デュアルカメラを搭載した新Xperiaで見えた光明と課題

デュアルカメラを搭載した新Xperiaで見えた光明と課題

2018.04.16

国内のスマホメーカーとして、実質的に最後の砦であるソニーモバイルコミュニケーションズだが、ここのところ冴えない状況が続いている。従来のものよりワイドな液晶に、ディスプレイをほぼ全面に据えたデザインや、2つのカメラセンサーを搭載してボケ味や擬似的な高画質ズームを可能にした"デュアルカメラ"など、グローバルのトップメーカーが作り出した潮流にことごとく乗れていないためだ。

グローバルだけではない。国内でも、MVNO向けに製品を投入しているシャープがAndroid端末として最大シェアを獲得。安価な製品ラインナップも持つシャープと異なり、ソニーはプレミアムセグメントのみの製品ラインナップという事情もある。ただ、長年「Android No.1ブランド」を国内では維持してただけに、それなりにインパクトのあるニュースだった

今夏にXperia XZ2 Premiumを投入

そのソニーは4月16日、フラグシップモデルとなる「Xperia XZ2 Premium」をグローバル向けに発表した。現時点で国内向けの投入は発表されていないが、2年連続で「Premium」製品をドコモ向けに投入していることから、そう遠くないうちに発表される可能性が高いだろう。

Xperia XZ2 Premium

XZ2 Premiumの最大の特徴は、ソニーとして初めて「デュアルカメラ」を採用したこと。すでに、スペイン・バルセロナで2月に行われた「MWC 2018」において、Xperiaの次期モデルにデュアルカメラを採用すると明らかにしていたが、これがPremium向けのモジュールだったわけだ。

MWC 2018で言えば、ソニーモバイルコミュニケーションズのEVP, Global Sales & Marketingの古海 英之氏が発表会の冒頭に、「Xperia XZ2 Premium」と誤って発言したことが一部で話題となったが、同日にデュアルカメラの技術発表があっただけに、混同してしまったのだろう。

ただ、ソニーとして初めてであっても、世界のスマホメーカーは2016年頃からデュアルカメラを採用してきた。2周遅れと言ってもいい状況だが何が違うのか。同社が謳うのは「専用プロセッサー」による「超高感度撮影」だ。

一般的に知られているデュアルカメラのスマートフォンと言えば「iPhone」だが、iPhone 7 Plus、iPhone 8 Plus、iPhone Xは基本的に1200万画素の広角カメラと1200万画素の望遠カメラを組み合わせて写真を作り出している。望遠カメラは光学的に2倍のズームが可能で、これを広角カメラと組み合わせることで画質を落とさずに1~2倍の擬似的なズームを可能にしている。

待望のデュアルカメラを採用したXZ2 Premium

一方で、ソニーのデュアルカメラは12メガピクセル の モノクロCMOSセンサーと19メガピクセルのカラーCMOSセンサーを搭載した。こちらは、Huaweiが2016年に発表した「HUAWEI P9」と似た構成で、モノクロセンサーで明るさの情報を取得し、カラーセンサーで色情報を取得する。

まさにちょうど2年かかっての"キャッチアップ"となるが、ソニーはセンサーに加えて専用の画像融合処理プロセッサー「AUBE」を搭載することでノイズを減らし、より明るい動画・写真の撮影を可能にしたと謳う。その超高感度撮影は、動画で最高ISO 12800、写真ではISO 51200で撮影を可能にしており、従来難しかった薄暗いシーンも撮影できるようになる。

将来的には、モノクロセンサーやデュアルカメラの利点を活かした"モノクロ写真"や"ボケ味ある写真"を撮影できるソフトウェアアップデートも予定しており、XZ2 Premiumに搭載されている4Kディスプレイをフルに活かした迫力の写真体験が可能になるだろう。

デュアルカメラ搭載、だけでは厳しい競争環境

ただし、ソニーがXZ2 Premiumがキャッチアップできた要素はここまで。RAMメモリが6GBまで増強されているほか、XZ2でも対応したワイヤレス充電(Qi)やダイナミックバイブレーションシステム、より大容量化したバッテリー、画面の明るさが30%アップなど、細かい部分での改良・改善はある。

トリプルカメラを搭載した「HUAWEI P20 Pro」(Huawei Webサイトより)。こちらはカメラメーカー「ライカ」との協業モデルだけに、フルサイズミラーレスで評価が高いソニーとしては負けられない相手だ

一方で、前述のHuaweiは先日発表した「P20 Pro」でデュアルカメラを超えるトリプルカメラを採用。1/1.7インチの4000万画素センサーとモノクロセンサー、3倍ズームの望遠カメラセンサーを搭載し、ユーザーの「コンパクトデジカメを買わずとも望遠できる」というニーズと高画質化のニーズを両方押さえた。なお、一部報道では次期iPhone Xでもトリプルカメラが採用されるとの話もある。

P20 / P20 Proについては、iPhoneやGalaxyでもお馴染みとなった"ベゼルレス"、狭額縁で、ディスプレイが全面的にスマートフォンの前面を占めたデザインも採用した。これに対してXZ2 Premiumは、前代のXZ Premiumよりも狭額縁化しているものの、依然として上下左右に"額縁"が残ってしまっている。また、4KディスプレイはZ5 Premium時代から画質こそ素晴らしいものの、アスペクト比が18:9ではなく16:9のため、昨今のトレンドからするとデザイン面でやや野暮ったくも見える。

発売当時はAndroid端末として随一の高いデザイン性で話題をさらったXperia X10や、背面が弧状に反ったデザインで人気を博したXperia Arcなど、"デザインのソニー"の貫禄を見せつけていたXperiaだが、XZ2 / XZ2 Compact / XZ2 Premiumで採用されたデザインコンセプト「Ambient Flow」は、Web上の評判が良いとは言いがたい。

XZ2 Premiumではないが、XZ2に触れた筆者としては、端末の質感はそれなりに高く、他社スマホより狭額縁化できていないとはいえ、新シリーズは、Web上の評価より「断然良いものだ」と言いたい。ただ一方で、その評判通りにどこか周回遅れのモノに思えてならない思いもある。

Xperia XZ2。賛否両論あるものの、実際に触れると端末の質感は上々だ(撮影・石川 温)

XZ2 Premiumは、他国で既に発売がスタートしているXZ2 / XZ2 Compactと異なり、グローバルで2018年夏の発売を予定していることから、MWC 2018では発表せず、あえてこのタイミングでの発表になったとみられる。しかし、XZ2 / XZ2 Compactとあまり差がない製品仕様で、あえて時期を外す必要があったのかという声が上がる可能性も否めない。

いずれにせよ、一般的に批判の声が上がる理由は、それだけ国内ユーザーがXperiaに期待している裏返しでもある。ソニーは、全社的に「プレミアムセグメントで利潤を確保しつつ、技術面も含めたリーディングカンパニーになる」という方針をとっている。それは、絶好調のカメラに加え、ソニー低迷の象徴とも言われたテレビでも"ソニー復活の象徴"として取り上げられるほどに好調だ。

ソニーは、ラジオやウォークマンなど、"小型化"や"モバイル化"で成功してきた企業だ。それら製品の最終到達点の一つと言っていいスマートフォンは、今後のソニー全体を左右する「切るに切れない」かつ、もっとも大切な製品セグメントでもある。

モバイル子会社である「ソニーモバイルコミュニケーションズ」では、「Xperia Hello!」や「Xperia Touch」「Xperia Ear Duo」といった新基軸の商品が登場し、一定の評価を得ている。これらには、今「次の技術トレンド」の最先端であるAIを活用したAIエージェント機能を搭載している。

先日発表されたXpeair Ear Duoは、開放型のイヤホンにAIエージェントの「Assistant for Xperia」を搭載し、耳元にコンシェルジュがいるかのような体験を提供する

Googleの「Google Assistant」やAmazonの「Alexa」、Appleの「Siri」、サムスン Galaxyの「Bixby」など、各社がこぞって開発しているが、ソニーはAIのコアとなるディープラーニング技術を全社的に一元開発しており、それをさまざまなソニーグループの製品に応用している。あの「aibo」でも採用しているのが良い例だ。この取り組みを途中で止むことなく続ければ、いつか次の勝機が見えてくることだろう。

とはいえ、テレビのBRAVIAと同様に、「スマホの次」を見据えつつも、いかに"スマートフォンのXperia"が表舞台へと舞い戻るかが重要であることに変わりはない。

鴻海傘下になったシャープや、国内専業ながら投資ファンドに一部資本を売却した富士通、KDDI向け製品を中心に事業を続ける京セラなど、国内メーカーはいずれも状況があまり芳しくない中で、グローバルスマホメーカーとして日本勢最後の砦であるソニーの真価がいま、問われている。

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

2019.01.17

「eBASEBALL」で初代王者を決めるe日本シリーズが開催された

頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ

はたして“もう1つのプロ野球”で頂点に輝いたのは?

1月12日、東京ビッグサイトTFT HALL 500にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ2018」のe日本シリーズが開催された。頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ。はたして初代王者に輝いたのは、どちらのチームか。

3カ月間の戦いの末、頂点を争う切符を勝ち取った2チーム

「eBASEBALL」とは、野球ゲーム『実況パワフルプロ野球 2018(パワプロ)』を使用した、日本野球機構(NPB)とコナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)が共同で開催するプロリーグだ。

2018年7月より行われたオンライン予選、西日本、東日本選考会を経て、9月末に実際のプロ野球球団による「eドラフト会議」を実施。ドラフトで指名された選手は、プロゲーマーとして各球団に所属する形になった。

11月からは実際のプロ野球のペナントレースのように、セ・リーグ、パ・リーグに分かれて「eペナントレース」がスタート。そして12月に行われた、eペナントレース上位チームによる「eリーグ代表決定戦」によって、パ・リーグの埼玉西武ライオンズと、セ・リーグの横浜DeNAベイスターズが、e日本シリーズへの切符を手にした。

パ・リーグ代表の埼玉西武ライオンズは、eペナントレースを13勝2敗の圧倒的な強さで勝ち抜き、eリーグ代表決定戦でも危なげなく、代表権を獲得。対するセ・リーグ代表の横浜DeNAベイスターズは、キャプテンであるじゃむ~選手のデータを活かした戦術と強力打線、そして巧みな投球術でeリーグ代表権をもぎ取った。

埼玉西武ライオンズのなたでここ選手(写真左)、BOW川選手(写真中)、ミリオン選手(写真右)
横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手(写真左)、じゃむ~選手(写真中)、AO選手(写真右)
会場は超満員。立ち見席も出るほどの人気ぶりで、まさに日本一を決定するのに相応しい舞台となった

一発勝負の決勝戦! 最後に笑うのは……?

e日本シリーズでは、各チーム3名による3イニング交代制の試合を1戦だけ行う。そこで勝利したチームがeBASEBALL パワプロ・プロリーグの初代チャンピオンになるわけだ。

『パワプロ』でお馴染みの選手の調子発表

選手の調子を見ると、埼玉西武ライオンズは、主力に不調の選手がおらず実力を存分に発揮できそうなラインアップ。横浜DeNAベイスターズは主砲筒香の好調が嬉しいものの、桑原、ソトの不調が厳しい。どちらかというと調子具合は埼玉西武ライオンズが優位に見られた。

さぁ、いよいよプレイボール。まず1人目、埼玉西武ライオンズはミリオン選手、横浜DeNAベイスターズはヒデナガトモ選手がコントローラーを握る。奇しくも、ペナントレースで最多奪三振のタイトルを獲得した2人の対戦となった。

そのため、激しい投手戦が繰り広げられたが、3回裏に均衡が破られる。豪打を誇る埼玉西武ライオンズとしては珍しいスクイズで1点を先制すると、そこから怒濤の連打で計5点をもぎ取り、序盤にして埼玉西武ライオンズが大量リードを得た。

スクイズ、スチールと小技も冴え、一気に5点を奪うミリオン選手
センターフライの捕球ミスやスクイズの打者をアウトにできなかったなど、ミスが出てしまったヒデナガトモ選手

2人目は埼玉西武ライオンズがBOW川選手、横浜DeNAベイスターズがじゃむ~選手と、キャプテン対決。じゃむ~選手が2点を返すも、BOW川選手が1点を追加し、スコア「西武 6-2 DeNA」で最終プレイヤーにバトンが渡された。

埼玉西武ライオンズのキャプテンを務めるBOW川選手
横浜DeNAベイスターズの軍師ことじゃむ~選手

最後は、ペナントレースで急成長した埼玉西武ライオンズのなたでここ選手と、横浜DeNAベイスターズ無敗のエースAO選手の対戦となった。

最優秀防御率のタイトルを獲得し、eペナントレースでの失点はわずか3点と脅威の安定感を持つAO選手は、e日本シリーズでもその実力を発揮。打撃3冠を獲得したなたでここ選手をみごとに完封した。しかしながら、3イニングでは1点を返すのがやっとで、最終スコアは「6対3」。埼玉西武ライオンズが優勝し、e日本シリーズを制した。

今回の大会で急成長したなたでここ選手
横浜DeNAベイスターズのエースとしてチームを牽引したAO選手
ペナントレースから実況を担当した清水久嗣アナはe日本シリーズの実況も担当
解説を務めた元ヤクルトスワローズ監督の真中満氏
同じく解説を務めた元中日ドラゴンズ監督の谷繁元信氏
ゲーム解説を務めるぶんた氏
パワプロ・プロリーグ初代チャンピオンの埼玉西武ライオンズ

埼玉西武ライオンズも横浜DeNAベイスターズも、打撃、特に本塁打に期待できる選手が揃っており、その打撃力で勝ち進んでいたなかで、e日本シリーズではホームランが「ゼロ」という、頂上決戦に相応しい緊迫感のある試合だったといえよう。

e日本シリーズでは博多激獅会も応援に駆けつけ、プロ野球さながらの応援が飛び交った

試合終了後は、優勝の表彰とともに、各個人タイトルの表彰も行われたので、その様子も紹介しよう。パ・リーグでは、首位打者、本塁打王、打点王、最優秀防御率の4冠を埼玉西武ライオンズのなたでここ選手が獲得。最多奪三振は埼玉西武ライオンズのミリオン選手が獲得した。

また、セ・リーグでは、首位打者と本塁打王の2冠を広島東洋カープのカイ選手、打点王と最優秀防御率の2冠を横浜DeNAベイスターズのAO選手、最多奪三振を横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手が獲得。そして、MVPには、4冠獲得のなたでここ選手が選出された。

パ・リーグの最多奪三振を獲得したミリオン選手
セ・リーグの首位打者と本塁打王を獲得したカイ選手
セ・リーグの打点王と最優秀防御率の2冠を獲得したAO選手
セ・リーグの最多奪三振を獲得したヒデナガトモ選手
パ・リーグの首位打者、打点王、本塁打王、最優秀防御率の4冠、そしてMVPを獲得したなたでここ選手
e日本シリーズでは12球団のマスコットがそろい踏み。スポンサーであるSMBCのキャラクター「ミドすけ」も登場した

eBASEBALLは試合を重ねるごとに盛り上がりを見せ、決勝の舞台でもあるe日本シリーズでは立ち見が出るほど多くのファンが駆けつけた。プロ野球ファンにとって、オフシーズン時期の楽しみの1つとして、eBASEBALLが定着しそうな気配も感じる。

最後にNPB(日本プロ野球機構)コミッショナーの斎藤惇氏による締めの挨拶にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ 2019」の開催も発表された。来シーズン、さらなる飛躍と盛り上がりに期待したい。

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

2019.01.17

フォルクスワーゲンの「パサート オールトラック」に試乗

これは意外? クルマ好きも納得のスポーティーなクルマ

ステーションワゴンとSUVの“いいとこ取り”

昨今のSUVブームはとどまることを知らない。コンパクトからラグジュアリーまで多様性もみられ、さらに「RAV4」の日本復活など、いくつかの新型車投入のニュースも届いている。しかし、SUVが必ずしも全てのユーザーにとってベストな選択肢とはいえないはずだ。

日常の使い勝手などを考慮すると、セダンとSUVの架け橋である「クロスオーバーワゴン」こそ、真の“いいとこ取り”なのではないかと思うところもある。今回は、フォルクスワーゲンから登場した「パサート オールトラック」に試乗し、この車種の魅力について再考してみた。

フォルクスワーゲンのクロスオーバーワゴン「パサート オールトラック」に試乗した

スバルが普及させたクロスオーバーワゴンという車種

フォルクスワーゲンがミッドサイズモデル「パサート」に新グレード「パサート オールトラック」を追加した。このモデルは、パサートのステーションワゴン「パサート ヴァリアント」をベースとし、SUVのエッセンスを取り入れた「クロスオーバーワゴン」と呼ばれるジャンルのクルマだ。つまり、ステーションワゴンとSUVの中間的な存在である。特徴としては4WD、専用サスペンションで高めた最低地上高、SUVを彷彿させるラギッドなスタイルなどが挙げられる。これらにより、ステーションワゴンよりも走破性が高まっている。

「パサート オールトラック」は最低地上高の高さやSUVを髣髴させるスタイルなどを特徴とする。価格はグレード別に「Passat Alltrack TDI 4MOTION」が509万9,000円から、「Passat Alltrack TDI 4MOTION Advance」が569万9,000円からだ

少しだけクロスオーバーワゴンの歴史を振り返りたい。意外かもしれないが、こういったクルマを普及させたのは日本メーカーなのだ。

SUVのニーズが高まっていた1990年代の北米で、SUVを持たないスバルは大苦戦していた。その打開策として、2代目「レガシィ」をベースとするクロスオーバーモデル「アウトバック」(日本名:レガシィ グランドワゴン)を開発。これが大ヒットとなり、北米市場での巻き返しに成功する。

スバルが2代目レガシィをベースに開発した「アウトバック」。意外にも、歴代モデルの中にはセダン仕様が用意されていたこともある。日本では「レガシィ グランドワゴン」の名で登場。その後、「レガシィ ランカスター」と名称を変更した。先々代モデルからは日本でも輸出名を取り入れ、現在同様の「レガシィ アウトバック」となった

アウトバックがヒットした背景には、ステーションワゴンの高性能化が進み、実用車というイメージが変化して、アクティブなカーライフやスポーティな走りが楽しめる多用途なクルマとして認知されだしたことがあった。セダン譲りの使い勝手と走行性能、そこにラフロードにも対応できる走破性を組み合わせた欲張りな存在として人気を集めたのだ。事実、アウトバックの後にはボルボ「XC70」(後のV70 クロスカントリー)や「アウディ オールロード」といったクロスオーバーワゴンの名車が続々と誕生している。

今やクロスオーバーワゴンは、ステーションワゴンの定番となった。そのパサート版が「パサート オールトラック」だ。

パサート版クロスオーバーワゴンはどんなクルマなのか。試乗で確かめた

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすい?

ラギッドなイメージを高めたエクステリアは、パサート本来の上品なデザインの中に、アグレッシブさを感じさせる。主な変更点としては、アンダーガード付きの前後バンパー、ホイールアーチのブラックモール、シルバー仕上げのサイドシルモールなどが挙げられる。サスペンションは標準車+30mmアップとし、最低地上高は160mmを確保した。

ボディサイズは全長4,780mm、全幅1,855mm、全高1,535mm。コンパクトとはいえないが、日本の道路や駐車場には適応しやすいサイズといえる。最大のポイントは、ルーフレールを装備しながらも薄型とすることで、全高を1,550mm以下としているところ。これなら、多くの立体駐車場に入れられるはずだ。

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすいサイズ感だ

基本的にインテリアはパサートと共通だが、グレーのパネル加飾を取り入れるなど、スポーティーな装いにしてある。装備は上級モデルらしく充実していて、全車速追従機能付きのACCや車線内中央維持支援機能「レーンアシスト」、渋滞時追従支援機能「トラフィックアシスト」などの先進安全運転支援機能をはじめとし、スマートキー機能の「キーレスアクセス」やSSDナビ付きインフォテインメントシステム「ディスカバープロ」、シート&ステアリングヒーター、パワーテールゲートなど快適装備も満載だ。

車内は広々としており、前後席共に快適なスペースが確保してある。ラゲッジスペースは標準で639Lと大容量。後席を折りたためば最大1,769Lまで拡大可能だ。

インテリアはスポーティーな装い。機能はパサート ヴァリアントの上級グレードに近いもので、充実している
後席は3分割の可倒式。折りたためば最大で1,769Lまで積める

これがベストパサート? スポーティーな乗り味を体感

次にメカニズムを見ていく。エンジンは「AdBlue」(アドブルー、尿素SCRシステムの触媒として用いる尿素水のこと)を使用したクリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載。最高出力は190ps/3,500~4,000rpmで、最大トルクは400Nm/1,900~3,300rpmを発揮する。トランスミッションにはDCTタイプの6速DSGを組み合わせる。

最大のポイントは、現行型パサートで初めて4WDを採用していること。さらに、アクセルやパワステ制御などを変更できる走行モードには「オフロードモード」が追加となっている。オフロードモードでは、急な下り坂で車速を一定に保つブレーキ制御「ヒルディセントアシスト」などが作動する。

クリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載する「パサート オールトラック」

試乗したのはパサート オールトラックの最上級グレードである「アドバンス」だ。一言でいえば、かなりスポーティーなキャラクターに仕立てられている。低回転で最大トルクを発揮するディーゼルエンジンの魅力が存分に味わえて、峠道の上り坂も力強く駆け上っていく。元気さはパサートTDIを上回っている印象だ。出力は同等だが、アクセルなどのセッティングが異なるのだろう。

そこに前後のトルク配分が可変となる4WDの「4MOTION」と電子制御ディファレンシャルロック「XDS」が加わることで、コーナリングもグイグイ曲がっていく。それでいて乗り心地も良いのだ。ラフロードに適応すべく、足回りのしなやかさを重視していることが良好な乗り心地につながっているのだろう。

「パサート オールトラック」の上級グレード「アドバンス」で御殿場周辺の峠道を走った

同じパサートのスポーティグレード「2.0Rライン」は、もっとハードなセッティングで乗り心地もやや硬めとなる。一方で、パサート オールトラックのアドバンスはバランス重視のセッティングなのだが、クルマ好きをも納得させるスポーティーさを持ち合わせている。これがベストパサートだとさえ思ったほどだ。

ただ、アドバンスはオールトラックの標準車が装着する225/55R17タイヤに対し、245/45R18タイヤにサイズアップしている。さらにはXDSやアダクティブシャシーコントロール「DCC」なども追加となっているので、標準車のオールトラックと異なる部分があることは加味しなければならない。

ただ、オールトラックがスポーティなワゴンに仕立ててあることは間違いない。ファミリーカーだけどドライブを楽しみたいというユーザーには、パサートの中で最もオススメできるクルマだ。

ファミリーカーでも走りを楽しみたいという人には「パサート オールトラック」をオススメしたい。確かに509万円からという価格は安くないが、「パサート ヴァリアント TDI」のエントリーモデルのナビ付きが約470万円であることを考慮すれば、納得のプライスといえよう

走りの良さを持ち合わせたSUVも増えてはいるが…

ステーションワゴンがブームとなったきっかけは、実用性の高さに加え、ワンボックスカーやSUVなどでは得られない走りの良さを獲得できたところにあった。しかし、走りの良さを身につけた昨今のSUVは、そのニーズを奪い、ステーションワゴンの領域を食ってしまったといえる。あれほど盛況であった日本のステーションワゴンも激減し、今やスバルの一強となっている。

ただ、輸入車を見ると、ステーションワゴンの顔ぶれはなかなか充実しており、一定の販売台数を確保している。その中には、いくつかのクロスオーバーワゴンが存在する。

クロスオーバーワゴンはステーションワゴンに価値が加わったクルマなので、ベース車と比べれば、やはり値段は少々高くなる。それでも、中身に見どころはあるし、コスパで考えても納得できるものが多いと思う。日常での使い勝手を重視したい人、ワイルドさやスポーティーさを強調するSUVに子供っぽさを感じてしまう人などは、改めてクロスオーバーワゴンに注目してみてはいかがだろうか。