バスとトラックの苦境は打開できるか、日野自動車が自動運転に注力

バスとトラックの苦境は打開できるか、日野自動車が自動運転に注力

2018.05.22

バスとトラックを取り扱う商用車メーカーの日野自動車が自動運転技術に力を入れている。トラックの無人隊列走行や自動運転バスなど、高度な自動運転商用車が実際の道路を走る世界の到来はまだ先のようだが、日野は技術開発を着実に進めており、すでに商品化にも着手している。その技術の一端を今回、日野自動車の羽村工場(東京・羽村市)で体験してきた。

日野自動車の自動運転技術を羽村工場で体感してきた

安全性向上と人手不足対策が急務

日野が自動運転に熱心な理由として最も大きいのは「安全」だ。バスは多くの人を乗せて走るし、トラックは大きくて重いので事故を起こすと被害が大きくなりやすい。そういうクルマを作っている日野として、クルマの安全性向上に向け自動運転技術の活用を図るのは当然といえる。

もう1つの理由としては、商用車を取り巻く環境が挙げられる。トラックとバスが活躍する物流・人流の業界では今、ドライバー不足が深刻化しており、高齢化も進んでいる。物流でいえば荷物の量は増加する一方だし、人流の面では廃止になるバス路線が増えている。商用車×自動運転の組み合わせは効率化・省人化につながるので、こういった状況を打開できる可能性がある。

日野の顧客、つまり商用車を運用する事業者の現状としては、人手不足など多くの問題が浮上している

そんな理由から自動運転に取り組む日野自動車だが、商用車の自動運転には大型車特有の難しさもある。まず、車体が大きいので周囲の状況を検知するのに乗用車よりも多くのセンサー・カメラ類が必要となる。自動走行するにしても、大きすぎて入れない道路などがあるので乗用車と同じ走行経路では対応できないし、交差点の右左折では内輪差の大きさを考慮した制御が不可欠だ。

可能性も難しさもある商用車の自動運転だが、日野は現在、どの程度まで技術をものにしているのだろうか。

運転手の異常を検知し、車両を路肩に寄せる技術

日野は大型観光バス「日野セレガ」に「ドライバー異常時対応システム」(EDSS:Emergency Driving Stop System)を搭載し、この夏に発売する。同システムを商品化するのは商用車として世界初の事例となる。

EDSSのデモを実施したバス

高速バスで運転手の健康状態が急変したことによる事故が多発したことは記憶に新しい。こういった事故を防ぐべく、日野はセレガにEDSSを導入する。EDSSの概要だが、これはクルマの非常停止ボタンのようなものだ。具合が悪くなったドライバー自身、あるいは添乗員などが緊急時、運転席のボタンを押す。ボタンは客席上部にも設置されていて、異変に気づいた乗客も押すことができる。

運転席のボタンを押すと、バスは徐々に速度を落とし停車する。この時、車内では非常事態を知らせる赤色のランプが点滅し、警報ブザーが鳴る。周囲(車外)に対してはホーンを断続的に鳴らし、ストップランプとハザードランプを点滅させて異状を知らせる。

客席ボタンの場合は、車内への報知と緩やかな減速はすぐに始まるが、本格的なシステム作動までには3.2秒の猶予が設けてある。これは乗客が誤って操作した場合やいたずらの可能性を考慮した措置だ。

左は運転席のボタン、右は車内のランプが点滅した時のイメージ(画像提供:日野自動車)

EDSSは非常停止ボタンとしての側面が強く、自動運転につながる技術という印象は薄かったのだが、この先の技術として日野は、ドライバーの異常を自動で検知し、周囲の状況を確認して路肩へと車両を退避させるシステムの実現を念頭に置く。走行中の車線でバスが停止すれば追突などの事故を誘発する可能性もありそうだが、路肩に自動で非難できるようになれば安全性はかなり向上するはずだ。

将来的には自動でドライバーの異常を検知し、周囲の安全を確かめて路肩に車両を退避させるシステムの構築を目指す

トラック隊列走行の完成度は

羽村工場ではこの他、商用車の衝突被害軽減ブレーキ(PCS:Pre-Crash Safety、いわゆる自動ブレーキ)を体感できた。この機能は路線バスをのぞく全ての車種ですでに標準装備としているそうだ。

自動ブレーキが作動したところ

また、トラックの隊列走行についても、日野はかなり進んだ技術を持っている様子だった。先頭のトラックだけが有人の運転で、後に続くトラックが無人で前車を追尾する機能が実用化となれば、当然ながらドライバーの人手不足対策になるし、運べる荷物の量も増えそう。この技術のデモでは、後続車にドライバーは乗っているものの、ステアリングとペダルを操作せずに先行車を追尾し、レーンチェンジまでこなす様子を確認することができた。

隊列走行の後続車に併走するバスから撮影した画像。ドライバーがステアリングから手を離している様子がお分かりいただけるだろうか

バスの技術としては、自動運転でバス停にピタリと寄せる「プラットホーム正着制御」という技術も体感できた。これは路面上の誘導線をバスのフロントガラス上部に取り付けたカメラで認識し、自動操舵と自動減速を行うことにより、バス停にギリギリのところまで寄せられる技術。バス停と低床バスの出入り口の高さが合っていれば、車椅子でも簡単に乗り降りできるというのが同技術の利点だ。

事業者に使ってもらえるかが最重要課題

自動運転にまつわるさまざまな技術を開発している日野自動車。体感した感じでは技術的な完成度は高そうだったが、これらを実際の道路で見られるようになるには、まだ少し時間が掛かるようだ。日野が示したロードマップによると、例えばトラックの隊列走行で、2台目以降の後続ドライバーが運転から開放されて、車両監視だけを行っている状態(後続有人隊列走行の発展型)が可能となるのは、2023年~2024年頃となる見込み。高速道路での自動運転は2025年以降となる。

日野自動車が提示したロードマップ

こういった技術の実用化にとって課題となるものとは何か。日野は「技術開発」「社会受容性」「インフラ・制度整備」「事業化」の4つを提示する。中でも重要なのが「事業化」だそうだが、考えてみれば、いかに優れた技術であっても、コストが高かったりリスクが大きかったりすれば、バスやトラックを運行する事業者は採用を躊躇するのが当然だ。そこは「事業者との連携」が重要であり、この部分をクリアしないと「実現困難」であると日野自動車の遠藤真取締役・福社長も話していた。

日野自動車が示した4つの課題

それと当然だが、こういった技術が世の中に出るためには法律やルールの整備も欠かせない。羽村工場のテストコースで行われたデモでは、ステアリングもペダルもノータッチのトラックが難なくレーンチェンジを行ったり、バスが狙ったところにピタリと止まったりしていたが、実際の道路では無人のクルマを走らせることはできない。

また、例えルールが整ったとしても、同じ道路に自動運転のトラックやバスが走ることに恐怖感を抱く一般ドライバーもいるだろう。自動運転の「社会受容性」を高めることは、日野だけではなく自動車業界全体の課題となってきそうだ。

Googleマップが突然の劣化、ゼンリン地図から自社地図に変更か?

Googleマップが突然の劣化、ゼンリン地図から自社地図に変更か?

2019.03.22

Googleマップが壊れた? 3月21日以降、表示がおかしい

地図のダウンロード機能でゼンリンと決裂したか?

新しい地図は機械学習で地図データ生成という指摘も

Googleマップの表示がおかしい。3月21日頃から、Googleマップの不具合を訴える声が各所で相次いでいる。道路の表示や建物の位置が正確でなかったり、地形すら間違っている場所もある。Googleマップにいったい何が起こったのか。

地図データの提供元がゼンリンではない?

Googleマップの日本地図データはこれまで、地図データで国内大手のゼンリンから提供を受けていた。両社の契約状況は公開されていないが、少なくとも不具合が発生している現在のGoogleマップ上からは、以前までは記載されていたゼンリン社の権利表記が消え、「地図データ (C)2019 Google」へと変更されている。

Googleマップからゼンリン社の権利表記が消えた

Google社は今月のはじめ、今後「数週間以内」に、日本のGoogleマップをアップデートすると予告していた。このアップデートでは、特にダウンロード可能なオフラインマップを追加することに注目が集まっていた。オフライン環境でもダウンロード済みの地図を利用できる便利な機能だが、地図データの契約上の課題があり、日本のGoogleマップでは制限されていた機能だからだ。結局、両社は契約の課題を解決できず、ゼンリンが地図データ提供から降りてしまったことが、今回の不具合の原因と見られる。

新しい地図は使い物になるのか?

現在のGoogleマップは、Googleが新規開発した自社製の地図データを利用しているようだが、いまだに不具合が報告され続けている状態状態であり、混乱が収束する目途は見えていない。

なお、この新しい地図は、航空写真で山脈の陰部分が湖になっていたり、並木の多い道路が公園になっていたりする間違いや、ほかにも交差点に面したコンビニエンスストアの駐車場が道路と語認識されていたりすることから、航空写真をもとにした機械学習や、スマホ位置情報の移動軌跡から地図データを生成しているのではないかと指摘されている。

航空写真では山の陰になっている部分が、川と湖になってしまっている
地図では鎌倉街道から大栗橋公園を抜ける道があるが、実態はただの公園広場だ。スマホ位置情報の移動実績をもとに道と認識したか?

新しい地図の仕組みや改善の見込みについては、Google側のアナウンスを待つほかないわけだが、GoogleマップはAndroidの標準地図として利用されており、影響を受けるユーザーがあまりにも多い。他の地図サービスを駆逐して大きな影響力を持っているのだから、責任も伴うはずだ。

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ペットボトルコーヒーに対抗? キリンが目指す「午後の紅茶」

ペットボトルコーヒーに対抗? キリンが目指す「午後の紅茶」"仕事のお供"戦略

2019.03.22

「午後の紅茶」に微糖のミルクティーが登場

新CMでは無糖・微糖を中心に新しい飲用シーンを訴求

ペットボトルコーヒーに対抗? 今後の戦略は

昨年まで、ビジネスマンの仕事のお供として「ペットボトルコーヒー」に注目が集まっていたが、今年は「紅茶」が主戦場になるかもしれない。

3月26日より発売されるキリンの「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」は、これまでの“ペットボトルのミルクティーは甘い”というイメージに反して、缶コーヒーでいちカテゴリを築いている「微糖」が特徴。また、同社が長らくカテゴリ内最大シェアを誇る「午後の紅茶 おいしい無糖」についても、あらたな消費イメージを打ち出す方針だ。

今春から「午後の紅茶」新CMに出演する新木優子さん、深田恭子さん、リリー・フランキーさん

ペットボトル紅茶飲料のトップブランドと言える「午後の紅茶」。この春から公開する新CMには、既存の紅茶飲料のイメージを覆す狙いが透けて見えた。

2つの軸で「紅茶」のイメージを変える

紅茶飲料のイメージと言えば、「午後の紅茶」の名前の由来となっている「アフタヌーンティー」(英国発祥の喫茶習慣)に象徴されるように、「女性の飲み物」であり、「時間的・金銭的余裕がある人の趣味」というところだろうか。それも紅茶という商品のひとつの側面だが、近年の消費者層のメインストリームではなくなっている。

今回、キリンが「午後の紅茶」新CMで打ち出したのは、大きく分けてふたつの飲用イメージだ。深田恭子さんが仕事で車を走らせ、駐車して一服するのに選んだのは微糖のミルクティー。一方、アーティスト然としたリリー・フランキーさんが飲んでいるのは無糖の紅茶。2本ともに「仕事のお供」としての訴求が挙げられる。

車を止め、「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」をひとくち飲む
絵を描く合間にのどを潤すのは「午後の紅茶 おいしい無糖」

もうひとつは、おなじくリリー・フランキーさんがカレーと紅茶飲料を一緒に味わうというCM。過去には同社の無糖紅茶が「おにぎりに合う」と訴求したこともあるが、あらためて食事中の飲料として「フードペアリング」を提案する。

カレーのような香りの強い食べ物とも合わせられる点を訴求
最年少の新木優子さんは、無糖紅茶を飲むようになった自分を「大人になった」と評するCMに出演。若者への無糖紅茶訴求を担う

紅茶を、コーヒーや緑茶と並ぶカテゴリに

カフェなどでは食後の飲み物をコーヒーか紅茶から選ぶのが定番だが、ペットボトル飲料市場では状況が異なる。コーヒーに次ぐ大規模市場は緑茶飲料で、紅茶はそこから比べるとかなり小規模だ。日本全体の清涼飲料市場で見れば、そのシェアは5%以下。仕事中の飲料としてメジャーなコーヒーが14.5%、緑茶飲料が13.3%という数字を見ると、半分以下という状況となっている。

清涼飲料市場において、紅茶はコーヒー、緑茶と比べて市場が小さい

こうした市場背景を確認した上で、今後「紅茶を、コーヒーや緑茶などの無糖茶と並ぶカテゴリに成長させたい」と意欲を示したのは、午後の紅茶を担当するキリンビバレッジ マーケティング部 商品担当 部長代理の加藤麻里子氏。世界での紅茶飲料と茶葉生産量の伸び、国内紅茶市場の回復傾向を論拠に、RTD紅茶のトップブランドとして、新しい紅茶文化を創っていきたいと語った。

「午後の紅茶」ブランド全体としては、既存の定番3種は甘さを求める若年層に対して継続投資を実施。甘さから離れる20代~30代の働く女性に向け、紅茶飲料としては珍しい「微糖」の新製品「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」を投入する。

午後の紅茶ブランドにおける年代別の主要商品マッピング

また、30代後半意以降の年代を健康意識や嗜好の変化から「糖離れ・無糖飲用層」と位置づけ、すでに市場で受け入れられている「午後の紅茶 おいしい無糖」の訴求強化を行っていく。

狙うはペットボトルコーヒーへの「対抗」ではなく…?

「2年前までコーヒーのCMをやっていたのにどのツラ下げて…というのはありますが」と茶化しながらも、自分のような「おじさん」にこそ紅茶は飲みやすいとコメントしたリリー・フランキーさん

製品ごとに異なる年齢層を狙って投入される新CM。「キリン 午後の紅茶 おいしい無糖」「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」のCMでは、商品をことさらには誇張しない画面作りやキャスティング、出演者の自然体な演技とは裏腹に、「コーヒーから寝返っちゃおうかな」(リリー・フランキー出演「寝返り」編)、「ラテよりこっちかな」(深田恭子出演・「裏切られた」編)など、“コーヒー飲料からの転向”を示唆するようなセリフが目立つ。

働く大人がコーヒーから紅茶に「乗り換え」することを示唆するCMは、ここ2年でワーカー向けのペットボトル飲料の拡大を牽引し、ちょうど先日同ブランドから紅茶飲料を発売したサントリーの「クラフトボス」をはじめ、昨今増えているワーカー向けのコーヒーペット飲料に対する宣戦布告にも読める。だが、加藤氏にペットボトルコーヒー飲料のヒットに紅茶で対抗する構えかどうか尋ねると、決してそうではないという。

「今やひとつのカテゴリとなっているペットボトルコーヒー飲料も、複数社から新商品を展開し、協力して棚の広さを獲得した経緯があります。現状、紅茶飲料の棚は一段程度ですが、これを各社協力して2段へと増やしていきたいです」 

オフィス需要に対して、企業とコラボレーションし飲用機会を設ける試みも

また、「仕事のお供」需要を喚起する施策として、三菱地所に対して仕事中の飲料として「キリン 午後の紅茶 おいしい無糖」を提供。働き方改革推進企業とコラボレーションし、オフィスでの休息機会に手に取る飲料として配布する。今後、他の企業からオファーがあればそちらにも対応するとのこと。想定シーンに対して直接サンプリングすることで、需要の広がりを見込んでいる。

「午後の紅茶」は、日本国内の紅茶飲料としてはNo.1ブランドの地位を獲得しているだけに、紅茶飲用の文化を牽引して、先述の通りコーヒー・緑茶に並ぶ市場規模への拡大を狙っている。

昨今はスターバックスの「TEAVANA」、タリーズコーヒーの紅茶業態などが定着しており、タピオカミルクティーブームも依然続くなど、カフェ業界でも紅茶に追い風が吹いている。今後、午後の紅茶が「コーヒー党」や「緑茶党」をどれだけ引き込めるか、注目したい。

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