多様化するワークスタイリングに対する三井不動産の提案

多様化するワークスタイリングに対する三井不動産の提案

2018.05.22

働き方改革という言葉が当たり前に使われるようになった。そもそもは、働き過ぎといわれる日本人の健康を考え、ノー残業デーを設定したり、有給休暇取得を推奨したりすることから始まった。

だが、ここ2~3年、潮目が変わってきた。多様化するワーキングスタイル合わせた“働き場所”を提供するサービスが増えてきたのだ。たとえば最近注目されている「アクティビティ・ベースド・ワーキング」(ABW)。これは、自席が用意されているが、コワーキングスペースなどがオフィス内にあり、通話や調べ物は自席で、プレゼン資料作成などで集中したいときはコワーキングスペースで働くという仕組み。アメリカやオーストラリアの企業で採り入れられており、日本もこうしたオフィスが増えるとみられている。

一方、会社以外の働き場所を提供するサービスも増えている。こうしたサービスはデベロッパーが積極的に取り組んでおり、時間貸しのようなオフィスが増えている。会社のオフィスだけでなく、出先や出張の帰りにこうしたオフィスを利用し、仕事をする。また、地方の事業所から都市圏に出なくてはならない際に、こうしたオフィスを利用して仕事をするという例が目立ってきた。

全国30拠点をオフィスとして利用可能

大手デベロッパー、三井不動産もこうした需要に応えるサービスを開始した。昨年4月から開始した「ワークスタイリングSHARE」がそれだ。10分300円という価格でオフィスを利用でき、通信環境やコピー機といった機材を利用できる。これまで、会社以外の場所で仕事をするには、喫茶店やファミレスを利用することが多かった。だが、通信環境が整っていないことが多く、しかも家族連れや学生の会話により、集中できないというジレンマがあった。ところが、こうした貸しオフィスならば、そうした心配は少ない。そして全国30拠点が利用でき、出張時のオフィスとして使える。

ワークスタイリングSTAYの説明を行う三井不動産 ビルディング本部 ワークスタイル推進部 山村知秀氏(左)と同 松澤彰氏

三井不動産は、こうしたニーズに応えるために、ワークスタイリングSHAREやワークスタイリングFLEXというサービスを展開してきた。それに加え、ワークスタイリングSTAYというサービスを5月31日から開始する。STAYというネーミングからもわかるとおり、ビジネスパーソンに泊まる場所を提供するサービスだ。

ワークスタイリングSTAY 汐留イタリア街は、汐留イタリア街のNBF コモディオ汐留(右)にオープンする

ではなぜ、こうしたサービスを開始したのか。それは、首都圏の宿泊事情にある。仮に地方から東京へ急な出張があった際、ホテルがとれない場合がある。2017年、約2,900万人にものぼったインバンド観光客が訪日した。旺盛な彼らの宿泊意欲により、ホテルが満室になっていることが多い。

ところがワークスタイリングSTAYは、契約企業のみが利用できるサービス。海外からの観光客は基本的に利用できないので、急な出張時に宿泊施設を確保しやすい。

用意される部屋は3タイプ。ロフト型の部屋はベッドがロフト、その下がワークスペースになっており、L字型のデスクなので、広いスペースが活用できる。フラット型はベッドのすぐそばにデスクがあり、ベッドとデスクをシームレスに行き来できる。ベッド型は、眠る場所のみ用意されたスペース。仕事をする際は、共用ワークスペースに移動するので、オンとオフをきっちりと分けられる。

左上:エンタランスのカウンター。右上:ロフト型の部屋。左下:フラと型の部屋。右下:ベッド型

さらに共用ワークスペースでは、複数人での打ち合わせが可能で、複合機や書類の溶解ボックスも用意されている。

左上:ワークスペースの一部。右上:複合機や溶解ボックスを用意。左下:シャワーのほか浴場もある。右下:レッグマッサージやアイマッサージといった備品

新幹線や羽田空港にアクセスしやすい立地

三井不動産が想定する利用シーンは以下の4つ。「泊まれるワークスペースとしての活用」「海外出張から朝便で帰国した際の一時リフレッシュ」「宿泊型の研修や会議での利用」「ワークに集中したい個人へのスペース提供」といったところだ。このほかにも、翌日早朝の新幹線や飛行機を利用する際、前泊のためにこの施設を使うということも考えられる。

今回オープンするワークスタイリングSTAY 汐留イタリア街は、東京駅や品川駅へアクセスしやすく、新幹線の利用に便利だ。さらに浜松町駅も近いので、羽田空港へのアクセスもしやすい。まさに、ビジネスパーソンにピッタリの場所といえる。

このワークスタイリングSTAYに限らず、ザ・ミレニアルズといったビジネスに特化した宿泊施設が増えている。このネットワーク時代に「テレビ電話とかではNGなの?」という声も聞こえてきそうだが、さまざまな企業を取材していると、フェイス・トゥ・フェイスに回帰しているような印象を受ける。ネットで出張先とやりとりするのではなく、顔をつきあわせてのビジネスがやはり重要なのだ。そうした意味でも、ビジネスパーソン向けの宿泊施設は増えていくことだろう。

根付き始めた「必ず座れる」通勤、 鉄道に続いてバス業界も熱視線

根付き始めた「必ず座れる」通勤、 鉄道に続いてバス業界も熱視線

2018.11.19

座席指定の通勤電車から”通勤の高級化”の流れ?

ハイエンド通勤バスの実証実験を東急電鉄が実施

たまプラーザを舞台にした、日本初の郊外型MaaS

全席指定の通勤電車が首都圏の私鉄で運行され始めている。西武鉄道を主体に東急電鉄、東京地下鉄(東京メトロ)、横浜高速鉄道の各路線を乗り入れる「S-TRAIN」や、京王電鉄の「京王ライナー」などだ。座席指定ではなく、着席整理券による着席定員制の東武東上線の「TJライナー」もある。

帰宅時間に運行される京王ライナー

なぜ、私鉄各社がこうした通勤電車を運行し始めたのか。ラッシュを避けゆったり座ってオフィス街に移動できる利便性を提供するためだ。京王ライナーの場合、帰宅時間に下り方面に運行されるだけだが、これも「仕事で疲れているのに立って帰りたくない」という通勤需要に応えている。

S-TRAINやTJライナーの場合、休日には観光列車としての役割も果たす。S-TRAINはデートスポットとして注目される豊洲や、“食の街”として名をはせる横浜中華街を結んでいる。TJライナーは“小江戸”と呼ばれる川越や森林の多い憩いの場「森林公園」にアクセスできる。森林公園は今の時期、紅葉をライトアップするイベントが行われており、相当の集客がある。

ただ、どちらも平日はビジネスパーソンの脚となるという特徴を考えると、観光色の強い西武鉄道の「レッドアロー」や東武鉄道の「スペーシア」とは性格を異にする。

ハイグレード通勤バスでゆったりと

こうした“通勤の高級化”が、バスにも波及しそうだ。

東急電鉄は「ハイグレード通勤バス」の実証実験を2019年1~2月に行うと発表した。

ハイグレード通勤バスの外観(写真提供:東急電鉄)

ハイグレード通勤バスは客席が24席と広々としており、しかもかなり深めにリクライニング可能。Wi-Fi対応、USB、ACアダプタも装備し、パソコンなどが置けるテーブルも用意されている。そして、長距離バスのようにトイレまで備えているのだ。

座席は3列で、シート数は24席とゆったりしている(写真提供:東急電鉄)
かなり倒れるリクライニングシート(写真提供:東急電鉄)
テーブルにPCを置いて作業可能。写真左隅にACコンセントも確認できる(写真:東急電鉄)
通勤用バスながら、トイレ洗面台を完備(写真提供:東急電鉄)

 以前、両備グループの中国バスが運用する「ドリームスリーパー」という、超高級バスを拝見したことがある。しかもこちらは、さらに座席数が少ない14席で、個室タイプだ。とはいえ、ドリームスリーパーは東京~大阪や東京~広島を結ぶ長距離高速路線バス。睡眠を取ることが必須になると思うので、個室という選択肢になったのだろう。

一方、ハイグレード通勤バスは、読んで字のごとく“通勤”という言葉が入っている。つまり、長距離高速路線バスであるドリームスリーパーとは、まったく性格が異なる。

さて、今回の実証実験では、実験区間にたまプラーザから渋谷が選択された。このたまプラーザ駅がある東急田園都市線は、首都圏屈指の混雑路線だ。二子玉川や三軒茶屋からも乗客があり、朝の通勤ラッシュはすさまじいと聞く。国土交通省によると、ラッシュ時は185%の乗車率であるらしい。この田園都市線の混雑を少しでも緩和しようと、ハイグレード通勤バスの実証実験を開始する意図がみえる。

ただ、田園都市線の混雑は、東急電鉄そのものにも原因がある。というのも、東急の本拠である渋谷の再開発を急激に推し進めたからだ。セルリアンタワーや渋谷ヒカリエ、そして渋谷ストリームも開業した。どれもオフィス、商業施設、ホテルといった施設からなる複合ビル。オフィスが増えれば通勤客が増えるし、商業施設も朝の仕込みなどでラッシュ時に通う場合も十分に考えられる。そうした混雑を緩和するために、今回ハイグレード通勤バスを実験し、本サービスにつなげたいのだろう。

一方、東急電鉄はハイグレード通勤バスだけでなく、あわせてたまプラーザでオンデマンドバスやパーソナルモビリティ、マンション内カーシェアリングの実証実験も行う。オンデマンドバスはスマートフォンで乗車予約を行い、病院や公共施設への移動手段になる。パーソナルモビリティは、坂道や細い道路を移動しやすく買い物などに向く。マンション内カーシェアリングは、余っているクルマのリソースを同じマンション内で共有しようというものだ。

東急電鉄これらを日本初の「郊外型 MaaS」(Mobility as a Service:利用者の目的や嗜好に応じて最適な移動手段を提供すること)の実験だとしている。

このMaaSという考え方には、あのトヨタ自動車も積極的だ。トヨタは東京2020オリンピック・パラリンピックを舞台に「Mobility for All」を実現したい考え。パーソナルモビリティもこの施策に組み込まれる。

トヨタが実用化を進める「i-ROAD」(写真提供:トヨタ自動車)

 東急電鉄は実証実験でどのような結果を得るのか。“地獄”とも表現される通勤ラッシュの課題や少子高齢化への対応、高齢者の移動手段確保など、MaaSが貢献できる問題解決はさまざまだ。たまプラーザ~渋谷という、屈指の住宅街と屈指のオフィス街を結ぶこの取り組みが、“住みよい街づくり”にどのように関わっていくのか、楽しみだ。

文明の利器を使ったIT露出狂「AirDrop痴漢」

カレー沢薫の時流漂流 第16回

文明の利器を使ったIT露出狂「AirDrop痴漢」

2018.11.19

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第16回は、Apple製品ユーザーを襲う「AirDrop痴漢」について

我々の生活はありとあらゆるものが電子化し、飛躍的に便利になった。

しかし、あらゆるものの中には当然「犯罪」も含まれ、さらに「痴漢」まで含まれるようになってしまったのだ。

皆さんはiPhone、iPad、Macなどを使っているだろうか。そして満員電車など人が密集する場所へ行く機会が多かったりするだろうか?

上記に当てはまる人、特に女性は注意が必要である。私はと言えば、スマホはアソドロイド、パソコンはウィソドウズ、人ゴミどころか人がいるところにさえ滅多にいかないので鉄壁と言える。

「IT露出狂」の出現

最近、Apple製品を使用した「AirDrop痴漢」なるものが現れているらしい。「痴漢も電子化の時代、わざわざ相手の前に立って局部を見せるような奴は時代遅れですよ」と「AirDrop痴漢」がろくろを回すポーズで語っているかは知らないが、当然褒められたことではない。

「AirDrop」とは、Apple製品間でデータをワイヤレスで送り合うことができる機能である。自分のMacからiPhoneにデータを送ったり、iPhone同士で友人と写真を共有したりできて便利なものだ。しかし、「AirDrop」は登録いらずで簡単な一方、半径9メートル以内にいる「AirDrop」をonにしている相手になら、誰にでもデータを送れてしまうのである。

これを使って画像を共有しようとすると、「Petagine's_iPhone」など、近くにあるApple製品の端末名が表示される。ペタジーニのiPhoneなら止めておこうと思うかもしれないが、ここで「Danmitsu's_iPhone」とか、明らかに女性と思われ、しかも何かエロスを感じる(※個人の感想です)名前を見つけた場合、その端末にわいせつ画像などを送り付ける、というのが「AirDrop痴漢」の概要である。

相手に直接手を触れるわけではないので、人が多い場所だと送ってきた相手の特定はかなり難しい。被害者はわいせつ画像を見せられた不快感と、周りにそういう人間がいるという恐怖感を味わうことになり、加害者はそれを見て楽しむという、いわば「IT露出狂」だ。

便利な機能が出来るたびに、それを使った犯罪が現れるのが世の中というものだが、これも「AirDrop」の機能を悪い意味で上手く使った犯罪である。その知恵を他の事に生かせなかった上に、そういった行為を「楽しい」と思うセンスに生まれて来てしまったことは二重に不幸なことだ。

被害者は女性が多いが、男性でも被害を受けることがあり、グロ画像を送られてきたという被害もある。

また、俳優の加藤諒さんは新幹線に乗っていたところ、車内で携帯をいじっている自分の後ろ姿の写真が「AirDrop」に送られてきたと言う。わいせつ画像でなくても、「お前のことを見ているぞ」というストーカー的恐怖感を相手に与えることも可能なのだ。

被害と「誤爆」を防ぐシンプルな解決法

「AirDrop痴漢」を防ぐ手立てはないのか、というと意外と簡単で、平素は「AirDrop」の設定を「受信しない」にしておき、使う時だけonにすれば良い。

そのほか、名前や性別を特定されないように、「Gorira's_iPhone」など、ユーザーネームを変更しておくのも効果的だ。

画像を共有する相手などいないという人間は、Apple製品を買ったらまず「AirDrop」機能を切るぐらいでもいいかもしれない。何故なら、この「AirDrop痴漢」は知らず知らずのうちに加害者になる可能性もあるからだ。

恋人に送るはずだった語尾が「ぞえ♪」のLINEを上司に送ってしまったり、ツイッターのアカウント切り替えを忘れて美容垢に推しカプがどれだけ尊いか語ってしまったりするような「誤爆」が「AirDrop」でも起こるのである。

しかも、LINEなら登録してある相手にしか送らないだろうし、SNSならある程度他人が読むことを想定して投稿するだろうが、「AirDrop」の場合、半径9メートル以内にいる赤の他人に、1人で楽しむためだけのお宝画像を送ってしまうという事態になりかねないのだ。受信してしまった方も不幸だが、送った方もある意味それ以上不幸である。

このように、「AirDrop」は便利だが、意図せず自分の性癖を含む個人情報を流出させてしまう恐れもあるため、使う時だけonにするのが今のところ一番良いかと思われる。

ちなみに、この「AirDrop痴漢」は犯罪にならないかというと、もちろんそんなことはない。わいせつ画像を送るのは「猥褻物頒布罪」になり得るし、わいせつでなくても相手が不快に思う画像を送り付けるのは「迷惑行為防止条例」違反になる場合がある。

実際、電車内で「AirDrop痴漢」を80件以上繰り返したという男が書類送検されたという。送信者が特定しづらいと言っても「本気を出せば特定できるしバッチリ逮捕もされる」ということはすでに実証されているので、もしイタズラ感覚でやっている人間がいるなら、逮捕されない内に今すぐやめた方がいい。

このような使い方は、Appleが想定していなかったことだろう。つまり、最初に考え着いた人間は、アイディア力にすぐれている。

その力を犯罪以外に使えなかったのは、重ね重ね残念である。