グーグルの「Google Pay」がSuicaに対応した、本当の狙いとは?

グーグルの「Google Pay」がSuicaに対応した、本当の狙いとは?

2018.05.31

5月24日、グーグルは決済サービス「Google Pay」がSuicaとWAONに対応したことを発表した。国内ではnanacoと楽天Edyに加え、4種類の電子マネーに対応したことになる。

Google PayがSuicaとWAONに対応、対応電子マネーは4種類に

だが、これらの電子マネーを使えるのは「おサイフケータイ」対応スマホのみで、大きなインパクトはないように見える。グーグルの本当の狙いはどこにあるのか。

Suica、WAON対応も「おサイフケータイ対応スマホ」のみ

Google Payは、2018年2月まで「Android Pay」の名前で知られていたグーグルの決済サービスだ。名前の通り、アップルのApple Payに対抗する存在として18カ国以上に展開しており、世界的な普及を目指している。

具体的な決済手段は、Google Payに紐付けた電子マネーやクレジットカードになる。日本では2016年12月に楽天Edyに対応してスタートし、2017年4月にはnanacoに対応。今回SuicaとWAONが加わったことで、国内の主要な4つの電子マネーに対応した。

Apple Payと同じ「Suica」に加え、イオンの「WAON」にも対応した

残高のチャージには、グーグルのアカウントに登録したクレジットカード(WAONではイオンカードのみ)を利用できる。従来のモバイルSuicaでは、JR東日本の「VIEWカード」を使わない限り1030円の年会費がかかっていたが、これが無料になった。

ただし、対応機種はFeliCaチップを搭載した「おサイフケータイ」対応スマホに限られる。これはアップルも同様で、日本向けiPhone 7がFeliCaを搭載したことで初めてSuicaに対応した。裏を返せば、多くのSIMフリー端末や海外端末では利用できないことを意味している。

国内ではガラケーの時代から「おサイフケータイ」は実現していた。グーグル自身も「日本は世界に先駆けて電子マネーに取り組んでいる」と認めている。では、グーグル今になってSuicaやWAONに対応した狙いは、どこにあるのだろうか。

国内で早くから実現していたおサイフケータイだが、実際に使っている人は意外と少ないとの指摘もある。モバイルSuicaの場合、Apple Pay効果も相まって2017年11月には会員数が500万人を突破したが、Google Payによるプロモーションが加わればさらに利用者の増加が期待できる。

また、2018年2月には「Android Pay」から「Google Pay」へ改名したように、スマホ以外の決済も視野に入れている。「オンライン決済」機能では、対応のウェブサイトやアプリでの買い物に利用できる。将来的なキャッシュレス社会を視野に入れた枠組みとしても有望だ。

ネットでの買い物にグーグルのクレジットカード情報を利用できる

その先には、次々と登場する決済手段を統合するというビジョンもある。中国のQRコード決済が脚光を浴びているように、決済サービスは国ごとに大きく異なる。日本でも、コンビニやファストフード店に表示されるロゴは増加の一途を辿っている。

利用できる決済サービスのロゴが次々と増えている

これらの決済サービスごとに、個別の専用アプリでチャージや残高管理をしていくのはあまりに煩雑だ。グーグルが見据えているのは、グーグルのアカウントのもとにこれらを紐付けることで、一元的に使えるようにする世界といえる。

ただし、アップルに遅れを取っている感は否めない。今夏には「QUICPay」に対応するが、「iD」への対応予定はなく、Suicaのプラスチックカードを移行できるのもApple Payだけだ。海外旅行時に便利なVisaやMastercardによる非接触決済についても、グーグルは対応予定を示していない。

その遅れを取り戻し、Google Payで使える決済サービスを増やしていくには、さまざまなステークホルダーとの交渉や調整は避けられない。SuicaとWAONへの対応は、グーグルがこうした泥臭い仕事を引き受け、日本市場に本格的にコミットしていく意思表示といえそうだ。

Adobe本社で働く日本人に聞いた、「Tech Transfer」

Adobe本社で働く日本人に聞いた、「Tech Transfer」

2018.05.31

カリフォルニア州サンノゼにあるAdobe本社。Adobeといえばフォトショップなどで有名だが、その基幹技術の開発は、この地で行われている。というのも、本社には「Adobe Research」があるからだ。現在、AIやイマーシブなど、バズワードであり、確実に今後5年、10年を形作る技術の開発を行っている。同組織に所属する日本人、技術アーティストでコンセプトデザイナーの伊藤 大地氏に技術開発の最先端を聞くことが出来たのでお伝えしたい。

Adobe Research 技術アーティスト コンセプトデザイナー 伊藤 大地氏

Tech Transferが実現する未来

Adobe Researchが目指すことのひとつは、「Tech Transfer」だと伊藤氏。AIやAR、VRに関連した特許、技術はこれまでもAdobeとして数多く保有しているが、「さまざまな技術カンファレンスに参加して技術動向を見ながらコンセプトを固め、どうAdobe製品に応用していくのか。それを固めていくことが大切な役割」だという。

こうしたバズワードを用いることは業界のトレンドであり、もはや聞き飽きたという読者も少なくないだろう。ただ、Adobeというテクノロジー界の大企業の技術部門が真正面から取り組んでいる事実は、重要な意味を持つ。AIはともかく、ARやVRは一部の端末でしか再現できないため、「そもそも文化として定着するのか?」と疑う人も少なくないだろう。

だが、これらの製品に対してAppleやGoogle、Microsoftなどのアメリカ勢、SamsungやSonyといったメーカー勢も取り組んでいる。何より、多くの人が織り成す文化を形成する「エンターテイメント」の領域において、フォトショップなどの製品で絶大な影響を持つAdobe製品がARやVRに取り組むことで、エンタメのクリエイティブを作る時間、お金の両方のコストが劇的に下がることになる。

現時点では、確かにARやVRは一歩先の未来だ。だが、ハードウェアの面でインフラが整えば、コンテンツは数年先というそう遠くない未来に、Adobeが製造しやすい手段を整える。もちろん、研究開発部門がARやVRに取り組んでいるというだけで、実際に製品に技術が適用されるのかわからない。だが、確実に技術開発している事実は、見逃してはならないだろう。

特に、AIについては、すでに日本の「先生」をもじった「Adobe SENSEI」として機能をリリースしている。今後もAIをすべてSENSEIとして展開するのかはわからないものの、先生のようにユーザーを自然とクリエイティブ作業に集中できるよう導くという機能開発をやめるとは考えにくい。AIに至っては「未来」ではなく、「現実」なのだ。

スニークプレビューで新技術を見せる意味

Adobeは、かねてよりクリエイター向けイベント「Adobe MAX」を開催しているが、伊藤氏は日本向けに「スニークプレビュー」と呼ばれる、リサーチ部門で開発した技術の"チラ見せ"を行ってきた。

なぜ研究開発部門が、技術をチラ見せするのか。もちろん、AdobeやGoogleなどのテクノロジー企業が最先端の技術開発を行っていることに疑う余地はない。だが、世界は多様で、さまざまなプレイヤー、業態、業界がある。テクノロジーはあくまでユーザーに企業が届けたい価値の柱の一つであり、価値そのものではない。

もちろん、技術が占める割合は大きくなっているものの、例えば外食産業であれば、その価値は「よりよい飲食物を、その企業が考える最大価値で、低コストに提供する」というものだろう。技術は低コスト化や、利便性などに寄与するものであって、飲食物のアイデアなどがコアだ。

その応用するための技術は、そうした企業主体が存在することで初めて意味あるものになる。だからこそ、将来製品に応用していく技術を"チラ見せ"することで、その技術が本質的に求められているのか、改良する必要があるのか、「ユーザーが、開発者が考える『いいね』を見る事が出来て、それにユーザーがどれくらい『いいね』と思ってくれるのか見られるのがスニークプレビューなんです」(伊藤氏)。これまで、多くの機能がプレビューで見せられ、実際に機能化されているものの、細かい部分では「出ていない技術もある」(伊藤氏)という。

今回のインタビューで伊藤氏、そしてAdobe ResearchのPrincipal ScientistであるVishy Swaminathan氏に解説してもらったのは、昨年末のAdobe MAXと、今年春の Adobe Summitにおけるスニークプレビューでもプレゼンした技術だ。今回見せてもらったものの多くは、ディープラーニング技術を用いたもので、AIの進化をまざまざと見せつけられた。

例えば、「Video Ad AI」は映像解析によってメタタグを自動付加するもので、名前の通り急伸する動画配信プラットフォーム向けの動画広告に応用される。

これまでは広告担当者が動画をすべて見てタグデータを考え、割り当てていたものが、その作業を簡素化出来る。もちろん、これはAdobe SENSEIの画像データへのメタタグ割当と同じ機能と言えるが、Video Ad AIはこれにとどまらない。

Adobe Research Principal Scientist Vishy Swaminathan氏

例えば、YouTubeではある程度の"じっくり視聴"が許容されるものの、配信先をFacebookやInstagramに切り替えれば、インフィード広告で一瞬のブランディングが肝になる。そうした配信先の違いを読み、最適な動画トリミング、さらに言えばその動画再生時間の短縮も、切り出しではなく、「人が感動するポイント」をピックアップして再構成してくれるようになる。このアウトプットしたデータは、完成品としてだけでなく、Adobe製品の動画編集専用のファイル形式で出力されるため、再編集も可能になる。

「ディープラーニングにおけるニューラルネットワークの再現のように、脳の働き方を再現したものだ。一つのオリジナルビデオを見て(読み込ませて)、人が思い返す時に印象深いシーンだけ思い浮かべるように、印象強いタグの部分などをピックアップする。その作業を、1000件を超える動画で学習させたことで、このような機能を実現できた」(Swaminathan氏)

一方で、自身もアーティストとして活動する伊藤氏に紹介してもらったものは、「Project Scribbler」と「Makeup Transfer」「Project Puppetron」「Project Cloak」だ。「Project Scribbler」と「Makeup Transfer」「Project Puppetron」の3つは、いずれもさまざまな画像データを学習させたディープラーニング技術を適用させたものとなる。

Scribblerは、白黒写真を自動カラーリングするもので、実に数万枚も学習させたという。

「ポートレートは自分自身、描きますが、デッサンしても色付けまでかなり時間がかかる。絵だけじゃなくて写真も可能で、対応できる画像の幅はかなり広い」(伊藤氏)。Makeup Transferは文字通り、メイクアップした画像のメイク要素を抜き出してほかの人物に適用できるもので、肌の色の違いを乗り越えられるほか、男性にもメイクを施せる柔軟性を持つ。また、Project Puppetronについても、銅像などの特徴をAIが学習して人物に適用可能となる。

Project Cloakについては、動画で不必要な領域の存在を消すことが出来る機能だ。

例えば観光地における電柱や、結婚式における新郎新婦の横に写り込んだ人など、「どうしても消したい存在」を消せる。これまでは、手作業で1フレーム毎に作業するか諦めなければならなかったが、これを自動的に、背景を計算して上塗りしてくれる。「無ければいいのに、というものを周囲のパターンをコピーして消すというやり方だと連続再生した時に違和感を覚えるケースがある。全フレームを加味して前後のフレームから必要部分のみをコピーする事で、自然に消すことが可能だ」(伊藤氏)。

これらの技術は、いずれも非常に完成度が高く見えたものの、Adobeとしてはあくまで研究開発の位置付け。もちろん、製品に組み込むとなれば、無限大のシーンに適用できるようにしなければならず、そこで完成度の低い技術と印象づけてしまっては元も子もないということだろう。

だが、β版としてでもこの機能を開放して利用できるようになれば、恩恵を受ける企業は少なくないはず。数年後と言わず、すぐそこの未来を感じた取材だった。

デザイン家電を“値ごろ価格”で実現 - アイリスオーヤマ「ricopa」シリーズ

モノのデザイン 第37回

デザイン家電を“値ごろ価格”で実現 - アイリスオーヤマ「ricopa」シリーズ

2018.05.31

アイリスオーヤマが2016年12月から展開している「ricopa(リコパ)」シリーズ。スペイン語で「おいしい・楽しい」を意味する"rico(リコ)"と、"party"の"パ"を組み合わせた名称で、女性向けにデザインした調理家電だ。

アイリスオーヤマが女性向けのデザイン家電として展開する「ricopa シリーズ」の第一弾として発売されたIHクッキングヒーター

近年、生活用品のみならず、家電メーカーとして近年転身を遂げ、業界内でも躍進を続けるアイリスオーヤマ。デザイン性を全面に打ち出した製品群として注目を集めるこのシリーズについて、同社デザインセンターでマネージャーを務める宮脇将志氏に製品化に至った背景や、同シリーズの戦略について話を聞いた。

3色のカラバリを展開した理由

アイリスオーヤマ デザインセンター マネージャー 宮脇将志氏

「リコパ」の第一弾として登場したのは、「IHクッキングヒーター」。宮脇氏は、第一弾として発売する製品の選定理由を、次のように明かす。

「弊社の家電製品の中でも、IHクッキングヒーターはもともと強い商品です。これまで以上により購買層の裾野を広げたいということで、新しい取り組みをやってみようということになりました」

リコパシリーズの世界観を示すために、商品はいずれもベージュ系、ピンク系、水色系の3色が揃えられている

宮脇氏によると、新しい取り組みとして意識されたのが、昨今の流行である"インスタ映え"。「時代は今、"モノ"というよりも"コト"が求められる傾向にあります。そこでパーティーなど人が集うシーンをイメージした、ライフスタイルを彩るような製品として、リコパはスタートしました。従来の製品群というスタンダードなラインを保ちつつ、それとは違うラインも提案していこうという位置づけです」と話す。

実際に製品を企画するにあたっては、女性をターゲットにしたレトロでかいらしいイメージを設定。そこでこだわったのは3色のカラバリ展開だという。リコパシリーズでは、第一弾以降の後続製品でも、ベージュ系、ピンク系、水色系の3色が必ずラインナップしている。カラバリを必須にすると、売れ筋以外の在庫を抱える恐れなど、メーカーとしてはリスクが伴うもの。宮脇氏は、それでもあえてカラバリを展開した理由を次のように説明した。

「3色カラバリを用意するというのは確かに躊躇するところですが、リコパシリーズでは、3色ワンセットで"世界観"をを表現しているため、絶対に外せない要素なのです」

しかしながら、カラバリの実現は想像以上に苦心したという。例えばIHクッキングヒーターとセットで販売している鍋の素材は金属を採用している。家具やペット用品などの日用雑貨などの生活用品も多数手がけるアイリスオーヤマでは鮮やかな色の塗装は得意としていたものの、樹脂素材のIHヒーターと金属の鍋の色味をそろえることには難儀したと語る。

宮脇氏は、「ディティール、特に仕上げの部分は特に課題ですね。製品がたくさん売れれば  低コストで質の良い塗装ができるので、今後も少しずつ改良していきたいと思っています」と語る。

デザイン家電を“値ごろ価格”で実現

同氏がこのように課題を語るのも、実はアイリスオーヤマならではの特異なこだわりがあるため。というのも、アイリスオーヤマの家電製品全体の軸として貫かれているのは"値ごろ感"だ。「製品がどれだけよくても、消費者の手の届かない価格であってはならない」という、同社の企業価値とも言える要素がブレてはならない。

「弊社では、値段を決めてから開発を進めていきます。だからこそ、絶対に赤字にならないという企業としての強みにもなっているんです」と宮脇氏が語るように、製品は“なるほど”“オンリーワン”“便利機能”など、まずはコンセプトが最優先。次に“値ごろ価格”で企画され、設定した価格の中でいかにそのコンセプトを実現できるのかを重視して開発されるのだという。それゆえ、リコパシリーズでラインナップされる製品は必然的に単機能のものが選ばれているとのことだ。

そしてその哲学は、デザインのあり方についても変わらない。ただし、デザイン家電と言うと一般的には高級感も重要な要素。値ごろ感で製品企画を考える場合には相反する要素でもある。だが、レトロ感が醸し出す"チープさ"を逆手にとってかわいらしさを表現しているのもリコパシリーズの特長と言える。

リコパシリーズのオーブントースター(左)と電子レンジ(右)。シンプルに機能を絞りながらも、操作方法が極力わかりやすくデザインされている

しかし、リコパシリーズは雑貨ではなく、通電して使用する家電製品。そこで安全性や品質管理といった要素も求められる。デザインの企画開発を進める上で予想以上に難儀したのはこの点だったそうだ。

宮脇氏は、IHクッキングヒーターの天板ガラス部分を例にとり、通常は白か黒がスタンダードな天板にカラーを施した際の苦労を語った。

「温かみを表現するため、天板はどうしてもクリーム色を採用したかったんです。そこで表面にプリントを施すという方法で実現しました」

IHクッキングヒーターとしてはあまり例のないクリーム色の天板。リコパの世界観を表すためにはどうしても外せないこだわりだったとのこと

他にも、デザインの観点から持ち手を付けたものの、「持ったときに、万が一、折れたりグラついたりすると危ないので止めて欲しい」と品質管理から待ったがかかったというエピソードも。その後、開発と協力し、固定方法の再検討や裏面にリブを施すなどして、デザインと安全性を両立させたという。

品質管理部門から待ったがかったという持ち手の部分。裏面にリブを施すなどして安全性の懸念点を回避した
異なる素材が用いられている鍋とIHヒーターとでは、同じ色にしても発色の仕方が異なってしまう。質感を違和感なくするため、色合いの調整にはかなり難儀したそうだ。

デザインも企画も、担当者が「伴走」して製品開発

リコパシリーズは、第二弾として翌2017年11月に発売された「ミニホットプレート」「オーブントースター」「電子レンジ」の他に「電気ケトル」が現時点でラインナップされている。前述のとおり、いずれも3色のカラバリが用意されているが、色の系統は統一されていても、実は質感や色のニュアンスなど、同一で揃えられていない部分もある。

宮脇氏によるとその理由はもちろんコスト面の問題でもあるが、「製品としての完成度を大事にしている」とのこと。シリーズ製品に共通したデザインの特徴として、ボタンとダイヤル、取っ手部分に関してはゴールドの塗装が施されているが、ホットプレートに関してはメッキが採用されている。「ホットプレートに関しては本体が全面的にホーロー素材なので、質感として相性がいいのはメッキ。シリーズとはいえ、単品で購入される方もいるので、単品で評価して製品そのものがベストと評価されるデザインを採用しています」と話す。

ホットプレートの持ち手部分はあえてメッキを採用。他の製品とは異なるが、シリーズとしての統一感以上に単体の商品としての仕上がりが大事にされている

アイリスオーヤマでは、現在、R&D部門は東京、大阪、宮城県角田市に置かれている。各拠点ごとにデザイン部門が設けられており、週一で開かれるプレゼン会議で、企画から製品デザインまで決定されるのだという。

さらに、同社では"伴走方式"と呼ばれる開発体制が取られており、他社との特異性を宮脇氏は次のように話した。

「すべての商品開発部門で、企画を担当する事業部、 開発担当、デザイン担当、品質管理まで、関係部門の担当者が集まって週次会議を行っています。一般的には、デザイナーはある程度製品が固まった段階で加わります。一方、弊社では企画段階から製品化の詰めの部分、コストの積み上げの部分まで、デザイナーがすべて関わりますので、他社にはあまりないやり方だと思います。というのも、今は家電が事業の軸となっていますが、アイリスオーヤマは元々生活用品だけを手掛けていたメーカー。生活用品はデザイン=設計という要素が強いため、基本としてそうしたやり方が続いていているのだと思います」

少々失礼な言い方ではあるが、"質実剛健""コスパ優先"という印象を持っていたアイリスオーヤマの電化製品。そのため、デザイン性を打ち出したシリーズが登場した当初は驚いたものだ。

そしてリコパシリーズのみならず、同社の家電製品は年々、全般的にデザインが洗練されてきていると感じている。宮脇氏曰く、「デザインは機能の一つと考えている」とのこと。しかし、"便利で優れたものをユーザーの手の届く価格で提供していく"という基本方針は今後も決してブレることはないと強調する。

巷のデザイン家電のように、デザイン料とも言える付加価値を価格に上乗せていく方向性ではなく、設定された販売価格に対して、利益を鑑みた上で、品質やデザイン性も極力優れた商品を提供していくアイリスオーヤマの企業哲学。ユーザー本位とも言えるその企業姿勢と努力が、"我が道を行く風雲児"として家電業界に今後もインパクトを与え続けることを期待したい。