増える電気自動車、使用済みバッテリーはどこへ向かうのか(前編)

増える電気自動車、使用済みバッテリーはどこへ向かうのか(前編)

2018.04.26

クルマの電動化が進む今、考えたいのは使用済みとなったバッテリーをどうするかだ。まだ使える電池をゴミにしないためには再利用が不可欠だが、中古バッテリーのビジネスには難しい部分も多そうだ。そんな難題に挑むフォーアールエナジーの牧野英治社長に話を聞いたので、前編・後編に分けてお伝えする。

電気自動車の使用済みリチウムイオンバッテリー(画像)をどうするか、フォーアールエナジーで聞いた(画像提供:フォーアールエナジー)

初代「リーフ」発売前に誕生したフォーアールエナジー

日産自動車が51%、住友商事が49%を出資し、2010年9月に創業したのがフォーアールエナジーだ。同社は、電気自動車(EV)で使用済みとなったリチウムイオンバッテリーを再利用(Reuse)/再販売(Resell)/再製品化(Refabricate)/リサイクル(Recycle)するための会社であり、その頭文字をとって社名(4つの「R」でフォーアールエナジー)とした。

同社の誕生は、日産のEV「リーフ」が発売される3カ月も前のこと。その前年に三菱自動車工業が法人向けEVの発売を開始したばかりで、世の中にまだほとんどEVの存在しない頃であった。

日産の初代「リーフ」(画像提供:日産自動車)

日産が自社のEVを売り出す前に、その使用済みバッテリーを事業基盤とする会社が立ち上がったのはなぜか。フォーアールエナジー代表取締役社長の牧野氏は次のように語る。

「日産の先進技術の担当部長として北米に赴任し、EVはもちろん、燃料電池車(FCV)やハイブリッド車(HV)の実証実験、あるいは他社とのパートナーシップに関わっていた折、現地では試作車の『アルトラEV』(日本名:ルネッサEV)に乗っていました。帰国後、短期間インドでの生産工場の立ち上げに関わったあと、日産のトップマネージメントに呼ばれ、『EVをやれ』と下命があったのです」(以下、発言は牧野氏)

「北米でEVに乗っていた経験から、EVの普及へ向けて良いクルマを開発するのは自動車メーカーとしてもちろんですが、いずれは使い終わった大量のリチウムイオンバッテリーをなんとかしなければいけないとの思いがありました」

フォーアールエナジーの牧野社長

「日産のトップマネージメントも『従来のクルマであれば良い新車を開発して売るだけだが、EVはそれだけでは売れない。充電器など周辺の社会基盤を整える部署が必要だ』といって、車両開発責任者とは別に、私がそのEV普及のための責任者になったのです」

日産が踏み込んだ初めての領域

日産は、自動車メーカーがやってこなかったクルマづくり以外の新たな事業に、おそらく世界で初めて足を踏み入れたのである。牧野氏がまず取り組んだのは、海外の政府や他業種の企業と、EV導入へ向けた合意形成をすることだった。日産はポルトガルを皮切りに、国内外を含めた政府、自治体、企業と、ゼロエミッションモビリティ実現のためのパートナーシップ協定を2008年から次々に結んでいった。

「これまで経験したことのない業務でしたので、当初は協定が成立するものなのかと思いましたが、地球温暖化に対する政府や企業の意識は高く、ことに中国では、経済発展の中で石油消費が増えれば輸入依存度が高くなっていくので、エネルギー安全保障の観点からの関心が高かったです」と牧野氏は振り返る。

定置型バッテリーに市場はあるのか

そして、いよいよ使用済みバッテリーの「4つのR」(再利用/再販売/再製品化/リサイクル)の取り組みとなる。とはいえ、使用済みリチウムイオンバッテリーが市場に出てくるまでには、リーフが発売されてから時間を要する。そこで、フォーアールエナジーは新品のリチウムイオンバッテリーを使った製品開発から始めた。その理由を牧野氏は次のように説明する。

「EV(車両)としてリチウムイオンバッテリーがどのように使われるかは、自動車メーカーの日産で想定が成り立ちます。しかし、定置型のバッテリーに対し、どのような市場があるのか、あるいは市場の要求が何であるかは全く分かりません。新品のリチウムイオンバッテリーを使った製品を出すことで、市場の状況を学びました」

フォーアールエナジーが取り扱っている家庭用リチウムイオンバッテリーシステム「エネハンド蓄電池」(画像提供:フォーアールエナジー)

「産業用バッテリーは2011年から、家庭向けバッテリーでは2012年から製品を販売しています。その上で、2014年の大阪・夢洲(ゆめしま)の実証実験から、中古バッテリーを導入していきました」

自治体との共同実証に住友商事の協力も

大阪市此花区にある人工島の夢洲では、再生可能エネルギーとして太陽光発電を導入した。住友商事が主導するプロジェクトに参画し、その充放電の変動に応じて出力を安定させるバッテリーに、フォーアールエナジーの中古リチウムイオンバッテリーを使ったのだ。具体的には日産リーフ16台分の使用済みリチウムイオンバッテリーパックを設置した。これは、世界初の使用済みバッテリーによるマネージメントシステムとなった。

夢洲における実証実験の様子(画像提供:フォーアールエナジー)

フォーアールエナジーは翌2015年、沖縄や鹿児島県薩摩川内市の上甑島(かみこしきしま)における実証実験に参加している。沖縄は島嶼型エネルギー基盤技術研究事業のプロジェクトで、小型蓄電池システムへの中古リチウムイオンバッテリーの可能性を探ることを行った。

上甑島で使用した使用済みリチウムイオンバッテリーは、夢洲同様リーフ36台分だが、夢洲での知見を活用し、性能や信頼性の向上に取り組んだ。また、九州電力による系統との接続や、太陽光の他に風力発電における変動の対応など、将来的な検証も含まれていた。

こうした自治体ごとの実証実験に参加できた要因として、同社が日産と住友商事との合弁会社であることが機能している。「住友商事はビジネス、日産は技術というすみ分けがうまく機能しています」と牧野氏は話す。

また同2015年には、日産の先進技術センター「NATC」(神奈川県厚木市)にリーフ24台分の使用済みリチウムイオンバッテリーを設置し、ピークカット(需要最大時の電力消費の削減)による電力料金の抑制と、ピーク以外の時間帯における電力の有効利用を探った。この試みは、自社内の省エネルギーと電気料金の低減という経済性だけでなく、システム網につながる他の設備にも電力を融通して有効活用を図る社会システムとして、バーチャル・パワー・プラント(VPP)の実現性を模索する実証実験にもなった。

日産「リーフ」の思想を受け継ぐ「防爆設計」

これらの実証実験を通じ、フォーアールエナジーが得た知見の1つは、日産がリーフに用いるリチウムイオンバッテリーと制御システムの安全・信頼性が高いと再認識したことだった。

「EV用に開発されたリーフのリチウムイオンバッテリーと、それを搭載するバッテリーパックはショート(短絡)が起きないよう設計されていますが、万に一つのショートが起きたとしても、発火しないような設計が追加されています。バッテリーパック内が万一の際に酸欠となる設計がされていることにより発火しない、いわゆる『防爆設計』というものです」

「リーフは世界累計で30万台ほど販売されていますが、リチウムイオンバッテリーに関する事故ゼロが続いています。弊社では、その日産の安全思想を受け継ぎ、家庭用バッテリーにおいても防爆設計としているので安全です。ただし、定置型バッテリーとしての容量、出力、価格の面で、競合他社に比べやや損をしている面があるかもしれませんが…」

フォーアールエナジーは定置型バッテリーに防爆設計を施している(画像提供:フォーアールエナジー)

クルマとは違う使い方に苦労も

安全性の面で特徴的なのは、クルマの場合、駐車すれば必ず1日に1回はメインスイッチがオフになるので、そこでおかしなメモリーなど、デジタル制御機器における不安要素を取り除く設計がなされている。一方、ことに産業用や家庭用などでは、何日も何カ月も連続して使い続ける場合が多いため、1日1回のオン・オフを行うことが面倒であったり、それを厭う顧客があったりするのも事実だ。もちろん、オン・オフは自動で行われるが、「その間も充放電をしたいとか、その分を価格の安さに振ってほしい」との声もあるようだ。

しかしながら、産業用であれ家庭用であれ、万が一にも火災が生じれば事態は深刻になる。人命に関わるかもしれない。それは、各地で起こる災害も同じだ。災害時の電力確保としてもバッテリーの需要は高まっており、安全性・信頼性はこれからのエネルギー保障において重要項目と言える。目先の安さだけで済まされない問題だ。

それぞれに違うセルの劣化状況

大量の中古バッテリーを製品化するため、フォーアールエナジーは使用済みリチウムイオンバッテリーの品質検査技術を構築してきた。

「リーフには、搭載される1パックのバッテリーに48のモジュールが収められています。このバッテリーパックの中で、一つ一つのモジュールがバラバラの性能に劣化しています。それらを一つ一つ確認し、性能の高いものから順に3つのグレードに分け、それぞれ用途に合った使い方に適用していきます」

「そのためには、まずそれぞれのバッテリーセルの劣化状況を確認することから作業が始まります。1モジュールの性能を充放電しながら検査するのに従来は8時間かかっていました。それではリーフ1台分の48モジュール全ての検査を終えるまでに16日掛かってしまいます。これでは次々に持ち込まれる中古バッテリーの検査が追いつきません。そこで弊社では、1モジュールにつき約4時間で検査を済ませ、性能を把握できるようにしました。これで初めて、中古バッテリーの事業が動き出せます」

「加えて、中古バッテリーが3つのレベル別にそれぞれ、例えば5年後にはどれくらいの容量、出力、充放電性能を保持しているか、温度差など使用環境の変化も加味しながら、将来の性能を推定するツールの開発も行いました。この2つの柱となる技術ができあがったことで、初めて中古バッテリーの事業を開始できたのです。これには日産の支援が欠かせませんでしたし、世界を走る全てのリーフのバッテリー情報がビッグデータ化され、確認できる状況にあることも不可欠です」

日産の2代目「リーフ」

8年近い歳月をかけバッテリー再利用に道筋

3グレードに分類された中古バッテリーの内、最も性能のよい製品はリーフの交換用再生電池として販売される。中程度のグレードは、フォークリフトなどで利用される。グレードの低いバッテリーは、工場における電源のバックアップ用などで再利用の道がある。

「2010年の創業から8年近くの歳月をかけ、ようやく弊社の主力事業であるEVで使用済みになったリチウムイオンバッテリーの再利用と再販売に至りました。この事業は、そう簡単に誰にでもできるものではありません」と、牧野氏は感慨深げに語る。

様々な試行錯誤を積み重ねながら、使用済みEV用リチウムイオンバッテリーの再利用と事業化に向けた取り組みを進めてきたフォーアールエナジー。「EVシフト」との言葉も聞かれるようになった今、2018年3月には福島県の浪江町に新工場も開所し、いよいよ同社のビジネスは軌道に乗りそうに見える。今後の展開について牧野氏は何を思うのか。そのあたりは後編でお伝えしたい。

「選択と集中」が進みすぎた、日本の科学技術への投資

藤田朋宏の必殺仕分け人 第1回

「選択と集中」が進みすぎた、日本の科学技術への投資

2018.11.15

ちとせグループCEOの藤田朋宏氏による新連載

巷を賑わす”ヘンな出来事”の問題点を、独自の解釈で洗い出す!

第1回は、「日本の科学技術投資」について

バイオベンチャー企業群「ちとせグループ」のCEOを務める藤田朋宏氏による新連載。“手段と目的の違い”によって生じた「ヘンな出来事」の問題点を、独自の視点で語ります。第1回は、「日本の科学技術投資」について。日本の科学技術への投資の問題点とはいったい何なのでしょう?

才能と“伸びしろ”に投資する、日本サッカー協会

先日、クアラルンプールに出張したときのこと。宿泊先のホテルが偶然にもサッカーの日本代表と同じだった。「日本代表」と言っても、同じホテルに泊まっていたのは本田や長友ではなく、U-16アジア選手権に参加している若い選手たち。

そこで彼らを見ていて、ふと考えた。日本サッカー協会の「選手への投資」は、実は凄く効率がいいのではないか。どうしてそう思ったのか、順を追って説明したい。

ホテルに置いてあったU-16アジア選手権のバナー

チェックインを済ませ、「部屋の準備があるから、ちょっとだけそこで待っていて」と指示するホテルマンに従い、ひとりロビーに放置されている間、何となしに選手の情報を調べてみた。それから一時間半。23名の選手一人ひとりの顔だけでなく、利き足まで覚えるくらいの時間が経っても、僕はまだロビーで放っておかれたままだった。まぁ、東南アジアではよくあることなので、腹は立たなかった。

ところで、「過去のU-16日本代表がその後、何度も日本代表に選ばれる割合はどれほどだろうか」と疑問に感じ、調べてみたところ、各年20数名の代表選手のうち、現役で活躍している選手は約1人であることが分かった。確かに16歳の段階では身体の発達に差があるし、試合で活躍できるかは運の要素も絡む。コーチとの相性やケガの問題もあるだろう。

そうは言っても、16歳の時点で日本代表に選ばれるだけのポテンシャルを持つ選手のうち、その数%しか将来も活躍できる選手がいない、という事実には驚いた。実際、長谷部、本田、岡崎、長友……など、この10年で活躍している選手たちの多くは、16歳時点ではそこまで期待されていなかった選手ばかりだ。

ではなぜ、そういった選手が後に日の目を浴びられたかというと、それは彼らにも「チャンス」を与えられていたからだろう。日本サッカー協会は、16歳時点で選抜したトップ選手だけに集中投資するだけではなく、同年代の他の有望選手にもしっかりとチャンスを与え続けられるような仕組みをつくれたのだと思う。

際立って目立つ選手だけではなく、将来の伸びしろがありえる選手にも、最低限のチャンスは回ってくることで、未来のトップ選手の育成が図れる。そうやって日本サッカー協会はこれまで、世界に通用するような選手を輩出してきた。

「科学技術に投資せよ」ではなく、予算配分の再考を

前置きが長くなってしまったが、ここから本題に入りたい。

先日、京都大学特別教授の本庶佑先生がノーベル賞を受賞したというニュースが流れた。「自分がバイオテクノロジー業界で働く人間だから」というのは関係なく、本庶先生と周りのチームの方々の長年にわたる科学に対する貢献が認められたこと、その事実に接した関係者の気持ちを想像すると、とても嬉しい気持ちになった。

ノーベル賞メダル(レプリカ)

 

近年、日本人のノーベル賞受賞が続いている。彼らのような日本の科学業界の仕組みをよくわかった方々は、これまで数多くのご苦労をされてきたことだろう。しかし、1つ残念なこともある。能力はもちろん、人格的にも優れたそういった先生方が、ノーベル賞受賞のタイミングでマスコミに発表する一世一代のコメントが「日本国の科学技術投資、科学技術教育のあり方についての憂い」であることだ。

僭越ながら、先生たちのコメントを解釈すると、よくニュースで取り上げられるような「科学技術にもっとお金を使え」ということではなく、その先にある「国家予算の配分」についての指摘をしていると認識している。

誰がなんと言おうと、日本の科学技術投資の選択と集中は年々進んでしまっているのが現状だ。しかし、先生方のいうような「選択と集中が進みすぎている」という指摘に対して、「日本にはもうお金がないのだから科学技術にばかり投資できない」と答えがずれてしまっている。

これこそが、日本の科学技術投資における問題ではないだろうか。

日本にはびこる「選択と集中こそが正解だよ病」

随分前からずっと不思議なのだが、そもそも「選択と集中こそが正解である」なんて、誰がいい出したのだろう。「選択と集中」の戦略で物事をうまく切り抜けられるようなことは、本当に生きるか死ぬか、背水の陣を敷いている時くらいだと思うのだ。

今の日本の「選択と集中こそが正解だよ病」はなかなか根深く、そもそもの目的を実現することよりも「選択と集中」を行うことそのものが目的になっているんじゃないかと感じることが多い。

今の日本で行われている多くの意思決定の場面で、サッカーの例で例えると、U-16日本代表を選んだ人のメンツを潰さないということが、強い日本代表をつくることよりも優先されてしまっているように思う。

そのため、16歳の時点で選んだ選手だけに集中投資し、16歳の段階で選ばれなかった他の選手のポテンシャルに賭けることもしないというような「選択と集中が正解である」という間違えた進め方で意思決定が行われているようなことが多いように感じる。

サッカー選手の育成でも、科学技術の投資でも初期の段階で選抜してそこだけに集中投資するという戦略を繰り返せば繰り返すほど、全体としての力は落ちる一方になるのではないか。歴代のノーベル賞受賞者の先生方も、そういうことを言いたかったのではないかと思う。

手段であるはずの「選択と集中」が、目的となっている?

私は、「16歳の段階で、将来素晴らしいサッカー選手になる人物を見分けられる」なんて言葉は、伸びしろのある選手に対しておこがましいと感じる。これは科学技術の研究にも同じことが言える。「その研究が将来素晴らしい成果を残すかどうか見分けられる」なんて言葉は、科学者に対しておこがましい。

もっと言ってしまえば、どの研究が将来化けるかの判断は、16歳のサッカー選手の成長を言い当てることより遥かに難しいだろう。なぜならば、サッカーという競技のルール自体は変わらないが、科学と言う競技はルール自体を決めているので、科学研究の将来性をあらかじめ予測するのは16歳のサッカー選手の将来性を予測するより難しいためだ。

そんな中、日本サッカー協会が幅広い底上げに力を入れ、紆余曲折も有りながらも右肩上がりの成長を維持できているにも関わらず、日本の科学技術投資は過剰な「選択と集中」を強めるが故に、科学技術力の相対的な低下を招いているように感じる。

その差はいったい何か? これは1つの仮説でしかないが、日本サッカー協会の強さの秘訣は、会長の独断で物事を決められる側面が強い組織であるために「目的」がハッキリしている点にあるのではないだろうか。

その一方で、日本の科学技術投資のような“数多くの人の善意の組み合わせの上になり立っている意思決定機構”では「選択と集中を進めることが正解である」という、本来手段の一つである価値観が「目的」となってしまっているように感じる。

本来考えるべきは、「日本の科学技術をどうするべきか」ということであるにも関わらず、その手段と目的が逆転しまっているのではないだろうか、と思うのだ。

音楽特化の「YouTube」が日本上陸! AIでレコメンド

音楽特化の「YouTube」が日本上陸! AIでレコメンド

2018.11.14

音楽に特化した「YouTube Music」が日本でスタート

有料会員になれば、広告なし再生やオフライン再生が可能

YouTube Premiumでは、オリジナルコンテンツの配信も開始

仕事や作業をする際、周りのノイズをカットして集中するために、音楽を聴くという人は多いだろう。わかる。よくわかる。フロアが騒がしいと作業に全く集中できない。周りで仕事している人がいるということがわからないのだろうか、と疑問に思うが、まぁそれは置いておいて、パソコンで作業する場合、手軽に好きな音楽を聴けることから、YouTubeで音楽を聴くという人も多いのではないだろうか。

そんなYouTubeユーザーに朗報である。11月14日、Googleは音楽に特化したストリーミング再生サービス「YouTube Music」を日本でローンチすると発表したのだ。

好みやシーンに応じて楽曲をレコメンド

YouTube Musicは、音楽再生に特化したアプリ。YouTubeにある公式の曲やプレイリスト、歌ってみた、弾いてみたなど、さまざまな音楽動画を視聴することができる。

また、機械学習が活用されているのも特徴の1つだ。視聴履歴などからユーザーの好みを把握するだけでなく、「いつどこで何をしているのか」を類推して、シーンに合わせた楽曲をレコメンド。家でリラックスしているときにお勧めの曲や、仕事中にお勧めの曲などを、自動でピックアップしてくれるという。

さらに、あいまいなカタカナ発音で洋楽を検索したり、CMタイアップ曲などから検索したりすることも可能で、聴きたい曲をスムーズに探すことができそうだ。

サービスの発表会において、YouTube 音楽部門 プロダクトマネージメント責任者のT.ジェイ ファウラ氏は「オーディエンスに着目した結果、今出ているアプリでは満足できていない層があることがわかり、そのユーザーに音楽サービスを届けようとこのサービスをスタートしました。YouTube Musicは、ユーザーの利用シーンや好みに合わせた曲を、YouTubeにある膨大なミュージックカタログからレコメンドするユニークさを持っています」と、サービスの魅力を強調した。

YouTube 音楽部門 プロダクトマネージメント責任者のT.ジェイ ファウラ氏

無料でも利用できるが、有料のYouTube Music Premiumに登録すると、「広告なし再生」「バックグラウンド再生」「オフライン再生」などが可能になる。料金はWeb/Androidが月額980円で、iOSが月額1280円(ともに税込み)だ。

YouTube 日本音楽ビジネス開発統括担当の鬼頭武也氏は「日本ユーザーの方は通勤通学などで音楽を聴くことが多いと思います。オフライン再生機能では、前日の夜に自宅のWi-Fiで翌日聴くべき曲を自動で更新し、通信なしで聴けるようになります。データの通信量などを気にする必要もないので、非常に便利な機能だと思います」と、オフライン再生のメリットを訴求した。

なお、同サービスには著作権管理システムが働いており、YouTubeと同様に適切な権利コントロールが可能だという。

YouTube 日本音楽ビジネス開発統括担当の鬼頭武也氏

「YouTube Originals」が日本でも始動

また今回、「YouTube Premium」という新しい有料プランもスタートする。料金はWeb/Androidだと月額1180円で、iOSだと月額1550円(ともに税込み)だ。YouTube Music Premiumの機能に加えて、YouTubeでも「広告なし再生」「バックグラウンド再生」「オフライン再生」機能が使えるようになる。

さらに、YouTube Premiumの会員は、12月から日本でも配信される予定のYouTubeオリジナルコンテンツ「YouTube Originals」を視聴することも可能だ。すでに世界30カ国でコンテンツを展開しているが、このたび、日本でも制作がスタート。SEKAI NO OWARIとMARVLEがコラボしたミュージックビデオ制作の裏側に迫るドキュメンタリー「Re:IMAGINE」、YouTuberのはじめしゃちょーが主演する連続ドラマ「The Fake Show」、YouTubeで人気のクリエイターが手がけた「隙間男:Stalking Vampire」の3つだ。

「YouTube Music Premium」と「YouTube Premium」で利用可能な機能
日本で制作される「YouTube Originals」のコンテンツ

発表会には「The Fake Show」に主演する、YouTuberのはじめしゃちょーが駆けつけた。

はじめしゃちょー

「今回僕が出演するのは、今までなかったYouTuberをテーマにしたドラマ。アカウント乗っ取りや炎上など、問題に直面しながらも夢に向かって進んでいく姿が描かれているので、僕の動画を見たことない人にも見てほしいですね」と動画の紹介をするとともに、YouTube Musicについて「普段、広く浅く、さまざまな音楽を聴くので、非常に楽しみなサービスです。ぜひ使ってみたいと思います」と期待を述べた。

なお、YouTube Musicは「Google Home」「Google Home Mini」にも対応予定。そのほか、現在「Google Play Music」を利用しているユーザーは、追加料金なしで移行することができるという。