なぜ、BAKEは急成長できたのか - 創業5年で78店 驚異のお菓子屋が成功する理由

なぜ、BAKEは急成長できたのか - 創業5年で78店 驚異のお菓子屋が成功する理由

2018.04.19

チーズタルトで話題のBAKE。創業5年で店舗は78店舗まで拡大、今では株式公開も視野に入れる製菓会社だ。チーズタルトのほか、シュークリーム、アップルパイなども販売するが、どこにでも売っていそうな商品ばかり。短期間で急成長できた理由はどこにあるのか。

「BAKE CHEESE TART」で急成長を遂げたBAKE、成功の秘密は?

急成長を遂げたBAKE

BAKEは現会長の長沼真太郎氏が2013年4月に創業。急成長を遂げ、チーズタルト専門店「BAKE CHEESE TART」、シュークリーム専門店「CROQUANTCHOU ZAKUZAKU」、カスタードアップルパイ専門店「RINGO」など、現在は8ブランドを擁し、店舗数は国内外に78店舗を構えるにいたっている。

西尾修平代表。創業者の長沼真太郎氏に負けずお菓子好きなだとか

企業規模が大きくなるにつれ、マネジメントの必要性が生じたことから代表を交代。マネジメントの手腕を買われ、元ミクシィ取締役の西尾修平氏が2017年2月、BAKEの代表に就任した。以後、同年8月に、株式上場支援などを目的に、ポラリス・キャピタル・グループが資本参画し、BAKEは第二創業期を迎えた。

代表交代から1年が経ち、資本構成も変わったが、西尾代表によれば、基本は変わらないという。「お菓子を、進化させる」というミッションステートメントを引き継ぎながら、組織でビジネス拡大を目指そうとしているに過ぎないからだ。

つまり、BAKEの本質は変わっていない。急成長の源となるミッションステートメントにこそ、秘密がある。では、このミッションステートメントは何を意味するのか。

おいしさの追求

BAKEが掲げる「お菓子を、進化させる」とは、単においしさの追求のみならず、作り方、見せ方、届け方といった顧客と接する全プロセスに力を入れていくという宣言のことだ。おいしさの追求とそれ以外の部分に分けて、もう少し詳しくみていこう。

BAKEのミッションステートメント

おいしさの追求では、原材料にこだわり、手間をかけ、フレッシュな状態で世界中のひとりでも多くの人に届けるというおいしさの3原則を掲げている。

質の高い原料を大量に仕入れるために「FARM TO SHOP」という考えを取り入れ、直接、生産者と関係を構築する取り組みを進めている。工房一体型のショップでつくり、一番おいしい状態で商品を提供するために、作り置きもしない。採算性は下がるが、これがBAKE流なのだ。

もうひとつ面白いのが、1ブランド1商品という戦略だ。BAKEには8ブランドあるが、それぞれのブランドには基幹商品が1本あるのみ。売れなかったときのリスクは高いが、1商品に絞り込むことで品質を高めることができ、効率的な店舗オペレーションが実践できるという。

カスタマーエクスペリエンスを大事に

おいしさ以外の面でも手を抜かない。簡単に言えば「カスタマーエクスペリエンスの向上」に集約される。「商品の購入前から、購入後までの体験にワクワクをお届けしたい」(西尾代表)という。

BAKEの商品を買おうとすれば、西尾代表の言うワクワクが実感できるかもしれない。ショップに行けば、工房一体型であることが見て取れる。手提げ袋や商品を収めるパッケージにアートワークをきかせており、「買ってよかった」と思わせる工夫を細部まで施す。ウェブサイトも商品特性を感じてもらえるように、ビジュアルやコピーにもこだわる。

工房一体型で製造工程を見ることができる
BAKE CHEESE TARTEの手提げ袋。持ち手が非常に持ちやすい
パッケージのアートワークにも力を入れているという

先日行なわれた新ブランド発表会の場でも、ブランドコンセプト、ロゴ、パッケージデザイン、ストアデザインへの説明に時間が多く割かれ、もはや製菓会社の発表会なのか、何なのか、わからなくなるほど。製菓会社がカスタマーエクスペリエンスの向上に真剣に取り組んでいるという事実が違和感の正体であり、それがBAKEらしさでもある。

ムダに思える工夫

ここまででお分かりだろうが、採算を考えれば、ムダに見えることが多々ある。それがBAKEだ。パッケージデザイン、ロゴ、店舗デザイン、ひいてはウェブサイトでの見せ方まで、顧客と接するすべての点に時間とお金をかけるのがBAKE流。これらは直接的な収益に結びつかない。しかし、BAKEらしさはここから生まれている。ミッションステートメントの実践こそが、短期間で急成長を遂げた理由となるだろう。

BAKEの成功が示唆することは多くの企業にとって興味深いものだ。そもそも、BAKEが出すブランドはチーズタルトやアップルパイ、誰もが聞いたことのあるものばかり。おいしさだけでは勝てないが、付加価値を加えることで、競合の多い分野でも勝ち続けることができる。

今後も年に1、2ブランドを増やしていく考えだが、「ブランド選定に関して8割主義を大事にしている。10人いたら8人が好きであろう、マーケットの大きいものを選ぶようにする」(西尾代表)とし、付加価値のあり方でビジネス拡大が可能だと判断しているのだ。

発展の方向性も明確だ。「お菓子作りに真摯に向き合おうという原則は変えません。やっていくのは、付加価値にあたる部分への再投資。たとえばパッケージをさらに魅力的にするなどの投資を積極的にやっていきたい。広い意味でのデザインには可能性を感じています」(西尾代表)。

BAKEの課題

絶好調に見えるBAKEにも課題はある。それは急成長を遂げる会社組織にありがちなものであり、西尾氏に代表が託された理由でもあろう。

西尾代表が語る課題は価値観の共有だ。BAKEがさらに企業規模を大きくするには組織プレーが必要になる。そのためには人手が必要であり、日に日に社員が増えているのが現状だ。人が増えようとBAKEが守るべきはミッションステートメントであり、価値観の共有は重要課題だ。新入社員にとって、BAKEのミッションステートメントは文字に過ぎない。古参の社員はステートメントを体現してきた重みのある言葉となる。この差は大きい。

「私が考えていること、会社が大事にしてきたこと、こうした価値観をみんなにどうインストールしていくのか。新しいメンバーが入ってくれば、それをどう伝承していけるのか。こうしたことが組織としては非常に大きなテーマ」(西尾代表)

組織としてさらに発展させていくために、西尾氏は目下、商品ブランドを事業部採算制に移行させる取り組みを進めているという。より多くの人に手にとってもらうために、どうすれば、ブランド価値がさらに上がるのか、誰にどんなポジションを担ってもらうべきか。事業部制に移行させるなかで、それをマネジメントできる人材をどうするかという点だ。

製菓業界のゲームチェンジャーとなりうる注目企業が直面するのは、意外なまでに身近にあるありふれた課題なのだ。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。