佐賀県とオプティムが取り組む「IT農業」、期待が持てる理由

佐賀県とオプティムが取り組む「IT農業」、期待が持てる理由

2016.06.17

高齢化、後継者不足、耕作放棄地の増加など、現在の農業が抱える問題は多岐にわたるが、その多くは作業を効率化することで解消できるかもしれない。効率化を目指す取り組みのひとつとして注目すべきなのが、佐賀大学農学部と佐賀県農林水産部、オプティムの3者が連携して実現しようとしている「IT農業」だ。

3者が目指すのは「楽しく、かっこよく、稼げる農業」をコンセプトにしたIT農業。産学官で連携することにより、効率的かつ高度で、スピーディーな開発を進めており、2015年8月の連携協定締結からわずか1年足らずで今回の経過発表会までこぎ着けた。

3者連携の途中経過発表会で「スマートやさい」のほか、農業用に特化した「アグリドローン」、ドローンではカバーできない場所を走行する「オプティムアグリクローラー」もお披露目された。写真左から、佐賀大学 農学部 田中宗浩教授、佐賀大学 農学部 学部長 渡邉啓一教授、佐賀県 農業試験研究センター 田崎博文所長、オプティム 代表取締役 菅谷俊二氏

「スマートやさい」というコンセプト

今回の最大のトピックは、新コンセプト「スマートやさい」だ。スマートやさいとは、「ITでスマートに育てられた佐賀の野菜」のこと。まだ販路などの詳細は決まっていない。

「ITでスマートに」の具体的な内容は、ドローンやロボットによる生育状況の監視、画像解析による病害虫の検出、メガネ型デバイスによる遠隔地からの作業支援など。ITの力を最大限活用し、人の手を極力かけないかたちで効率的に栽培された野菜だ。

栽培だけでなく、食品の流通にもITが生かされている。スマートやさいのパッケージには、2次元バーコードが付与されており、野菜を手にとった消費者が生産管理ログなどを閲覧できるようになっている。生育管理時のデジタルデータ蓄積があるからこそできるサービスだ。消費者の評価が生産者に届いたり、消費者が直接生産者へ注文したり、といったことができる仕組み。生産者にとっては生産の効率化、コスト削減、ブランド強化といったメリットが、消費者にとっては生産過程を確認できる安心感といったメリットがある。

スマートやさいのコンセプトと、ベジタブル コミュニケーション&トレーサビリティ プラットフォームの説明

佐賀大学農学部 渡邉啓一学長は、スマートやさいの仕組みを「ベジタブル コミュニケーション&トレーサビリティ プラットフォーム」と表現。スマートやさいは生産者と消費者、あるいは消費者同士をつなげるプラットフォームとなりうるのだ。

コミュニケーションツールとしての役割も果たすスマートやさい。さらに、このスマートやさいを使って、3者は「農業の4次産業化」を目指すという。4次産業とは「1次産業+3次産業」を表す造語。生産者が加工や販売まで手がける「6次産業」は近年よく聞くが、オプティム 代表取締役社長 菅谷俊二氏は「自分で作ったものを加工・販売していくとなると、1人でこなすのは無理がある」と説明。それに対して、1次と3次を結びつけた4次産業なら、生産者への負担はそこまで増やさずにITで実現できるのでは、と提案に至った背景を語る。

メニュー表には2次元バーコードが記載されている。読み込むと野菜がどこで、どのようにして、誰に育てられたのかがわかる
「スマートアスパラガス、スマートきゅうり、スマートじゃがいものバーニャカウダ風サラダ」。余談だが、アスパラガスを生で食べたのはこれが初めてだった

"濃い"取り組み

ドローンによる圃場(ほじょう)撮影、画像解析による病害虫検出技術の開発、ビッグデータ収集、スマートグラスによるノウハウ伝達方法の検討などに取り組んでいる3者。現在は、佐賀県内7カ所の圃場で28品目の農産物の植え付け~収穫までのデジタルデータを蓄積したところだそうだ。IT活用による効果指標を「品目ごと」に明確化。玉ねぎや茶といったそれぞれの品目でかかる病気が異なり、画像解析のポイントも異なってくるからだ。

経費や労働時間、病虫害といった「減らす」指標、収量や利益、品質といった「増やす」指標を品目ごとに定めて、農家収益の向上を目指す。具体的に掲げるのは5割の収益増。農業はこれからいくらでも効率化できうる、という自信のほどがうかがえる。

品目ごとに効果指標を決定。5割の収益増を目指す

今回の発表会は途中経過のお披露目という意味合いだったが、その活動内容は一言で「濃い」という印象を受ける。連携から1年と経たないうちに、これほどの実績をあげてきていることに素直に驚いた。

佐賀県にとって、農業は重要な産業だ。約1割の人が第1次産業に就いているほか、アスパラガスやハウスみかん、玉ねぎ、大豆など生産量が全国上位の作物が数多くある。耕地利用率(※)も131.3%(2014年)と29年連続全国1位だ。
※耕地利用率:耕地面積を100とした作付(栽培)延べ面積の割合のこと。

農業が重要な産業であるゆえ、高齢化や後継者不足といった問題はもはや佐賀県にとって急迫したもの。個人的には、この3者連携によってITを農業に導入するだけでなく、人材育成をしていくという点に注目している。佐賀大学では、オプティムの菅谷氏を招聘し、菅谷氏が実際に講義を受け持っているそうだ。「楽しく、かっこよく、稼げる農業」を広めていくためには、「有効に」ITを使える人材が必要だ。そういった意味でも、産官学の3者が連携しているのは非常に意義深く、実り多きものになっていくと予感させる。

農業の課題。ざっと見渡しただけでも多岐にわたっている。これらにITの力で挑むのが今回の3者連携だ
メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

2019.03.22

ネットの学校「N高」の卒業式に潜入

開校時に入学したN高1期生が卒業した

世間の注目を浴び続けた生徒は、何を想う?

3月、角川ドワンゴ学園「N高等学校」の卒業式が東京・お台場にて開催された。

「ネットの高校」として、3年前に設立したN高。この日、2016年の開校時に入学した第1期生と、途中転入・編入した生徒をあわせ、計1593名が卒業した。3年前、『VR入学式』で世間を賑わせたこの学校を巣立つ卒業生たちは、N高での日々をどう捉え、今後はどのようなキャリアを描いていくのだろうか。

卒業式は2019年3月20日、お台場にて行われた

卒業式を彩る最新テクノロジー

N高は、ドワンゴとKADOKAWAの経営統合で誕生したカドカワが設立母体となり、2016年4月に開校された通信制高校だ。同校は開校後、2年次編入なども受け入れてきたため、これまでも卒業生を排出してきてはいたが、「1年生~3年生をN高で過ごした生徒」が卒業するのは、初めてのことだ。

卒業式には多くの報道陣も参加した。生徒にとって、「卒業式に記者がいる」「自分たちが卒業する様子がテレビやWebで取り上げられる」というのは不思議な感覚だろう。とはいえ、もう「VR入学式」に「ニコニコ超会議」へのブース出展(N高ではそれを「文化祭」と表現)などの経験を経て、メディアへの露出には慣れてしまっているのかもしれない。

そして、今回の卒業式も例によって独特だった。

卒業式は任意参加で、会場には袴や制服に身を包んだ生徒が集まる一方、その様子をライブ配信することで、会場に来られない生徒生徒も参加できる仕組みになっていた。会場のスクリーン上にはニコニコ生放送さながら、リアルタイムでコメントが表示されており、こうした演出は「N高らしい」といった印象を受けた。

卒業式の様子。オンライン参加者のコメントがスクリーンを流れる

中でも印象深かったのは、当日来られなかった生徒を代表して、米シリコンバレーに留学中の佐々木雅斗さんが「ロボット」に自分の顔を映して卒業証書を受け取ったシーンだ。

使用したのは、ANAが“未来の移動手段”として開発する、視覚・聴覚・触覚などを備えた、ユーザーの分身となるロボット「ANA AVATAR」。同校ではこのロボットを試験的に授業にも導入しているそうで、こういった最新のテクノロジーを使うあたりもN高らしい。

遠隔操作ロボット「ANA AVATAR(Beam Pro)」を用いて卒業証書を受け取った佐々木さん

と、テクノロジーにばかり目が行きがちではあるが、そもそも「高校生がシリコンバレーに留学している」という事実も驚くべき点だ。高校に通いながらも、シリコンバレーでビジネスを学ぶ――、というキャリアを選べるのは、学校という場所の制約を受けない、ネットの高校のメリットと言えるだろう。

卒業式にはほかにも「異色のキャリア」を持つ生徒たちが集まり、特に活躍した卒業生に対する特別表彰も行われた。

表彰を受けたのは、東京から鹿児島県に移住し、農業や水産業を手伝い地域活性化に貢献する白鳥優季さん、第18回アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン「ウイニングイレブン 2018」eスポーツ 金メダリストの相原翼さん、N高のプログラムを最大限に活用し、スタンフォード大学やオックスフォード大学のサマープログラムに参加した冨樫真凜さんなど。その活躍の幅は広い。

さまざまな分野で活躍したN高生に対しては、特別表彰が行われ、記念品としてクリスタルトロフィーが贈呈された

メディア露出が多いがゆえに高まる期待値

N高を卒業した個性豊かな面々は、今後は大学進学、就職とさまざまなキャリアを歩む。

日本初で唯一N高にのみ実在するという「起業部」に所属し、かつ起業第一号として「Easy Go」という会社を創業している、鈴木颯人さんと山田陽大さんから「N高で過ごした時間」についてコメントをもらった。

「元々は地元の進学校に通っていたのですが、『自分が好きなことをしたい』『起業したい』という想いがあり、N高に入学しました。年齢や場所に縛られず、多くの人とコミュニケーションを取れ、充実した3年を過ごせました」(鈴木さん)

「以前通っていた学校が自分と合わず、ネットで見つけたN高で『ここだったら新しいことができるかも』と入学を決意しました。今振り返ってみて、やはり『この学校に来てよかった』と思います」(山田さん)

Easy Go代表取締役の鈴木颯人さん(左)と取締役の山田陽大さん(右)

2人に限らず、卒業生のコメントを聞いていくと「この場所で挑戦してみたい」という想いの元、N高を選んでいる生徒が多い印象だ。

普通の高校とは違い、メディアに露出する機会の多いN高での生活は、良くも悪くも、世間からの注目を浴びる。まだ高校生の彼らにとっては、その視線が時に辛く感じることもあっただろう。ただ、その一方で鈴木さんは「初めて会う方とお話しする際、『N高出身です』と言うだけで、会話が広がることがよくあります」とその知名度を好意的に捉えている。

若くして、覚悟を持ってN高という環境に飛び込んだ生徒たちは、周囲の視線を浴びつつ、たくましく成長してきたことだろう。「N高出身」というキャリアは、彼らにとって1つの大きな武器になりそうだ。

カドカワは新たに2019年4月から、「N中等部」も開校する予定だ。「ネットの学校」という、世間の注目が集まる新しいコンセプトの学校だからこそ、在校生・卒業生の動向は、今後もしばらくは注目され続けそうだ。

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2019.03.22

中国スマホメーカーのOPPOが独自のカメラ技術を説明

開発競争が続くスマホカメラ、トレンドは「望遠」へ

高倍率ズームスマホの登場で、デジカメの優位性に危機?

中国のスマホメーカーとしてシェアを急拡大するOPPOが独自に新開発したカメラ技術、「10倍ハイブリッドズーム」が面白い。実際に2019年の新機種からスマホへの搭載を進め、日本市場へも製品を投入するという。

OPPOが「10倍ハイブリッドズーム」技術を紹介

メーカー間の開発競争が続くスマホカメラだが、「望遠」が次のトレンドになりつつある。デジタルカメラに匹敵する10倍もの高倍率ズームを、OPPOはどのように実現したのだろうか。

1年で7機種を投入、気付いた「日本市場の難しさ」

OPPOは世界のスマホ市場で熾烈な4位争いを繰り広げている。サムスン、アップル、ファーウェイのトップ3社に続く集団の中で、2018年は中国Xiaomiに僅差で迫る5位になった(IDC調べ)。

OPPOは2018年、日本市場で7機種のスマホを発売した。OPPO日本法人の鄧宇辰社長は、これまでに国内販売チャネルを12に拡大し、あわせて認定修理店を全国に展開したことを挙げ、「日本のSIMフリー市場でいち早く成長するブランドになった」と振り返る。

オッポジャパン 代表取締役社長の鄧宇辰氏
2018年の1年間にスマホを7機種投入

2019年は国内展開をさらに加速する。日本の消費者に向けたコミットメントとして、件の「10倍ハイブリッドズーム」機能を備えたスマホや、FeliCa・防水対応のスマホ、新たに立ち上げたブランド「Reno」シリーズの市場投入を約束する。

また、話題の「5Gスマホ」の市場投入も急ぐ。日本では5Gの周波数がまだキャリアに割り当てられていないものの、ドコモ、KDDI、ソフトバンクを含む世界の事業者と標準化に向けて連携しており、準備を整えていることを強調する。

MWC19のQualcommブースではOPPOが5Gスマホを実演

一方で鄧社長は、日本市場の難しさについて、「1年の経験を通して、日本市場は他の国と違うことに気付いた。消費の習慣や求めるレベルも高い。グローバルのやり方を日本に持ってきても通用しない」とも述べている。日本市場における品質やサービスの要求水準の高さは、多くのメーカーが直面してきた課題だが、OPPOも同じ壁にぶつかったといえそうだ。

スマホカメラ、次のトレンドは「望遠」に

そのOPPOが市場攻略にあたり、特に注力をしはじめたのが「カメラ」だ。その中でも、業界では次の進化ポイントとして「望遠」技術に注目が集まっている。

そもそもスマホはデジカメと違い本体が薄いため、搭載できるレンズに物理的な制約がある。このレンズの制約から、スマホのカメラはどうしても焦点距離の狭さが弱点になってしまっていた。そこで最近はスマホに複数のカメラを内蔵し、それぞれで広角や望遠を使い分けることで、この弱点を克服しようと進化している。

OPPOの「10倍ハイブリッドズーム」技術は、この弱点に対し異なるアプローチで挑む。プリズムを使って光を屈曲させるペリスコープ(屈曲光学)構造をカメラモジュールに採用することで、レンズを従来の垂直方向ではなく水平に配置できるようにした。これにより、薄型のスマホであっても、光学レンズでは従来不可能だった高倍率ズームが搭載できる。

光を曲げるペリスコープ構造を採用

ただ、35mm換算での焦点距離は16~160mmの10倍となっており、一般的なコンデジの感覚では5倍ズーム程度の性能だ。8.1倍以上はデジタル処理を組み合わせた「ハイブリッドズーム」としているなど、いくつか注意点はある。とは言え、これまでにない望遠レンズをスマホで扱えるのは面白い。

10倍ハイブリッドズームによる画角の違い

OPPOは既に報道陣に向けて、この10倍ハイブリッドズーム技術を搭載するスマホの開発デモ機を公開している。2019年の第2四半期には製品化する計画で、日本市場へも2019年中に投入する見込みだ。

10倍ハイブリッドズームのデモ機。5Gにも対応できるという

特にカジュアルなカメラ需要の受け皿としてスマホに押されがちなデジタルカメラだが、高倍率ズームはスマホには無い、デジカメに残された得意分野のひとつだった。だが望遠もスマホで十分撮れるとなれば、いよいよその優位性も危うくなる。今回のズーム技術は、デジカメ市場をもう一段縮小させてしまう可能性を秘めているのだ。

最大のライバルであるファーウェイも「HUAWEI P30」シリーズで望遠カメラを搭載するとみられており、今後は各メーカーが高倍率ズームで競い合うことは間違いなさそうだ。

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