スシローが

スシローが"赤シャリ"で寿司を出す深い理由

2018.04.12

あきんどスシローは4月12日より、シャリに赤酢を使用した"赤シャリ"で寿司を出す試みを開始した。4月22日までの期間限定となるが、赤シャリを使うことになった背景を知れば、単なるキャンペーンという見方はできなくなる。味にも意味にも深みがあることがわかる。

スシローが赤シャリの寿司を期間限定で提供。写真左が赤酢を使った赤シャリ

赤シャリとは

大手回転寿司では初になるというスシローの新たな試み。それはシャリに赤酢を使用したことだ。赤酢は酒粕を時間をかけて熟成させ、そこから醸造してできた酒粕酢に旨み、塩味、甘みを加えて調整したものとなる。

赤酢は熟成時間が長く、原料となる酒粕の入手も難しいとされ、米酢よりもコスト高となる。そのため一般的に高級寿司店で利用される傾向にあるという。

左が赤酢

赤酢を使うことで、寿司の味も変わる。熟成した酒粕が原料になることで、酸味とコクが生まれ、寿司ネタの旨みが感じられるようになる。

実はここが一番大きなポイントだ。昨年11月、国産天然魚を全国のスシロー店舗で提供するプロジェクトがスタートした。これが今回の取り組みにつながる大きな要素になっているのだ。天然魚の旨みを感じてもらうには、米酢よりも赤酢を使った赤シャリのほうが、ネタの旨みが感じられるからだ。

スシローでは国産天然魚の取り扱いを昨年11月より開始

堀江陽商品本部長は「天然魚は口の中でかみ締めなければ味わいが出てこない。そこをどう引き出そうかと考えた。その結果として赤酢にチャレンジすることになった」と話す。

今の米酢に大きな不満があるわけではない。創業以来シャリにこだわり続け、時代の変化とともに、微妙に変化させ、そのまま食べてもおいしい自信のあるシャリに仕上げた。 しかし、「うまい寿司はこのままでいいのか、と自問してきた」(堀江氏)とし、赤シャリを使うことになった。

期間限定の理由

赤シャリでの提供は4月22日までだ。期間限定なのは、いくつかの理由がある。赤酢が米酢よりも手当てが困難という側面もあるが、味自体が万人に受け入れられるか、顧客の声を聞くためでもある。

赤シャリは酸味が強く、苦手に感じる層(特に子供)がいる可能性があるという。もちろん、とがった味を丸めるべく、独自のブレンドを行い、赤シャリの良さを引き出せるように工夫した。さらに、本番を前に、テストマーケティングも行なっており、抜かりはないようだが、全国規模で多くの意見を求めたいようだ。

とはいえ、赤シャリへの期待は大きく、水留浩一社長は「たとえばの話だが、毎週水曜日を赤シャリの日にするといった取り組みはありえるかもしれない」と継続の考えもあるようだ。

スシローグローバルホールディングスの水留浩一社長

いずれにせよ、味へのこだわりがあり、それが天然魚の取り扱いにつながり、赤シャリに至った。天然魚の取り扱いは難しく、容易に他社が追随できるわけではない。味への差別化のためにさらに一歩踏み込んだことが最も注目されるべきところだろう。

スシローの上期は月次業績を見る限り好調だ。既存店売上は前年を上回っており、天然魚の取り扱いをはじめとした、味への取組みが評価されたと見ることができる。そうした見方が正しければ、赤シャリへの取り組みは業績拡大につながる、新たな材料にもなりそうだ。

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2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
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