ファーウェイの最上位スマホが大手キャリアに進出した意味とは

ファーウェイの最上位スマホが大手キャリアに進出した意味とは

2018.05.14

ソフトバンクの2018年夏モデルに、ファーウェイのスマホ2機種が加わった。SIMフリー市場を席巻しつつあるファーウェイが、キャリア市場でも存在感を高めている。

2017年10月発表の「Mate 10 Pro」をソフトバンクが発売する

2機種とも、国内ではSIMフリーとして販売されており、目新しさははない。果たして大手キャリアが取り扱うことには、どのような意味があるのだろうか。

大手キャリアの割引と販売網に絶大な魅力

日本のSIMフリースマートフォン市場においてNo.1シェアを誇るファーウェイだが、国内のデバイス事業は大手キャリア向けに製造するタブレットやモバイルWi-Fiルーター製品のほうが、規模が大きいという。

SIMフリー市場でも「HUAWEI P10 lite」などのヒット商品は出ているが、スマホ市場の大部分は依然として大手キャリアが支配しており、SIMフリーは1〜2割にとどまっているのが現状だ。

だが、最近ではスマホについても、大手キャリアによる採用が相次いでいる。auの春モデルには「nova 2」、ソフトバンクの夏モデルには「Mate 10 Pro」と「nova lite 2」が加わり、ドコモについても期待が高まっている。

ソフトバンク版「HUAWEI Mate 10 Pro」(写真提供:ソフトバンク)

SIMフリーとの違いとして、注目したいのは価格だ。他キャリアからソフトバンクに乗り換えるMNPの場合、Mate 10 Proには毎月3800円の割引が適用され、2年契約時の実質負担は月額680円になるという。

大手キャリアはMVNOより通信料金が高いとはいえ、毎月3800円もの割引があれば大きな差はなくなる。同程度の金額を支払うならば、通信速度が速くサービスも充実した大手キャリアを選ぶ人が多いだろう。

ファーウェイにとってのメリットは、ブランドイメージが高まり利幅も大きいハイエンド機種を売りやすくなることだ。これまでSIMフリーで売れるのは、3万円前後のミドルレンジ機種が中心だった。販売チャネルも限られており、ハイエンド機種をSIMフリーで売るのは困難な状況にあったといえる。

だが、大手キャリアによる割引と全国に広がる販売網があれば、売れ行きは確実に桁が違ってくる。グローバルで人気のハイエンド機種を持ち込み、日本で人気のiPhoneやXperiaと「同じ土俵」で戦えるというわけだ。

キャリアのカスタマイズ対応が鍵になるか

キャリア版の登場で気になるのは、SIMフリー版との違いだ。Mate 10 Proでは残念ながら「おサイフケータイ」などの国内向け機能は実現しなかったが、nova lite 2にはスマホ初心者向けの「シンプルモード」が加わった。

ソフトバンク版「HUAWEI nova lite 2」(写真提供:ソフトバンク)
HUAWEI nova lite 2(写真はSIMフリー版)

こうした大手キャリアからのカスタマイズ要求にどの程度応じるかは、端末メーカーによっても差があるという。その中でもファーウェイは、ルーター製品などでキャリアとの付き合いは長い。最近ではキャリアスマホに新規参入を狙う中国メーカーも出てきているが、ファーウェイには一日の長があるといえそうだ。

ただ、Mate 10 Proは2017年10月のグローバル発表からソフトバンク版が発売される2018年5月まで、半年もの時間がかかっている。今後はこのタイムラグをどれくらい縮められるかが課題といえる。

また、中国企業であるファーウェイは、米国との貿易摩擦問題においても注目されている。同じ中国のZTEは米企業との商取引を禁止され、スマホ事業も深刻な打撃を受けている。ファーウェイは各国の法令を遵守しているとの姿勢を崩していないが、米国の出方は気になるところだ。

こうした不安要素はあるものの、日本でのファーウェイの勢いは止まりそうにない。知名度やブランド力の不足は課題とされてきたが、大手キャリアが扱えば安心というユーザーは多いだけに、着実にシェアを伸ばしていくことになりそうだ。

4年ぶりになる増収増益決算のパナソニック

4年ぶりになる増収増益決算のパナソニック

2018.05.14

パナソニックが発表した2017年度連結業績は、売上高は前年比8.7%増の7兆9824億円、営業利益は37.5%増の3805億円、税引前利益は37.6%増の3785億円、当期純利益は58.0%増の2360億円となった。

4年ぶりとなる増収増益を達成。為替影響を除く実質ベースでは、7年ぶりの増収増益になり、今年2月に発表した上方修正値も上回って見せた。

パナソニックの津賀一宏社長

パナソニックの津賀一宏社長は、「2010年度の増収増益は、三洋電機の子会社化などが影響したものであったが、その後、テレビ事業が赤字に転落し、減益が続いた」と前置きながら、「その後の6年間で相当大きな構造改革を行ってきた。これによって、利益の安定性が生まれ、突然大きな赤字が見えてきたということがないように見える化を図り、経営を安定化させてきた。だが、利益を生みながら増収を図る構図になるまでには、想像以上に時間がかかった。その結果が7年ぶりの実質的な増収増益につながっている」とし、「私が一番大きな成果と考えているのは、事業部制というきっちりと業績が見える形の上に、カンパニー制という産業領域の特性を捉えることができる形で、先手、先手で事業内容を変え、シフトできたこと。これが、7年ぶりの増収増益につながっていると感じている。これからも先手、先手を打っていけば、この傾向は継続できると考えている」と、社長就任以来の構造改革の成果に自信をみせた。

2017年度は、2015年度および2014年度と同じ営業利益水準にあるが、実質売上高では大幅に改善。2012年度水準にまで戻しており、体質は大幅に改善されている。同社が打ち出している「増収増益への転換」から「持続的成長」へとシフトが始まったといっていい。

パナソニック 常務執行役員の梅田博和CFOも、「ようやく増収増益へと転じ、持続的な成長に向けて、反転することができた」とする。

オートモーティブが増収に貢献

2017年度実績では、売上高で、オートモーティブやエナジーに加えて、プロセスオートメーションなどが増収に貢献。営業利益および純利益では、インダストリアルなどが堅調に推移したことに加え、 その他損益の改善によって増益になった。

パナソニックの梅田常務執行役員は、「フィコサの新規連結や、インフォテインメントが好調に推移するなど オートモーティブが大きく増収。エナジーやインダストリアル、 ゼテスの新規連結があったモバイルソリューションズや、プロセスオートメーションなどの成長が増収に貢献した。また、固定費は増加しているものの、車載などの成長分野には積極的な投資を実行し、メリハリをつけて対応した」と総括する。

セグメント別では、アプライアンスが中国を中心とした海外でのエアコンが伸長して増収。プレミアム商品が堅調に推移して増益に貢献した。また、エコソリューションズは、海外の電設資材事業などが大きく伸長して増収。コネクティッドソリューションズは、プロセスオートメーションが好調に推移したことなどにより増収。オートモーティブ&インダストリアルシステムズは、車載・産業向け事業で大幅に増収になったという。

2018年度見通しでも成長を維持している。

売上高は前年比4.0%増の8兆3000億円、営業利益は11.7%増の4250億円、税引前利益は10.9%増の4200億円、当期純利益は5.9%増の2500億円。

パナソニック 常務執行役員の梅田博和CFO

パナソニックの梅田常務執行役員は、「2017年度に続き、2018年度も、増収増益を達成する見通しであり、これまでの成長に向けた取り組みの成果により、エナジー、インダストリアルが増収増益の牽引役になる」とする。

同社では、事業ごとに、売上げと利益成長の牽引役と位置づけ、大規模投資などの経営リソースを集中させる「高成長事業」、競争力を生かして着実に利益を創出し、高成長事業への投資原資を生み出す「安定成長事業」、事業の転地や固定費削減、合理化などにより、徹底的に利益改善に取り組む「収益改善事業」の3つの経営区分で成長戦略を実行しているが、2018年度もこの姿勢は変わらない。

1兆円の戦略投資

「アプライアンス、エコソリューションズ、オートモーティブ&インダストリアルシステムズで 増収増益を達成する見通し」だという。1兆円の戦略投資についても、高成長事業領域に集中的に資金を投入しており、「2018年度は、車載電池事業を中心に高成長事業が大きく伸びる見通し」だとした。

だが、パナソニックの津賀一宏社長は、2018年度の計画として、かつて売上高10兆円を掲げていたこともあった。また、それを修正した2018年度の売上高見通しでは8兆8000億円、営業利益5000億円(のちに4500億円以上に修正)、純利益2500億円以上を目指すとしていた。今回発表した2018年度見通しでは、売上高、営業利益ではそれを下回り、最終利益は最低水準に目標を置いた。

津賀社長は、「営業利益は為替の影響によって、4250億円としたものであり、4500億円という目線は変えていない。純利益は公表通りである」と説明する。だが、実質ベースでの増収増益へと体質を転換したものの、数字の上では、描いた姿にまでは至っていないのは確かだ。

そして、懸念材料もある。最大の懸念は、テスラとの協業だ。

テスラは、米ネバダ州スパークス郊外のギガファクトリーにおいて、2017年1月から円形型リチウムイオン電池の生産を開始している。パナソニックは、この工場に投資をしており、いわば、テスラとは運命共同体だ。

懸念材料は、ギガファクトリーで生産を予定していたテスラのモデル3向けの電池生産量が予定数量に達していないことだ。これは、モデル3の生産が遅れていることが原因であり、パナソニックが担当している電池生産体制については問題がない。むしろ、モデル3の生産立ち上げを待っている段階だといえる。

量産が遅れるテスラ

「当社が生産した電池を数1000本まとめてひとつのパックに入れて、ワイヤーボンドで電極までつけてモジュール化する部分を、テスラは自動化しようと考えていたが、そこにトラブルがあって手動化していた」(パナソニック・津賀社長)のが、量産が遅れている理由のひとつだ。

モデル3は、テスラ初の普及モデルとなる戦略的商品。量産開始時期が遅れたばかりでなく、2018年6月までに週5000台の生産を目指すとしてきたが、現時点ではその半分程度に留まっている。

「ノートPCに使うリチウムイオン電池はせいぜい6本。だが、モデルXを例にしても、1台あたり7000本~1万本の電池を使用する。使用するバッテリーの量が半端ではない」(パナソニックの津賀社長)

桁が異なる生産量が見込まれている車載電池は、パナソニックにとって、まさに成長を担うドライバーであり、2018年度は、大幅な増収増益を見込んでいる。その成長戦略はテスラに左右されることになる。

津賀社長は、「テスラは量産の立ち上げには少してこずっているが、引き続き、多くの受注残を抱えている一方で、私の理解は、確実に生産台数があがってくるということである。若干の期ずれや月ずれはあるものの、あくまでもその範囲の話であり、なにかが消えるというものではない。ギガファクトリーでのモノづくりをしっかりと立ち上げて、テスラが増産を開始したときに、電池が作り負けしない状況を作るだけである」と、今後、生産が軌道に乗ることに自信をみせる。

また、津賀社長は、「テスラは、ひとことでいえば、とにかくスピード優先の会社。我々の場合は、少しマージンを見て計画を立てたり、実行が確実な計画を立てたりするが、テスラの場合は、とにかくチャレンジ、チャレンジ、チャレンジの会社である。最初から理想を追い求める会社であり、我々とは異質の会社である」と表現。「だが、そこにチャレンジし、高い目標を立てることで、やる気を出して、結果を出していくことができる。いまは、当初計画よりは少しずれてはいるが、大きな目で見ればスピード感がある立ち上げをするメーカーである。呼吸をあわせてついていくのは難しい面もあるが、だいぶ慣れてきた。一緒に頑張るパートナーである」とも述べた。

だが、振り返ってみれば、パナソニックは、2010年度の増収増益後には、総額で6000億円を投資したともいわれるプラズマディスプレイの工場を閉鎖。プラズマディスプレイ事業からの撤退を発表し、それが、その後の業績悪化の元凶となった。これが、実質的な増収増益へと転換したいま、テスラへの投資がだぶって見えるともいえる。

この点について、津賀社長は、「これまでにない電池の使用量を考えれば、電池の生産に対して、多くの生産投資することは、各社に共通して自然なことである」とながら、「液晶パネルの投資を例に挙げると、一度投資をすると、そこでパネルの性能が決まってしまうという側面がある。一方で、バッテリーは設備投資の金額が液晶パネルよりもずっと小さい。売上げに対して10%程度の減価償却で済む。また、電池の大きな要素は、電池の中身の化学的要素で差別化したり、エネルギー密度をいかにあげるかといった点であり、この部分は設備投資には寄らないものである。テスラ向けの電池でも、当初の設備を使って、どんどん容量の高い電池を生産できるようになる。つまり、設備投資をしたから競争力があがるというものではない。その点も電池事業の特徴である」とした。

創業100年のパナソニックある懸念

だが、パナソニックの成長戦略を見る上でテスラの動きは外すことができないのは明らかだ。

一方で、コネクティッドソリューションズは、機内エンターテインメント事業が、大型航空機の需要減少に伴い、アビオニクスが悪化することにより、減収減益となる見通しだ。これも懸念材料のひとつといえる。

パナソニックの津賀社長は、「コネクティッドソリューションズに占めるアビオニクスの利益部分は大きい。だが、アビオニクス事業は、需要の山と谷が激しい市場である。大型航空機のアビオニクスに関する需要は、2018年度および2019年度に谷を迎えるが、2020年以降復活することになると予想している。長期的にはビデオ・オン・デマンドの市場は成熟しているが、ネットワーク接続などのデジタルサービスが伸びしろになる。ここで、当社がどんな位置づけを取れるのかが重要であり、そこに開発リソースをシフトしている」と発言。パナソニックの梅田常務執行役員は、「中期的には、デジタルサービスやリペア、メンテナンス事業を強化し、安定成長を目指している」とする。

米国子会社であるパナソニック アビオニクスが、米国証券取引委員会および米国司法省から、連邦海外腐敗行為防止法およびその他の米国証券関連法に基づき、航空会社との特定の取引およびその取引に関連するエージェントやコンサルタントの起用に関する活動について調査を受けていたが、このほど、2億8060万ドルの制裁金を支払うことで合意した。今後2年間、第三者によるコンプライアンスに関するモニタリングを受けること、その後、1年間にわたって、コンプライアンスに関する自主報告を行うなど、体質改善に挑む必要もある。

こうしてみると、「持続的成長」へとシフトしたとするパナソニックだが、いくつかの懸念材料があるのも事実だ。今年、創業100周年を迎えたパナソニックだが、最近、津賀社長は、「100周年」という言葉を、自ら積極的には使わなくなったという。すでに、101年目以降の成長に目を向けているようだ。

auが「ケータイ」の復活をサポートする理由

auが「ケータイ」の復活をサポートする理由

2018.05.14

「亡くなったおばあちゃんの写真が手元になかったので嬉しい」「子供たちの小さい時の写真はケータイばかりだったので」――。KDDIが「ワクワクを提案し続ける会社」を会社のミッションとして掲げる中で、2016年から進めている「おもいでケータイ再起動」というイベントがある。

これまで、名古屋と仙台、福岡のKDDI直営店で開催し、この5月にはグループ会社である沖縄セルラー電話の「au NAHA」で初めて開催した。このイベントは、auユーザーのみならず、NTTドコモ、ソフトバンクユーザーのケータイをもよみがえらせる、思い切った企画として、好評を得ている。

なぜ、KDDIはこのイベントを続けるのか。イベントの価値や、今後の展開について、KDDI コミュニケーション本部 宣伝部 ブランドプロモーショングループ グループリーダーの西原 由哲氏に話を聞いた。

KDDI コミュニケーション本部 宣伝部 ブランドプロモーショングループ グループリーダー 西原 由哲氏

他キャリア製品も"復活"

おもいでケータイ再起動はこれまで、小規模イベントを含めれば750名のケータイ(スマートフォン含む)を"再起動"してきた。古くは2000年頃の携帯から、今の主要携帯キャリア3社だけでなく、ツーカーなど、統廃合された携帯キャリアの端末を含めて持ち込まれている。

盛況だったau NAHAでのおもいでケータイ再起動。沖縄セルラー電話のキャラクター「auシカ」も来場した

持ち込まれた多くのケースは、バッテリーの過放電や充電ケーブルを破棄してしまったことで充電できなくなったというパターンだ。中には、バッテリーが膨らんでしまって使い物にならなくなったり、あるいは一部他キャリア製品については起動するためにSIMが必要だったりと、再起動できないケースもある。

一部回収したケータイは、その場で破断作業が行われる。回収した端末から、レアメタルなどを回収、スマホなどのパーツに再利用される。持ち込まれるケータイは、他キャリア製品も少なくない

ただ、KDDIは電池パックをチェック・充電する専用の機械を用意して、起動できる電圧を確保し、750名の笑顔を呼び起こしてきた。西原氏も「毎回、お客さまの反応が新鮮で、泣いている人や喜んでいる人、こちらとしても良かったなと思える」と話す。

バッテリーチェッカーで、最低限の充電を行う。携帯の端子が壊れてるなどのケースでもバッテリーに直接充電できるため、このイベントでしか復活できない携帯も少なくない

同社は、カスタマー・エクスペリエンス(CX)重視の姿勢を2016年から打ち出しているが、このイベントはまさに「お客さまが諦めていることを解決し、期待を超える体験価値」を生み出すものとして、「ワクワクを提案し続ける会社」を体現するものといえよう。

小さいようで大きい、お客さんの琴線に触れる仕掛けとして、再起動したケータイから写真をその場でプリントする企画を用意した。今回沖縄・那覇で参加したお客さんの一人は、「家ではプリンターを起動しないし、そもそもケータイが起動しないから諦めていた。こうやって写真をもらえて嬉しい」と話す。

このイベントにかかっているのはバッテリーチェッカーなどの器具の一部費用と人件費だけ。逆に言えば、西原氏らが自分たちで手を動かし、まだまだ仕組み化されていないことの裏返しだが、西原氏は「人と人が対面してやるからこそ、私たちが提供する"ワクワク"を感じてもらえるのかなと」と説明する。

「多くのお客さまから、『auユーザーでホントに良かったです』と言われるんです。多分、『こういうことをやってくれる良い会社で良かった』という意味だと思うんですが、これを他社ユーザーでも受け入れることで『ああ、auって温かいんだな』と感じてもらう。CMだけでは感じられない、"auらしさ"を感じとってもらうことが、私たちの存在を意識してもらえる一端になればと思っています」(西原氏)

実際、イベントに参加した人に質問を投げかけると、「前日にニュースで見た」「ラジオを聴いた」というドコモ、ソフトバンクユーザーがおよそ1/3ほどいた。「昔利用していたので、またauに戻ろうと思いました」「奥さんがずっとドコモなのでなかなか難しいですが、私としてはauに戻りたいですね」と、反応は様々だが、お客さんの心に響いたことに違いはない。

今はドコモユーザーという男性。「妻が許せばauに戻りたいと思いました」と話す
親のケータイの暗証番号を必死に探し当てようとする子供たち。この直後、家族みんなで暗証番号を解読した

「私たちのサービスを、他社ユーザーでも、徐々にauへと関心を寄せてもらえるに。そんな環境作りになれたらなと」(西原氏)。今回のイベントでも、5月11日~13日の3日間で100名を超えるユーザーの参加を見込む。累計で1000人の思い出を取り戻す節目が見えてくる段階だが、「まだまだCXの領域は、他部署も含めて模索中」(西原氏)だという。

現状のイベントはそれぞれが単発の"点"に見え、"線"にはなっていない。ただ、「当初から映像や写真を撮影して、思い出が復活した様子を残している。これらの蓄積を、多くの人にアーカイブとして見られるようにしたい。それは、このイベントを線として繋げて見せるだけでなく、ほかのCXの活動にも作用するような、汎用性のある工夫を進めていきたい」と西原氏は言う。

イベント開始当初は、KDDIの広報部として、オウンドメディアのいち企画としてスタートした。これを宣伝部に移管して西原氏らが進めるのは「会社として、このCXをブランド価値にしていくこと。au=CXという価値を、より広く、お客さまに伝え、ブランド化していくことだ」(西原氏)。

この女性は、中学生と高校生になった子供たちの10年前の写真をプリント。とても懐かしい画像のようで、写真を見ながら笑みをこぼしていた

携帯キャリアの存在意義は、「ケータイ」が全盛だった10年前と今で大きく変わりつつある。

どの携帯キャリアでも同じ端末が並び、スマホで使うサービスもSNSや動画、音楽など、携帯キャリアに依存しないものも増えた。さらに言えば、格安スマホと言われるMVNOが徐々に浸透してきたことで、「MNOの存在価値とは何か」をどう伝えるのか、西原氏らは宣伝部として、強く打ち出さなくてはならない状況にあるのだろう。

スマホやスマートホームなど、さまざまなデバイスがあらゆる身の回りに増えていく中で、機械ではなくあえて「人と人の接点を強く打ち出す」というKDDIのカスタマー・エクスペリエンス。この「CX」は、auというブランドが心の内側に入ることで、「ワクワクを提案し続ける会社」というミッションの前提になっているのかもしれない。