさを持ち合わせている。これがベストパサートだとさえ思ったほどだ。

ただ、アドバンスはオールトラックの標準車が装着する225/55R17タイヤに対し、245/45R18タイヤにサイズアップしている。さらにはXDSやアダクティブシャシーコントロール「DCC」なども追加となっているので、標準車のオールトラックと異なる部分があることは加味しなければならない。

ただ、オールトラックがスポーティなワゴンに仕立ててあることは間違いない。ファミリーカーだけどドライブを楽しみたいというユーザーには、パサートの中で最もオススメできるクルマだ。

ファミリーカーでも走りを楽しみたいという人には「パサート オールトラック」をオススメしたい。確かに509万円からという価格は安くないが、「パサート ヴァリアント TDI」のエントリーモデルのナビ付きが約470万円であることを考慮すれば、納得のプライスといえよう

走りの良さを持ち合わせたSUVも増えてはいるが…

ステーションワゴンがブームとなったきっかけは、実用性の高さに加え、ワンボックスカーやSUVなどでは得られない走りの良さを獲得できたところにあった。しかし、走りの良さを身につけた昨今のSUVは、そのニーズを奪い、ステーションワゴンの領域を食ってしまったといえる。あれほど盛況であった日本のステーションワゴンも激減し、今やスバルの一強となっている。

ただ、輸入車を見ると、ステーションワゴンの顔ぶれはなかなか充実しており、一定の販売台数を確保している。その中には、いくつかのクロスオーバーワゴンが存在する。

クロスオーバーワゴンはステーションワゴンに価値が加わったクルマなので、ベース車と比べれば、やはり値段は少々高くなる。それでも、中身に見どころはあるし、コスパで考えても納得できるものが多いと思う。日常での使い勝手を重視したい人、ワイルドさやスポーティーさを強調するSUVに子供っぽさを感じてしまう人などは、改めてクロスオーバーワゴンに注目してみてはいかがだろうか。