Googleのお仕事。【第4回】男性目線で「女性活躍」を助ける大切さ

Googleのお仕事。【第4回】男性目線で「女性活躍」を助ける大切さ

2018.04.09

特集「Googleのお仕事」の第4回は、日本法人でWomenwill プロジェクトを統括するグーグル ブランドマーケティングマネージャー 山本 裕介氏に話を伺った。

【特集】Googleのお仕事。

スマートフォンを通して、多くのユーザーが Google のサービスを利用している。Google 検索はもちろん、Google マップや Gmail、果ては YouTube とさまざまな Google 製品が人々の生活に浸透しているはずだ。一方で、その製品を提供するグーグルの正体を知らぬ人も多い。
アメリカのネット企業は日本で働いていない……なんてことはなく、もちろんさまざまなグーグル社員が、さまざまな職種で六本木ヒルズに居を構える日本法人で働いている。この特集では、その彼ら、彼女らが日本法人でどんな仕事を、どういうモチベーションで、どうやってこなしているのか、問うた。
グーグル ブランドマーケティングマネージャー 山本 裕介氏

Womenwill - 誰もが柔軟に働ける環境を築いていくためのトライアル

2014年10月、日本を含むアジア太平洋地区の4カ国が中心となり、Google に新しいプロジェクトが誕生した。その名は「Womenwill」 - 家庭と仕事という2つの役割をこなすために多くの困難や課題に直面している女性たちをテクノロジの力で支援し、誰もが柔軟に働くことができる社会を実現していこうとする Google の強い意志(will)が込められた活動である。

活動開始から約3年半が経過し、現在は「Womenwill」として継続している本プロジェクトだが、これまでどんな成果を挙げてきたのか、そして Google にとってこのプロジェクトはどんな位置づけなのだろうか。

テクノロジによるイノベーションは人々の生活や世界をより良くする - Google はこの理念の下、Womenwill プロジェクトを始動させた。現在はその趣旨に賛同した1200を超えるサポーター企業/NGOが参加し、女性の社会進出を支援している。

国や地域によって女性たちが直面する課題はそれぞれに異なるが、日本の場合、とくに大きな社会的問題となっているのが、出産後に多くの女性たちがこれまで積み重ねてきたキャリアをあきらめざるを得ない状況に追いやられているという点だ。

仕事と家庭の両立を切に願いながらも、「通勤に長い時間をかけられない」「子供を預けられる施設が少ない」「子供の病気や事故に備えるために重要なプロジェクトに関われない」といった制約は、出産前と同様に仕事を続けていくという選択を女性たちから奪い、キャリアの道から遠ざけていく。

この残念な状況をテクノロジのパワーで変えるべく、Google は2014年10月からその環境づくりや新しい働き方の提案を行い、「未来の働き方トライアル」として国内パートナー企業とその社員とともに実証実験を重ねてきた。

2016年に同トライアルに参加したパートナー企業は31社、参加社員は2000名を超える規模で、参加組織では損保ジャパン日本興亜やコクヨ、ナイキ、広島県庁などが名前を連ねる。業種も規模もさまざまだが、「誰もが柔軟に働ける環境を作りたいという思いは同じ」(山本氏)だったことから、多くのトライアルが行われ、その効果が測定された。

トライアルで示された3つの働き方

では具体的にこれらのトライアルはどういったかたちで行われたのだろうか。Google は参加企業に以下の3つのテーマに則したトライを依頼している。

  1. Work Anywhere … 在宅で仕事をする
  2. Work Simply … 会議の無駄を減らす
  3. Work Shorter … 決めた時間に帰る

1の「在宅で仕事をする」は2カ月間のトライアル期間中、女性に限らずすべての従業員(モデル部署のメンバー)が一度は在宅勤務を実施するというもので、推奨ツールはテレビ会議システム。在宅勤務はとかく、育児中の女性など一部の社員のためだけの制度と思われがちだが、そうした固定化された概念や働き方を打破するきっかけになったという。

2の「会議の無駄を減らす」では、会議時間の短縮や無駄な会議の削減、事前準備/事後フォローの効率化などを目標に掲げ、推奨ツールとして共有ドライブなどを用い、会議のグランドルールを設定、テレビ会議やペーパーレス化を並行することで、会議の効率化を図っている。無駄な会議は時間だけでなく人件費などコストの無駄にもつながるので、事前/事後の比較も行われた。

3の「決めた時間に帰る」は、世界的に見ても問題点が多く、柔軟な働き方の実現を妨げる大きな元凶でもある日本の長時間労働を解決するための施策。トライアルでは推奨ツールのスケジューラで退社時間の入力と共有を徹底し、チームで予定を可視化することで主体的なワークデザインと柔軟な働き方の両立を目指した。

これらのトライアルの成果に関する詳細はGoogle Japanのブログに掲載されているので、興味があればぜひ一読いただきたいが、総じてこれらの取り組みは女性だけでなくすべての従業員にとって実りある結果をもたらすことになっていることに注目したい。

例えば、在宅勤務やテレビ会議などは最初は嫌がる男性社員も少なくなかったが、実際に試したことでその効果の大きさに驚き、いまではすっかり推進派に転じているケースもある。山本氏は「女性にとって働きやすい環境、柔軟な働き方を選べる環境は、男性にとっても良い環境のはず、という確信があった」と言うが、実際、男女や役職の違いを超えて、多くの参加者がWomenwillのトライアルを「テクノロジによる恩恵」を実感することにつながった。

Google は現在、これらのトライアルの結果をもとに働き方改革をサポートするためのトレーニングコンテンツを提供しており、約800社が利用中だという。

「世界中の情報を整理してアクセスできるようにするという理念は Google のすべての事業やプロジェクトに共通するもので、Womenwill もまったく同じ理念のもとに運営されている」 - 山本氏は Google における Womenwill の位置づけについてこう語っている。

Womenwill の以前から、Google は世界中で女性支援の活動を行ってきているが、それらは単なる慈善事業ではない。女性の活躍を妨げている要因があるなら、それを可視化し、問題解決のための仮説を立て、ツールを駆使して検証していくことで、女性の社会進出をバックアップし、ひいてはテクノロジの発展にもつなげていく - Womenwill は間違いなくGoogle の理念にもとづいたミッションだといえる。

同じ Womenwill でも、国によって取り組んでいる内容は異なってくる。たとえばインドネシアでは「女性の起業家を増やす」ことにフォーカスがあたっており、インドのある地域ではスマートフォンを使えない女性たちにその使い方を教える女性のトレーナーを増やす試みがなされているという。

ただし、共通しているのは「女性の社会進出を支援するという潮流が世界中で大きくなっているということ」だと山本氏は強調する。その裏には、Googleとして、「テクノロジーの力で世界の課題を解決できる」と信じているからだ。だからこそ、国や地域によって若干の違いはあれど、女性が社会で活躍することを支援するという世界的なうねりが生じている現在、最先端テクノロジー企業の Google がそのトレンドをツールで後押しするのは、ごく自然なことだろう。

実際、トライアルに参加した企業からは「働き方改革といえばこれまで人事の仕事だったが、いまはツールと紐づけて考えるようになった」という声があるという。これは Google だからこそ挙げられた成果だといえる。また、男性である山本氏が日本の女性支援プロジェクトを統括しているという点も、ダイバーシティを掲げる Google ならではのユニークな取り組みだ。

「男性が女性支援プロジェクトに関わることで、多様な視点が得られるはず。また、女性の働きやすさは男性の働きやすさにもつながると信じている。本質的に働く能力に性差はなく、テクノロジの恩恵は誰もが受けられるべき。こうした取り組みは女性の変化だけでなく、男性側の変化も見ていく必要がある。我々は一緒に変わっていかないといけない」(山本氏)

世界でもっともイノベーティブと呼ばれる企業の代表である Google がテクノロジでもって女性の柔軟な働き方を支援することは、Google のミッションに照らし合わせても納得がいく。だが山本氏はもうひとつ、Google がこのプロジェクトを推進する意義があるという。

「Google に入社して驚いたのが、誰もが"自律的"に働いているということ。逆にいえば、自分で自分の課題を見つけ、トライ&エラーを繰り返していかなければこの会社で仕事はない。もちろん上司から業務を命じられることはあるが、どうやってそれを実現するかは自分自身で考えなくてはいけない。セルフスターターであること、これが Google で働くのに絶対に必要な条件」(山本氏)

この言葉には、Womenwill もまた、参加する企業や従業員が"自律的"にかかわることの重要性が含まれている。これまで、働き方改革といえば時短にフォーカスがあたりがちで、それは人事が解決すべき問題として片付けられることが多かった。本来は自分たちの問題のはずなのに、どこか他人事で、いわゆる"ノー残業デー"に関しても「人事に無理やり押し付けられた」と不満に思っている向きも少なくないはずだ。

だがそうした他人事の姿勢は Womenwill には適さない。女性の問題は男性の問題でもあり、女性が働きやすい環境は男性にとっても働きやすいはず――山本氏が何度も繰り返したように、女性の社会進出を阻む要因を男性も一緒に自分の課題として取り組んでいくところにも、Google が主導するプロジェクトとしての意義がある。

Womenwill は Google にとっても"トライ&エラー"の繰り返しだった。その積み重ねがようやく一定の成果となって世の中にあらわれ、多くの賛同企業が日本にも生まれている。

「はじめは小さな取り組みでもかまわない。適用できる部署、適用できる人々からでもいいので、まずはトライしてみてほしい。働き方の意識が変われば、必ず時間やコストの効率化は進む。日本の企業にも着実に変化が訪れていることを実感している」と山本氏は最後にこうコメントしている。

変わるべきなのは女性の働き方だけではない。未来の働き方を変えるのは、現在のすべての人々による"自律的なトライ&エラー"だということをWomenwill は教えてくれている。

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ドコモがQR決済に本気、「d払い」の全国普及なるか

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2019.05.22

NTTドコモがスマホ決済の「d払い」を強化する

競合ひしめくなか、ドコモはどこに勝機を見出したのか?

NTTドコモは、夏モデル発表会においてスマホ決済の「d払い」の強化を発表した。送金やミニアプリなど新機能を追加し、ドコモの会員基盤をベースにキャッシュレスを普及させるビジョンを示した。

ドコモがスマホ決済「d払い」を大幅強化

PayPayを始めとするスマホ決済各社は、還元キャンペーンや加盟店開拓などで競争を繰り広げている。ドコモはどこに勝機を見出したのだろうか。

「d払い」が送金やミニアプリに対応

電子マネー「iD」やクレジットカード「dカード」を展開するドコモが、2018年4月に始めたスマホ決済が「d払い」だ。FeliCaの搭載が必要だったおサイフケータイとは異なり、バーコードやQRコードを用いるd払いはほとんどのスマホに対応できる。

d払いアプリのダウンロードは2019年5月に500万DLを達成し、2019年度は1000万DLを目標に掲げた。利用箇所はiDとdポイント、d払いの合算で2019年4月に100万箇所。2021年度末の目標は200万箇所とした。

d払いの強みは、「dポイント」との連携だ。ドコモの利用料金やdカードからの還元だけでなく、キャリアに関係なく持てる「dポイントカード」でポイントが貯まる。2018年度の利用総額は1年間で1600億ポイントに達し、d払い利用者の53%が支払いにdポイントを利用しているという。

さらにドコモはd払いに新機能を追加してきた。9月末に提供する「ウォレット」機能では、ドコモ契約者向けだった「ドコモ口座」を誰もが使えるようキャリアフリー化し、チャージや送金の機能をd払いアプリに統合する。

ドコモ口座をd払いに統合する「ウォレット」

複数の加盟店アプリを1つにまとめた「ミニアプリ」は、秋以降に展開する。d払いアプリから加盟店のサービスを呼び出すことで、「ハンバーガーの事前注文」や「タクシーの配車」が可能になる。加盟店の専用アプリを入れる必要がなく、d払いで決済もできるのがメリットだ。

「ミニアプリ」はローソンとマツモトキヨシから開始予定

QRコードの読み取りも強化する。これまでd払いは利用者がスマホ画面のQRコードを店舗側に見せる「CPM」方式に対応しており、コンビニのようなPOS連携が必要になるなど中小店舗にはハードルの高い仕組みだった。

コードを「見せる」「読み取る」の両方式に対応

そこでd払いは、顧客がスマホのカメラで店舗のQRコードを読み取る「MPM」方式への対応を発表。PayPayなど多くの事業者に続き、d払いも6月末には両方式に対応することで、大型店舗だけでなく中小店舗に展開していく体制を整えたというわけだ。

アプリを大幅強化、「マルチQR」にも対応

次々と新機能を追加するd払いでは、アプリも大きく変わることになる。開発中のアプリ画面には、ドコモ口座への入金と送金、ポイント送付、割り勘、ミニアプリなどの機能が所狭しと並んでいた。

d払いアプリを大幅強化

参加企業が増えればミニアプリには多くのアイコンが並ぶことになるが、これにはカテゴリ分けなどで対応していく考えだ。ミニアプリの仕組みは、既存システムとのAPI接続や専用パッケージの提供など、さまざまな方式を検討するという。

また、増え続けるQRコードへの取り組みも発表した。1つのQRコードで複数の決済サービスに対応できるデジタルガレージの「クラウドペイ」に、d払いも対応する。

1つのQRコードで複数の決済サービスに対応

クラウドペイでは、店舗側が支払う決済手数料は一律3.24%(税込)となるものの、固定費や機器の導入は不要で、複数の決済サービスをワンストップで契約できるなどのメリットがある。

全国のドコモ代理店が加盟店開拓へ

今後は全国のドコモ代理店の営業リソースを活用し、加盟店を拡大していくという。最近ではソフトバンクの営業部隊がPayPayの加盟店を次々と開拓する快進撃を続けており、そこにドコモが勝負を挑む構図になりそうだ。

d払いは、スマホアプリを中心にさまざまなサービスにポイントを循環させるビジョンを描いている。ドコモの発表からは、これまで以上にアクセルを踏み込む姿勢が感じられた。dポイントを絡めた「20%還元」など、新たなキャンペーンにも期待したい。

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訪日外国人と“飲みニケーション”できるマッチングサイトが見いだす価値とは?

先鋭ベンチャー LOCK ON! 第8回

訪日外国人と“飲みニケーション”できるマッチングサイトが見いだす価値とは?

日本の若者が敬遠し始めている“飲みニケーション”

訪日外国人をターゲットとした“異文化飲みニケーション”サービスが誕生

居酒屋がビジネスのヒントを得られる貴重な場になる可能性も

ここ最近、若者に嫌われがちな慣習に「飲みニケーション」がある。

これはいうまでもなく、仕事を終えた後、同僚たちと居酒屋などに集結し、アルコールの力を借りて互いの胸襟を開き、親睦を深めるコミュニケーション手法のこと。しかし、終身雇用や年功序列が崩壊した今や「会社の人とプライベートの時間まで削って仲良くなろう」というモチベーションは薄れた。「“飲みニケーション”って、いらなくね?」というムードが蔓延。令和時代に廃れてしまいそうな慣習ともいえる。

会社に勤める日本人の若者には、風当たりの強い飲みニケーション。それを新たなカタチとしてビジネスにつなげているのが、アシノオトの木村壮介さんだ。では、どんなビジネスなのか、木村さんに聞いた。

アシノオト代表の木村壮介さん。高校卒業後、兄が起こしたグループウェアメーカーにジョインして、エンジニアとして活躍。ウェブマーケティングの会社へ転職し、ウェブコミュニティの開発運営などを経て独立。訪日外国人とローカル日本人をつなぐQ&Aサイト「Hub Japan」を起ち上げ。2017年、同サイト内で「MEET&EAT」をスタートさせた

サービス名はHub Japan「MEET&EAT」。ネット上のプラットフォームを介して知らない者同士がマッチングし、文字どおり、食べて、飲む。”飲みニケーション”で親睦を深める、というわけだ。

もっとも「MEET&EAT」がマッチングするのは上司と部下でも、出会い系的な若い男女でもない。木村さんが飲みニケーションのターゲットにしているのが訪日外国人と日本人。日本を訪れた海外からの旅行者と、日本にいる人たちを居酒屋でつなぎ、親睦を深めさせる。いわば“異文化飲みニケーション”を提供しているのだ。

旅行者の「美味しい」は、アテにならない

きっかけになったのは、木村さんの経験だった。

「新婚旅行のときに覚えた違和感。そこからはじまったんです」(木村さん)

木村さんがイタリアへ行ったのは2015年。奥さんと2人で楽しみにしていたのが本場のイタリア料理だった。旅行に関する大手口コミサイトでみつけた店を、まず巡った。待ちに待った本場の味。それが実にいまいちだった。

「『こんなものかな…』とも思ったけれど、2日目に偶然仲良くなった地元のおばちゃんが『昨日はどこで食べた? 駅前の店? ダメダメ。行くならあっちの店よ』と教えてくれたんです。すると今度はめちゃくちゃ美味しかった。それが衝撃でした」(木村さん)

美味しさに対する衝撃だけじゃない。圧倒的な集合知を誇るネットの口コミサイトが、地元のおばちゃんのアナログな知見に勝てないことにこそ、木村さんは感銘を受けた。

「考えてみたら当たり前なんですけどね(笑)。世界中の質の高いユーザーが口コミを書き込めたとしても、書き手が旅行者である以上、底はしれている。地域にずっといる人の知識には敵いませんから」(木村さん)

そこに着想の芽があった。

ならば「地元の人と海外からの旅行者をQ&Aでつなぐローカルコミュニティサイトがあったら喜ばれるのでは?」と考えた。ヤフー知恵袋のような巨大なQ&Aサイトや、SNSで直接つながったコミュニティサイトはあるが、越境してローカルの人と旅行者をつなぐQ&Aサイトは意外と見つからない。

それまでグループウェアの制作運営や、企業向けのコミュニティサイトの開発運営を手がけるITエンジニア・ディレクターだったが、独立起業の潮目を感じた。個人的に「社会課題の解決につながるような事業で独立したい」と考えていたことも後押しになったという。

「どんな課題か? “グローバリゼーション”とそれに伴う文化の均質化“への危惧ですね。なんていうと大げさですけど、目立たないけれど素敵なスポットや、小さくても美味しいお店が、情報の均質化で目立たず消えていく。盛りあげないともったいないなって、感じていたのです」(木村さん)

そして2016年に独立。自らプログラムを書けること、奥さんもWebデザイナーだったこともあいまって、すぐさまシンプルなQ&Aサイトを立ち上げた。名前は「Hub Japan(ハブ・ジャパン)」。訪日予定、あるいは訪日中の外国人ユーザーが英語でクエスチョンを書き込むと、日本のローカルユーザーがアンサーを書き込んでくれるシンプルな仕組みだ。

たとえば「東京でオススメの穴場の寿司屋は?」「サクラを見に大阪へ行くが、気温は? 上着は持参したほうがいいか?」といった具合に欧米を中心に訪日予定の人たちから英語で書き込む。すると、サイトに埋め込んだGoogle翻訳エンジンが日本語に変換してくれるので、日本人も気兼ねなく「現地の声」を書き込める。その日本語は、書き込んだユーザーが読めるように、英語に変換されるわけだ。

「ただオンラインだけだとつまらないのでリアルでも何かやりたいと考えた。そこで『体験の仲介サービス』をやろうとしたんです。訪日外国人が興味のありそうな、着物の着付けとか、お茶の体験とか、いろいろ試しにやってみたら……」(木村さん)

そうしたなか、圧倒的に参加者の好評を得た体験イベントがあった。「居酒屋探訪」ツアーがそれだ。

日本人には当たり前の居酒屋に価値があった

赤提灯や縄のれんが目印の大衆居酒屋から、高級割烹ぜんとした高級店まで、バラエティに富む居酒屋レストランは、日本全国に23万店以上あるといわれる。日本独自の酒とつまみが効率よく味わえるうえ、日本の生活文化や日本人とふれあう機会もあるため、今や訪日外国人にも人気のスポットだ。

ただ興味はあれど、観光客が海外の夜の街に繰り出して、初めての居酒屋に入るのはハードルが高い。ボッタクリ店などにあたるリスクもある。しかし、勝手知ったるローカルの日本人が薦める店に、しかも一緒に入って楽しめるとあれば、安心感が高まる。

「一方で居酒屋などの飲食店も、訪日外国人のお客様を呼び込みたいけれど、お店を知ってもらえていないというのが、多少の機会損失になっていた。なので、飲食店の販促の仕組みとして活用してもらえると考えたんです」(木村さん)

試しに「ハブ・ジャパン」をとおして「日本の居酒屋で日本人と語り合おう」というツアーを告知すると、すぐに外国人観光客から応募があった。木村さんが試験的にアテンドをする。奥さんや友達とともに外国人複数×日本人複数で、オススメの居酒屋にむかい「カンパイ!」からはじめると、異様な盛り上がりをみせた。

英語もできず、そもそもコミュニケーションも苦手だった木村さんだが、酒が入り、気持ちが大きくなると「身振り手振りで必死に会話をしている自分」に気づいた。飲みニケーションあなどれじ、だ。

「また、もちろん海外の方々に『日本に来た目的は?』『何を楽しんだ?』などと聞くことも楽しいのですが、実のところ彼らから日本について意表をつく質問をされることにこそおもしろさ、価値を感じました」(木村さん)

「日本で最もポピュラーな宗教は?」とか、「無宗教? ではなぜあれほど神社があり、誰しもお参りしているんだ?」とか、「あなたにとって蕎麦とはなんですか?」とか――。

「蕎麦については、おもしろかった。自分にとって蕎麦とは何か、なんて考えたことなくて(笑)。日本人同士だったら絶対に聞いてこないような質問をどんどん向けられる。結果、むしろ日本のこと、日本文化のことを深掘りせざるを得なくなったんです。また海外の人たちが、日本の何に興味があるのかも肌感覚でわかる。これって観光施策や訪日外国人向けビジネスのヒントが得られる貴重な場になるなって」(木村さん)

だから、日本文化を深掘りしたい「訪日外国人」、質の高いインバウンド客を集客したい「居酒屋」、そして外国人とフランクに交流することで刺激やアイデアを得たい「ローカルの日本人」。この三者を“三方良し”でつなぐプラットフォームとして、2017年末に作った。

仕組みはやはりシンプルだ。ローカルの日本人ならFacebook認証をとおして「ハブ・ジャパン」にまず登録。そこから「MEET&EAT」のサイトに行く。同じようにログインして日本滞在中の「居酒屋で交流したい」と書き込んでいる訪日予定の外国人アカウントをチェック。都合のいい場所や日時、気の合いそうなプロフィールの団体がいたら「マッチング希望」をクリック。返信を待つ。マッチングとなれば、メールでのやりとりができるようになり、「MEET&EAT」内で指定する居酒屋店をチェックして予約。当日、最寄りの駅前で待ち合わせて、予約時間に店にいき「カンパイ!」となるわけだ。

外国Hub Japanの利用者たち。未成年かどうかの判断はFacebook認証で行われる。トラブルが起きないように、基本2~3人ずつしかマッチング登録できない

今はサイト経由で飲食店への予約が発生したときに、紹介料を得る仕組みで運営中。都内数十店舗の居酒屋と契約を結び、月30人程度の訪日外国人からのリクエストに応えている。

「ビジネスの規模はもう本当に小さい。受託の仕事を続けながら、まだまだ手探りの段階です。ただ小さいながら手応えも感じています」(木村さん)

「またぜひ居酒屋で飲みたい」と訪日外国人のリピーターが増えている。「生きた英語を学びたい」「楽しい飲み会を開きたい」というローカル日本人も増加中だ。とくに「企業のインバウンド担当をしているが、本当のニーズがつかめない。ヒントを得たい」「飲食店を経営しているが外国人向けにメニューやサービスを充実させたい。直接リサーチできるのでは」とマーケティング・リサーチの場として価値を見出している人も現れ始めているという。

飲みニケーション、やはりあなどれじなのだ。

「まあ、まだまだ小さい事業で、どこまでできるかわからないけど(笑)」(木村さん)と、取材終盤、木村さんは繰り返した。ただ、目立たないけど素敵なビジネス。盛り上げないともったいない、と……。

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