ICTの活用指導力が最下位、奈良県が大学・企業と「教育」に取り組むワケ

ICTの活用指導力が最下位、奈良県が大学・企業と「教育」に取り組むワケ

2018.04.11

文部科学省は、学校におけるICT環境の整備状況や、教員のICT活用指導力に関して調査する「学校における教育の情報化の実態等に関する調査」を毎年公表している。奈良県は、教育のICT活用指導力において、毎年低迷していた。

能力別5項目のうち、奈良県は「都道府県別 教員のICT活用指導力の状況」や「児童・生徒のICT活用を指導する能力」「情報モラルなどを指導する能力」「校務にICTを活用する能力」の4項目で47都道府県最下位を記録。奈良県教育委員会 奈良県立教育研究所 副所長の石井 宏典氏は、「ここ5年ほど、(調査で)指導力は46位、47位を行ったり来たりという低い状況だった」と現状を素直に認める。

奈良県教育委員会 奈良県立教育研究所 副所長 石井 宏典氏

遅れを取り戻すために奈良県教育委員会が取り組んだのは、「ICT活用教育 奈良モデル」の構築だった。

周回遅れ、でも逆手に取って「フロントランナー」へ

奈良モデルでは、児童・生徒・教員・地域・家庭という教育に関連するすべての立場において、ICT活用能力の向上を目指す。昨今は生徒のICTに対する慣れ・親しみと、教員のICTに対する理解のギャップがあるとして大きな問題となっている。特に奈良県は教育のICT活用指導力が下位に低迷するように、その最たる例といっても良い。

一方で石井氏は、そうした状況だったからこそ、「立ち遅れていた立場を逆手に取り、ここからの取り組みは最先端に舵を切ることができる。『遅れているから』と気後れするのではなく、フロントランナーとしてやっていけるのではないか」と話す。例えば、これまでの教育におけるICT活用は"箱モノ"ばかりに目が行く。

実際、冒頭の調査では、ICT環境の整備状況を「教育用コンピューター台数」や「無線LAN整備率」「超高速インターネット接続率」といった切り口で捉えている。当然ながら、これらは前提条件として必要な指標だ。だが、グローバルでICTを当たり前としたビジネス環境が拡大する中で、大切なのは「子供たちがICTをどう活用できるか」だ。ひいては、奈良県の課題である「大人が子供にICTを前提に勉強させられるか」でもある。

同研究所 研究開発部 ICT教育係長 小崎 誠二氏

同研究所の研究開発部 ICT教育係長の小崎 誠二氏は、「奈良モデルでは、生徒と教員、双方がICTをフルに活用できるよう、日本マイクロソフトやアドビシステムズ、モリサワ、内田洋行などと包括契約を結び、全員が最新のソフトウェアを利用できるようにした」と話す。

近年、ソフトウェアは買い切り型から常に最新のソフトウェアを利用できるサブスクリプションモデルへと移行しつつある。継続した課金を負担に感じる印象もあるが、一方でイニシャルコストを気にせずに、世のトレンドに遅れることなく最新のソフトウェアをキャッチアップできるメリットは小さくない。

奈良モデルでは、企業と包括契約を結ぶことで、「個別に1個ずつ契約するよりも総コストは抑えられるようにした。何より、奈良県として自由に(ソフトウェアを)使えるようにしたことは大きい。これまでのように学校単位などでは、使いたい先生・学校ばかり先行して、格差があった。県全体で使えるようにしたことで、誰もが分け隔てなく利用できれば、利用することに躊躇する可能性が減るし、包括契約だから使わないことがあってもコストは抑えられる」(小崎氏)という。

高大連携のなぜ

企業との包括契約には続きがある。

こうした新しい時代の教育は、子供たちに勉強を教えたいという思いを持っている先生たちにとっては高い壁だ。2020年から必修化される小学校における「プログラミング的思考」は、勘違いされがちだがプログラミング教育ではない。あくまで物事を論理的に、プログラム開発における思考過程を追うような教育のことだ。

一方で、ICTを活用した指導力とは、まさにPCやタブレットのソフトウェアを用いて算数、理科、はたまた美術など、さまざまな教科を教えることだ。先生たちは、その多くが大学を出て、そのまま教職員になる。学校という世界しか知らない。もちろん、それ自体を否定するわけではない。

ただ、石井氏は「先生たちが先生になるのは、『あの先生の、あの教えが素晴らしかったから自分も教えたい』という原体験が大きいはず。それ以外の世界を知らない。だからこそ、新しいことを学び、共有できる環境が必要だ」と話す。教え方に加えて、新しい今の時代に即した教育を。そこで奈良県は高大連携で一つの取り組みを始めた。

慶應義塾大学SFC研究所 ファブ地球社会コンソーシアムの高大連携WGで、情報教育の実践型「授業レシピ」と地域連携型ネットワーク構築に向けた取り組みだ。ファブ地球社会コンソーシアムとしては、デジタルを活用したモノづくり(ファブリケーション)の世界が広がる中で、それを高大連携によって前提となる知識を広く広げたいという想いがある。

"レシピ"とは、いわゆるアクティブラーニング型の授業を実行するだけでなく、授業を俯瞰した先生たちによる評価、体験した生徒たちの成果物をレシピに残すことを目指す。子供たちがどういう過程でモノを作り上げたのか、先生の俯瞰した評価なども交えて参照できれば、後続する、ほかの学校の先生にも参照できる。

慶應義塾大学 環境情報学部 准教授の中澤 仁氏は、「高校は30年前からWordとExcelしか教えていない。高大連携はかねてから求められているものだが、その内実は、高校はきちんとした情報リテラシーの生徒を育てたいし、大学はそうした生徒をさらに伸ばすということをやるべきなのに、そうした良い循環が起きていないのが実態だ」と話す。

慶應義塾大学 環境情報学部 准教授 中澤 仁氏

テクノロジーがかつての一部の企業しか持てなかった時代とは異なり、すべてがサービス化され、価格面、技術面の双方で人々の手に渡りやすくなった今、「3Dプリンターやレーザーカッター、プログラマブルミシンなど、その手で簡単にモノを作れるということを、鉛筆で文字を書くのと同じようにスキルとして教えられる、ということをもっと広げられたら」(中澤氏)。

ものづくりを生徒が"お手軽"体験

そこで3月の行ったのが、企業も交えた「つくりかたの未来講座」だ。3Dプリンターなどの環境を提供するファブラボ鎌倉や、カメラセンサーを提供するオリンパス、電子楽器のヤマハ、そして「奈良モデル」に参画しているアドビシステムズなどが、授業に必要なツール・サービスを提供した。

未来講座では、慶大が作成した情報教育のレシピに沿って「課題設定能力」と「課題解決能力」「情報伝達能力」を育てるような授業を行う。この日の例では、「掃除」をテーマに、ソニーのIoTセンサー「MESH」やオリンパスのカメラセンサーを用いて、「どうやったら掃除が楽しく出来るようになるのか」を生徒たちに考えさせた。

ソニーのIoTセンサー「MESH」は、さまざまなセンサーを連携してさまざまな機能を実現できる

「つくりかた」と謳うからには、実際にモノも作らせた。奈良県内の高校から集められた40人弱が、初めて会う人と共に、さまざまなアイデアを出し合い、どう課題を捉え、解決へと導き、どう素晴らしいモノに仕上がったのかを伝えるということを一連で体感した。あるチームは一人がすべてを発表し、別のチームは実演を交えて説明し、概念だけを説明したチームもあった。

レーザーカッターで実際に小物を作ったチームもあった

この講座を通して中澤氏らが伝えたいことは、作ったモノの完成度の高さではなく、勉強したという事実でもない。

「(生徒に対して)今日は、遊びに来たと思ってほしい。何の遊びかと言えば、レーザーカッターでプレートが作れること。三次元プリンターでオブジェクトが作れること。それがもし家にあったら、いろんな遊びが可能になること。未来講座という名前がついているが、今すぐできることを体験してもらう講座だ。家に帰ったら3Dプリンターを買ってと、親にねだって欲しい(笑)」(中澤氏)

企業からこの講座に参加した社員は、誰もが「即座に仕事に繋がるわけではない」と口を揃える。レーザーカッターメーカーの担当者が「学校さんに納入していますが、一般的な高校に広く、というわけではない」と話せば、オリンパスの担当者も「私は技術開発部門で、特にこれをセールスするわけではない」と話す。一方で、「重要なのは、新しい価値に触れてもらって、自分たちで気づかなかった使い方とか、可能性を見出したい」(オリンパス担当者)という想いもあるようだ。

アドビシステムズ デジタルメディア ビジネス本部 教育市場営業部 担当部長の楠藤 倫太郎氏は、奈良県との包括契約を結んだ理由に立ち返って「ファブリケーションのような新しい時代の価値観を広げるのは、1校ずつ全国でこうした未来講座をやって回るのは難しい。教育委員会とお話して、この仕組みの話になったとき、機会が増えると感じた」と振り返る。

生徒同士が語り合ってアイデアを出したものがレシピになるだけでなく、傍らで観察する先生たちもまた、意見を出し合うことで「よりよい授業」を導き出し、それを共有していく

アドビシステムズは外資だが、日本法人として出来ることをやってきた。「日本の子供は創造性が足りないと言われるが、それは(創造性に繋がるような)体験が足りないだけ。私たちが子供の教育のためにやってきたことは半分CSRでもあるが、何より体験できる機会を増やせば、自発的に考える生徒が出てくると信じている」(楠藤氏)。

中澤氏も、企業が教育に直接携わるメリットについて「生徒と社会の距離を縮める」「企業ネットワーク」の2点を上げる。社会は人と人、そして会社と会社の関係性で成り立っている。会社が商取引を通じて経済が回り、人々が生きているという実感を生徒がどこまで意識できるのか。

「高校生からすれば、『デジタルのモノづくり』と言われても遠く感じてしまう。でも、実際に目にしたことがある企業が自分たちに直接説明してくれたら、実感として一番残る。それは、高校生のみならず、先生でも同じことだ。大学としても、企業が入ってくれれば、企業が繋がっている教育の現場で新しい学びの在り方を模索できる」(中澤氏)

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

2019.01.22

セブン、ローソンに続きファミマも成人誌を販売中止

インバウンドの増加、オリンピックの開催も影響か

コンビニ最大手のセブン-イレブンと業界3位のローソンが成人向け雑誌の販売中止を発表したのに続き、業界2位のファミリーマートも同様の方針を打ち出した。大手3社の足並みがそろい、日本国内のほとんどのコンビニ店頭から成人誌が消える。

国内のセブン-イレブン店舗数は2万店を超え、ローソンとファミマが1万5,000店前後でこれに続く。それぞれ今年の8月末までに取り扱いを原則中止するという。これまで一部店舗で成人誌の販売を中止していた例はあったが、今回は各社全店舗で取り扱いを中止する。業界では昨年1月から、ミニストップが他社に先駆けて全店で取り扱いを中止していた。

もともと諸外国にくらべ、女性や子どもの目につきやすいコンビニ店頭などに成人誌が置かれている日本のゾーニングの現状は特殊であるとの批判があった。また、インバウンドで訪日外国人が増え、この論調に拍車がかかっていたほか、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、イメージ低下を防ぐ要請が強まっていたという背景がある。

コンビニでの成人誌の購買層は近年、高齢男性に偏るとともに売り上げの減少も顕著であったといい、ゾーニングの問題が取り扱い中止の大義名分になったという見方もある。ある出版関係者は、「一部では電子版などネット展開を強化している流れはあるが、今でもコンビニは重要な販路なので、相当な混乱があるだろう」と話す。どちらにせよ、日本の成人誌は岐路に立たされることになる。