もう商品改良? 発売から約1年のマツダ「CX-5」は何が変わったのか

もう商品改良? 発売から約1年のマツダ「CX-5」は何が変わったのか

2018.04.06

マツダは主力SUVの「CX-5」に商品改良を施して2018年3月に発売した。2012年に新しく誕生したCX-5は、マツダのSKYACTIV技術を全面的に採用した新世代商品群の第1弾であり、2017年2月にフルモデルチェンジを受けて2世代目となったばかり。それからわずか1年余りでの商品改良は、どのような進化をもたらしたのか。

「CX-5」はフルモデルチェンジから1年余りで商品改良を受けた

ガソリン新エンジンに気筒休止システム

目玉はエンジンであり、1つは新技術を採用した2.5リッターのガソリンエンジンで、もう1つは先に「CX-8」で採用された2.2リッターの進化版クリーンディーゼルターボエンジンの搭載である。

2.5リッターのガソリン新エンジンは、北米仕様の「アテンザ」(4ドアセダン)ですでに販売実績のある「気筒休止システム」を採用している。直列4気筒エンジンのうち2気筒を軽負荷での運転中に休止させ、燃費向上を図る技術だ。

ガソリン新エンジンは気筒休止システムを採用

さっそく試乗をしてみると、走行中、いつ4気筒と2気筒が切り替わったのか、全く気付かなかった。軽負荷という運転状態は、アクセルペダルをほとんど踏み込まずに、安定した速度で走っている状況であり、例えば高速道路など、専用自動車道での巡行走行時に気筒休止の効果を期待できる。

マツダでは、今回の試乗コースの一部で実走行試験を自ら行い、「マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール」(全車速追従機能付)を使って時速90キロを維持しながら走った結果として、気筒休止の無いエンジンを搭載したCX-5と比べ、4.6%の燃費向上の成果があったと紹介した。

試乗の際には、4気筒と2気筒が切り替わったことをスマートフォンで視覚的に体感できるアプリが用意された

マツダは「たとえ0.1km/Lでも改善代があれば進化を止めない」と、その意義を語る。気候変動による異常気象が現実となっている今日、エンジンの燃費を日々改善していこうとする姿勢がそこにある。

より軽量な「CX-5」で感じたディーゼルの加速

クリーンディーゼルエンジンの方は、CX-8に搭載された際にすでに試乗した経験がある。CX-8はCX-5と同じ車幅だが、3列シートを実現するため全長が長く、グレードにより若干の差はあるものの、車両重量も200キロ前後は重くなる。それでも快適な加速が得られるようにと性能が高められ、またディーゼルならではの振動や騒音をより改善したエンジンとしてCX-8に採用された。

「CX-8」(画像)で登場した新しいクリーンディーゼルエンジンが「CX-5」にも載る

振動や騒音に関する快適性の向上はCX-8試乗の際に実感できたが、加速性能については、日常的に頻繁に調節が行われるであろう時速10キロほどの加速領域でやや物足りなさを覚えた。より強い加速をさせて速度を上げたいときには、ターボチャージャーの過給による力強さを実感することができた。

今回、CX-8に比べ軽量なCX-5でこの新クリーンディーゼルエンジン車を運転してみると、CX-8で物足りなさを覚えたわずかな速度上昇の折にも、全く遅れなく加速するのを体感した。また、快適性においても、気筒休止を採り入れたガソリンエンジンより静粛性に優れると感じたほどだった。

「CX-8」より軽い分、「CX-5」ではディーゼルエンジンの加速の良さをより感じられた

最新技術を横展開するのがマツダ流

進化した技術が実用化されたら、できるだけ早くさまざまな車種へ展開する「商品改良」を、マツダは新世代商品群から行っている。そして今回も、現行車種において、モデルチェンジを待たず次々に進化していく嬉しさを改めて確認することができた。

クルマのモデルチェンジまでの期間は、一般的に5年前後といったところだ。CX-5も2012年の登場から5年を経た昨年、モデルチェンジを行っている。その間、最新技術を採り入れ、日々クルマを進化させ続けるマツダ流の商品改良は、なぜ可能になるのか。

一括企画でブランド力が向上

理由は、マツダが新世代商品群を投入するために練った戦略の1つである「一括企画」という開発手法による。この先、数年のうちにモデルチェンジを行う車種について、その間に開発・実用化される予定の技術の進捗を読みながら、モデルチェンジ後であってもその新技術を採用できるよう、あらかじめ準備をした設計としておく戦略だ。

そのためには、新車開発部署だけでなく、技術開発の部署や、生産技術の部門とも一体となり、連携した将来計画が練られなければならない。そうした全社一体のものづくりは、マツダのようにある程度規模が小さくて、車種も限られた自動車メーカーでないと、なかなか実現が難しい。

生産技術の部門も一体となって商品の計画を練るマツダ(画像は山口県の防府工場、提供:マツダ)

従来、大手に比べ中小規模の自動車メーカーは、生産台数を増やすことによる原価低減に限度があるため、価格競争力や収益を向上させることが難しいと考えられてきた。だが、小規模であることを逆手に取った商品性向上の手段の1つが、一括企画による新世代商品群の魅力となり、それがいつでも、どの車種でも最新の性能を持つというブランド力の向上にもつながっている。

同時にまた、最新の技術をいち早く幅広い車種へ展開することにより、従来の部品や機能の生産を減らしたり、無くしたりすることができれば、作る物の数が整理され、生産性の向上につながる。古い物を作り続ける無駄を省くことで、常に簡素な物づくり環境を維持できる。さらに、技術開発に対して、前進して行こうとする勢いを止めずに済む。新たに開発されたものが採用されるという道筋が示されるからだ。それは、企業を勢いづかせる。

最新の技術を複数の車種で共有することにより、古い物を作り続けるという無駄も省くことができる(防府工場、画像提供:マツダ)

トヨタもうらやむ? マツダが見つけた生きる道

ところで、マツダとトヨタの提携は、規模の全く違うメーカー同士の連携となり、一体どのような利益が互いに得られるのか、見えにくい面があった。

しかしトヨタは、レクサスブランドをカンパニー化することに始まり、今日では社内を小さなカンパニーごとに細分化することを行っている。つまり大手といえども、小さな会社の集合体という中身に変化させたのだ。そこに、マツダのような自動車メーカーの手法を取り入れていけば、マツダ式の魅力ある商品の開発と展開が可能になるだろう。

一方で、国内生産が主流で海外は輸出に頼ってきたマツダは、メキシコ工場に加え、米国にトヨタと共同の生産工場を持つこととなった。これにより、トランプ政権の輸入関税策に対処できる素地を手にすることができたのである。

マツダとトヨタの提携は、双方に得るところがあるようだ(2017年8月の提携会見で撮影、左:トヨタの豊田章男社長、右:マツダの小飼雅道社長)

いずれにしても、中小の企業が大手と同じ手法を目指すのではなく、それぞれの土俵に合った採算と商品の魅力向上への知恵を絞ることによって、大も小も生き、なおかつ共生の道を生み出すこともできるという1つのビジネスの在り方が、マツダの一括企画によるモノづくり革新に見られるのではないか。

実は、BMWもアウディも、あるいはメルセデス・ベンツであってさえ、その販売台数はマツダと大きな差があるわけではなく、逆にトヨタに比べれば小さな自動車メーカーなのだ。ボルボなどはもっと小規模なメーカーである。だが、商品力の点では、いずれも高い競争力を持つ。数を求めることだけが勝利ではないという構図を、自動車業界に見ることができるのである。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。