【電通】クロスボーダーM&Aで“世界の電通”へ

【電通】クロスボーダーM&Aで“世界の電通”へ

2016.06.21

【電通】クロスボーダーM&Aで“世界の電通”へ

電通<4324>は1906年設立。光永星郎が01年に設立した日本広告及び06年に設立した日本電報通信社の2社が合併し発足した。36年、日本電報通信社が有したニュース通信部門を売却し、広告代理店専業となる。

 2015年3月期よりIFRSを適用しているため、決算短信上の収益(ネット売上高)は7064億円であるが、「顧客に対して行った請求額及び顧客に対する請求可能額の総額」として公表しているグロス売上高は連結で4兆5260億円。2位の博報堂(連結売上高:1兆1130億円)、3位のアサツーディ・ケイ(連結売上高:3519億円)を大きく引き離し、国内広告業界の首位を独走している。

 電通は日本のみならず、15年の売上総利益に基づく広告コミュニケーション産業のランキング(『アドバタイジング・エージ』誌発表)においても世界5位を記録する、グローバルな企業集団である。

 そうは言っても、今でこそグローバルな地位と活発なクロスボーダーM&Aのイメージを持つ電通であるが、意外にも10年頃までは国内での売上高が90%以上のドメスティックな企業であった。00年代前半までの海外展開は主に日本の電通を海外に輸出するというスタイルで、自前で拠点をつくり、人を雇うことで海外への足掛かりを得る形を取っていた。

 転機となるのは13年4月の英国イージス社の買収であるが、まずはそれ以前をかいつまんで見て行きたい。

■これまでに行った主なM&A

年月 内容
2004.6 スポーツマーケティング会社のワールド・スポーツ・グループ・ホールディングス(シンガポール)の株式の30%を買収。
2004.9 韓国における電通関連会社である電通イノベック(売上高35億円)の株式を40%から85%まで追加取得。
2005.8 電通国際情報サービスを通じて、ソフトウェア開発のブレイニ―ワークス(売上高100億円)の株式を66.1%から95.3%まで追加取得。
2005.11 電通国際情報サービスを通じ、IT分野で協業していた兼松エレクトロニクス(売上高631億円)の株式の12%を34億2000万円で譲渡。
2005.11 CRMの専門会社であるインターロジックス(売上高5億円)の株式を14.71%から50.01%まで追加取得、子会社化。
2005.11 電通国際情報サービスを通じ、ITコンサルティングなどを手掛ける日本ビジネスクリエイト(売上高7億8000万円)の株式75.6%を5億4000万円で譲渡。
2005.11 株式交換により連結子会社の電通テック(売上高1569億円)の株式の31.1%を約131億円程度で追加取得、完全子会社化。
2006.3 電通国際情報サービスを通じ、コンピュータ解析・コンサルティングのエステック(売上高9億円)の株式の100%を買収。
2006.3 セールスプロモーションや交通広告を得意とする名鉄エージェンシー(売上高159億円)の株式の50%を買収。
2006.7 大型撮影用スタジオの運営を行う横浜スーパーファクトリー(売上高7億円)の全株式を9600万円で買収。
2006.9 キャラクター・マーチャンダイジング業界大手のソニー・クリエイティブプロダクツ(売上高74億円)から第三者割当増資の引受により株式の33.33%を買収。
2007.10 英国及び米国のクリエーティブ・ブティックのアティック社の株式の100%を買収。
2007.12 公開買付によりeマーケティング事業に強みを持つオプト(売上高255億円)の株式の18.1%を102億円で買収。
2008.4 キャラクター・マーチャンダイジング業界大手のソニー・クリエイティブプロダクツ(売上高74億円)の株式の33.33%を譲渡。
2008.11 ビデオグラム販売を行うジェネオン・エンタテイメントの株式の過半数を米国のUPIEに譲渡、ジェネオン・エンタテイメントとUPIEの日本法人UPJが合併。
2008.11 米国の独立系広告会社のマックギャリー・ボウエン社(売上高51億円)の株式100%を買収。
2009.3 公開買付によりインターネットやモバイルメディアの広告の取扱いを行うサイバー・コミュニケーションズ(売上高517億円)の株式を85億円で追加取得(47.49%→84.59%)。
2009.5 株式交換によりサイバー・コミュニケーションズ(売上高517億円)の株式13.95%を買収、完全子会社化。
2009.7 サイバー・コミュニケーションズの子会社でありSEMを中心とするインターネット広告事業の電通サーチ&リンクの株式20%を譲渡。サイバー・コミュニケーションズは引き続き51%保有。
2009.10 DPZ社との合弁により設立したブラジルの電通ラテンアメリカの株式49%を買収、完全子会社化。
2010.1 店頭・街頭販促を手掛ける中国のサントレンドグループ(売上高251億円)の株式40%を買収。
2010.1 デジタル・マーケティング・サービスを展開するイノベーション・インタラクティブ社(米国)の株式100%を買収、完全子会社化。
2010.12 マーケティングサービス提供のオプト(売上高506億円)の株式14.4%を譲渡。
2010.12 製造業向けコンサルティングのITIDの株式34パーセントを買収、完全子会社化。
2011.1 インドにおける総合広告代理店である電通コミュニケーションズ、電通マーコム、電通クリエーティブ・インパクトの(インド)株式26パーセントを買収、完全子会社化。
2011.2 デジタル・クリエーティブ・エージェンシーのファーストボーン・マルチメディア社(米国)の株式100%を買収、完全子会社化。
2011.6 独立系のデジタル・マーケティング・エージェンシーのステーキ・グループ社(英国)の株式100%を買収、完全子会社化。
2012.1 独立系広告代理店のMLロジャース(米国)の株式100%を買収、電通ネットワーク・ウエストに吸収合併。
2012.2 フランスの広告代理店であるピュブリシスグループとの戦略的提携契約を解除し、同社の株式9.31%を約664億円で売却。2%のみ継続保有。
2012.4 子会社の電通ネットワーク・ウエストを通じ、独立系デジタルエージェンシーのラブ社(ブラジル)の株式100%を買収、完全子会社化。
2012.5 インターネットサイト運営のカカクコム(売上高200億円)の株式15.06%をカルチュアコンビニエンスクラブ(CCC)から買収。
2012.6 カナダの広告会社ボス社(売上高約18億円)の株式100%を買収、電通ネットワーク参加の電通カナダに吸収合併。
2013.1 米国の独立系PR会社ミッチェル・コミュニケーション・グループ(売上高約9億円)の株式100%を買収、完全子会社化。
2013.3 メディア・デジタル領域に強みを持ち、欧州に堅固な事業基盤を確立する英国の広告会社イージス社(売上高1兆4,996億円)の株式100%を4090億円で買収、完全子会社化。
2013.4 電通イージス・ネットワーク傘下のイージス・メディアを通じて、中国のデジタルメディア・エージェンシーである北京创世奇迹广告有限公司の株式100%を買収、完全子会社化。
2013.4 電通プラスを通じてタイのコンサルティング会社ブランドスケープ社(売上総利益1億1000万円)を買収。
2013.5 電通イージス・ネットワークを通じて、企業のブランド戦略を支援するベルギーのニューワールドグループ(売上総利益約17億円)の株式100%を買収。
2013.5 電通メディア・アンド・ホールディングス・インディアを通じて、インドのデジタル・クリエーティブ・エージェンシーのウェブチャットニー・スタジオ社(売上総利益3億1000万円)の株式80%を買収。
2013.5 電通イージス・ネットワーク傘下のイージス・メディアを通じ、ルーマニアのデジタルメディア・エージェンシーのKinecto International SRLの株式100%を買収。キネクト・アイソバーに社名変更。
2013.7 イージス・メディア・イタリアを通じて、イタリアのインターネット広告会社シンプル・エージェンシー(売上総利益約35億円)の株式約70%を買収。
2013.9 イージス・メディア・イベリアを通じて、スペインの広告会社ワイメディア(売上総利益13億9000万円)の株式51%を買収。同時にワイメディアが出資するスペインの広告会社ウインクの株式31.8%を買収。
2013.9 電通イージス・ネットワーク傘下のイージス・メディア・チャイナを通じて、中国のデジタル・クリエーティブ・エージェンシーのTRIO社(売上総利益5億5000万円)の株式100%を買収。トリオ・アイソバーに社名変更。
2013.10 イージス・メディア・ロシア&CISを通じて、ロシアの広告会社トラフィック(売上総利益6億3000万円)を買収。トラフィック・アイソバーに社名変更。
2014.2 電通イージス・ネットワークを通じて、中国のソーシャル・クリエーティブ・エージェンシーのベラウォム社(売上総利益3億4000万円)の株式100%を買収。
2014.2 電通イージス・ネットワークを通じて、ドイツのデジタル・マーケティング・エージェンシーのエクスプリード社(売上総利益16億4000万円)の株式100%を買収、完全子会社化。
2014.3 電通イージス・ネットワークを通じて、フランスのモバイルエージェンシーのレ・モビリザーズ社(売上総利益1億1000万円)の株式100%を買収、完全子会社化。
2014.5 電通イージス・ネットワーク傘下の米国イージス・ライフスタイル社を通じて、米国の総合マーケティング会社のMKTG(売上総利益43億3000万円)の株式100%を買収、完全子会社化。(※プレスリリースは買収手続き開始のみ)
2014.9 電通イージス・ネットワークを通じて、米国の総合デジタルエージェンシーのコバリオ(売上総利益34億4000万円)のエージェンシー部門を買収。
2014.12 電通イージス・ネットワークを通じて、英国のソーシャルメディア・マネジメント・エージェンシーのテンペロ(売上総利益7億8000万円)の株式100%を買収。
2014.12 電通イージス・ネットワークを通じて、ブラジルで屋外・交通広告を専門とするOOHプラス(売上総利益7億4000万円)の株式100%を買収。
2014.12 電通イージス・ネットワークを通じて、カナダのデジタルエージェンシーのスポーク(売上総利益1億7000万円)の株式100%を買収。
2015.1 電通イージス・ネットワークを通じて、インドの総合デジタルエージェンシーのWATコンサルト(売上総利益3億2000万円)の株式90%を買収。段階的に100%まで取得することに同社株主と合意。
2015.4 電通イージス・ネットワークを通じて、米国のデータ分析・消費者インサイトに基づくコンサルティング会社のフォーブス・コンサルティング(売上総利益9億2000万円)の株式100%を買収。
2015.4 電通イージス・ネットワークを通じて、イスラエルのデジタルエージェンシーのアバガダ・インターネット(収益6億2千万円)の株式100%を買収。
2015.6 電通イージス・ネットワークを通じて、ポーランドのデジタル・パフォーマンス・エージェンシーのマーケティング・ウィザーズ(収益2億9000万円)の株式100%を買収。
2015.7 電通イージス・ネットワークを通して、ブラジルのデジタルエージェンシーのリダイレクト・デジタル・マーケティング(収益1億6000万円)の株式100%を買収。
2015.7 医療用医薬品のマーケティングに特化したシナジーメディカルコミュニケーションズ(売上高8億2000万円)の株式100%を買収。
2015.10 電通イージス・ネットワークを通して、フランスでアクティベーション領域に強みを持つマーケティング会社のゾーンフランシェ(収益5億9000万円)の株式100%を買収。
2015.12 電通イージス・ネットワークを通して、フィリピンのクリエーティブ・エージェンシーののジェイミーサイフー・グループ(収益4億3000万円)の株式70%を買収。今後段階的に100%まで取得することを同社株主と合意。

 イージス社買収以前の電通は国内でのM&Aが比較的多い。

 傘下の電通国際情報サービスではIT分野における開発系の同業・近隣業種の買収を手掛けるが、今回は広告業に着目したい。

 以下は電通単体のものとして公開されているデータであるが、テレビに次いで二番目に大きい新聞広告での売上高が05年から14年までの10期で半分近くに減少している。電通は国内の広告費シェアの25%以上と、テレビ・新聞・ラジオ・雑誌の4つのメディアで1位の企業。従ってこの推移は業界全体のトレンドと大きな乖離(かいり)は無いだろう。新聞での売上高減少を埋め合わせるために別媒体でのノウハウと売り上げの取り込みを急いだのは必然だ。

 国内では、06年4月には名古屋鉄道子会社の名鉄エージェンシーの株式50%を買収。名鉄エージェンシーは鉄道子会社だけあって交通広告(OOHメディア)に強みを持ち、電通が手薄であった分野をカバーできる。同年7月には撮影用スタジオの横浜スーパーファクトリーを買収、これはテレビ分野での広告とシナジーが高い。07年10月のオプト、09年3月のサイバー・コミュニケーションズの買収は、今後マーケットの拡大が見込めるインターネット分野でのノウハウの取り込みといったところか。

 一方で、海外では合弁会社の設立などで既に足掛かりのある米国・アジアでの買収が中心で、欧州には進出できていない。

 イージス社買収を語る前に、12年2月のピュブリシスとの戦略的提携の解除と株式譲渡は外せない。ピュブリシスグループは世界第3位のメガエージェンシーである。電通はピュブリシスのグローバルな経営の手法や戦略にシナジーを求めたが、電通の持株比率は11.31%のマイノリティーに留まったために満足のいく成果は出せなかったものとされる。なお、ピュブリシスはその後広告業界世界第2位のオムニコムと合併し、売上高総利益2兆2300億円の世界最大手の広告会社となっている。

 ピュブリシスとの提携を解除した電通はグローバルな展開を諦めず、新たなパートナーとして選んだのが英国の大手広告代理店のイージスである。12年7月に買収手続きを開始し、当初は年内のクロージングを予定していたにも関わらず、実際に買収が成立したのは13年3月。折しも尖閣問題で日中関係が悪化する中、中国からの承認が下りず手続きが長引いた。当事者が中国で一定の売り上げを持つM&Aに関しては中国当局の承認を要するため、電通に限らず、この時期にクロスボーダーM&Aを手掛けた企業は苦戦を強いられた。

 約4000億円の巨額を投じたイージス買収であるが、米国・アジアへの足場を固めつつあった電通と欧州に盤石な事業基盤を持つイージスの提携は、マーケットや顧客、拠点などの相互補完という意味で非常にシナジーが大きい。イージスはIFRS適用企業であるが、買収当時の日本基準での売上高は約11854.7百万ポンド=1兆4996億円(1ポンド=126.5円、以下同様)とされる。直近のイージスの連結純資産は585億円、連結営業利益は184億円であるから、営業利益ベースで実に19年程度ののれんをつけた価額での買収ということになる。

 ところで、電通はイージスの買収資金のうち2000億円を銀行からの短期借入金で賄ったところ、自己資本比率が前期末に比べ18%減の27%となった。機動的なM&Aを展開していくためにも財務体質を改善する必要があると判断した電通は、上場以来初の増資に踏み切る。発行済み株式数の10%に当たる自己株式を売り出して約1200億円を調達、借入金の一部返済に充当した。イージスの買収を公表した12年7月から期待感で株価が上昇しており、当時の約1.5倍の1株3191円の値がついた。13年は市場の活況により大型の公募増資が相次いだ年であり、株高も追い風となった形だ。

■ネットデットと自己資本比率

 その後、財務の懸念を払拭した電通はイージスを海外本社とし、欧州もターゲットに加えて矢継ぎ早にM&Aを展開する。ベルギーのニューワールドグループやイタリアのシンプル・エージェンシーなども含めて13年のみで10件以上のM&Aを手掛けている。翌14年以降も対象業種は同業の広告会社・マーケティング会社などで一貫しており、拠点と世界的なシェアの拡大が狙いのM&Aが続く。広告の中でもとりわけデジタル分野が目立つのは、インターネットやスマートフォンの普及を受けて、電通が17年に向けた中期経営計画の課題にデジタル領域の進化と拡大を掲げるためである。中国のベラウォム、カナダのスポーク、インドのWATコンサルト、ポーランドのマーケティング・ウィザーズ他、洋の東西を問わず買収を続けている。

 ではどのくらい「時間を買った」のか、売上高と利益の推移を見ると分かりやすい。

■業績推移

■国内外売上高推移

 国内売上高は07年の1兆9972億円をピークに落ち込み始め、10年の1兆5403億円でいったん下げ止まる。その後15年3月期の時点でもまだピーク時には及ばない。一方で、海外売上高は好調である。イージスの業績が含まれるとともにM&Aが活発であった14年3月期には売上高2兆4265億円、その後も度重なるM&Aにより伸長を続ける。決算期の変更があった15年12月期でも既に過去最高売り上げを記録している。海外セグメントに牽引されて、全体での売上高・利益の伸長も目覚ましい。 20年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて広告業界の需要も増加が見込まれるという。

 近年はクロスボーダーのM&Aに注力していた電通だが、17年度に向けての中期経営計画において、グローバルでのポートフォリオの多極化やデジタル領域の進化と拡大などとともに日本市場での更なる事業基盤強化を課題として挙げている。世界的には再編の動きの見られる広告業界だが、日本国内にも余波は及ぶのだろうか。

この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

まとめ:M&A Online編集部

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

2019.03.22

ネットの学校「N高」の卒業式に潜入

開校時に入学したN高1期生が卒業した

世間の注目を浴び続けた生徒は、何を想う?

3月、角川ドワンゴ学園「N高等学校」の卒業式が東京・お台場にて開催された。

「ネットの高校」として、3年前に設立したN高。この日、2016年の開校時に入学した第1期生と、途中転入・編入した生徒をあわせ、計1593名が卒業した。3年前、『VR入学式』で世間を賑わせたこの学校を巣立つ卒業生たちは、N高での日々をどう捉え、今後はどのようなキャリアを描いていくのだろうか。

卒業式は2019年3月20日、お台場にて行われた

卒業式を彩る最新テクノロジー

N高は、ドワンゴとKADOKAWAの経営統合で誕生したカドカワが設立母体となり、2016年4月に開校された通信制高校だ。同校は開校後、2年次編入なども受け入れてきたため、これまでも卒業生を排出してきてはいたが、「1年生~3年生をN高で過ごした生徒」が卒業するのは、初めてのことだ。

卒業式には多くの報道陣も参加した。生徒にとって、「卒業式に記者がいる」「自分たちが卒業する様子がテレビやWebで取り上げられる」というのは不思議な感覚だろう。とはいえ、もう「VR入学式」に「ニコニコ超会議」へのブース出展(N高ではそれを「文化祭」と表現)などの経験を経て、メディアへの露出には慣れてしまっているのかもしれない。

そして、今回の卒業式も例によって独特だった。

卒業式は任意参加で、会場には袴や制服に身を包んだ生徒が集まる一方、その様子をライブ配信することで、会場に来られない生徒生徒も参加できる仕組みになっていた。会場のスクリーン上にはニコニコ生放送さながら、リアルタイムでコメントが表示されており、こうした演出は「N高らしい」といった印象を受けた。

卒業式の様子。オンライン参加者のコメントがスクリーンを流れる

中でも印象深かったのは、当日来られなかった生徒を代表して、米シリコンバレーに留学中の佐々木雅斗さんが「ロボット」に自分の顔を映して卒業証書を受け取ったシーンだ。

使用したのは、ANAが“未来の移動手段”として開発する、視覚・聴覚・触覚などを備えた、ユーザーの分身となるロボット「ANA AVATAR」。同校ではこのロボットを試験的に授業にも導入しているそうで、こういった最新のテクノロジーを使うあたりもN高らしい。

遠隔操作ロボット「ANA AVATAR(Beam Pro)」を用いて卒業証書を受け取った佐々木さん

と、テクノロジーにばかり目が行きがちではあるが、そもそも「高校生がシリコンバレーに留学している」という事実も驚くべき点だ。高校に通いながらも、シリコンバレーでビジネスを学ぶ――、というキャリアを選べるのは、学校という場所の制約を受けない、ネットの高校のメリットと言えるだろう。

卒業式にはほかにも「異色のキャリア」を持つ生徒たちが集まり、特に活躍した卒業生に対する特別表彰も行われた。

表彰を受けたのは、東京から鹿児島県に移住し、農業や水産業を手伝い地域活性化に貢献する白鳥優季さん、第18回アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン「ウイニングイレブン 2018」eスポーツ 金メダリストの相原翼さん、N高のプログラムを最大限に活用し、スタンフォード大学やオックスフォード大学のサマープログラムに参加した冨樫真凜さんなど。その活躍の幅は広い。

さまざまな分野で活躍したN高生に対しては、特別表彰が行われ、記念品としてクリスタルトロフィーが贈呈された

メディア露出が多いがゆえに高まる期待値

N高を卒業した個性豊かな面々は、今後は大学進学、就職とさまざまなキャリアを歩む。

日本初で唯一N高にのみ実在するという「起業部」に所属し、かつ起業第一号として「Easy Go」という会社を創業している、鈴木颯人さんと山田陽大さんから「N高で過ごした時間」についてコメントをもらった。

「元々は地元の進学校に通っていたのですが、『自分が好きなことをしたい』『起業したい』という想いがあり、N高に入学しました。年齢や場所に縛られず、多くの人とコミュニケーションを取れ、充実した3年を過ごせました」(鈴木さん)

「以前通っていた学校が自分と合わず、ネットで見つけたN高で『ここだったら新しいことができるかも』と入学を決意しました。今振り返ってみて、やはり『この学校に来てよかった』と思います」(山田さん)

Easy Go代表取締役の鈴木颯人さん(左)と取締役の山田陽大さん(右)

2人に限らず、卒業生のコメントを聞いていくと「この場所で挑戦してみたい」という想いの元、N高を選んでいる生徒が多い印象だ。

普通の高校とは違い、メディアに露出する機会の多いN高での生活は、良くも悪くも、世間からの注目を浴びる。まだ高校生の彼らにとっては、その視線が時に辛く感じることもあっただろう。ただ、その一方で鈴木さんは「初めて会う方とお話しする際、『N高出身です』と言うだけで、会話が広がることがよくあります」とその知名度を好意的に捉えている。

若くして、覚悟を持ってN高という環境に飛び込んだ生徒たちは、周囲の視線を浴びつつ、たくましく成長してきたことだろう。「N高出身」というキャリアは、彼らにとって1つの大きな武器になりそうだ。

カドカワは新たに2019年4月から、「N中等部」も開校する予定だ。「ネットの学校」という、世間の注目が集まる新しいコンセプトの学校だからこそ、在校生・卒業生の動向は、今後もしばらくは注目され続けそうだ。

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2019.03.22

中国スマホメーカーのOPPOが独自のカメラ技術を説明

開発競争が続くスマホカメラ、トレンドは「望遠」へ

高倍率ズームスマホの登場で、デジカメの優位性に危機?

中国のスマホメーカーとしてシェアを急拡大するOPPOが独自に新開発したカメラ技術、「10倍ハイブリッドズーム」が面白い。実際に2019年の新機種からスマホへの搭載を進め、日本市場へも製品を投入するという。

OPPOが「10倍ハイブリッドズーム」技術を紹介

メーカー間の開発競争が続くスマホカメラだが、「望遠」が次のトレンドになりつつある。デジタルカメラに匹敵する10倍もの高倍率ズームを、OPPOはどのように実現したのだろうか。

1年で7機種を投入、気付いた「日本市場の難しさ」

OPPOは世界のスマホ市場で熾烈な4位争いを繰り広げている。サムスン、アップル、ファーウェイのトップ3社に続く集団の中で、2018年は中国Xiaomiに僅差で迫る5位になった(IDC調べ)。

OPPOは2018年、日本市場で7機種のスマホを発売した。OPPO日本法人の鄧宇辰社長は、これまでに国内販売チャネルを12に拡大し、あわせて認定修理店を全国に展開したことを挙げ、「日本のSIMフリー市場でいち早く成長するブランドになった」と振り返る。

オッポジャパン 代表取締役社長の鄧宇辰氏
2018年の1年間にスマホを7機種投入

2019年は国内展開をさらに加速する。日本の消費者に向けたコミットメントとして、件の「10倍ハイブリッドズーム」機能を備えたスマホや、FeliCa・防水対応のスマホ、新たに立ち上げたブランド「Reno」シリーズの市場投入を約束する。

また、話題の「5Gスマホ」の市場投入も急ぐ。日本では5Gの周波数がまだキャリアに割り当てられていないものの、ドコモ、KDDI、ソフトバンクを含む世界の事業者と標準化に向けて連携しており、準備を整えていることを強調する。

MWC19のQualcommブースではOPPOが5Gスマホを実演

一方で鄧社長は、日本市場の難しさについて、「1年の経験を通して、日本市場は他の国と違うことに気付いた。消費の習慣や求めるレベルも高い。グローバルのやり方を日本に持ってきても通用しない」とも述べている。日本市場における品質やサービスの要求水準の高さは、多くのメーカーが直面してきた課題だが、OPPOも同じ壁にぶつかったといえそうだ。

スマホカメラ、次のトレンドは「望遠」に

そのOPPOが市場攻略にあたり、特に注力をしはじめたのが「カメラ」だ。その中でも、業界では次の進化ポイントとして「望遠」技術に注目が集まっている。

そもそもスマホはデジカメと違い本体が薄いため、搭載できるレンズに物理的な制約がある。このレンズの制約から、スマホのカメラはどうしても焦点距離の狭さが弱点になってしまっていた。そこで最近はスマホに複数のカメラを内蔵し、それぞれで広角や望遠を使い分けることで、この弱点を克服しようと進化している。

OPPOの「10倍ハイブリッドズーム」技術は、この弱点に対し異なるアプローチで挑む。プリズムを使って光を屈曲させるペリスコープ(屈曲光学)構造をカメラモジュールに採用することで、レンズを従来の垂直方向ではなく水平に配置できるようにした。これにより、薄型のスマホであっても、光学レンズでは従来不可能だった高倍率ズームが搭載できる。

光を曲げるペリスコープ構造を採用

ただ、35mm換算での焦点距離は16~160mmの10倍となっており、一般的なコンデジの感覚では5倍ズーム程度の性能だ。8.1倍以上はデジタル処理を組み合わせた「ハイブリッドズーム」としているなど、いくつか注意点はある。とは言え、これまでにない望遠レンズをスマホで扱えるのは面白い。

10倍ハイブリッドズームによる画角の違い

OPPOは既に報道陣に向けて、この10倍ハイブリッドズーム技術を搭載するスマホの開発デモ機を公開している。2019年の第2四半期には製品化する計画で、日本市場へも2019年中に投入する見込みだ。

10倍ハイブリッドズームのデモ機。5Gにも対応できるという

特にカジュアルなカメラ需要の受け皿としてスマホに押されがちなデジタルカメラだが、高倍率ズームはスマホには無い、デジカメに残された得意分野のひとつだった。だが望遠もスマホで十分撮れるとなれば、いよいよその優位性も危うくなる。今回のズーム技術は、デジカメ市場をもう一段縮小させてしまう可能性を秘めているのだ。

最大のライバルであるファーウェイも「HUAWEI P30」シリーズで望遠カメラを搭載するとみられており、今後は各メーカーが高倍率ズームで競い合うことは間違いなさそうだ。

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