携帯電話に関わる総務省での議論が長引いた理由

携帯電話に関わる総務省での議論が長引いた理由

2018.04.23

携帯電話市場の競争促進に向け、1月より実施されていた総務省の新たな有識者会議「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」。当初は3月末で結論がまとめられる予定だったのが、報告書案が提示された第6回の会合が実施されたのは4月20日と、大幅に遅れている。これだけ取りまとめに時間がかかった今回の有識者会議からは、当初の思惑が外れ対応に苦慮する総務省の様子が見えてくる。

4月20日に実施された「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」の第6回会合。当初の予定から1カ月以上遅れ、4月下旬に入って議論の結論が出る形となった

3月には結論が出るはずだった有識者会議

携帯電話市場の競争環境整備に向け、これまでもさまざまな有識者会議を実施し、携帯電話市場に対して非常に大きな影響を与えてきた総務省。その総務省が、今年の1月より実施していた有識者会議が「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」である。

これは文字通り、携帯電話市場の公正な競争を促進するための実施されたものだが、実際のところはここ最近のMVNOの不調が、この会合の実施につながったと見られている。というのも2016年から2017年頃にかけて、安価なモバイル通信サービスを提供するMVNOへの顧客流出に危機感を抱いた大手キャリアが、端末料金を値引かない代わりに従来より低価格な料金プランを提供したり、低価格なサブブランドや、傘下のMVNOを強化したり、MVNOを買収して自社傘下にしたりするなどして、顧客流出阻止に打って出たのである。

その結果、大手キャリアから他社や、系列のMVNOへ流出する顧客は大幅に減少。キャリアが自社グループ内に顧客を抑え込んだことで、独立系のMVNOは一転して顧客獲得が見込めなくなり、経営破たんに至るMVNOが出るなど不振が続いている。

今回の有識者会議は、そうした現状を受ける形で実施されたもの。それゆえ中古端末が国内であまり流通しないことの問題や、大手キャリアのいわゆる「2年縛り」による顧客のつなぎ止めなどといった、従来の有識者会議で議論に上がったテーマに加え、今回は大手キャリアのサブブランド優遇に関する問題が、大きなテーマとして挙げられることとなった。

この有識者会議は、1月中にキャリアやMVNOなど関係する各社からヒアリングを実施した後、3月には結論が出される予定であった。だが実際のところ、報告書の案が取りまとめられた第6回の会合が実施されたのは、4月20日と大幅な遅れを見せている。会合の動向や報告書の案などから、なぜこれほどまでに結論を出すのに時間がかかったのかを考えてみたい。

サブブランド優遇問題の追求は空振り

理由の1つは、大きなテーマとして挙げられていた、大手キャリアのサブブランド優遇に関して、確固たる証拠が見つけられなかったことではないかと考えられる。

サブブランド優遇に関して特に問題視されていたのは、KDDIの子会社であるUQコミュニケーションズがMVNOとして展開する、「UQ mobile」であった。その理由は、UQ mobileが他の独立系MVNOと同じようにMVNOの形態をとっているにもかかわらず、混雑時に通信速度が落ちにくいなど、明らかに優位性があったためである。

規模が小さいMVNOが、UQ mobileと同じ通信速度を実現するには、非常に多額なコストをかけてネットワークを多く借りなければならず、現実的できないとの声が多く上がっていた。それゆえKDDIがUQ mobileに対して優遇措置を講じているのではないかと、疑惑が持たれていたわけだ。

UQコミュニケーションズの「UQ mobile」は、同じMVNOながら通信速度が速く、ネットワーク面に関してKDDIからの優遇を受けているのではないかと言われてきた

だが今回の有識者会議で、KDDIとUQコミュニケーションズに対して実施されたヒアリングや提出資料などからは、逆にKDDIが公平な条件で、UQ mobileにもネットワークを貸し出していることが明らかにされたのである。UQコミュニケーションズは基本料を他のMVNOより高く設定することで収益を高め、それを借りるネットワークを増やす原資にしていたという。それゆえ少なくとも、貸し出すネットワークの料金や品質に関しては、他のMVNOと公平性が保たれていたことになる。

第3回会合における、UQコミュニケーションズ提出資料より。具体的な内容は構成員以外非開示であったが、KDDIに支払う接続料は他のMVNOと同じ水準だったようだ

もちろん報告書案の中では、KDDIが未だ実現できていない、UQ mobile以外へのMVNOに対するテザリングサービスの提供や、大手キャリアとそのサブブランドのメールアドレスしか除外されていない携帯電話メールのフィルター設定への対処、番号ポータビリティの番号取得時に、強引な引き留めを受けない環境の整備など、キャリアとMVNOとの公平な競争環境実現に向けたいくつかの方策が示されてはいる。

だがネットワークの公平性に関しては、キャリアのグループ内MVNOに対する過度な金銭的補助など、不当な運営がないかチェックしていく体制を構築するとの方針は示したものの、現時点で特に問題が見つけられなかったため、サブブランドへの明確な措置を打ち出すことはできなかったようだ。最大のテーマであったサブブランド問題の追求が空振りに終わり、キャリアに対する明確な指導の方針が打ち出しづらくなったことが、結論を出すのが遅れた要因の1つになったといえそうだ。

議論は再び「縛り」へ、鍵を握る公正取引委員会

加えて今回の有識者会議では、サブブランドに関連する問題だけでなく、中古端末の国内における流通量が増えないという問題や、いわゆる「2年縛り」に関する問題にまで議論が及んでいた。サブブランド優遇問題の追求で思うような成果が出なかったのに加え、全体的に議論が拡散したことで主題が見えにくくなったというのも、報告をまとめるのに時間を要した大きな要因の1つと考えられる。

第1回会合における総務省資料より。今回の議題はMVNOとサブブランドとの公平性だけでなく、「2年縛り」や中古端末に関する問題など、議論テーマが多岐にわたっていた

では今後、総務省は公正競争の実現、ひいてはMVNOの再活性化のため、どのような点に注力していくと考えられるだろうか。今回の議論や報告書案の内容から察するに、再び“縛り”の問題に注力してくる可能性が高いと筆者は見る。

実は今回の有識者会議では、キャリアのサブブランド優遇に対する疑念だけでなく、大手キャリアが下取りした端末の国内流通を制限しているのではないかという疑念も、多くのMVNOからなされていた。だが大手キャリアの側は、ヒアリングで下取り端末の国内流通を制限していないと回答。それゆえ国内流通促進のためには、中古端末の取引をしやすくする市場の形成や、端末の修理とそのために必要な部品の供給など、他の課題の解決が必要であることが見えてきたのだ。

それゆえ総務省は再び、現在もなお顧客に大きな影響をもたらしている、2年縛りの問題に目を付け始めたといえる。実際今回の報告書案でも、「2年契約満了時点又はそれまでに、違約金又は25か月目の通信料金のいずれも支払わずに解約できるよう措置を講ずることを求めることが必要と考えられる」との記述がなされており、2年間の縛りを前提としたプランを重視する大手キャリアの対応を、引き続き問題視している様子がうかがえる。

また総務省は、4年間の割賦を前提に端末を購入する代わりに端末代金を値引く、いわゆる「4年縛り」に関しても、顧客のスイッチングコストを上昇させる販売手法であるとして、問題視する動きを強めているようだ。そしてこの4年縛りは、公正取引委員会が4月13日より実施している「携帯電話分野に関する意見交換会」でも、1つのテーマとして議論がなされている。

総務省は今後、販売店での不正なキャッシュバックなどに関して、独占禁止法に抵触する可能性がある事案を認知した場合は、公正取引委員会に情報提供するなど、公正取引委員会との連携を強め大手キャリアの端末販売手法などに関する問題を対処していく考えを示している。それだけに今後、携帯電話市場には総務省だけでなく、公正取引委員会も大きな影響を与えることになるかもしれない。

総務省施策が追い風に? 携帯分離の「歴史的チャンス」狙うファーウェイ

総務省施策が追い風に? 携帯分離の「歴史的チャンス」狙うファーウェイ

2019.03.20

モバイル業界を変える「携帯値下げ議論」が過熱

ファーウェイは日本を取り巻く環境を「歴史的チャンス」と発言

コスパ高いミッドレンジ端末でシェア拡大を目指す

20日、NTTドコモが特定の端末の購入を条件に通信料金を割り引く「docomo with」、購入する端末に応じて通信料金を割り引く「月々サポート」を終了する方針を固めたという報道が話題となっている。

国内のモバイル業界では携帯電話料金見直しが進んでおり、3月5日には総務省が中心に進めてきた端末代金と通信料金の分離が閣議決定された。NTTドコモは分離プランを軸とした新料金プランを4月に発表する見込みだ。

日本のモバイル市場を大きく変えるこの動きを「歴史的チャンス」と見ているのがファーウェイだ。2018年末から米中対立が加速する中、ファーウェイが打ち出すメッセージも語気を強めている。果たして日本市場でシェアを拡大できるのだろうか。

逆風吹けども、依然として業績は好調

今年に入り、ファーウェイの周辺が騒がしい。3月7日には、ファーウェイは米国政府を相手取って訴訟を起こした

さらにその内容をFacebookでライブ配信するなど、米国以外の世界市場に向けたメッセージにもしており、そのメッセージをまとめたウェブサイト「Huawei Facts」は、わざわざ日本語版も用意している。

2018年末から続く米中対立を巡る報道は、ファーウェイの業績にどのような影響を与えたのか。MWC19でインタビューに応じたファーウェイ・ジャパンの呉波氏は、「一部の消費者は影響を受けたが、2019年に入ってから売上は大幅に伸びている」と語った。

ファーウェイ デバイス 日本・韓国リージョン プレジデントの呉波(ゴ・ハ)氏

話題の「折りたたみスマホ」でもファーウェイは先行する。

ファーウェイに先立って折り畳みスマホを発表したサムスンだが、こちらはMWCではガラスケース内での「展示」のみにとどまったのに対し、ファーウェイは「Mate X」の実機を用いて報道関係者に折り曲げを試させるなど、製品化で一歩先を行っていることをアピールした。

ファーウェイの折りたたみスマホ「Mate X」。報道陣には手に取って折り曲げてみる機会も用意された

Mate Xは次世代移動通信の「5G」にも対応しており、日本では5Gサービスの開始を待って投入時期を見極める方針だという。

ちなみに3月26日に発表予定のフラグシップ機「HUAWEI P30」シリーズは、例年通りのタイミングで日本市場に投入するようだ。SIMフリーでの発売だけでなく、ドコモが採用した「HUAWEI P20 Pro」のように大手キャリアによる採用があるかどうかも注目したい。

分離プランを「歴史的チャンス」と捉えるワケ

一方、2019年の国内モバイル市場で話題となっているのが携帯料金における「分離プラン」の導入だ。KDDIとソフトバンクはすでに導入済みだが、NTTドコモは4月に発表する新料金プランから本格導入するとみられている。

分離プランの特徴は、NTTドコモの「月々サポート」のように回線契約と紐付けた端末の割引が禁止される点だ。端末の割引自体が禁止されるわけではないというものの、大幅な割引は難しくなる。その結果、10万円を超えるようなハイエンド機ではなく、3〜4万円で一括購入しやすいミッドレンジ機の需要が高まるとの見方が有力だ。

この動きをファーウェイはどう見ているのか。

呉氏は「非常に重要視している。スマホが登場したときや、SIMフリー市場が始まったときのインパクトに引けを取らない、歴史的な瞬間になる」と興奮気味に語る。

日本のSIMフリー市場でベストセラーとなった「HUAWEI P20 lite」を始め、ファーウェイのミッドレンジ機のラインアップは厚い。モデルによってはフラグシップと同じCPUでミッドハイの価格を実現するなど、コスパの高さも特徴だ。大手キャリア向けにさまざまな提案ができる体制といえる。

フラグシップと同じ「Kirin 980」搭載でミッドハイ価格の「HONOR View 20」

また、5G対応も順調だ。

モバイルWi-Fiルーターに強みを持つファーウェイは、MWC19でも5G対応ルーターを多く出展していた。日本ではまだ周波数の割り当てが終わっていないものの、国内大手キャリアは2019年内にもプレサービスを始める動きがある。5Gスマホが普及するまでの間、5Gルーターの需要は高まる可能性がある。

5G対応のモバイルWi-Fiルーターも出展していた

ミッドレンジ市場の拡大を狙って、今年はシャープやサムスン以外にも、ソニーモバイルの参入も予想されている。

この価格帯が激戦区になることは間違いないが、ファーウェイはその中で高コスパの製品ラインアップや、国内での地道な販促活動やブランドメッセージの打ち出しによって対抗していく構えだ。

ヨドバシカメラ梅田店での販促イベントの様子
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2019.03.20

Googleが新しいゲームプラットフォームを発表

配信方式でゲーム機不要、「ゲーム機」の時代の終焉?

2019年内にローンチ、性能はプレステやXbox以上か

3月19日、米国で開催中のゲーム開発者会議「GDC 2019」の会場で、Googleがクラウドベースのゲーミングプラットフォーム「STADIA」を発表した。特定のゲーム機に縛られず、ネットに接続したスマホやパソコン、テレビを通してストリーミング(配信)形式でゲームをプレイできる。

この事業を担当するバイスプレジデントとして、STADIAを発表するフィル・ハリソン(Phil Harrison)氏。そもそも彼からして、元はソニーのプレイステーション立ち上げの主要メンバーで、その後Microsoftに移りXboxを担当したという経歴の持ち主

かねてより、MicrosoftのXbox事業のトップマネージャーを引き抜いた、ソニーでPlayStationのハード開発にかかわったエンジニアが転職したといった噂が頻繁に流れており、「Googleがゲーム市場に本格参入する」という憶測は強まっていた。実際に2018年には、Googleは「Project Stream」と呼ばれるストリーミング形式のゲーム基盤の計画を発表し、米国内でベータテスターを募って技術テストを行っていた。

STADIAは、Project Streamの延長線上にあるサービスと見られる。ユーザーは特定のゲーム機を持っている必要がなく、従来のゲーム機の役割をするのはGoogleの設置するデータセンターだ。簡単に言えばクラウドサービスのように、実際にゲームタイトルが動作しているのはデータセンター側で、ユーザーはインターネットを介してゲームを遠隔でプレイする。

STADIAのデータセンターから配信されたゲームをパソコンでプレイしている様子
パソコンで遊んでいたのと同じゲームを、タブレットやテレビでも同じように遊ぶことができる

このプラットフォームの特徴によって、例えばYouTubeで新作ゲームのトレーラー動画を見ていて気に入ったときには、そのページ内の「プレイする」ボタンを押すだけで、インストールすら不要で、動画を再生するかのようにそのゲームをプレイできるようになる。

そして、STADIAのデータセンターが持つゲーム機としてスペックは、サービス開始時のものとして、GPUの演算性能は10.7テラFlopsに達するといい、これはPlayStation 4 Proの4.2テラFlopsや、Xbox One Xの6.0テラFlopsを大きく上回る。映像品質も4K/60fpsのストリーミングに対応し、将来は8K/120fps対応も予定しているという。

STADIA用の「STADIAコントローラー」も販売する。SNSアップ用のボタンや、Googleアシスタントボタンが備わっている

Googleは2019年中にSTADIAをローンチする予定で、まずは米国、カナダ、欧州でサービスを開始すると説明している。発表を受けた翌20日の東京株式市場では、任天堂とソニーの株価が揃って大きく下落した。投資家たちが、GoogleのSTADIAによって、Nintendo SwitchやPlayStationのビジネスが脅かされると考えたからだ。

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