パナソニックらも支援、10年かけて夢を追う男 阪根 信一

パナソニックらも支援、10年かけて夢を追う男 阪根 信一

2018.04.12

セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ 代表取締役社長の阪根 信一氏。世界初を謳う全自動衣類折りたたみ機「Laundroid(ランドロイド)」を開発中の男だ。2015年910月にプロトタイプを公開した時から話題をさらった同製品だが、2017年度中の出荷開始がずれ込み、現在は2018年度の出荷開始を予定している。

セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ 代表取締役社長 阪根 信一氏

2015年に存在が明かされてから2年強、出荷が順調に行ったとしても消費者の手元に届くまでおよそ3年の月日がかかる。これがクラウドファンディングによる資金調達であれば、昨年11月に出荷延期を発表した段階で"返金祭り"になってもおかしくない状況だろう。

しかし、ランドロイドのバックにはパナソニックと大和ハウス工業という大手事業会社、そしてSBIインベストメントなどのファンドがいる。2005年頃から温め続けてきたアイデアを世に放つまで、干支1周分以上の歳月がかかったが、それでもなお、2大事業会社が出荷延期に首を縦に振ってでも実現したいランドロイドとは何なのか。

出荷遅延も、完成度を高く

出荷が遅れた理由として阪根氏は、パナソニックと大和ハウス工業と議論する中で、「この(ハードウェア)スペックで出荷し、その後はソフトウェアのアップデートで対応していこう」という意見があったことを明かす。しかし、メカ機構を必要とするランドロイドは、スマートフォンのように「劇的に性能が向上する」という保証はない。

「ベンチャーとして、出荷時期を優先という話もあったが、逆に、世の中に初めて登場する製品で『この基準でなければならない』という答えがなかったのも事実。だったら、その価値判断の基準をここまで引き上げましょう、ということでスケジュールし直しました」(阪根氏)

ランドロイドは、予定価格で185万円の代物。アップデートが難しいハードウェアを中途半端に妥協しては、その後の製品展開に長期的な影響を及ぼす。それであれば、最初から万全を期すというのが阪根氏らの考えなのだろう。

10年以上かけてランドロイドという夢を実現したワケ

2005年に阪根氏がアイデアを夢想したとき、アイデアを実現できる要素はまだまだ足りなかった。

「ここに至るまで、さまざまな『反対意見』との戦いを繰り返してきました。社内の技術者が『やりたくない』と言い出し、『完成するわけがない』と会社を辞められた。間にはリーマンショックもあり、既存事業を切り詰めているのに、『なぜランドロイドを続けるんですか?』と経理部長から詰められた。さらに言えば、さまざまなVCから『出資したくない』とも言われましたね」(阪根氏)

ベンチャー企業というイメージがあるセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズだが、もともと同氏の父・勇氏が滋賀で「I.S.T」という会社を立ち上げており、阪根氏も一時期社長を継いでいた。日本らしいB2Bのモノづくりテクノロジー企業として、先端複合材料などを開発。阪根氏自身も、I.S.Tで新規事業開発に着手し、成功を収めていた。

「既存事業を伸ばしつつ、新しい事業を、と考えた時に、個人的な目標との乖離にぶつかりました。2030年までに売上高3500億円、経常利益20%を叩き出す、研究開発型モノづくりを極めたいと思った。そのためには、B2Bのコンポーネント事業だけでは難しい。B2C完成品をやって、それで初めてその規模まで行ける、と」(阪根氏)

B2C製品を、という想いから2005年にランドロイド、2007年にも鼻腔挿入デバイス「ナステント」を着想した。B2B事業では10%~30%という年率の成長は見込める。だが、50%~100%という成長は難しい。ひいては2030年の3500億円という目標にはたどり着けない。

アメリカでは"ボツ"も、パナ、大和ハウスらが救いの手

B2C事業をやるからには、成長に耐えうるだけの資本の増強、ブランディングやマーケティング部隊を必要とする。テクノロジーはもともとの得意領域、2008年に素材メーカーのスーパーレジン工業を買収したほか、子会社も設立した。当初は2015年頃を目処に製品開発を進めていたことから、製品化がランドロイドより容易だったナステントを売り出そうとしていた。しかしそこで、一つの壁があった。

「父に、B2C事業を進めるために、そろそろ外部資本を取り入れて、IPOも視野に入れたいんですと伝えたんです。そうしたら『B2Cは良いけど、外部資本入れるのはやめてくれ』と言われた。それまで、I.S.Tで自由に事業をやらせてもらっていただけに、内心『えっ』と思った。ただ、I.S.Tは父が作った会社。僕が変えるわけにもいかず、姉にI.S.Tを引き継ぎました。セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズは、B2C事業を進めるために作った、スピンアウトベンチャーとして再出発したんです」(阪根氏)

紆余曲折を経てスタートしたセブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズだが、前述のように増資の引受先がなかなか見つからなかった。スタートアップならアメリカだ、とアメリカ留学の経験を生かして渡米してVCを回ったが「ナステントとランドロイド、カーボンゴルフシャフトという3つの事業を提案したんですが『やることがバラバラ過ぎる』として受け入れてもらえなかった」(阪根氏)。

結果として、技術をわかる、社会を変えるという意義を認めてくれたのは、ホームグラウンドの日本だった。パナソニックは家電メーカーとして、ある種のミッシングピースを埋めるため、大和ハウス工業も住環境の価値向上を目指すという目的があっての提携・資本参加だったのだろう。「最近になって、完成が近づいて実現性が高まるとアメリカから『出したい』と言われています(笑)」(阪根氏)というが、ある意味で日本らしさが溢れた出資案件と言えるだろう。

技術的ハードルが高いからこそ、アドバンテージに

10年以上の歳月をかけたランドロイド。それだけ先行投資してきたからこそ「ライバルはどこかにいるだろうとかなり探したんですが、本当にどこにもいない」(阪根氏)。実現できると思う人がいなかったんだろうと阪根氏は笑うが、開発過程ではさまざまな壁があったという。

一例では、衣類の山から一枚一枚認識してピックアップする技術。昨今は画像認識技術の発達によって簡単に認識できるのでは?とも思うが、そこからアームを伸ばしてピックアップする行為が繊細であり、「未だにプレイヤーはいないと思う」(阪根氏)。衣類を畳むという行動は米UCバークレー校のロボットベンチャーなど一部しかないという。

今年のCESでは「FoldiMate」という折りたたみ機がコンセプトで発表されているが、もともと2018年販売を想定していたものが2019年にずれ込んでおり、いちいち自分で洗濯物をセッティングしなければならない。折りたたみ領域だけでも、技術的ハードルが高いことがわかる。

一方のランドロイドは、タオルやTシャツなどの分類別、お父さんや子供といった家族別の自動仕分けも実装する。ある意味「お手伝いさんが勝手にやってくれる」という環境を実現するのだ。もちろん、FoldiMateは格安(数十万円程度の想定)というアドバンテージがあるが、画像認識や複雑なアームによる技術開発は、派生製品など、より長期的な製品開発の可能性を見据えている。

「昨今のIoT製品の広がりを見ると、時流に乗っている部分があるなと思います。(アイデアが出た)2005年とは全く違う。技術的にもそうですが、マーケティング的にラッキーなんですよ。例えば、AIやロボティクスが徐々に人々に受け入れられていますし、実際に私たちもそのテクノロジーを取り入れています」(阪根氏)

阪根氏は、目指す"企業"としては「ソニー」、経営哲学の理想像は「松下幸之助」と話す。売上高の成長曲線は、ソニーをイメージし、「意外に長くない30年」(阪根氏)という期間の中で、1兆円という自己目標を見据えつつも、3500億円の売上高目標を掲げた。

なぜ、日本のB2C二大メーカーを志すのか。理由はモノづくりの大切さだ。昨今は金融、IT領域が大きく伸長する。これらの領域は業種横断的に「プラットフォーム化」を目指す稼ぎ方だ。だが阪根氏からすれば「やはりモノづくり、それが一番スケールする」。

実際、世界一の時価総額はアップルであり、日本一もトヨタだ。アップルはファブレス企業ではあるものの、誰もが手に取るiPhoneで時代を席巻する。

「大学院に居た時は『教授になりたい』と思って論文と同時に、経営哲学の本も読み漁った。その中で感じたことは、ビジネスの場は大学とは異なり、『戦争』の世界。勝つためには競争を排除しなければならない。ITの世界は競争が多く残るが、モノづくりは技術でぶっちぎれば競争のない世界になる」(阪根氏)

ランドロイドは、さまざまな要素技術を組み合わせており、一つ一つで見れば"オンリーワン"は少ないかもしれない。だが、全自動衣類折りたたみ機を作るための研究開発で培った技術は、時間と金がかかる。実際、阪根氏が歩んできた10年という歳月がそれを物語っている。

製品はバラバラでも「合理的」

我が子を自慢するかのようにランドロイドを説明する阪根氏

かつて、モノづくりで世界をリードした日本だが、中国や韓国の台頭によって"没落"の危機に瀕している。だが阪根氏は、「日本人は集団行動に適しているし、モノづくりに必要なものはそれ。国として『新しいものを作り出す力がない』という人もいるが、電機に限らず独創的な製品はこれまでも出てきている」と話す。

阪根氏が指摘するのは「人がやらないことに挑戦するマインド」が欠けていること。小さく、中国に比べれば人も少ない。それでも、これからも「日本はまだまだやれるんだと強く示したい」と自身の思いを話す。その意思に対して、エンジニア60名のうち、40名がいわゆる一流メーカーから転職してきたという。「彼らは、優秀で個性的。この国はやっぱり凄いんだと感じる」(阪根氏)。

この技術者陣で作り出す商品は、ランドロイドを含む既製品3つに加えて4つ目、5つ目がある。「4つ目は粛々とプロジェクトを進めていて、5つ目は構想を練っているところ。どちらも楽しい」(阪根氏)。6つ目も検討をスタートさせているところだが、ブレスト段階にあり、「人々の生活を豊かにする、技術的ハードルが高いモノ」(阪根氏)。

これまでも、これからも、一つひとつの商品は関係性の薄い別々のセグメントで攻めていく。それは「それぞれの領域でイノベーションを起こせれば、これまでになかった情報価値が生まれるから」だという。ニーズからテーマを見つけてチャレンジする。シーズやソースを無視して新たなことに挑戦することが、ビジネスモデルとして合理的だと阪根氏は笑う。

「既成概念を崩していくことがかっこいいし、そう思われたい。『この会社は次に、何をやるんだろう』というワクワクした気持ちを持ってもらえる会社にしていきたい。3500億円、1兆円という目標は、逆算して『今何をしないと到達できないのか』と考えて粛々と進めるだけ。目標が高いとトラブルはつきものだが、色んなパンチを繰り出して、一つ一つ倒すだけ。心と身体が健康であれば、出来るものだと思っている」(阪根氏)

ポルシェの次に買うクルマ? 安東弘樹、ルノー「メガーヌ R.S.」に乗る!

安東弘樹のクルマ向上委員会! 第18回

ポルシェの次に買うクルマ? 安東弘樹、ルノー「メガーヌ R.S.」に乗る!

2019.03.27

ルノーの5ドアハッチバック「メガーヌ R.S.」に試乗

やっぱりMT車が好き! 高性能モデルの登場に高まる期待

もしも(好きなように)クルマが買えたなら…安東さんの人生設計

安東弘樹さんに同行した日本自動車輸入組合(JAIA)試乗会も、いよいよ最後の1台となった。残すはルノーの「メガーヌ R.S.」だ。愛車のポルシェ「911 カレラ 4S」から乗り換える候補の1台として、「ある程度は本気で」購入を検討しているというこのクルマを、安東さんはどう評価するのか。

MT車の日本導入を待って購入を検討?

「メガーヌ R.S.」は5ドアハッチバック「メガーヌ」の高性能モデル。「R.S.」はルノーのモータースポーツ活動を担う「ルノー・スポール」の頭文字だ。このクルマについては以前、モータージャーナリストの塩見智さんに試乗してもらったので、詳しくはこちらの記事をご覧いただきたい。

「メガーヌ R.S.」に乗り込んだ安東さん

安東さん(以下、安):(乗り込んですぐ)ドアヒンジは多くの日本車と同じでプレスですね、開ける時に軽い感じがします()。(しばらく走って、高速道路に入りつつ)さすがはFF(前輪駆動車)、急加速すると暴れますね(笑)。

【編集部注】ドアヒンジとはドアとクルマをくっつけている部品のこと。ここの作りによってドア開閉時の重厚感、ひいてはクルマの上質感に差が出ると安東さんは語る。細かいポイントのようだが、ドアヒンジについてはマツダミニの取材でも話題になった。

編集部(以下、編):今回、メガーヌ R.S.に試乗してみたいと思ったのはなぜですか?

:すごく気になっていたクルマなのですが、まだ乗ったことがなかったので、どうしても今回、運転してみたかったんです。今回のクルマはDCT(デュアルクラッチトランスミッション)ですが、MT(マニュアルトランスミッション)車を今、待っている状態です。ただ、急加速した時の“暴れん坊感”を体験してみて、いくら電子的に制御しても、FFには限界があるなとも感じました。じゃじゃ馬を乗りこなす、というところにカタルシスを感じる人もいるとは思いますけど。

「メガーヌ R.S.」のボディサイズは全長4,410mm、全幅1,875mm、全高1,435mm。価格は440万円だ

:MTだったら欲しいクルマですか?

:はい。もうすぐ、MTが日本に導入されるらしいのですが、欲をいえば、「メガーヌ R.S. トロフィー」というグレードを待ちたいです。R.S.は279馬力ですが、トロフィーは300馬力なんで。

:「待ちたい」っていうのは、真剣に購入を検討していて、待ち構えているという感じですか?

:うーん、ある程度は本気で考えているっていう感じでしょうか(笑)。次もポルシェ「911 カレラ 4S」に乗るのが理想ではあるんですけど、それこそ、私の稼ぎ次第というか、買えない可能性もあるので……。今の911は、乗り始めてから10年になりますし、乗り換えたいタイミングではあります。

:その乗り換え候補の1つが、「メガーヌ R.S. トロフィー」だというわけですね。ただ、素人なので分からないんですけど、最近の安東さんの露出ぶりを見ている限り、次もポルシェで大丈夫なんじゃないですか?

:どうでしょうねー、想像もできません(笑)。今回の確定申告で、どのくらいの税金を払わなきゃいけないのかにもよりますし。フリーになって初めての確定申告なので、正直、怖いです。

:この間の「バラいろダンディ」(TOKYO MXで放送中のテレビ番組、安東さんは火曜レギュラー)で、「これから、税理士さんと話をする」っておっしゃってましたもんね(笑)

:いくらくらいの税金になるのか、それによっても変わってきます。ただ、フリーランスになってもうすぐ1年経ちますが、この収入では、新しい911には手が届きません(笑)

:本当ですか?

:今の911と同じように長期ローンを組めば、あるいは……。とは思いたいですが、新しい「911 カレラ 4S」を自分が乗りたい仕様で買うと、税金なども含めた乗り出し価格が2,200万円弱になってしまいます。日々忙しいのですが、薄利多売でやっているので、くどいようですが、本当に現状、購入は難しいです(苦笑)

1台はスポーツカーを所有しておきたいという安東さんだが、次に何を買うのかは将来の収入次第だそう。「メガーヌ R.S.」もMT車が気に入れば候補に入るようだ

:(メガーヌの走行モードを変更して)「レースモード」に設定すると、ESC(横滑り防止装置)がカットになるんだ……。自動ブレーキもオフになりますが、それは当然ですよね。サーキットを走っていて、前走車に近付くたびにブレーキが掛かったら、たまったものではないですから(笑)。このモードに入れても、そんなに乗り心地が硬くならないというか、不快感はないです。

法定速度で走っている限り、レースモードにする意味はあまりないでしょうけど、腕と環境が許せば、滑らせながら走ってみたいですね! MTだったら楽しいだろうなー。あと、パドルシフトは下まで伸びていて欲しいです。乗り始めてから、5~6回は空振りしてますから。

パドルシフトとは、指による操作でクルマのギアを上げ下げできる装置のこと。画像では分かりにくいかもしれないが、ステアリングの後ろに付いている
一般的にパドルシフトの操作部分は縦に長いが、「メガーヌ R.S.」のパドル(赤い十字マークが付いているところ)は上方向に長く、下方向に短い造形になっている。そのため、パドルの下の方を指で操作しようとして、何度か空振りしてしまったと安東さんは話しているのだ

:パドルシフトがステアリング連動式なので、コーナーを曲がっているときの操作も、少しやりにくいですね()。

【編集部注】パドルシフトには、ステアリングに連動して動くものと、ステアリングコラムに固定されているものがある。

:ステアリングと一緒にパドルシフトが動くのと、固定してあるのだと、どちらがいいんですか?

:メルセデスもそうですけど、ドイツ車はステアリングに連動して動く方が主流ですよね。ただ、ステアリングを切って(左右が)逆さまになっている時、パドルシフトの位置も逆になるので、どちらがプラス(ギアを上げる方)だか分からなくなることがあるんですよ。そこが難しいところで、だから「GT-R」(日産自動車)とかも固定式ですし、基本的にラリー用のクルマもコラム固定式ですね。

:ステアリングを切りまくるからですか?

:そうです。だけど、F1などのフォーミュラカーだと、ステアリングにシフトパドルが付いていて連動しますね。なぜなら、ステアリングを切っても最大で半回転ですから、左右の手を持ち替えないので、当然、その方が好都合です。

だから、このクルマ(試乗中のメガーヌ)は、ステアリングを大きく切っている時でも、シフト操作に迷わない事を優先させたんでしょうね。

:山道でヘアピンを抜ける時とかですか?

:そうですね。これ、好みは分かれると思います。

「メガーヌ R.S.」は1.8L直列4気筒16バルブ直噴ターボエンジンに電子制御6速ATのトランスミッションを組み合わせる

:このクルマ、小さいように見えて、幅が1,875mmもあるんですね。

:そう、結構あるんですよ。「Eクラス」(メルセデス・ベンツ)より幅が広い。

:メガーヌって、前のモデルまで3ドア(ハッチバック)が中心だったみたいですね。5ドアになって、見た目とかどうでしょう?

:このデザイン、僕は好きですね。先代よりも好きです。絶妙な“カタマリ感”があって、色もいい。シンプルなのに存在感があるという嬉しいデザインです。

:歴代のメガーヌ R.S.は、ニュルブルクリンクで素晴らしいタイムをたたき出してきたそうですが、そのあたりには惹かれますか?

:そこは、そんなに重視しません。ただ、メーカー同士が競い合ってくれる分にはいいんですけどね。ましてやFFですし、ちゃんと手なずけて走って、技術の革新というか、そういうところでメーカー同士が競い合ってくれているのは悪いことではないと思います。

:ただ、安東さんとしては、走りについては自分で確かめたい?

:そうですね。だから、こっちの方が数字が上だから買う、という感覚はありません。

:安東さんの頭の中にはクルマのスペックがたくさん入っていますけど、数字で比べて買おうというのではなく、ただ、好きだから頭に入っているだけなんですか?

:覚えようとしているんじゃなくて、スペック(諸元)表を見てると、自然に覚えちゃうんですよ。これ(試乗中のメガーヌ)だと、最大出力が279馬力ですよね?

:合ってます。

:それで、205kWじゃなかったでしたっけ?

:ごめんなさい、手元の資料にキロワットまでは書いてきてないです。

:206kWだと、280馬力になるんですけどね。

:……。

「メガーヌ R.S.」の最大出力は279ps(205kW)、最大トルクは390Nmだ。車両重量は1,480キロ

:数字的には見劣りしても、自分がいいと思えば買うというのが、安東さんのクルマ選びということですね。もし、次の911が何らかの理由で買えなかった場合は、メガーヌもアリだと思いましたか?

:MT車に乗ってみないと、何とも言えませんねー。急加速した時の暴れぶりを体験して、FFの限界は感じましたけど、MTなら、もう少し自分で制御できるかもしません。ただ、やっぱり楽しいクルマだなとは思いましたね!

:今回、たくさんの輸入車に乗っていただきましたけど、総評として、心に残ったのは?

:やっぱり、あの加速感も含め、テスラですね。何でも電気で動くので、後席のファルコンドアなんかが壊れたら目も当てられないとは思うんですけど、ただ、インパクトとしては「モデルX」になりますね。

もしも収入が激増したらどんなクルマに乗りたい?

購入を決めたメルセデス・ベンツ「E220d 4MATIC オールテレイン」には、何年乗る予定ですか?

:今の「F-PACE」よりも早いペースで走行距離が伸びる可能性があるので、2年で7万キロあたりが見えてくると、乗り換えを考えるかもしれません(※)。まあ、2年後に私の収入がどのくらいになっているかにもよりますけど……。

【編集部注】ジャガーのSUV「F-PACE」とポルシェ「911 カレラ 4S」の2台を所有している安東さんだが、通勤に使っているF-PACEは走行距離が伸びてきている上、大柄なサイズの問題で駐車場を見つけるのが大変なので、これをメルセデス・ベンツ「E220d 4MATIC オールテレイン」に乗り換える。サイズ的に駐車場が見つけやすい分、オールテレインの稼働率はF-PACEよりも高くなることが予想されるので、代替サイクルは早まるかもしれない。オールテレインが納車されるのは2019年5月の予定。その時点で、F-PACEには2年8カ月乗ったことになる。

:もし、収入がものすごく増えたら、所有するクルマの構成はどうしたいんですか?

:やっぱり「911」と、あとは「ヴェラール」(レンジローバー)のディーゼルエンジン車を買って、もう1台は小さいディーゼルエンジンのクルマで、それは「デミオ」(マツダ)なのか「ミニ」なのか分からないんですけど、そんな感じですかね。それか、プジョーの「308 アリュール」か……。

「308 アリュール」って、今までは税制的に中途半端な1.6リッターのディーゼルエンジンを搭載してたんですけど、それが1.5リッターになって、しかも、パワーアップしたんですよ。それに、何が嬉しいって、パドルシフトが付いたんですよ! 今までは上級グレードにしか付いてなかったんですけど。

プジョー「308 Allure」(アリュール)

:なるほど、収入が大幅に増えたら、クルマを2台にしておく必要もないですもんね。駐車場を借りて、3台持ってもいいわけで……。

:駐車場を借りるというか、3台のクルマを入れられる車庫が付いた家に建て替えるのが夢ですね。

:その可能性も、フリーになった今だと、高まってますよね。会社員でいるより、大きく稼げるチャンスがあるわけですから。

:そうですね、可能性は“ゼロ”ではないですね(笑)

:これも「バラいろダンディ」で聞いたような気がするんですけど、ある程度の金額を稼いだら、お仕事はやめるっておっしゃってましたよね? 好きなクルマに乗り続けられて、ご家族も安泰というような金額が貯まったとしたら。

:そうですね(笑)。3億円ほど貯まったら、やめると思います。家族を養えて、子供たちを学校に行かせられて、あとはクルマも、「ヴェイロン」とか「シロン」()が欲しいとは思わないので……。ポルシェのMTと、ヴェラールと、ミニか何かを所有して、スポーツ走行する時はポルシェ。長距離移動の時はヴェラール。そして、都内での仕事や移動の時は、コンパクトなディーゼルモデルか、電気自動車(EV)でもいいかもしれません。

【編集部注】どちらもブガッティのクルマ。1台で何億円もする。

:私の人生として、あと20年は責任があると思うんですよね。ただ、テレビ関係の仕事が続けられるとは思っていません。やっぱり、テレビの仕事って緊張するし、疲れますから(笑)。何より、ずっと私への需要があるとは思えません。

立て続けにクルマに乗った今回の取材も、かなりお疲れになったはずだと思っていたのだが……

他媒体が用意したクルマも含め、計11台の輸入車に立て続けに乗り、JAIA試乗会の取材を終えた安東さん。「仕事は疲れる」と言いつつも、メガーヌから降りるとすぐ、「ばらいろダンディ」の生放送に出演するため、試乗会の拠点となった大磯プリンスホテル(神奈川県)を愛車「F-PACE」で飛び出していった。

安東さんのコラムによれば、今回の取材はさすがにくたびれたものの、愛車を運転して帰ったおかげ(?)で、半蔵門(正確には東京都千代田区麹町)にあるTOKYO MXに到着する頃には、すっかり疲労感がなくなっていたというから驚きだ。

とにかく、多くのクルマに限られた時間で乗ってもらったので、時間配分がうまくいかず、弊紙では紹介しきれなかったクルマもある。具体的にはポルシェ「パナメーラ 4 E ハイブリッド」とBMW「X3 M40d」の2台なのだが、これらも安東さんが試乗を希望したクルマだったことに変わりはない。特に「X3 M40d」については、短時間の試乗ではあったものの、「もっと乗ってみたくなるいいクルマだった」とのコメントがあったことは、ここでお伝えしておきたい。

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メルセデス・ベンツの電動化戦略、「EQC」で本格化

エンジン車にも通じるクルマづくりの作法

加速はスポーツカー並み! 航続距離は450キロ

メルセデス・ベンツ初の市販電気自動車(EV)「EQC」が今年、いよいよ登場する。2019年半ば頃の日本導入が噂されているが、一体、どんなクルマに仕上がっているのか。モータージャーナリストの清水和夫さんは以下のように解説する。

メルセデス・ベンツのEV「EQC」

メルセデスの電動化を包括する「EQ」ブランド

メルセデス・ベンツは2018年9月、スウェーデンのストックホルムにおいて、バッテリーだけで走る電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)「EQC」を正式に発表した。それまでも、各国の国際的なイベントでは、同社の電動モビリティを包括する「EQ」(イーキュー)というサブ・ブランドを発信してはいたが、いよいよ、本格的なメルセデスの電動車両がEQCから始まるのだ。

ここでは混乱を避けるため、電動車両の定義とメルセデスが採用する「EQ」というサブ・ブランドについて説明しておく。

「EQ」とは「電動化」にフォーカスしたメルセデスのサブ・ブランドであり、バッテリーだけで走るBEVを「EQ」、バッテリーとエンジンを組み合わせるプラグイン・ハイブリッドを「EQ Power」、48Vのサブ電源を使うシステムを「EQ Boost」と呼ぶ。

このように、電動車両といっても、バッテリーとモーターだけで走るBEV、エンジン/バッテリー/モーターを組み合わせるプラグイン・ハイブリッド(PHVあるいはPHEVと略す)、あるいは、48Vを使う車両に見られるマイルド・ハイブリッドなど、クルマの在り方は多様化している。「〇〇社は20XX年までに全てのクルマを電動化する」というヘッドラインのニュースが世界中を駆け巡っているが、電動化の中身をきちっと理解する必要があるだろう。メルセデスの場合は「EQ」「EQ Power」「EQ Boost」の名前で整理している。

「EQ」ブランドのクルマたち

EQCは「GLC」相当のSUVをベースとするクルマだ。「Aクラス」相当のセグメントでBEVが登場すれば、「EQA」と呼ぶことになるだろう。

内燃機関はベンツの代名詞、EVはどう作る?

EQCの日本初公開となったイベントは、桜が咲く前の3月初め、メルセデス・ベンツのブランド発信拠点「Mercedes me」(東京・六本木)にて開催された。注目すべきは、メルセデス・ベンツ日本(MBJ)がEQCと家の電気をつなげる「EQハウス」という斬新なコンセプトで同車を発表したこと。EQCは自宅でも充電できるので、家との相性がよい。そこでMBJは、竹中工務店と組んで「EQハウス」という新しいアイディアを提案したのだ。クルマと家が電気でつながることを「V2H」(Vehicle to Home)と呼ぶ。日本では以前から取り組んできたシステムだ。

MBJと竹中工務店は、モビリティとリビングの未来の姿を具現化すべく、六本木の「Mercedes me」に体験施設「EQハウス」を設置した。ちなみに、「EQC」の展示はすでに終了している

ところで、EQCのカットモデルを見た時、面白いことに気がついた。EQCは「Cクラス」ベースのSUV「GLC」をベースとするが、BEVなのでエンジンとギアボックスが存在しない。そのスペースには、パイプ製のケージが設置されているのだ。パイプの内側にはフロントモーターとデフ(デファレンシャルギア)が置かれ、上部にはインバーターが配置されている。リアも同様にモーターとデフでリアアクスルが構成される。

エンジンがなくなる代わりに、「EQC」にはモーターとデフを納めたパイプ製のケージが入っている

バッテリーは床下のフロア内に格納することで重心を低く設定できる。と、ここまでは常識的なパッケージなのだが、衝突安全の剛体として、このパイプ製ケージにはエンジンと同じ強度を持たせてある。つまり、エンジン車と同じく、モジュールでデザインできるモデルベース開発(MBD)を取り入れているのだ。自動車業界で流行の手法は、EQCにも採用されていた。

EQCのボディサイズは全長4,761mm、全幅1,884mm、全高1,624mm、ホイールベース2,873mmとGLCに近いから、シミュレーションしやすい。性能を見ると、前後2つのモーターは合計で最大出力408PS、最大トルク765Nmを発生する。加速性能はV8ターボのエンジン車並みで、停止状態から時速100キロまでの加速は5.1秒と俊足だ。リチウムイオン・バッテリーの容量は80kWh。気になる航続距離は450キロとのアナウンスがあった。

「EQC」のボディサイズは「GLC」に近い。加速はV8ターボエンジン並みだ

EQCの試乗会は2019年5月に開催されるので、それまでは詳細なインプレッションをお届けできないが、スポーツカー並みの加速性能を誇るEQCは単なるBEVではなさそうだ。何か、もっとすごい仕掛けがありそうに思える。試乗会が楽しみになってきた。

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