企業が社員の英語力を育てる時代、社員が意識すべき

企業が社員の英語力を育てる時代、社員が意識すべき"コツ"とは?

2018.04.05

社内公用語が英語の楽天、TOEICスコアが900点で100万円ボーナスが支給されるソフトバンク。「どちらもグローバル展開しているからうちには関係ない」と思われるかもしれないが、2017年の訪日外国人が前年比約20%増の2869万人、2020年の目標数が4000万人という環境の中で、いくら国内企業といえども英語を無視するわけにはいかない。

訪日外国人のうち、およそ3/4はアジア圏であり、必ずしも英語が必要というわけではない。ただ、どの国でも英語を学ぶ点、将来的なビジネス開発を見据えるのであれば、やはり英語を勉強するに越したことはない。そこで、TOEICを実施・運営する国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)のIP事業本部 IP普及ユニット ユニットマネージャーの永井 聡一郎氏に、ビジネスにおけるTOEICの活用について話を聞いた。

国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC) IP事業本部 IP普及ユニット ユニットマネージャー 永井 聡一郎氏

企業が英語力を育てる必要性

訪日外国人数が増えることで最も恩恵をうけるのは宿泊施設だろう。昨今は民泊解禁に合わせ、競争も激しくなる。そんな時代だからこそ、英語コミュニケーションが重要と永井氏は語る。

「4000万人、その先の6000万人という訪日外国人数の目標がある中で、一番重要になるのが宿泊施設です。集客はさまざまなWebサービスを介して可能な時代です。ただ、何度も日本を訪れるような外国人にリピートしてもらうためには『感動体験』が大切なんです。コミュニケーション領域は、お金をかけたからといってすぐに成果が見えるわけではない。ですが、ここのところのインバウンド需要の増大に合わせ、投資メリットを見出すところが増えてきています」(永井氏)

オンライン上は最悪、翻訳サービスを噛ませることで対処できるが、「オフラインは人的な対応が重要になる」(永井氏)。例えばホテルではコンシェルジュが英語に対応できるものの、それ以外のスタッフでは対応できないケースがある。

「多くのホテルは英語対応マニュアルを作成しています。ただ、従業員は内容こそ覚えていても"理解"はできていない。『当ホテルは景色が自慢です』と説明できても、『あの窓の向こうにある建物はなんですか?』と尋ねられたらアワアワしてしまう。フレキシブルに対応するためには、会社として学習に取り組む必要があるんです」(永井氏)

訪日外国人への対応策では、5年前と現在で環境が変わっている。5年前の課題筆頭は「Wi-Fi環境の整備」だった。しかし、この5年で主だった企業は整備をほぼ完了したことで「ハードからソフトへ、訪日客への柔軟なコミュニケーション手段の提供が重要になってきている」(永井氏)。

ホテル向けにIIBCがセミナーを開催した際、永井氏は大手ホテルチェーンの人事担当者に「採用時に重視するのは、後から育てられる英語力や接客の資格ではない。お客さまに『ありがとうございます』と言われて喜びを感じられる感性を持つ人か」という話を聞いたと話す。

この大手ホテルチェーンはこれまで、数多くの訪日外国人を相手にしてきた企業だ。老舗企業だからこそ、と言えばそれまでだが、即戦力の英語人材が喫緊の課題であるはずの企業が、その会社にとって大切な価値を優先して「英語力は企業が育てる」という意識を持つ現状を鑑みれば、昨今の「目先の英語対応」に追われる企業にとっては一考の余地があるだろう。

一方、訪日外国人とは関係性の薄い一般企業であっても、やはり英語を意識する企業は増えている。ビジネスパーソンは昇進のためにTOEIC 600点が必要、といった条件が課せられるケースが増えている。ただ、こうした条件は「600点を課すのは本来、実務に応用して仕事の成果に結びつける目的のはずなのに、社員は点数を超えて"卒業"したつもりになる」(永井氏)。

永井氏は、その得点目標を超えた後は、今度は英語で書ける、話せるといったアウトプットを継続的にトレーニングし、「スコアではなく、スキル化すべき」と話す。IIBCとしては、スコアはあくまで現在の英語の実力を図るための指標であり、立ち位置の確認のためのもの。今の立ち位置から先、400点しか取れないのであれば学習ペースを引き上げるのか、あるいはリスニングとリーディング、弱点克服なのか、長所を伸ばすのかなど、自分自身と向き合うためのスコアだ。

「大企業であっても中小企業であっても、人事・研修の担当者の悩みは共通している。実務に利用できる英語力のために、良い英語研修を用意しても、社員自身にやる気がなければ意味がない。モチベーションを維持するために、外国人と対話できるイベントのセッティングなどは大きく引き合いがあり、さまざまな業種の大手企業に英語を気軽に使うためのカフェイベントなどを提供している」(永井氏)

例えば、ある女性向けメーカーでは、海外売上比率を8割に引き上げる経営目標を掲げているが、社内調査の結果、英語を"使える"人材は2割にとどまった。「それでも、サプライチェーンがグローバルで一体化する中で、生産部門と企画部門が一体となってコミュニケーションしなければならない時代、社内の英語人材にすべてのコミュニケーションを任せる訳にはいかない。だから、英語力を一体となって引き上げなればならない」(永井氏)。

大切な"自分ゴト化"

永井氏は、人生における英語、という観点で英語学習に取り組んでほしいと話す。

「基本的に、英語という言葉は、自分の将来において接点がないことはない。それは多くの人が感じていると思うし、キャリアステップを考えた時に、選択肢が生まれ、チャンスが広がることは間違いない。IT関連、インバウンドと、今そこに英語を必要とする環境がある中で、必要になってからやる、では時間がかかる。今からやることが大事」(永井氏)

企業も"英語初心者"の引き上げに対してさまざまな手を講じているし、IIBCとしても「TOEIC Bridge Test」という入門編とも言うべきテストを提供している。「ブリッジテストは、2時間200問の通常のTOEICではなく、1時間100問で構成されています。『これならわかる』という感触を得やすいから、初心者はモチベーションを保てる」(永井氏)。

大事なことは「スコアの先を常にイメージすること」(永井氏)。TOEICのスコアが目的ではないように、英語学習自体を目的にするのではなく、どういう場面で英語を使えるようにしたいのか、その目標をイメージすることが大切だと永井氏は説く。

「ずいぶん昔の話かもしれませんが、英語学習は一部の人が海外に憧れ、その人だけが学習すれば良かった。モチベーションがあるから彼ら彼女らは良かったけど、今英語学習に取り組んでいる人たちは、"やらされて"、苦しんで学習している。いつか自分の仕事で英語を使うシーンをイメージして、それが難しければ身近な人の英語を使っている業務を想像する。もちろん、一人で考え込まずに友人や部署など、みんなで同じ目標を目指して共に学び合っていくといったことも、学びに繋がります」(永井氏)

企業の中には、定期的にTOEICを受けさせてそのスコアが基準を下回れば降格させるといった内規があるケースもある。少子高齢化が進む中で、国内需要を相手にしていては成長が見通せない。自身の成長と会社への貢献、その双方を見据えたとき、英語というツールが必須要件なことは明白だ。いかに自分ゴトとして捉えられるか、それが英語力アップと自身のキャリアアップの近道と言えよう。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

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掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

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○森口将之のカーデザイン解体新書
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○清水和夫の自動運転ソシオロジー
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○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
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○岡安学の「eスポーツ観戦記」
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○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
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○藤田朋宏の必殺仕分け人
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○阿久津良和のITビジネス超前線
https://news.mynavi.jp/series/itbiz

○山下洋一のfilm@11
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○モノのデザイン
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○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
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○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
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○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
https://news.mynavi.jp/series/font-history

○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu