模倣品の闇と戦うブランド開発企業の姿

模倣品の闇と戦うブランド開発企業の姿

2018.05.18

ブランドの構築は、企業にとって収益拡大の大きな柱。そして、強いブランドがあるからこそ、企業間競争で優位に立つことができる。ただ、このブランドを大きく揺るがす存在がある。そう、“模倣品”だ。

MTGという企業をご存じだろうか。企業名だけではピンとこない方もいらっしゃるだろうが、同社が手がけている商品を聞けば、「あ! あの商品の開発企業か」と思い当たることと思う。

多くの人が知る商品

MTGの本社・開発センターは、愛知県名古屋市にある

有名どころを挙げていこう。まず「ReFa」(リファ)というブランドがある。これは、クレンジングや洗顔、化粧水、美容液といったスキンケアの総合ブランドだが、もっとも有名なのは、美容ローラーというもの。ハンドルに2つの球体がついており、それを顔の肌やボディで転がすことにより、引き締める効果がある。

続いて「SIXPAD」。これはトレーニングに効率的な20Hzの周波数を利用したEMS(Electrical Muscle Stimulation)機器で、体を激しく動かさなくても筋肉を刺激し、運動と同じような効果が得られるというもの。SIXPADは、京都大学 名誉教授 森谷敏夫氏の理論をもとに、世界屈指のサッカー選手、クリスティアーノ・ロナウドと共同開発で生まれた製品だ。

社内には歴史や製品が撮影された写真が多く飾られている。左はSIXPADを共同開発したクリスティアーノ・ロナウドと彼のパネル。右は富士山の天然水を利用する「キララ」をプロモーションする浅田真央さん

このほかにも、口にくわえ、カモメの羽のようなブレードを振ることで顔のフィットネスができる「FACIAL FITNESS PAO」といった製品がある。製品の紹介はここまでにして、同社が直面している問題について触れよう。そう、冒頭で述べた模倣品に悩まされているのだ。

人間の知的活動から生まれた製品には、知的財産権が生ずる。これは、著作権や特許権、実用新案権、意匠権、商標権など、知的財産の種類によって各法律で守られるというものだ。直近では、マンガを無料で読める「漫画村」や、アニメ動画を無断配信する「AniTube」といったサイトが閉鎖された。これは、著作権に配慮した対処だが、インターネットというブラック・グレーゾーンを併せ持つ特性が生み出した闇だ。

MTG 法務知的財産本部 知的財産部 ブランド保護課 林正克氏

一方、MTGが直面する問題は、製品の「丸コピー」。パッケージから説明書までも模倣するもので、特許権や実用新案権、意匠権といったところで問題となってくる。

MTG 法務知的財産本部 知的財産部 ブランド保護課 林正克氏は、「模倣品には2つのパターンがあり、ひとつはパッケージや製品の形状は違うものの、機能を模倣するタイプ。もう一方は、製品の形状やパッケージ、説明書までをも“丸コピー”するタイプ」だという。後者は特に悪質で、メーカーとしては見逃せないとのことだ。

模倣品の闇は中国にはびこる

では、こうした丸コピー品がなぜ、そしてどこから出てくるのか。まず出所は中国だ。財務省がまとめた「平成29年の税関における知的財産侵害物品の差止状況」の資料によると、平成14年頃は韓国製のコピー商品が7割を超えていたが、平成29年には中国製のコピー製品が9割以上を占めている。

なぜ、中国製のコピー製品が多いのか。それは、中国に強いブランドがないからだとMTGの林氏は指摘する。ブランド力がなければグローバルな市場では通用しない。ならば、すでにブランドを確立している製品の丸コピーにすれば、手っ取り早く商売につながるというわけだ。

歴史的な経緯もある。日本企業は人件費が安価な中国にこぞって生産拠点を移した。だが、中国での人件費が高騰すると、生産拠点を日本に戻したりベトナムに移したりといった動きになった。結果、日本企業の進出で技術を学んだが、思うように収入が得られないといった状況が起こる。そうした人たちの一部が、模倣品に手を染めているともいわれている。また、近年は3Dプリンターの普及により、製品をコピーしやすくなっているという背景もある。

ただ、中国にもブランドが育ちつつある。ところが、そのブランドすら自国の闇がコピーする。グローバルで信頼されるブランドを育てるには模倣品は悪でしかなく、中国当局も対策に力を入れている。

こうした状況にMTGはどう対処しているのか。まずは模倣品生産業者の摘発だ。MTGが、中国の調査会社に模倣品生産業者の洗い出しを依頼し、見つかれば調査会社から中国摘発当局に告発。そして当局が摘発するという流れだ。

また、水際での輸入差し止めにも力を入れている。中国からの輸出時に、同国税関に厳しくチェックしてもらうのが第一段階。ただ、ここでチェックを逃れ、欧米などにわたってしまうと、MTGではどうしようもできない。一方、日本の税関では比較的差し止めできているという。というのも、MTGが税関の職員を対象に正規品と模倣品の違いを伝える講習を行っているからだ。2017年は153件を摘発し、13,000以上の模倣品を差し止めたという。

正規品と見まがう模倣品

下の写真は正規品と模倣品を並べたもの。パッと見では違いがわからないが、よく見比べてみると細かなところで異なっている。どこが異なっているのかは、業者に対応されてしまうので記事にできないが、もし模倣品単体なら本物と信じ込んでしまうだろう。

左:ReFaの正規品と模倣品。違いがわかるだろうか。ちなみに左側が正規品で、ローラーを回すと段違いにスムーズに回転する。模倣品は回転しづらく、粗悪なベアリングなのがわかる。右:パッケージだけでなく、説明書や保証書もコピー、“丸コピー”と呼ばれる所以だ。上が正規品の説明書
SIXPADの正規品(左)と模倣品。模倣品は正規品よりも1割ほど安い価格設定が多いそうだ。あまりに安価だと、ニセモノと察知されやすくなるからという

また販売店、特にウェブサイトを中心にパトロール。模倣品を扱うサイトを見つけたらページ削除を実行している。2017年には約9,200サイトを削除したという。サイトでMTGの製品を注文したら、中国から発送されてきたということが多々あるらしい。ちなみにMTGは「JAPANブランドを世界に発信」という方針なので、中国から届くことはない。

消費者側にも啓蒙が必要だ。特に近年、高級時計の模倣品、いわゆる「スーパーコピー」を好んで使用するユーザーが増えている。高額な出費になるのなら、ほぼ見た目が変わらないコピーでいいや、という考え方が蔓延し始めている。

腕時計ならまだいい。壊れようが、傷がつこうが、詳しい人に「それニセモノだよ」と指摘されようがそれだけのこと。だが、MTGの製品は人体に作用するものがほとんど。模倣品を使うことによって、健康被害につながる可能性も十分に考えられる。

代表取締役社長の松下剛氏を始め、同社のスタッフは常々こういっているそうだ。「模倣品を絶対に許さない」「徹底的に戦い続ける」と……。ブランドを守るため、企業を守るため、そして消費者を守るため、これからも戦い続けていくことだろう。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

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掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

○安東弘樹のクルマ向上委員会!
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○森口将之のカーデザイン解体新書
https://news.mynavi.jp/series/cardesign

○清水和夫の自動運転ソシオロジー
https://news.mynavi.jp/series/autonomous_car

○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
https://news.mynavi.jp/series/game_heisei

○岡安学の「eスポーツ観戦記」
https://news.mynavi.jp/series/e-Sports_review

○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
https://news.mynavi.jp/series/komuginokotoba

○藤田朋宏の必殺仕分け人
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○「食べる」をつくる科学と心理
https://news.mynavi.jp/series/food_science

○阿久津良和のITビジネス超前線
https://news.mynavi.jp/series/itbiz

○山下洋一のfilm@11
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○モノのデザイン
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○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
https://news.mynavi.jp/series/mobile_business

○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
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○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
https://news.mynavi.jp/series/font-history

○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu