一体何が変わるのか、トヨタが東京で4チャネル販社を統合する理由

一体何が変わるのか、トヨタが東京で4チャネル販社を統合する理由

2018.04.09

トヨタ自動車が東京で販売会社を再編する。トヨタ店、トヨペット店、カローラ店、ネッツ店の4チャネルで国内販売を行う同社だが、それらを再編し、新たな販売体制を大都市・東京で試す構えだ。そもそもトヨタの販売体制はどうなっていて、今回の動きは何を意味するのか。

トヨタが東京で販売会社を再編する

全国規模の再編が始まる?

トヨタは2018年1月から、従来は販売チャネルごとの「タテ割り組織」だった国内営業体制を、地域ごとの「ヨコ割り組織」に転換している。トヨタが国内販売を地域営業推進に移行するのは、トヨタ国内販売史上で歴史的な転換点となる動きだ。今回の東京トヨタ販社の統合は、その具体策として注目される。

しかし、トヨタが東京での4チャネルを統合し、レクサスも統合会社で主導して販売するということで、トヨタが全国的な販売チャネル再編に向かうと考えるのは、いささか早計であろう。

東京の販売体制はこのように変わる。TMCはトヨタ自動車のこと(画像提供:トヨタ自動車)

それというのも、トヨタの全国ディーラーのうち9割は独立資本(地場店)であり、各地のトヨタ地場店は、地域を代表する有力企業の位置づけを確立しているからだ。その上、トヨタ店とトヨペット店が中核となり、カローラ店、ネッツ店、さらにレクサス店まで暖簾分けされたケースが多い。

つまり、トヨタの全国販売チャネル網は各地の有力トヨタ地場店がグループで支えてきたのであり、メーカーとしても、一気に全国販売チャネル網再編に向かうことは難しいのが実態なのだ。

トヨタにとって東京は独特な位置づけ

トヨタは国内販売体制の現状を踏まえ、あえて今年1月に国内販売事業本部を従来のタテ割りからヨコ割りへと移行したのだ。それは大きな決断だった。

その背景には、グローバル戦略の拡大、日本国内市場の縮小、そして地域格差の広がりなどがある。一方で、自動車販売におけるビジネスモデルが転換期を迎えており、多角化への挑戦が必要との判断もあったということである。

販売店により取り扱う車種にも違いがある。例えば「ハイラックス」(画像)や「ランドクルーザー」などを扱っているのは東京4チャネルで東京トヨタだけだ

今回のトヨタ4販社統合は、メーカーの地域営業体制移行が具体化したケースの第1弾となる。東京はトヨタにとって独自の位置づけであり、23区エリアは唯一、直営ディーラーで固めてきていた。国内最大都市の東京市場では昔から「トヨタ東京プロジェクト」があり、試行錯誤を続けてきた経緯もある。何よりも、メーカー直営販社で固めてきた地域だったことでチャネル統合に踏み切れたのだし、今後の国内販売の新ビジネスモデル構築に挑戦することも可能だったのだろう。

地方ディーラーの修行の場だった東京トヨペット

東京のトヨタディーラーで、多摩地区を除く都内23区をテリトリーとするのは東京トヨペット、東京トヨタ、トヨタ東京カローラ、ネッツ東京の4社だが、いずれもメーカーの直営店である。

全国的に見て、4チャネルのトヨタディーラーがいずれも直営店というのは東京だけだ。過去には、東京トヨタが地場店を吸収合併したケースや、百貨店の高島屋がカローラ店を展開していたケースもあったが、チャネルごとの東京再編で現在の体制となった。

その中でも東京トヨペットは、全国のディーラーの中でも“スーパーディーラー”といわれ、かつては各地の地場ディーラーの後継者が修行に来る場所としても知られたほどである。レクサス店のセットアップについても、東京トヨペットが主導する形で東京での展開が進められた。

東京トヨペットは地方のディーラー後継者にとって修行の場でもあった

カーシェアにシニアの免許返納、クルマの販売は厳しく

しかし、大都市圏の東京における自動車販売は、公共交通機関が張り巡らされた状況に加え、駐車場代の高さもあって、最近では若者を中心にカーシェアリングが徐々に浸透してきている。一方でシニアの免許返納もあり、クルマ販売は厳しい流れにある。

このため、東京直営4販社を統合することで、4チャネルの車種を合同で販売する店舗づくりやカーシェアリング対応なども積極的に展開したいという考えが、トヨタにはあるようだ。また、整備工場や間接事務部門などの効率化を進め、中古車在庫の融通なども図っていく方針だという。

販売店ごとに車種の違いはあるが、例えば「カムリ」(画像)は全チャネルで売っていたりする

東京直営4販社のトップは、いずれもトヨタ自動車の国内営業出身であり、メーカーの地域営業と連動しやすい利点がある。統合ディーラーは、必然的に東京トヨペットを中心に拠点の見直し、合同店舗新設などを進めることになろうが、メーカーの国内販売事業本部に新設されたモビリティサービス企画部、デジタル基盤開発部などが、新たなチャレンジを具体化するモデルケースともなりそうだ。

国内生産300万台を死守したいトヨタ

トヨタにとって国内販売は、グローバル市場の中でも米国の240万台に次ぐ163万台(2017年)であり、中国の120万台を上回っている。ただ、今後の日本の自動車市場は、少子高齢化を背景とした人口減と消費構造の変化で縮小は避けられないとの見方が強い。

豊田章男社長も「国内生産300万台を何としてもキープしていく」と話しているように、トヨタはグローバル戦略を推進していく上で、母国日本での生産・販売をしっかり維持していくことを重視している。工場・販売店の雇用を守るためにも、国内販売の再強化は大きな経営課題だ。

トヨタの国内販売は、かつてのトヨタ自販が、全国各地の有力者をトヨタ販売店に募り築き上げた販売チャネル網を原点とする。1990年代までの国内販売でライバルだった日産自動車が「技術の日産」といわれたのに対し、トヨタが「販売のトヨタ」といわれたゆえんである。

「販売のトヨタ」を支えたのは全国の販売チャネル網だった

かつては多チャンネルが普通だった自動車業界だが…

現在、トヨタの販売会社は全国に280社あり、拠点数は5,000カ所に達する。販売チャネルとしては「トヨタ店」「トヨペット店」「カローラ店」「ネッツ店」の4チャネルがある。これにレクサスブランドの「レクサス店」が加わるので、トヨタ全体としては5チャネルということになる。

かつて日産やマツダが5チャネル体制を展開し、ホンダや三菱自動車工業も複数チャネル体制をとっていたが、トヨタ以外はいずれも統合一本化された。

トヨタとしても、中長期的に国内年販150万台の確保を前提とした国内営業戦略を進める上で、地域ビジネス多角化の方向を強めていく考えのようだ。今年1月末に開催した「全国トヨタ販売店代表者会議」では、豊田章男社長と6名の副社長が全国7地域を分担して担当することを明示している。「トヨタは、モビリティカンパニーに変わろうと闘っていく。地域のお客様に一番近い販売店もニーズを吸い上げ、地域を良くする活動に取組んで欲しい」。豊田社長は集結した全国のトヨタ販売店トップに呼びかけた。

今回の東京トヨタ販社統合は、大都市・東京の特殊な事情から踏み切った動きではあるが、全国画一のチャネル別営業体制からの別離という側面もありそうだ。トヨタはバリューチェーンビジネスの拡充・強化に加え、コネクティッドカーやカーシェアリングビジネスへの展開などに向け、あらためて国内基盤の強化に乗り出してきたわけである。

※関連記事(2018年10月4日に掲載)

“販売のトヨタ”がディーラー網を改革! 全店で全車種を扱う理由とは

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2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu