新車販売より大事? ディーラーがアフターセールスに注力する理由

新車販売より大事? ディーラーがアフターセールスに注力する理由

2018.04.25

クルマはメーカーが作り、ディーラーが売るものだが、それぞれのビジネスは性質を異にするため、販売台数についての考え方にも少し違いがある。ディーラーにとって新車販売と同等か、それ以上に大事な仕事とは何か。ボルボの“世界大会”を取材して考えた。

ボルボの「VISTA」とは何か

ボルボのアフターセールスに関する技能競技大会「VISTA」(Volvo International Service Training Award)の国内最終決戦が、4月半ばに開催された。ここで優勝したチームは、6月にスウェーデンで開かれる世界大会に出場することができる。この技能大会は2年に1度開催され、一昨年の世界大会で日本チームは43カ国中5位に入っている。

VISTA国内最終決戦・実技審査の様子

アフターセールスの世界大会で何を競うか

アフターセールスとは、新車販売後にディーラーに持ち込まれるクルマの点検・整備などを指し、顧客にボルボ車を快適に使い続けてもらう上でディーラーの重要な業務だ。このため、点検・整備の技能向上を図る目的でVISTAが行われている。スウェーデン本国では1976年に始まり、日本では1980年からの実施で今年が20回目となる。

大会の特徴は、単に整備士(ボルボではテクニシャンと呼ぶ)の技能の優劣にとどまらず、顧客への応対を含め、ディーラー一丸となったサービス提供の良否を審査するところだ。販売だけでなく、アフターセールスにおいても顧客満足度を向上させることに重点を置く。

顧客対応のロールプレイ審査も実施

また近年は、クルマに電子装置が入り込み、電気やデジタル信号で機器を機能させる仕組みが増えているため、今大会では、故障診断機を用いながら、正しい手順にそって点検整備が行われることが審査対象となった。手順を間違えば的確な修理に結びつかなかったり、修理に余計な時間を要したりするからだ。

取材したのは全国248チーム、643名の参加者から3回の学科審査を経て、その後に接客のロールプレイや整備の実技審査を通過したセミファイナル30チームから、さらに絞り込まれたファイナル10チームによる最終決戦の大会だった。

業界全体が力を入れるアフターサービス

実技審査では、会場に物音ひとつしない静かな戦いとなった。スパナなど工具を使った機械的整備ではなく、故障診断機を用いながらのコンピューターを使った原因究明と、修理に至る手順が重視された審査であったからだ。

まずはコンピューターで故障の原因を究明。スパナ片手にクルマの下に潜り込むようなシーンは見られなかった

実技審査の後には、修理を完了したクルマを顧客に渡す際の作業説明を中心としたロールプレイへと進む。ここでは、整備士自らが顧客に修理内容を伝えるうえで、メカニズムをいかに分かりやすく説明できるかが問われた。また、カーナビゲーションなどの使い方を適切に説明できるかなども審査された。

各チームとも、実技が55分、ロールプレイが15分の熱戦を経て、ボルボ・カー横浜西口(株式会社ワイズカーセールス)チームが優勝した。ボルボ・カー多治見(株式会社中根モータース)は2位、ボルボ・カー相模原(株式会社ワイズカーセールス)が3位という結果で、1位のチームは世界大会での技能競技に出場する。2~3位も6月の世界大会へ招待され、研修を受けることができる。

表彰式の様子(画像提供:ボルボ・カー・ジャパン)

新車を販売する営業担当者のトレーニングや審査会が、メーカーやインポーター(輸入業者)それぞれに行われていることは比較的、知られるところだろう。しかし、今回のような整備士のトレーニングとそれに続く技能競技大会も、ボルボだけが行っている取り組みというわけではなく、多くのメーカーやインポーターが実施していることなのだ。

整備士の熟練は、顧客にとって欠くことのできない要素であるばかりでなく、ディーラー事業においても、大切な顧客を他のメーカーに奪われないため、きわめて重要なことであるからだ。

ディーラーの利益面に占めるアフターセールスの重要性

自動車販売ディーラーにおける事業の柱は、点検・整備などのアフターセールスと中古車販売、そして自動車損害保険の3つであるという。もちろん、新車を何台販売したかの数値は重要で、ディーラーの売上高ではアフターセールスと並ぶ位置づけだ。しかし、利益としてはアフターセールスが圧倒的であり、新車販売はそのための“種まき”との声もあるほどである。

一方、整備士の技術向上へ向けた取り組みは従来から行われてきているが、整備士自身が顧客に対し自分が行った作業を説明する、つまり顧客の前に出ることはあまりなかった。サービスフロントと呼ばれる人材が、顧客と整備士との橋渡しを行ってきたからだ。

ロールプレイ審査では整備士が技術面の説明を行った(画像提供:ボルボ・カー・ジャパン)

ところが近年は、野菜などの販売においても、栽培した農家を紹介するなど作り手の顔を見せることが品質の信頼を得る手段に用いられるようになってきた。クルマの場合でも、担当した整備士自身の言葉で顧客に原因と結果を説明することで、ディーラーと顧客との信頼関係をより強く結びつけることが、顧客満足につながるとの考えが現れた。

ボルボ・カー・ジャパンが実施した技能競技大会は、まさにその事実を表している。言葉巧みというわけにはいかないかもしれないが、技能に優れた整備士自身が、自分の仕事を顧客に説明することで、ディーラーと顧客の絆は深まる。整備士自身にとっても、己の仕事に誇りや意欲を感じられるようになるというわけだ。こうして、新車販売の営業担当だけでなく、アフターセールスの面でも、ディーラーが顧客と強固な信頼関係を結ぶことが求められているのである。

選ばれるブランドであり続けるために

インターネットの普及により新車情報が容易に入手でき、価格の比較も画面上でできるようになり、顧客のディーラー訪問回数が激減した今日、顧客との結びつきを強化することは、将来へ向けたディーラーの死活問題となる。ひいてはそれが、メーカーの存続をも左右することになる。

選ばれる銘柄であるために、時代は新たな取り組みを求め、そのための創造力が経営には求められている。そこを強く意識するボルボ・カー・ジャパンの木村隆之社長は、以前のインタビューでCS(顧客満足度)ナンバーワンを目標に掲げていると話した。それは、営業だけでなくアフターセールスも含むということである。

VISTA国内最終決戦の開幕にあたり挨拶する木村社長

クルマの進化で点検・整備は「頭脳労働」に

もう1つ、クルマの点検整備の仕方が新しい時代を迎えている点も見逃せない。サービストレーニングを担当するボルボ・カー・ジャパン能力開発グループの牛島淳氏は、「かつてのように、経験をもとに故障原因を探して修理することが難しくなってきています。例えば、今回のVISTAで競技車両として用いたのは『XC60』のPHEV(プラグインハイブリッド車)で、故障の症状は、起動後にシフトポジションを『P』(パーキング)から『D』(ドライブ)あるいは『R』(リバース)へ入れても、『P』に戻ってしまうという内容です。PHEVの場合、シフト操作は『バイ・ワイヤー』になっており、機械的に原因を探っていくことができません」と説明する。

実技審査には「XC60」のPHEVが用いられた

「バイ・ワイヤー」とは、スイッチと作動部分が物理的に直接つながってはおらず、スイッチ部の操作をデジタル信号化し、モジュールを経由して操作部へ伝え、データ通信によって作動部分が稼働する仕組みである。ジャンボジェット機のような巨大な航空機の操縦で始まった手法であり、現在ではクルマにも応用されている。これによって、ハーネスと呼ばれる配線を大幅に減らすことができ、それは軽量化につながり、燃費や操縦安定性の向上に貢献する。

ただし、故障診断機が全てを解決してくれるわけではない。「診断機を使い、コンピュータとクルマの対話から故障を判定し、整備や修理につなげる。頭を使った整備の過程を組み立てられる人材が必要になっています。それによって、敏速かつ正確に整備ができるようになります。ただし、基本的な整備の知識が無いと、点検・整備の組み立てはできません」と牛島氏は話す。

クルマの点検・整備では頭脳労働の比重が高まっている様子

さらに、クルマの各種操作の説明も営業任せでなく、サービスに関わる人間も知っている必要があると牛島氏。

「スウェーデン本社では、クルマの機能が多様化しても人の操作は簡素にとの考えで、ボタンスイッチを減らし、(センターディスプレイの)タッチ操作によるスワイプや音声入力を活用した開発をしています。『センサス』(SENSUS)は定期的にアップデートされていくので、最新状態に更新することで機能を充実させていくことができるからです」

最新のボルボ車では、「センサス」と呼ばれる統合的な操作系を導入している。カーナビゲーションの地図情報を含め、これらが納車時の設定からアップデートされたあとは、アフターセールスが顧客へ案内をしていくことになるはずだ。

クルマの進化は日進月歩。例えばナビを音声で操作する際、始めになんと声をかけるか(コマンドを出すか)も、バージョンによって違ったりする。そういった点も含め、アフターセールス業務に当たるスタッフが覚えることはたくさんありそうだ

「アフターセールスの担当者が学んだり覚えたりすることが増えている」と牛島氏は語る。ディーラー経営の根幹をなすアフターセールス部門の重要度がますます高まっているといえるだろう。そこにおいて力量を発揮するのはやはり人であり、働く意欲と向上心が欠かせない。人材確保のため、この技能競技大会には自動車大学校の担当者も見学に招待されていた。今年から内容をさらに進化させたVISTAは、ディーラー経営の将来を見据えた挑戦的技能競技大会となったのである。

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

2019.01.18

中国メーカーが自在に折り曲げられるスマホを実現

「大画面×コンパクト」を両立する夢のデバイス、実用性は?

端末の魅力を引き出すアプリ登場が普及のカギか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」では、2019年のトレンドを先取りする新ガジェットが一堂に会した。その中でも一際大きな注目を浴びたのが「折り曲げられるスマホ」だ。商品化にこぎ着けたのは世界初という。

折り曲げられるスマホ「FlexPai」

スマホの画面サイズが大型化を続ける中、iPhone SEのような小型スマホを求める声は依然として多い。そこで登場した折り曲げられるスマホは、「大画面」と「コンパクト」を両立する夢のデバイスに見える。果たして普及の可能性はあるだろうか。

自在に折り曲げられるスマホ、中国メーカーが実現

折りたためる2画面のスマホというアイデア自体は、実はそれほど目新しいものではない。NTTドコモとZTEが共同開発した「M Z-01K」などは、現行モデルとして国内で販売中だ。

だが、従来の2画面スマホはヒンジを用いて2つの画面をつなげたものに過ぎなかった。その後、液晶とは異なる特性を持つ有機ELが登場したことで、ディスプレイを紙のように自在に折り曲げられることも夢ではなくなった。

有機ELの「曲げに強い」という特性は、多くのスマホに活用されている。サムスン電子のGalaxyシリーズが画面端を曲面にしたスマホを発売後、ソニーモバイルシャープもこの形状を採用している。

これを推し進め、開くとタブレットのような大画面、2つに折り曲げるとスマホサイズという端末の可能性が見えてきた。そして2018年10月、中国のRoyoleが、世界で初めての折り曲げられるスマホ「FlexPai」を商品化したのだ。

中国Royoleのブース。フレキシブルディスプレイを使った様々な製品が並んだ

CES 2019では韓国のLG電子が巻き取り式のテレビを発表するなど、「曲がるディスプレイ」が会場全体で話題になっていた。そうした下地もあって、Royoleの出展ブースには来場者の行列が絶えず、展示機がバッテリー切れを起こすほどの盛況となっていた。

実用性はさておき、スマホの進化の可能性を示した

FlexPaiの特徴は、開いた状態ではタブレットに近い形状になり、そこから自由に折り曲げできる点にある。従来の2画面スマホとは異なり、広げた状態でも画面の境目がないため、タブレットと同じ感覚で利用できる。

広げた状態ではタブレットのように使える

メーカーが挙げるメリットは、複数のニーズごとの端末を1台に集約できることだ。大画面が欲しい人の中には、スマホとタブレットを両方持ち歩いている人もいるだろう。だがFlexPaiなら持ち歩くのは1台で済むというわけだ。

折り曲げた状態では一般的なスマホと同じように使える

折り曲げというギミックから、耐久性に不安を覚えるものの、20万回程度の折り曲げに耐えられるという。ただ、折り曲げると厚みが出るため、スマホのようにコンパクトに持ち歩くことはまだ難しい。

アプリの対応も課題だ。FlexPaiを折り曲げた状態では「表面」と「裏面」に加え、折れ曲がった「エッジ」の3画面を利用できる。FlexPaiの魅力を引き出すには、これら3画面を活用するようなアプリの登場が待ち望まれる。

そこでRoyoleは、FlexPaiをアプリ開発者向けに1,318ドルの価格で先行販売している。まずは開発者にデバイスを手に取ってもらい、どのような活用方法が考えられるか、アイデアを募っていく段階といえる。

会場で実機を試した印象だが、現段階での折り曲げスマホは実用的とまではいえないと思えた。しかしRoyoleという会社の名前を世界に知らしめ、フレキシブルディスプレイの技術を示したという意味では、この発表は大成功を収めたといえるのだろう。

また、サムスン電子など大手スマホメーカーも折りたたみや折り曲げ端末の開発を進めており、グーグルはAndroid OSとして公式サポートを表明している。スマホの次なる進化の可能性を真っ先に示したFlexPaiを、この場の実用性で語るのはお門違いなのかもしれない。

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

森口将之のカーデザイン解体新書 第12回

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

2019.01.18

国内主要メーカーの内装デザイナーが集まり展示会を開催

テーマは“1kgの価値”をどこまで高められるか

実車に応用できる? 独創的な作品の数々

国内主要自動車メーカー8社のインテリア・カラーデザイナーが参加する団体「JAID」が初の作品展を開催中だ。“1kg”という重さにこだわり、最新の3Dプリンターを駆使して各社のデザイナーが生み出した作品は独創的で、会場の「GOOD DESIGN Marunouchi」(東京・丸の内)は小さな現代美術館のような雰囲気になっている。

ダイハツ工業のデザイナーが出品した「受け継がれる樹脂」という作品

雑誌の対談が契機となり生まれた「JAID」

「JAID」という名前を初めて目にした人も多いだろう。「ジャパン・オートモーティブ・インテリア・デザイナーズ」の略で、「ジャイド」と読むそうだ。

創立のきっかけとなったのが、自動車雑誌「NAVI CARS」(ナビカーズ)での対談だったと聞いて、「あの号だ!」と即座に思い浮かんだ。クルマのインテリアを特集したナビカーズの2015年7月号で、筆者も別の対談に参加させていただいていたのだ。その号に国内メーカーのインテリアデザイナーが語り合うページがあったことは記憶の片隅に残っていた。

雑誌の売れ行きが落ちているといわれて久しい。それだけに、1つの雑誌の企画からJAIDのようなコミュニティが生まれたことは、モータージャーナリズムに身を置く者として嬉しい気持ちになる。

日産自動車のデザイナーが出品した「∞ Fluff」

価値ある1kgの創造に挑んだデザイナーたち

そのJAIDが企画したのが「1kg展」だ。なぜ“1kg”にこだわるかといえば、クルマの開発に携わる人たちにとって切実な「kg単価」という指標に理由がある。

「kg単価」とは、クルマの開発で使われる値段の単位だ。インテリアデザイナーとしてはkg単価が高い、いわゆる良い素材を使いたいという気持ちは大きいだろう。快適性や安全性の追求、さらには電動化への対応、重量の削減といった視点も持ちながら素材を選んでいるはずだ。

しかし、贅を尽くしてばかりでは車両価格の上昇を招くので、妥協が必要になる。おそらくインテリアデザイナーは、このような状況で悩みながら、新しい素材や仕立て、色などを取り入れるべく、奮闘の毎日を過ごしているのだろうと想像している。

では、そういった制約がなくなったとき、デザイナーたちはこのkg単価をどこまで価値あるものに仕上げられるのだろうか。これが、今回の展示会のテーマだ。最新の3Dプリンターを駆使し、時間や空間、物質としての限界などを飛び越えた作品を独自の着眼点で製作すると同時に、広くカーインテリアデザインの魅力を伝えたい。そんなメッセージのこもった展示会なのである。

ホンダのデザイナーが出品した「風速1kg」

素材と色のコーディネートが味わえる「ハンバーガー」

会場のGOOD DESIGN Marunouchiは、2013年度から通算5回、今年度も含めてグッドデザイン賞の審査員を担当している筆者にとってはなじみ深い場所だ。ところが、「1kg展」の内覧会を訪問した時には、状況がまるで違っていた。いつもは展示物をゆったりと眺めることができる空間なのに、この日はラッシュ時の駅のようにごった返していたのだ。それだけ、インテリアデザイナーの斬新な発想に期待する人が多かったということだろう。

日産のデザイナーが出品した「4D flower」。「1kg展」に作品を持ち寄ったのは、国内大手自動車メーカー7社(ダイハツ工業、ホンダ、三菱自動車、日産自動車、スバル、スズキ、トヨタ自動車)だ

作品の中には、クルマのインテリアデザインとは関係なく、最新の3Dプリンターならではの表現能力の高さをアピールするような作品も見られた。それらを業界の枠を飛び越えた独創的な作品と捉える人もいたようだが、クルマが好きで今の仕事に携わっている(はず)の方々だからこそ、もっとインテリアにこだわって欲しかった。

ただ、クルマのインテリアとの関連性が高い作品が大半を占めていることは確かで、中には独創的な発想や興味深いアイデアも見られた。本稿では独断と偏見で、そのうちの3つを紹介していこう。

まずは、会場の入り口近くに置かれていた「CMFバーガー」だ。「CMF」とはカラー、マテリアル、フィニッシュの頭文字で、ナビカーズでの対談が行われた頃から、自動車に限らずデザイン分野でひんぱんに使われるようになってきた言葉だ。造形だけでなく色や素材、仕立てにも気を配ることで、より完成度の高いデザインが生まれるというような意味が含まれている。

「CMFバーガー」はトヨタのデザイナーが出品

この作品は、CMFのコーディネートを1kgのハンバーガーに見立てて表現したもの。レザーのバンズ、クリアレンズのトマト、加飾素材のチーズやパティ、シート素材のレタスがさまざまな色で用意してあり、好みのバーガーを作り出せる。

3つの作例では、CMFの違いでかなり雰囲気の異なるバーガーを作れることが分かった。バンズを肉抜きタイプにすると総重量が1kgを切るなど、計量化を実感できる仕掛けも盛り込んである。ディーラーが車種別にCMFハンバーガーを用意すれば、顧客は楽しみながらカラーコーディネートを試すことができるかもしれない。

ディーラーに「CMFバーガー」が置いてあったら面白いかも

インテリアをボールにした斬新な作品も

続いて紹介するのは「トランスフォームステアリング」。自動運転が実用化された未来を想定した変形機構を持つステアリングで、手動モードでは伸びて操舵できる状態となり、自動モードでは縮めて格納しておける。全てがマットブラック仕上げだが、グリップ部分、変形部分、外枠部分を別のメーカーのプリンターで製作することで、素材の違いを表現している。

トヨタのデザイナーが出品した「トランスフォームステアリング」

製作したデザイナーはステアリング機能だけを想定していたようだが、左右のグリップをねじることでアクセルやブレーキの操作ができれば、この部分だけで基本的な運転操作ができる合理性の高いインターフェイスになると思った。ペダルがなくなれば、室内レイアウトの自由度も高まりそうだ。

伸ばせば手動運転に使えるし、自動運転中は縮んだ状態で格納しておける

最後は「インテリアボール」だ。写真を見てお分かりのとおり、クルマのインテリアを構成するパーツをボール状のアートとして表現したもので、多くのパーツをまとめ上げ、世の中というフィールドにデザインを“投げ”かけているインテリアデザイナーの仕事をボールの形に込めたのだという。

「インテリアボール」はホンダのデザイナーが手掛けた

展示してあるのは1個だけだが、スポーツの世界では競技によってサイズの違うボールを使うことにも製作者は着目している。使用する材料や加工方法を変えることで、同じ1kgでもサイズや見え方の違った表現ができるそうだ。

しかしながら筆者には、これがボールではなく卵に見えた。卵から生まれる前のクルマ、そのインテリアデザインは、こうなっているのではないかと想像したのだ。同じクルマのエクステリアデザインを卵の殻で表現することで、多くの車種を球形にできれば、一風変わったミニチュアになるのではないだろうか。

JAIDが企画した1kg展の作品群は、それ自体が柔軟かつ斬新な発想から生まれているだけでなく、見ているこちらも創造力が掻き立てられるものだった。この展示会を訪れて、日本の自動車メーカーにインテリアデザインの実力者が多いことに感心するとともに、メーカーには、この実力を引き出して製品に結び付ける能力が求められていることを教えられた。

1kg展の会期は1月25日まで。入場は無料だ。時間に余裕のある方は、一度訪れてみてはいかがだろうか。