SUVブームがバイクにも? アドベンチャーツアラーに注目すべき理由

SUVブームがバイクにも? アドベンチャーツアラーに注目すべき理由

2018.04.14

バイクの世界でもSUVのような車種が人気なのをご存知だろうか。「アドベンチャーツアラー」と呼ばれるジャンルで、あのパリ=ダカールラリーをルーツに持ち、オン・オフ両用で長距離走行にも向く。近年はスモール~ミドルクラスも充実してきたこのカテゴリーに注目したい。

バイクの世界でも“SUVブーム”が起きている?(画像はスズキ「Vストローム 650XT ABS」)

クルマはSUVブーム、バイクは?

自動車業界ではSUVが大人気。先日取材で訪れた米国のニューヨーク国際オートショーでも、トヨタ自動車「RAV4」やスバル「フォレスター」の新型をはじめ、多くのSUVのニューモデルが発表されていたし、国内ではマイナビニュースでも紹介している三菱自動車工業「エクリプスクロス」、ランボルギーニ「ウルス」をはじめ、ジャガーボルボなどから新型車が登場している。

ところでバイクの世界でも、似たようなブームがあるのをご存じだろうか。SUVではなく「アドベンチャーツアラー」という名前だが、やはり近年人気が高まり、各社から新型車が続々と登場している。

クルマの世界ではSUVが各社から続々と登場しているが…(左は三菱自動車工業「エクリプス クロス」、右はボルボ「XC40」)

「アドベンチャーツアラー」とはどんなバイクか

車高が高めでハンドルも高い位置にあり、悪路走行を想定したブロックパターンのタイヤを履いた車種もある。「ツアラー」と付いているように、長距離走行を想定して風よけのスクリーンを装着し、荷物の積載を考えてシート後方にキャリアを用意するスタイルが一般的だ。

オン・オフ両用のスペックとそれにふさわしい高めのポジションを持ち、レジャーユースにも対応する快適性と積載能力を併せ持つ。こうした要素がSUVと共通していると感じる。

1960年代に生まれたSUVほどではないものの、アドベンチャーツアラーの歴史も長い。ルーツといえるのは、現在のこの分野の代表格であるBMW「R1200GS」の祖先に当たる1980年発表の「R80G/S」だ。興味深いのはこの「R80G/S」、少し前に始まった「パリダカ」ことパリ=ダカールラリー(現ダカールラリー)と深い関係があることだろう。

アドベンチャーツアラーの代表格「R1200GS」(画像提供:BMW GROUP)

ルーツは「パリダカ」にあり

1978年に始まったパリダカは、当初はタイヤのついた乗り物ならすべて出場可能という自由なカテゴリーに沿って、バイクも多数エントリーした。多くは軽い車体にシンプルな単気筒エンジンを載せた本田技研工業(ホンダ)やヤマハ発動機のオフロードバイクだったが、その中にBMWの姿があった。

パリダカに挑戦するBMW(画像提供:BMW GROUP)

伝統の水平対向2気筒エンジンの排気量は800ccで車体も大柄。砂漠を走破するラリーには向かないと考える人が多い中、健脚を披露した。すると1980年に「R80G/S」が生まれた。車名末尾の「G/S」は「ゲレンデ・シュトラッセ」の略。つまり当初から、オン・オフ両用であることをアピールしていたのだ。

するとBMWは翌年から、この「R80G/S」をベースとしたマシンでパリダカに挑戦。1985年までの5年間で4度の二輪部門優勝という偉業を達成する。これが現行「R1200GS」まで続く流れを作り出したのだった。

「R80G/S」の誕生がBMWの偉業達成に結びついた(画像提供:BMW GROUP)

BMWを追ったライバル達

もちろんライバルが黙って見ているはずはない。日本勢では1988年にホンダが「アフリカツイン」、翌年にはヤマハが「スーパーテネレ」を送り出す。いずれもパリダカとつながりがあり、「アフリカツイン」は1986年から4連覇したマシンがベース。「スーパーテネレ」の技術は1990年代の7度の勝利に貢献した。

ホンダの「アフリカツイン」

近年、このラリーの二輪部門で17連覇を達成しているオーストリアのKTMも、同じ時期に「アドベンチャー」を投入している。英国のトライアンフは、かつてのスポーツモデル「タイガー」の名前をこのカテゴリーで展開し始めた。

さらに21世紀に入ると、この分野とは無縁に思えたイタリアのドゥカティが「ムルティストラーダ」を送り出し、スズキが「Vストローム」、川崎重工業(カワサキ)が「ヴェルシス」のネーミングとともに参戦。一時は生産中止となっていた「アフリカツイン」と「スーパーテネレ」も復活を果たしている。

スーパースポーツにはついていけない人も

なぜ、ここまでアドベンチャーツアラーが盛り上がったのか。バイクの高性能化とライダーの高齢化が進んだためではないかと筆者は思っている。

スーパースポーツの最高峰と言える1,000ccクラスは、車両重量200キロ前後の車体に約200psのエンジンを積んでおり、公道で性能を出し切るのは不可能に近い。しかも、運動性能を追求する過程でシートは高く、ハンドルは低く、ステップは後方になり、極端な前傾姿勢を強いられる。

ホンダのスーパースポーツ「CBR1000RR」(画像提供:本田技研工業)

一方、ライダーの高齢化は進んでいる。これは日本だけではなく、欧州にもいえるらしい。自分を含めて体力も反射神経も落ちた多くの熟年ライダーにとって、1,000ccのスーパースポーツは悲しいけれど、ついていけない世界なのである。

なぜ「アドベンチャーツアラー」なのか

対するアドベンチャーツアラーは、オフロード走行を考慮したためもあって、日常的なシーンでも扱いやすいエンジン特性を持ち、立ち気味のライディングポジションとストロークが豊富なサスペンションは、長時間乗っても疲れにくい。多くはスクリーンも備わるので高速道路も辛くない。

長い時間を乗っても疲れにくいのがアドベンチャーツアラーの特徴の1つだ(画像はスズキ「Vストローム 650XT ABS」)

しかも、アドベンチャーツアラーは大柄で堂々としている。ハーレーダビッドソンに代表されるアメリカンツアラーに匹敵する存在感だ(ちなみに、米国ブランドのアドベンチャーツアラーはない)。スーパースポーツやアメリカン以外で自己主張をしたいというライダーにも向く。この立ち位置もSUVに近い。

250ccから選べる品ぞろえ

しかし、アドベンチャーツアラーには問題もあった。多くの車種が1,000cc以上である上に、サスペンションストロークを長く取っているので、重くて背が高かったことだ。歳を重ねれば足腰も弱ってくるわけで、車両重量200キロ以上、シート高850mm前後という車体を支えるのは不安になる。

こうした中で最近増えてきたのが、250~900ccのアドベンチャーツアラーだ。こちらもBMWが早くからラインナップしてきたが、水平対向2気筒ではなかったので入門車的雰囲気が強かった。そこに参入したのが、アイデンティティである並列3気筒を搭載したトライアンフの「タイガー800」で、ローダウン仕様を用意したこともあり、我が国でもユーザーが増えている。

トライアンフの「タイガー800」

日本勢では昨年、バランスの取れた車種として評価が高いスズキ「Vストローム」の650cc版がモデルチェンジ。さらに、車検が不要な250ccにホンダ、スズキ、カワサキが新車種を投入し、BMWも310ccの「G310GS」を登場させた。

BMWの「G310GS」

126~250ccの軽2輪は、2017年度の新車販売台数が前年度比124.9%と人気が復活している。原動力となっているのはロードスポーツだが、アドベンチャーツアラーの新型車が登場した効果もあるだろう。

長距離での快適性や安定性、そしてステータス性では1,000ccクラスが優位だが、日本人が日本の道で走るには250ccや650~900ccのアドベンチャーツアラーが向いている。このクラスの車種がさらに充実すれば、ユーザー層の拡大が図れるのではないだろうか。

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2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu