増える電気自動車、使用済みバッテリーはどこへ向かうのか(後編)

増える電気自動車、使用済みバッテリーはどこへ向かうのか(後編)

2018.04.27

電気自動車で使用済みとなったバッテリーをどうするのか。その問題に取り組むフォーアールエナジーの牧野英治社長は、再利用への道筋を確固たるものにすべく、メーカーの壁を越えた協業も可能との考えを示す。同氏へのインタビューの後編をお伝えする(前編はこちら)。

浪江町が最適な立地だった理由

福島県浪江町に開所した新工場「浪江事業所」は、フォーアールエナジーにとって最適な機会として実現した。およそ1年半前の2016年8月に、フォーアールエナジーと日産自動車は浪江町の馬場有(たもつ)町長の訪問を受ける。その際、馬場町長から、半年後には避難指示が解除となる予定であることから、住民が戻ることも見据えた新しい街づくりを進めたいので、EV導入と再生エネルギーの活用を支援して欲しいとの依頼を受けたのだ。

2018年3月に開所した浪江事業所(画像提供:フォーアールエナジー)

「EVの普及と、再生エネルギー活用のためEVで使用済みとなったリチウムイオンバッテリーを事業化することは、まさに弊社設立の根幹となる構想です。その上で、浪江町での工場建設には補助金が出て、また日産のいわき工場が近いため、1パック300キロ近いバッテリーの輸送において、物流の便もよい立地です。さらに、事業所を開所できれば地元の雇用に貢献することができます。将来的にEVやPHVの普及が進めば事業拡大の可能性もあり、雇用を増やすこともできるでしょう」(以下、発言は牧野氏)

「浪江町が推進するスマートコミュニティへも、日産と住友商事でEV分科会を作り、EV普及への取り組みを始めています。さらには、町のイベントにも協力していきたいと考えています」

福島から世界へ! 新しい外灯の設置も開始

事業所の開設とともに始めたのが「THE REBORN LIGHT」の設置だ。これは、フォーアールエナジーの中古リチウムイオンバッテリーと太陽光発電、LEDライトを組み合わせることで、完全に系統電力から独立した外灯を浪江町に設置するという、日産との共同プロジェクトだ。

「THE REBORN LIGHT」(画像提供:日産自動車)

「浪江町では学校が再開された一方で、スーパーマーケットがなかったり、外灯がなく暗くて不安だったりとの声が母親から聞かれました。その一端に答えることのできるプロジェクトです。同時に、これは浪江町に限ったことではなく、世界中にはまだ12~15億人ともいわれる無電化地域の人々がいて、そうした地域では疾病率が高かったり、学習が十分でなかったりしますので、そうした地域へ明かりを届けたいという最終形への第一歩の取り組みなのです」

「ビジネスという利益追求だけでなく、社会貢献の面で、まずは浪江町の街づくりに全面的に協力していきたいと思っています」

EVの普及は、単に環境エネルギー問題を解決するだけではなく、広く社会貢献や福祉にもつながる事業だ。自動車メーカーであることから一歩を踏み出した日産だからこそ、こうした展開が生まれるのではないだろうか。

電気自動車を「移動できるバッテリー」に

日産という1社の利益追求にとどまらないとの意識は、フォーアールエナジーの今後の事業展開にも精神的な柱として重要なものとなっている。1つは「バーチャルパワープラント」(VPP)という電力需給の構想だ。

「初代リーフが発売された当初は、まだそこまでの意識はなかったのではないかと思います。しかし、東日本大震災を経験し、復旧に際して電力が最も早く回復しましたが、それでも復旧までの数日間、EVなら大容量のリチウムイオンバッテリーを搭載しているので、その電力を使えば家に明かりを灯すことができます。そこで、ニチコンと協力しながら、『LEAF to Home』という給電システムを急いで開発し、震災の翌年に販売に漕ぎ着けました」

東日本大震災を機に開発を急いだ「LEAF to Home」(画像提供:日産自動車)

開発から販売までの早さは当時、誰もが驚いたほどだった。初代リーフの所有者の中にも、「LEAF to Home」を購入し、将来の災害に備えた人々がいる。大災害とまではいかなくとも、異常気象などで停電することが珍しくなくなっている今日である。

「『LEAF to Home』がVPP構想の基本となっています。日常的な利用においてクルマは、1日の9割近くを駐車場で止まったまま過ごすとの調査結果もあります。EVであれば駐車しているときでも、『移動できるバッテリー』として役立てることができます。EVを活用したVPPについては、国がルール作りをしています。日産だけでなく、どの自動車メーカーも反対はないはずです」

「手始めは『ネガワット取引』といって、EVに充電した電力を家庭で使うことによりピーク時の電力需要を抑え、社会全体での電力消費量を減らす取り組みです。次は『ポジワット取引』で、EVの電力を系統へ戻すことにより他の電力需要に回し、やはり社会全体での電力使用量を減らす取り組みがあります」

EVを組み込んだVPP構想について語るフォーアールエナジーの牧野社長

EVをビッグデータ化することで開けるVPP実現への道

ことにポジワット取引では、電力供給をしていたEVが、クルマとして利用される際に走行可能な電力を確保しておかなければならない。それでなければ、何のためのEVか分からなくなってしまう。これの実現には、それぞれのEVが、日常的にどのような走行距離で使われているかなど、ビッグデータの蓄積とその検証が不可欠だ。

容易ではないかもしれないが、情報通信の時代には、有効活用するに値するエネルギー運用策といえる。日産の試算によれば、EVが普及してもVPPの活用により電力を無駄なく管理・運用できれば、社会全体の電力消費を増やすことなく、かえって減らせる可能性もあるとのことだ。

社会全体での電力運用への貢献は、これまでのハイブリッド車(HV)やエンジン車では不可能な領域だ。火力発電をもとにした電力を使っているうちは、エンジンを高効率で使う場合とCO2排出量の差は少ないとの見解もあるが、それは狭義の省エネルギーの視点でしかない。

使用済みバッテリーをいかに集めるか

中古リチウムイオンバッテリー事業の今後について、普及が進むEVやプラグインハイブリッド車(PHV)から使用済みバッテリーを回収するという根幹を、いかにうまく運用できるかも忘れてはならない課題である。

「国内の自動車販売は、売り切りとリースなどの割賦販売があります。ことに売り切りの場合、EVの所有権はお客様となるため、その後の行方が分かりにくくなる可能性があります。もちろん、販売店が情報をつかんで回収するのが一番ですが、廃車や解体などへ持ち込まれた場合には、リチウムイオンバッテリーの処理に費用が掛かるところを逆手にとって、日産が若干の費用で買い取ることで回収を進めています。リースなど割賦販売では、ファイナンス会社が所有権を保持しますので、回収しやすいといえます」

「北米ではリース販売が多いので、回収しやすいでしょう。欧州は日本と同様ですので、同じやり方で回収します」

「さらに将来的には、他の自動車メーカーの使用済みバッテリーの回収も、例えば遠隔地で1つだけ回収するとなるとトラックの運送費が高くつきますから、メーカーの枠を越えた共同での運搬・回収といった協議も必要になるのではないでしょうか」

さまざまな地域でさまざまな売り方をされるEV。その使用済みバッテリーをいかに効率的に集めるかも思案のしどころだ(画像は日産「リーフ」)

メーカーの違いを超えた協業も視野

現在、日産がEVやHVなどで使用しているリチウムイオンバッテリーにも、銘柄の違いがある。あるいは他の自動車メーカーのリチウムイオンバッテリーも、フォーアールエナジーで再利用することは可能なのだろうか。

「浪江事業所の発表後、多くの企業に関心を持って頂いています。これからは他の自動車メーカーが作ったEVの使用済みリチウムイオンバッテリーをどうするかという話も出てくるでしょう。その際、バッテリー情報を開示していただければ、検査して品質を見極め、レベル分けをして再利用につなげることは弊社でできます。また、競合であるために情報開示ができない場合でも、性能測定方法を教えていただければ、それを基にレベルを分けることもできると思います」

「回収バッテリーの運搬や性能・品質によるグループ分けなど、競合他社と協調できる領域はあると思いますし、各社が弊社でやってきたことを新たに始めるとなれば、それは大変な労力と時間を要しますから、協力していけるのではないかと考えています」

「その上で、リチウムイオンバッテリーで使われる貴重な金属はすでに高騰しはじめています。また法規制において、たとえば中国では、販売したEVやPHVの使用済みリチウムイオンバッテリーはメーカーが回収すべきとなっています。それを、各自動車メーカーが個別にやっていたのでは大変です。そうした情勢からも、EVで使用済みとなったリチウムイオンバッテリーは再利用すべきであり、その運用面で各メーカーが協調することはできると考えます」

牧野氏が先駆者としての知見をいかし、メーカーの壁を越えた協調を目指す姿勢には、EVの充電器設置のため、経済産業省が補助金制度を実施した際、補助金で賄いきれない分を自動車メーカー4社(トヨタ、日産、ホンダ、三菱)で協力し、補助する制度に主要メンバーとして参画した過去の経験も生きているはずだ。

「何より、北米駐在の頃からEVに乗り、EVを普及させたいという個人的な気持ちが強いからではないでしょうか。その実現のためには、大同団結でも何でもする。ことに海外とのやりとりでは、“日本丸”として動くことも大切ではないでしょうか。もちろん、弊社が動くときには、日産や住友商事に許可を得る必要がありますが」

牧野氏は、ことを動かすことのできる人物である。その源は情熱の一言に尽きる。彼のやってきたことを振り返れば、いまさら言葉にする必要もないだろう。そういう人物が、未来を動かしていくのである。

マーケティングと恋愛が似てるってどういうコト?Facebookで聞いてきた

恋するSNSマーケティング講座 第1回

マーケティングと恋愛が似てるってどういうコト?Facebookで聞いてきた

2018.11.14

Facebook社員に「マーケティングのイロハ」を聞く新連載!

第1回は、講師の紹介と「マーケティングと恋愛」の関係性について

フェイスブック ジャパンのSNS運用コンサルタントに「SNSマーケティング」について聞く短期連載。初心者~中級者に知ってほしい「マーケティングの考え方」について、全5回にわたって説明します。

キーワードは「恋愛」。とっつきづらいマーケティングも、恋愛に喩えて考えてみると、意外とわかりやすいようです。

「恋愛とマーケティングは似ていると思うんです」

FacebookやInstagram、TwitterなどのSNSを活用したマーケティングは今や企業にとって欠かせないものになっている。

一方で、「どこから始めればいいのかわからない」「そもそもSNSマーケティングって?」といった疑問もまだまだあるだろう。そこで今回は、フェイスブック ジャパンのクライアントソリューションズマネージャ リードを務める丸山祐子さんを講師に迎え、SNSマーケティングを“恋愛”に喩えてわかりやすく解説してもらうことにした。

フェイスブック ジャパンのクライアントソリューションズマネージャ リード 丸山祐子さん

なぜ“恋愛”なのか。それは「日々のお客様とのやりとりの中で、恋愛とマーケティングは似ていると感じることが多かったから」と丸山さんは言う。

丸山さん自身も現在婚活中の身。これまで仕事最優先で生きてきたが、最近になってパートナーを探すべく婚活を開始したという。その過程で感じたのが、前述の恋愛とマーケティングの共通点だったというわけだ。

「流行」は人の手でつくられるモノ

今回は連載初回ということもあるので、まずは講師である丸山さんの経歴から紹介しよう。

東京で生まれ育った丸山さんは、中高大一貫校に通っていた。小学生時代から「自分の知らない世界に行ってみたかった」という丸山さんは、高校時代に初海外となるカナダを訪れる。

「知らない言語で話しかけられたり、東京では見られない地平線や水平線を見たりして、私の知っている世界はなんて狭いんだろうと思いました」(丸山)

海外に魅了された丸山さんは、一念発起してカリフォルニアの大学に進学。そのころ、「ファッションの流行は自然に生まれるのではなく、必ず裏には仕掛人がいる」ということを実感したのがキッカケとなり、「自分も人の心を動かす仕事がしたい」と考えるようになった。

大学卒業後は日本に戻り、人材業界で働くことに。長くアメリカで過ごしていたこともあり、日本の業界事情がつかめない中、「まずはいろいろな業界を知りたい」と考えたためだ。

その後、「リーマンショック」が起こり人材業界の業績が悪化したこともあり、業務を通して興味を持つようになったデジタル業界への転職を決意。転職先は、IT業界を中心にメディアプランニングなどを行う電通の子会社。メディア担当として、デジタル広告のイロハを学んだ。

そこで担当していたクライアントが、当時日本に上陸したばかりのFacebookだった。その後、それまで培ったデジタル広告のノウハウをより活かすべく、フェイスブック ジャパンへ転職し、現在に至る。

広告はラブレター「相手に届かないと意味がないんです」

丸山さんは現在、FacebookやInstagramの広告メニューについて、運用コンサルやメディアプランニングなどを行っている。また、Instagramをより企業に活用してもらうためのプロジェクトメンバーとしても活動しているそうだ。

さて、そんな丸山さんがFacebookのコンサル業務を通して常々感じていたのが「恋愛とマーケティングの共通点」である。

どんな業界でもそうだが、良い製品だからといって何もせずに売れるわけではない。“届けたいメッセージを届けたい相手にちゃんと伝える”必要がある。これがマーケティングの目的だ。

「広告はよくラブレターに例えられます。いくらラブレターを書いても、それがちゃんと届けたい人に、その人の心に響くかたちで届かないと意味がありませんよね。ラブレターを届けるために恋愛にもマーケティングが必要なんです」(丸山)

婚活において“ラブレターを届けるべき相手”とは、まだ見ぬ将来のパートナーだ。その相手はどこかに存在しているはずだが、まだ出会ってはいない状態である。運命の相手と出会うために重要なことの1つは「とにかく出会いの数を増やすこと」だという。

「1人と会ってみて、その人が運命の相手ならラッキーですし、そういうケースもあるでしょう。でも、そうでない場合には、たとえば運命の相手と出会える確率が1/100だとして、10人と会うのと100人と会うのではどちらの方が出会える確率が高いか、言うまでもありません」(丸山)

これはそのままマーケティングに置き換えても同じことが言える。自社の製品を購入してくれる潜在的な顧客の態度変容効果が一緒であるなら、できるだけ多くの人数に広告を届けた方が売上は伸びるはずだ。

「そう考えると、婚活でもせっかくの週末に部屋にこもっているのはもったいないなと思いますよね。積極的に行動をおこして、多くの人に出会う機会を増やすことが大事なんです」(丸山)

一方で、重要なのは数だけではないと丸山さんは言う。多くの人にリーチすることは大前提として、そこからさらに“出会いの効率”を上げていく必要があるのだ。

では「数」に続いて大事なこととは? 次回は効率を上げるために必要な「ターゲティング」について、これまた恋愛と絡めて聞いていく。

第2回「恋するSNS講座」は11月20日に掲載予定です。

クルマ新時代の駐車場は何を目指す? 「CASE」で見えてきた未来像

クルマ新時代の駐車場は何を目指す? 「CASE」で見えてきた未来像

2018.11.14

日本自動車研究所が「自動バレーパーキング」の実証実験

駐車をシステム任せにできる仕組みとは?

未来の駐車場はクルマの“ハブ”になる

自動運転、電動化、カーシェアリングなど、新たな技術・サービスの登場により変革期を迎える自動車業界。クルマの乗り方、使い方を根本的に変えるかもしれないこれらの要素をまとめて「CASE」というが、この文字を目にする機会も増えてきた。クルマが変わればクルマに関連するモノや場所も変わりそうだが、例えば駐車場は、どのような姿になっていくのだろうか。日本自動車研究所(JARI)の実証実験で、その一端を垣間見た。

「CASE」の進展で駐車場の姿も一変する?

「バレーパーキング」を自動化

「CASE」とは「Connected」(コネクティッドカー)、「Autonomous」(自動運転)、「Shared & Service」(カーシェアリングなど)、「Electric Drive」(クルマの電動化)という4つの言葉の頭文字をとってダイムラーが使い始めた概念のこと。そのうち、コネクトと自動化の2つを使って、JARIが実用化の道を探っているのが「自動バレーパーキング」というシステムだ。

JARIは経済産業省および国土交通省の委託を受け、2016年度から「一般車両による自動バレーパーキングシステムの社会実装に向けた実証」というプロジェクトを進めている。「バレーパーキング」とは、例えばホテルやショッピングセンターなどにクルマで乗りつけたとき、キーを従業員に預けて、代わりにクルマを駐車しておいてもらうサービスのこと。その自動化に向けて、JARIはシステム、制度、事業性などを検証してきた。

JARIは今回、自動バレーパーキングシステムの機能的な確認を行うためとして、東京都港区にある「デックス東京ビーチ」の駐車場で実証実験を実施。その模様を報道陣に公開した。そこではクルマが勝手に動き、定められた駐車スペースに止まり、再び動き出す様子を見ることができたし、自動バレーパーキングを含めた駐車場の未来像に関する話も聞くことができた。

JARIはデックス東京ビーチ駐車場の2階で実証実験を実施した

自動バレーパーキングとはどんなシステムなのか

自動バレーパーキングをドライバー目線で説明するのは簡単だ。例えばショッピングセンターのエントランスにクルマで乗りつけたならば、降車してスマートフォンのアプリで「入庫」を指示し、そのまま買い物にでも食事にでも向かえばいい。用事が済んだ頃に「出庫」ボタンを押して出口に向かえば、クルマ寄せには愛車が迎えに来ている。

自動バレーパーキングの指示はスマホで行う

では、そのシステムはどのようなものなのか。自動バレーパーキングは「クルマ」「管制センター」「駐車場」の3者による協調で機能する。駐車場の構造を把握している「管制センター」は、ドライバーから入庫の要請を受けると、安全性や効率を考慮して駐車場所とそこへ向かう経路を決め、「クルマ」に無線で指示する。「クルマ」は「駐車場」にあるランドマーク(目印)をカメラやセンサーなどで読み取り、「管制センター」が持つ駐車場の構造情報(地図)と擦りあわせて自らの位置と経路を確認し、指示された駐車スペースに向かう。そんな流れだ。

自動バレーパーキングの様子。運転席に人は乗っているが、ハンドルからは手を離している

同システムが実用化となれば、駐車場の「利用者」は手間を省けるし、「事業者」は駐車効率の向上を図れる。無人で自動運転を行うクルマであれば、ドアの開閉スペースは不要だし、ぶつけたりこすったりする心配もないはずなので、クルマをギュウギュウに詰め込めるからだ。JARIによれば、駐車効率は従来比で20%向上する可能性があるという。また、自動車事故の3割は駐車場で発生しているので、自動化は事故削減にもつながる。

ただ、実用化には当然ながら、いろんなハードルがある。自動バレーパーキングの実用化に向けて動いているのは日本だけではないが、JARIとしてはまず、同システムの国際標準化に向けた手続きを進めたい考え。2021年のISO国際標準化に向け、各国と協議を重ねているところだ。

また、システムが実用化となったとしても、最初から全てのクルマが自動バレーパーキングを利用できるわけではない。まず、通信機能が備わっていないクルマはアウトだし、通信できたとしても、管制センターの指示通りに自動運転をこなせるクルマでなければ、やはり同システムの恩恵は受けられない。

JARIの考えでは、まずは同システムが求める要件を満たすクルマだけが使える専用の駐車場を実用化し、段階的に「混在型」を目指すのが現実的だそう。ただし、混在型を実現するためには、人が運転するクルマと自動運転のクルマを駐車場内でうまく交通整理する工夫が必要になるだろう。

未来の駐車場はクルマの「ハブ」になる?

自動バレーパーキングの実用化には時間が掛かりそうな雰囲気だが、その先の駐車場の在り方についてもJARIは考えをめぐらせている。JARIのITS研究部に所属する深澤竜三さんによると、未来の駐車場が目指すのはクルマのハブ、つまり、クルマにまつわるさまざまなサービスの結節点だ。

JARIが描く未来の駐車場の姿

ハブ駐車場とはどのような施設なのか。深沢さんの描写はこんな具合だ。

「自動バレーパーキングで、勝手に駐車しておいてくれるのはもちろんですが、そこが自動車整備の拠点としての役目を果たしたり、電気自動車(EV)であれば、勝手に充電しておいてくれるとか。買い物が終わる頃には充電が済んでいるというのが理想ですね。あとは、観光地であれば情報配信拠点としての機能も想定できます」

「ほかのアイデアとしては、クルマを駐車しておいたら、宅配便がトランクに届いている、といったような使い方も考えられます。その場合は、トランクを開けられるような仕組みが必要にはなりますが、届け先を1件ずつ回る必要がなくなるので、配送業者の方も楽ですよね」

未来の駐車場は、クルマにまつわるいろんな機能を提供する拠点になるかもしれない

深澤さんの話を聞いていると、おそらくハブ駐車場はホテルに1つ、ショッピングセンターに1つという具合にではなく、地域に1つ、しかも大型の施設として存在するもののように想像できた。用事で近くまで来た人も使えば近隣の住人も使うし、カーシェアやレンタカーなどのクルマも混在している大きな駐車場。そんなイメージだ。

こういう駐車場が必要かどうかについては、地域によって状況が違うだろう。コンビニエンスストアですら広大な駐車場を備える地域がある一方で、例えば銀座のように、数台しか止められないけれど、短時間で驚くべき値段になるコインパーキングが稼動している場所もある。おそらく、ハブ駐車場が必要になるのは後者の方だ。

銀座に大きなハブ駐車場を作る余地があるかどうかは別としても、クルマの駐車以外には使いみちがないという点で「デッドスペース」化している駐車場に、さまざまな機能を持たせるというJARIの構想には可能性を感じた。一般道の自動運転も実用化となれば、例えば東京オリンピックの後、有明かどこかに残された広いスペース(会場の跡地)に大きなハブ駐車場を作り、そこと銀座などの繁華街を結ぶということも、夢のようではあるが不可能ではないはずだ。