JR西日本はなぜ新駅を増やし続けるのか?

JR西日本はなぜ新駅を増やし続けるのか?

2018.05.11

JR京都線、神戸線を走る普通電車

2018年3月17日のダイヤ改正と同時に、JR西日本は「JR総持寺(じぇいあーるそうじじ・摂津富田~茨木間)」、「衣摺加美北(きずりかみきた・JR長瀬~新加美間)」と、2カ所の新駅を開業させた。同社は京阪神エリアを中心に積極的に駅を増やしていく方針を採っている。

JR京都線・JR神戸線の京都~大阪~神戸間に限ってみても、JR西日本は発足後、以下のように駅を新設してきた。かっこ内は、隣りの既存駅との距離である。

・甲南山手:1996年10月1日開業(芦屋1.4km・摂津本山1.5km)

・さくら夙川:2007年3月18日開業(西宮1.5km・芦屋2.3km)

・島本:2008年3月15日開業(山崎2.2km・高槻5.3km)

・桂川:2008年10月18日開業(西大路2.8km・向日町1.1km)

・摩耶:2016年3月26日開業(六甲道1.4km・灘0.9km)

・JR総持寺:2018年3月17日開業(摂津富田1.7km・茨木2.0km)

左:2018年3月に開業したばかりのJR総持寺駅(茨木市)。駅前広場は地元自治体が整備した。右:近年、開業した新駅は、ホーム1面だけのシンプルな駅が多い(JR総持寺駅)
左:JR西日本の新駅は、駅間距離が長いところへ地元の要望もあって、多数設置されている。基本的に普通のみが停車(摩耶駅)。右:桂川駅(京都市南区)の駅前には、工場跡地の再開発による巨大ショッピングセンターが立地。利用客の増加が著しい
左:島本駅(大阪府三島郡島本町)は、京阪神間ではもっとも駅間距離が長かった山崎~高槻間に新設。右:甲南山手駅(神戸市東灘区)の開業は、阪神・淡路大震災からの復興事業の一環でもあった

ほかにも例えば、姫路地区では2005年にひめじ別所、2008年にはりま勝原、2016年に東姫路と立て続けに駅を新設。JR神戸線では2008年に須磨海浜公園(鷹取~須磨間)が開業。現在、嵯峨野線京都~丹波口間に、2019年春開業予定で新駅を建設中といったぐあいである。

駅の数を増やし、鉄道が使いやすいエリアを広げて利便性を高め、利用客を増やそうという施策は、何もJR西日本だけではなく、ほかのJR各社や民鉄、第三セクター鉄道にとっても一般的なものである。国鉄時代はさほど積極的とは言えなかったものの、それでも1981年開業の福知山線猪名寺(塚口~伊丹間)といった例もあった。

ただ、京阪神間に限って言えば、甲南山手の前に駅が新設された例は、1964年の新大阪までさかのぼるから、JR西日本となってからの方針転換ぶりが目立つ。

注目したいのは、先のリストで挙げた隣りの既存駅との距離。山崎~高槻間の7.5kmを筆頭に、3~4km程度、駅の間隔が空いているところを埋めるかのように新駅が設けられていることが、ご理解いただけるだろう。

「汽車」から「電車」へ

新駅増設前の京都~大阪間42.8kmには14駅あり、平均駅間距離は約3.3kmであった。同じく大阪~神戸間33.1kmには同じく14駅あって、平均駅間距離は約2.5kmとなっていた。それが、それぞれ3駅ずつ増えて、約2.7kmと約2.1kmに縮められた。大阪の都心部を走る大阪環状線の平均駅間距離が約1.1km。私鉄が建設した阪和線が約1.8kmであるから、まだ差があるが、それなりに近くなったとは言える。

JR京都・神戸線の駅間距離が長かったのは、国土の主軸となる幹線として建設されたからにほかならない。大阪~神戸間の開業は1874年(明治7年)。大阪~京都間の全通は1877年(明治10年)と、日本でもっとも早く建設された鉄道のうちの一つである。さらにこれらの区間は、東京~神戸間を結ぶ最重要幹線である東海道本線の一部となっている。

京都~大阪~神戸間が開通した時点で、中間に設けられていた駅は向日町、山崎、高槻、茨木、吹田、神崎(現在の尼崎)、西ノ宮、住吉、三ノ宮だけであった。明治から大正にかけての頃は、まだ沿線が田園地帯であったこともあるが、既存都市間の長距離輸送しか眼中になかったこともうかがえる。それ以外の駅は後世、昭和初期の電化、電車運転開始に合わせて開業したところが多いのだ。

つまり駅の増加は、この路線が大都市近郊の通勤通学輸送をも担うようになった、都市構造の変化(人口の郊外への流出)、ひいては輸送需要の変化を表している。技術的には蒸気機関車牽引時代から、加減速性能にすぐれた電車が使われる時代へと変わってきたということだ。「汽車から電車へ」の転換である。

東海道・山陽新幹線の開業後、長距離旅客列車は大半が新幹線へと移行し、京阪神間の在来線は、よりいっそう通勤通学路線としての性格が濃くなったものの、国鉄の腰は重かった。それが民営化されて積極策へと転じ、地元自治体もJR新駅を盛んに誘致。それがJR西日本の思惑とも一致して、ここ20年ほどの「新駅ラッシュ」となったわけである。

その思惑としては、阪急や阪神など「並行する私鉄への対抗」という面が、マスコミなどでは主に強調されている。確かに、京阪神間の大都市間輸送にかげりがみえてきたバブル崩壊後から、各社は中間駅からの利用客確保にも努力するようになった。その一環であるというのだ。

近接する阪急や阪神との「競合」が話題となった、さくら夙川駅

一面において、その考え方は間違ってはいない。顕著な例としては、さくら夙川駅がある。2007年に開業した際、その前年には、阪急が神戸線特急の停車駅に夙川を加えた。阪神本線では、香櫨園が朝ラッシュ時運転の区間特急の停車駅となった。いずれも、さくら夙川駅から歩いて10分もかからない場所にある駅で、両社ともJR西日本への対抗措置であることは明らかだった。

地域活性化こそ主眼

しかし、開業から約10年が経過しても、阪急や阪神が利用客を奪われ続けている様子はない。3駅の所在地である西宮市の統計書によると、阪急夙川、阪神香櫨園とも、乗車客数が2011年度の1年間で580万4000人(夙川)と199万8000人(香櫨園)であったが、2016年度は620万2000人と202万2000人と、近年はむしろ利用が伸びている。この数字は、さくら夙川駅開業前と比べても遜色ない。

一方、さくら夙川駅の乗車客数は、実質、開業5年目の2011年度が272万7000人。10年目の2016年度が294万4000人とこちらも順調で、ほぼ無から有を生んだ状況である。つまり、同駅はほかの鉄道から利用客を奪ったのではない。マンション広告で言う「2WAYアクセス」「3WAYアクセス」の効果が現れ、交流の活性化、ひいてはマンション開発など地域の活性化が行われたことによって、利用客が新たに現れたのである。JR西日本が真に狙うのは、こういうところではないか。

新駅が設置される場所は、何もほかの鉄道駅に近接するところとは限らない。甲南山手は阪急、阪神の駅からは離れた場所であるし、そもそも姫路地区の新駅は、いずれもJR神戸線と並走する山陽電鉄の駅から遠いなど、それぞれの地域事情がある。

駅ができれば交通が便利になり、定住人口も交流人口も増える。鉄道同士の「パイの奪い合い」があるというは、今日では極めて一面的な見方にすぎない。

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2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
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