4年ぶりになる増収増益決算のパナソニック

4年ぶりになる増収増益決算のパナソニック

2018.05.14

パナソニックが発表した2017年度連結業績は、売上高は前年比8.7%増の7兆9824億円、営業利益は37.5%増の3805億円、税引前利益は37.6%増の3785億円、当期純利益は58.0%増の2360億円となった。

4年ぶりとなる増収増益を達成。為替影響を除く実質ベースでは、7年ぶりの増収増益になり、今年2月に発表した上方修正値も上回って見せた。

パナソニックの津賀一宏社長

パナソニックの津賀一宏社長は、「2010年度の増収増益は、三洋電機の子会社化などが影響したものであったが、その後、テレビ事業が赤字に転落し、減益が続いた」と前置きながら、「その後の6年間で相当大きな構造改革を行ってきた。これによって、利益の安定性が生まれ、突然大きな赤字が見えてきたということがないように見える化を図り、経営を安定化させてきた。だが、利益を生みながら増収を図る構図になるまでには、想像以上に時間がかかった。その結果が7年ぶりの実質的な増収増益につながっている」とし、「私が一番大きな成果と考えているのは、事業部制というきっちりと業績が見える形の上に、カンパニー制という産業領域の特性を捉えることができる形で、先手、先手で事業内容を変え、シフトできたこと。これが、7年ぶりの増収増益につながっていると感じている。これからも先手、先手を打っていけば、この傾向は継続できると考えている」と、社長就任以来の構造改革の成果に自信をみせた。

2017年度は、2015年度および2014年度と同じ営業利益水準にあるが、実質売上高では大幅に改善。2012年度水準にまで戻しており、体質は大幅に改善されている。同社が打ち出している「増収増益への転換」から「持続的成長」へとシフトが始まったといっていい。

パナソニック 常務執行役員の梅田博和CFOも、「ようやく増収増益へと転じ、持続的な成長に向けて、反転することができた」とする。

オートモーティブが増収に貢献

2017年度実績では、売上高で、オートモーティブやエナジーに加えて、プロセスオートメーションなどが増収に貢献。営業利益および純利益では、インダストリアルなどが堅調に推移したことに加え、 その他損益の改善によって増益になった。

パナソニックの梅田常務執行役員は、「フィコサの新規連結や、インフォテインメントが好調に推移するなど オートモーティブが大きく増収。エナジーやインダストリアル、 ゼテスの新規連結があったモバイルソリューションズや、プロセスオートメーションなどの成長が増収に貢献した。また、固定費は増加しているものの、車載などの成長分野には積極的な投資を実行し、メリハリをつけて対応した」と総括する。

セグメント別では、アプライアンスが中国を中心とした海外でのエアコンが伸長して増収。プレミアム商品が堅調に推移して増益に貢献した。また、エコソリューションズは、海外の電設資材事業などが大きく伸長して増収。コネクティッドソリューションズは、プロセスオートメーションが好調に推移したことなどにより増収。オートモーティブ&インダストリアルシステムズは、車載・産業向け事業で大幅に増収になったという。

2018年度見通しでも成長を維持している。

売上高は前年比4.0%増の8兆3000億円、営業利益は11.7%増の4250億円、税引前利益は10.9%増の4200億円、当期純利益は5.9%増の2500億円。

パナソニック 常務執行役員の梅田博和CFO

パナソニックの梅田常務執行役員は、「2017年度に続き、2018年度も、増収増益を達成する見通しであり、これまでの成長に向けた取り組みの成果により、エナジー、インダストリアルが増収増益の牽引役になる」とする。

同社では、事業ごとに、売上げと利益成長の牽引役と位置づけ、大規模投資などの経営リソースを集中させる「高成長事業」、競争力を生かして着実に利益を創出し、高成長事業への投資原資を生み出す「安定成長事業」、事業の転地や固定費削減、合理化などにより、徹底的に利益改善に取り組む「収益改善事業」の3つの経営区分で成長戦略を実行しているが、2018年度もこの姿勢は変わらない。

1兆円の戦略投資

「アプライアンス、エコソリューションズ、オートモーティブ&インダストリアルシステムズで 増収増益を達成する見通し」だという。1兆円の戦略投資についても、高成長事業領域に集中的に資金を投入しており、「2018年度は、車載電池事業を中心に高成長事業が大きく伸びる見通し」だとした。

だが、パナソニックの津賀一宏社長は、2018年度の計画として、かつて売上高10兆円を掲げていたこともあった。また、それを修正した2018年度の売上高見通しでは8兆8000億円、営業利益5000億円(のちに4500億円以上に修正)、純利益2500億円以上を目指すとしていた。今回発表した2018年度見通しでは、売上高、営業利益ではそれを下回り、最終利益は最低水準に目標を置いた。

津賀社長は、「営業利益は為替の影響によって、4250億円としたものであり、4500億円という目線は変えていない。純利益は公表通りである」と説明する。だが、実質ベースでの増収増益へと体質を転換したものの、数字の上では、描いた姿にまでは至っていないのは確かだ。

そして、懸念材料もある。最大の懸念は、テスラとの協業だ。

テスラは、米ネバダ州スパークス郊外のギガファクトリーにおいて、2017年1月から円形型リチウムイオン電池の生産を開始している。パナソニックは、この工場に投資をしており、いわば、テスラとは運命共同体だ。

懸念材料は、ギガファクトリーで生産を予定していたテスラのモデル3向けの電池生産量が予定数量に達していないことだ。これは、モデル3の生産が遅れていることが原因であり、パナソニックが担当している電池生産体制については問題がない。むしろ、モデル3の生産立ち上げを待っている段階だといえる。

量産が遅れるテスラ

「当社が生産した電池を数1000本まとめてひとつのパックに入れて、ワイヤーボンドで電極までつけてモジュール化する部分を、テスラは自動化しようと考えていたが、そこにトラブルがあって手動化していた」(パナソニック・津賀社長)のが、量産が遅れている理由のひとつだ。

モデル3は、テスラ初の普及モデルとなる戦略的商品。量産開始時期が遅れたばかりでなく、2018年6月までに週5000台の生産を目指すとしてきたが、現時点ではその半分程度に留まっている。

「ノートPCに使うリチウムイオン電池はせいぜい6本。だが、モデルXを例にしても、1台あたり7000本~1万本の電池を使用する。使用するバッテリーの量が半端ではない」(パナソニックの津賀社長)

桁が異なる生産量が見込まれている車載電池は、パナソニックにとって、まさに成長を担うドライバーであり、2018年度は、大幅な増収増益を見込んでいる。その成長戦略はテスラに左右されることになる。

津賀社長は、「テスラは量産の立ち上げには少してこずっているが、引き続き、多くの受注残を抱えている一方で、私の理解は、確実に生産台数があがってくるということである。若干の期ずれや月ずれはあるものの、あくまでもその範囲の話であり、なにかが消えるというものではない。ギガファクトリーでのモノづくりをしっかりと立ち上げて、テスラが増産を開始したときに、電池が作り負けしない状況を作るだけである」と、今後、生産が軌道に乗ることに自信をみせる。

また、津賀社長は、「テスラは、ひとことでいえば、とにかくスピード優先の会社。我々の場合は、少しマージンを見て計画を立てたり、実行が確実な計画を立てたりするが、テスラの場合は、とにかくチャレンジ、チャレンジ、チャレンジの会社である。最初から理想を追い求める会社であり、我々とは異質の会社である」と表現。「だが、そこにチャレンジし、高い目標を立てることで、やる気を出して、結果を出していくことができる。いまは、当初計画よりは少しずれてはいるが、大きな目で見ればスピード感がある立ち上げをするメーカーである。呼吸をあわせてついていくのは難しい面もあるが、だいぶ慣れてきた。一緒に頑張るパートナーである」とも述べた。

だが、振り返ってみれば、パナソニックは、2010年度の増収増益後には、総額で6000億円を投資したともいわれるプラズマディスプレイの工場を閉鎖。プラズマディスプレイ事業からの撤退を発表し、それが、その後の業績悪化の元凶となった。これが、実質的な増収増益へと転換したいま、テスラへの投資がだぶって見えるともいえる。

この点について、津賀社長は、「これまでにない電池の使用量を考えれば、電池の生産に対して、多くの生産投資することは、各社に共通して自然なことである」とながら、「液晶パネルの投資を例に挙げると、一度投資をすると、そこでパネルの性能が決まってしまうという側面がある。一方で、バッテリーは設備投資の金額が液晶パネルよりもずっと小さい。売上げに対して10%程度の減価償却で済む。また、電池の大きな要素は、電池の中身の化学的要素で差別化したり、エネルギー密度をいかにあげるかといった点であり、この部分は設備投資には寄らないものである。テスラ向けの電池でも、当初の設備を使って、どんどん容量の高い電池を生産できるようになる。つまり、設備投資をしたから競争力があがるというものではない。その点も電池事業の特徴である」とした。

創業100年のパナソニックある懸念

だが、パナソニックの成長戦略を見る上でテスラの動きは外すことができないのは明らかだ。

一方で、コネクティッドソリューションズは、機内エンターテインメント事業が、大型航空機の需要減少に伴い、アビオニクスが悪化することにより、減収減益となる見通しだ。これも懸念材料のひとつといえる。

パナソニックの津賀社長は、「コネクティッドソリューションズに占めるアビオニクスの利益部分は大きい。だが、アビオニクス事業は、需要の山と谷が激しい市場である。大型航空機のアビオニクスに関する需要は、2018年度および2019年度に谷を迎えるが、2020年以降復活することになると予想している。長期的にはビデオ・オン・デマンドの市場は成熟しているが、ネットワーク接続などのデジタルサービスが伸びしろになる。ここで、当社がどんな位置づけを取れるのかが重要であり、そこに開発リソースをシフトしている」と発言。パナソニックの梅田常務執行役員は、「中期的には、デジタルサービスやリペア、メンテナンス事業を強化し、安定成長を目指している」とする。

米国子会社であるパナソニック アビオニクスが、米国証券取引委員会および米国司法省から、連邦海外腐敗行為防止法およびその他の米国証券関連法に基づき、航空会社との特定の取引およびその取引に関連するエージェントやコンサルタントの起用に関する活動について調査を受けていたが、このほど、2億8060万ドルの制裁金を支払うことで合意した。今後2年間、第三者によるコンプライアンスに関するモニタリングを受けること、その後、1年間にわたって、コンプライアンスに関する自主報告を行うなど、体質改善に挑む必要もある。

こうしてみると、「持続的成長」へとシフトしたとするパナソニックだが、いくつかの懸念材料があるのも事実だ。今年、創業100周年を迎えたパナソニックだが、最近、津賀社長は、「100周年」という言葉を、自ら積極的には使わなくなったという。すでに、101年目以降の成長に目を向けているようだ。

SNSでバズを起こせ! メルカリ流 “違和感”マーケティング

SNSでバズを起こせ! メルカリ流 “違和感”マーケティング

2019.01.24

フリマアプリを運営するメルカリが新聞折り込みチラシを配布

なぜリアル店舗のようなチラシ広告を出したのか

理由を聞いていくなかで同社のマーケティング戦略が見えてきた

問:次のアイテムのなかから、フリマアプリ「メルカリ」で販売されたことのあるものを選びなさい。

・ダウンジャケット
・ヒト型ロボット
・トイレットペーパーの芯
・クルマ
・イヤホンの左側

おわかりいただけただろうか。答えは「すべて」である。現時点では売り切れかもしれないが、上記はすべてメルカリで販売された実績のあるアイテムだ。

さまざまな商品が売買されているメルカリとはいえ、まさか「トイレットペーパーの芯」が売られているとは、よほどのヘビーユーザーでなければ知らないのではないだろうか。

もちろん筆者も知らなかったが、2018年12月12日に配布された1枚の新聞折り込みチラシが、その事実を教えてくれた。それは、メルカリが北海道と愛知県で計192万部配布した広告チラシだ。

紙面上では、トイレットペーパーの芯やクルマがメルカリで売られていたことを紹介していたのだが、東京在住の筆者は配られたチラシを直接見たわけではない。「メルカリが新聞折り込みチラシを配布している」という意外性がSNSで話題を呼び、仕事中Twitterをいじくりまわして遊んでいた筆者の元にも情報が届いたのである。

はたして、アプリ上でサービスを展開するメルカリが、なぜリアル店舗のような折り込みチラシを配布したのだろうか。

メルカリが配布した新聞折り込みチラシの例。まるでアパレル広告のようだ
裏面には、初心者でも使えるようにアプリのマニュアルが紹介されている

「スタンダードからいかに離れるか」が、おもしろさを生む

「端的に言えば“お茶の間の会話”を増やしたいと考えたためですね」

株式会社メルカリ 執行役員 CMOの村田雅行氏は、新聞折り込みチラシを配布した理由について、そう話す。

株式会社メルカリ 執行役員 CMOの村田雅行氏

2013年7月にサービスを開始したメルカリのアプリダウンロード数は、世界合計で1億超。また、累計流通額は1兆円を超えており、全国レベルでその名を轟かせている。

「ただ、月間のユニークユーザー数は1100万程度。ダウンロード数を考えるとまだまだ伸びしろがあるはずなのです。そのため、まだ取り切れていない、シニアを中心とするユーザーを取り込むためのアプローチを実施することに決めました」

アプリの存在は知っているが、普段からメルカリを使っているわけではない。そんな、シニアをはじめとする“お茶の間ユーザー”を取り込むべく企画されたのが「新聞折り込みチラシ」だった。さまざまなマーケティングを行っている同社ではあるが、新聞折り込みチラシの配布は今回が初めて。そのため、まずはテストマーケティングとして、限られたエリアでの配布が行われた。

だが、シニアへのアプローチは何も折り込みチラシに限らない。テレビCMはもちろん、街頭配布やポスティングなど、ほかにも宣伝手法はあったはずだ。なぜ折り込みチラシにこだわったのだろうか。

「1つのコンテンツとして完結しているところがポイントでした。新聞は、自ら購読して情報を取得する非常にポジティブな媒体。毎日目にするそのコンテンツにメルカリの折り込みチラシを入れることで、“違和感”を生み出したかったのです」

また村田氏は、チラシだからこそ違和感を生み出せたのだと話す。

「今の時代、いかにSNSで話題にしてもらえるかが大事です。そのためには普通とは違うことをやらなければなりません。違和感は、多くの人が認識する“スタンダード”がなければ作れないと考えています。いかに基準から大きな振れ幅があるか。それが驚きやおもしろさにつながるのではないでしょうか。そういう意味で、折り込みチラシには基準があります。『医薬品系だったらこんなチラシ』『スーパーのチラシはこんなもの』というイメージが、多くの人のなかで醸成されているからこそ、イメージからかけ離れたクリエイティブは一層際立つはずだと、新聞の折り込みチラシを実施したのです」

例えば街頭配布であれば、コスプレをしたり、奇抜な宣伝車で商品サンプルを配ったり、アメニティを同封したりと、工夫されているものが多く、普遍的な基準のようなものが思い浮かびにくい。あえて一般的な街頭配布の例を挙げるとすれば、ポケットティッシュと答える人が多いだろうか。だが、ポケットティッシュ以外のものを配っていたら、それだけで大きな話題を呼ぶかと言えば、おそらく難しいはずだ。

つまり、スタンダードがあるからこそ、違和感を与えて記憶に残るような手法を実施できると、数あるアプローチのなかから村田氏は折り込みチラシを選んだというわけだ。

そもそも、実店舗を持たないメルカリが折り込みチラシを配布するというだけで、1つの違和感を与えられるだろう。そして「徒歩0分! スマホの中でオープン!」といった目を引く謳い文句が、違和感をますます際立たせる。

「違和感を与えるために、コピーや商品ラインアップは工夫しましたね。今回、3タイプのチラシを作成したのですが、“メルカリだからこそできるラインアップ”をあえて出すようにしました。例えば、意外性のあるものでは、トイレットペーパーの芯やクルマ。実際にメルカリで売られていたことがあるんです」

今回作成されたチラシは「ファッション」「家電」「スーパー」の3タイプ。意外性のある商品ラインアップに加えて、北海道では日本ハムファイターズのユニフォーム、愛知県では中日ドラゴンズのユニフォームなど、地域に根付いた商品も掲載しており、そのような遊び心も、SNSで話題になるために必要なのかもしれない。

家電パターンのチラシ。「徒歩0分! ~」のコピーが目立つ
「トイレットペーパーの芯」を掲載したパターンのチラシ。2つのチラシをよく見比べると、ユニフォームで使われている写真が違う。なお、北海道と愛知県を選んだ理由は、「地場新聞の影響力が強いエリア」だからだという

結果として、違和感を覚えた消費者は、Twitterにチラシの画像を投稿。狙い通り、SNSでバズらせることに成功した。

しかし、SNSで話題になっても、ターゲットにしているシニア層にはあまり関係がないのではないだろうか。

「シニアや中高年の方々でSNSをやっている人は意外と多いんですよ。積極的に発信をしている人はあまり多くないですが、情報収集として活用している人は少なくないですね」

ちなみに、肝心の折り込みチラシの効果は、「すべての数字の集計が終わっているわけではありませんが、チラシを投下したエリアでは、いい成果が出ています」とのこと。データとしても、チラシの影響を確認できたという様子だった。

攻める姿勢が生み出したもう1つの広告

今回のようなアプローチは、SNSが普及した今だからこそ可能な新しいマーケティングだ。そして、メルカリではSNSでのバズを狙った取り組みがもう1つ。2019年1月1日からスタートした『#はじメル』だ。

はじメルは、「三日坊主でもいいから、とにかく新しいことをはじめる人を応援する」というコンセプトで展開しているキャンペーン。特設サイトを開設し、1月3日には新聞の一面広告を、1月5日からはテレビCMを放送開始した。

そのなかで、一体なにがSNSで話題になったのかというと、これまたアナログな「新聞広告」である。

「一般的に1つのクリエイティブで進める新聞広告を、あえて3タイプ制作し、首都圏・東日本・西日本で分けて配布しました。3枚の新聞広告をつなげるとメルカリの『m』が浮かび上がるというデザインなのですが、1枚だけ見ても、“つなげたら何か起きそう”なデザインにすることで、それを発見した人がTwitterに思わず投稿したくなるような仕組みを作っています」

新聞広告を3枚並べると「m」の文字が浮かび上がる

思わせぶりなデザインにするという“ヒント”を提供しておき、あとは何も言わずにユーザーの反応を待つ。離れたエリアの新聞を手に入れるのは難しいので、ほかのデザインが気になった場合は、自然とオンライン上での情報収集が開始されるだろう。そうして、SNSで活発なやり取りが発生するというわけだ。

「最初はもっと控えめのデザインだったのですが、それじゃダメだと言いましたね」

穏やかな口調ではあったが、村田氏の言葉からはクリエイティブに対してのこだわりを強く感じた。

「折り込みチラシのときもそうですが、守りに入ったら企業は終わると考えているので、常に攻め続けたいと考えています」

クリエイティブに対して攻めの姿勢を崩さない村田氏。それを象徴するエピソードとして、折り込みチラシのプロジェクトのキックオフ時には、「私をクビにする覚悟で仕事をしてほしい」とメンバーに伝えたのだという。

「もちろん、ほんとうにヤバいときは止めますよ。ただ、メンバーがリスクを考えてしまうと、どうしても“置きにいく”ようなアイデアになりがちです。責任なら私が取るので、どんどん攻めてほしいというメッセージですね」

置きにいくクリエイティブでは、SNSでバズらない。メンバーが自由にアイデアを出せる環境整備こそ、尖ったクリエイティブを生み出すのに必要なことなのだろう。

2019年はメルカリの内面を伝える年に

今回、折り込みチラシと新聞一面広告で、SNSでバズらせるマーケティングを実施したメルカリ。折り込みチラシに関していえば、まだテストマーケティングが終わった段階である。今後は全国的に折り込みチラシの配布を行うのだろうか。

「明確な方針はまだ決まっていませんが、折り込みチラシについては、読み物としてお客さまから期待されるコンテンツにしていきたいと考えています」

ただし、「今日は○○が特売」「○○が新発売」といったように、新聞チラシは日々情報が更新されるから読み物として成立する。タイムリーな情報をチラシで打ち出せないメルカリは、どのようなコンテンツにしていくのだろうか。

「今回折り込みチラシで意識したことの1つに、商品をたくさん入れるという点がありました。実際にメルカリで何が売られているかまでは知らない人が意外と多いんですね。そのような人からすると、トイレットペーパーの芯が売れることは1つの発見になるでしょうし、自分の家にある家電がいくらで売れるかということも新しい発見です。そのように、ほかにも、まだまだ知られていない情報があるので、継続的にチラシをやると決まったら、もっとメルカリの内側を知ってもらう情報を提供していきたいですね」

メルカリの内側を知ってほしいと話す村田氏。実は、はじメルにも同様の意図があったという。

「メルカリを使えば『新しい趣味を始める』ことへのハードルを下げられると伝えたかったのです。例えば、ゴルフを始めようと考えたら、ゴルフクラブのセットを購入する必要がありますよね。それが仮に10万円であれば、『ちょっとやってみようかな』程度に思っている人からすると、やはりハードルは高い。しかし、メルカリを使うことで、まずゴルフクラブを5万円で買える可能性があるのです。そのうえ、5万円で売られているのであれば、それに近い金額で売却できることも意味します」

5万円でゴルフクラブを買ってみたはいいものの「あまりおもしろくないな」と感じた場合、4万5000円で売却できれば、5000円の出費でゴルフを体験できるわけだ。

「また、メルカリにはバーコード出品と呼ばれる機能があって、バーコードを読み取るだけで商品情報を自動入力してくれるんです。値段も提案してくれるので出品が楽なのですが、最近では本を買うときにまずはバーコード出品を行う人が多いようですね。ちょうど読み終わったくらいに売却できて便利なんです。期限を決めることで、読まないといけないというプレッシャーにもなりますし、2000円の本を1500円で売却できれば、500円で本が読めるわけです」

何か買うときに、メルカリでまずいくらで売れるかをチェックする。そして、使わなかったり、一度使って満足したりすると、メルカリで売却するという消費行動が増えているのだ。その結果、購入のハードルが下がるので、二次流通が一時消費を活性化させる可能性もあるだろう。

「このような使い方の訴求は、継続してやっていきたいなと。そしてゆくゆくは、メルカリをライフインフラのようにしたいですね」

村田氏は展望を語る。

「認知はすでに獲得しました。次はメルカリの内面をもっと外に出していくフェーズです」

2018年には株式を上場し、気流に乗るメルカリ。決して“置きにいかない”同社のマーケティング戦略から、次はどんなアイデアが飛び出すのだろうか。2019年も同社の尖った広告が、SNSを騒がせるかもしれない。

上場後振るわぬソフトバンク、次は「行政指導」

上場後振るわぬソフトバンク、次は「行政指導」

2019.01.24

ソフトバンクの通信障害、総務省が行政指導へ

再発防止のためのさまざまな対策立案を支持

上場前後で「運がない」ソフトバンクに求められるもの

総務省は1月23日、昨年12月に大規模な通信障害を起こしたソフトバンクに対して行政指導を行った。

通信障害は、ソフトバンクのLTEに関する交換機の不具合が原因で起こったもの。それによって同社の4G LTE網に障害が発生し、音声・データ通信ともに圏外になる、もしくはつながりにくい状態が長時間続き、大きな話題になっていた。

通信障害は12月6日の13時39分頃発生し、その後同日18時4分頃まで、4時間25分に及び、約3060万人の利用者に影響を及ぼした (ソフトバンク ニュースリリース)

総務省は今回、同社の代表取締役取締役社長執行役員兼CEOの宮内謙氏宛に「電気通信事故に関する適切な対応及び報告について」と題した文書を提出。

ソフトバンクの宮内謙代表

文書では、ソフトバンクが2018年中に同件を含めて3回の重大事故を発生させていることを挙げ、「このような事故の発生は利用者の利益を大きく阻害するもの」とし、社内外の連携体制の改善や利用者への周知内容・周知方法の改善、通信業界内での教訓の共有等の実施を勧告。さらに、それぞれの具体的措置の内容を2月末までにまとめ、報告するよう義務付けた。

携帯電話は、通話やメッセージのやり取りはもちろん、決済サービスや災害時の情報収集ツールとして、今や国民のライフラインになっている。

総務省は同文書で「事故における教訓を業界全体で共有することが重要である」ともしており、今後の再発防止策等の詳細について、ほかの携帯電話事業者に説明し、情報共有する機会を設けることも求めた。

昨年末に鳴り物入りで上場したが、なかなか株価が振るわないソフトバンク。その背景には、通信障害や「PayPay」のクレジットカードの不正利用、さらには同社が通信設備を使用している中国・ファーウェイの米中対立やCFOの逮捕などの問題などが影響していることだろう。

ソフトバンクグループは昨年11月に行われた2018年度第2四半期決算説明会で、「RPA(Robotic Process Automation)の導入により通信事業の人員を削減し、新規事業に力を入れていく」としていたが、新規事業の前に、まずは逆風吹く通信事業の早急な立て直しが求められている。