独自路線で50年、三菱「デリカ」はモデルチェンジでどう変わる?

独自路線で50年、三菱「デリカ」はモデルチェンジでどう変わる?

2018.04.29

街を歩いていると多くのミニバンを見かけるが、一目で車名が分かるクルマといえば三菱自動車工業の「デリカ」だ。現行「デリカ D:5」も含め独特の立ち位置を占めるミニバンで、視界の広さや走破性など、SUVで語られるような強みを取り入れたミニバンであることは、その姿かたちが物語っている。

50年の歴史を経た「デリカ」は今年、6代目へのフルモデルチェンジを控える。次のモデルでは独自路線を堅持するのか、ミニバンのトレンドを取り入れたイメージチェンジを図るのか。商品企画の担当者に聞いてみた。

三菱自動車は「デリカ」50年の歩みに関する説明会を開催。左が初代「デリカ バン」、右が5代目となる現行「デリカ D:5」だ

走りにこだわるミニバンの歴史

「デリカ」は1968年にトラックとして生まれたクルマで、「デリバリーカー」から名づけられた車名の通り、高度経済成長期の物流に力を発揮した。そのトラックにバン、コーチが追加となったのが今のデリカにつながる流れであり、2代目の「デリカ スターワゴン」からワンボックス乗用車としての歩みをスタートさせた。

1969年に発売となった初代「デリカ バン」(画像は1972年式)

1979年に発売となった2代目「スターワゴン」は、1982年にワンボックスワゴンとして日本で初めて四輪駆動を採用した。当時はアウトドアブームの夜明け前といったような時期であり、その潮流を捉えたSUV「パジェロ」と共に、スターワゴンの4WDは順調に販売台数を伸ばしたという。また、4WDによる走行性能、特にオフロード性能の追求は、その後のデリカでも伝統となっている。

この2代目「デリカ スターワゴン」は現役オーナーから借りて展示した30年選手とのこと。全くもってシブい色だ

3代目「スターワゴン」、4代目「スペースギア」を経たデリカは現在、5代目「D:5」の誕生から10年強が経過したところ。今年は久々のフルモデルチェンジを予定する。

今でも月間1,000台強がコンスタントに売れるというデリカには、次期モデルの方向性が気になっている固有ファンも多そう。今回の説明会では、「D:5」のチーフプロダクトスペシャリスト(商品企画担当)で次期デリカも担当するという大谷洋二氏に話を聞くことができたので、そのあたりについても質問してみた。

市場のニーズにどこまで対応すべきか

まず気になるのは、デリカの個性が今後、どうなるかだ。トレンドを踏まえるのか、唯一無二であり続けるのか。この問いに大谷氏は、「どこまで答えていいか分からないが、基本的に、デリカの本拠地は四駆のSUVとしての性能を持ったミニバンだと思っている。この方向性での進化がベースとなる。ただ、ワンボックスミニバンではスペース、ユーティリティーが求められており、特に国内はそういう傾向なので、そちらにも欲を出して考えたい。ちょっと都合のいい解釈だが」と答えた。

さらに大谷氏は、パフォーマンス(走行性能)を維持するのが本筋と断った上で、「今のワンボックスは見た目がゴージャスで、そういう方向もトレンドとしてはあると思っている。インテリアも、より上質・高級なものが好まれているようなので、そちらも見ていかなければならない。(デリカが)孤高の存在というと聞こえはいいが、それだと、悪い意味では人がいない(市場のニーズからは外れる)というか、限定的なものになってしまう」と続けた。

左が3代目「デリカ スターワゴン」、右が4代目「デリカ スペースギア」

確かにミニバンの世界では、ゴージャスというか、うっかりすると「いかつい」と形容してみたくなるようなデザインが流行している。そんな状況だからこそ「デリカ」の独自性が際立っているとも思うのだが、大谷氏はトレンド(市場のニーズ)にも気を配りたいとの考えのようだ。

3列シートSUVに勢い、「デリカ」の市場環境は

次に聞いたのは市場環境についてだ。例えばマツダ「CX-8」のように、最近は、SUVながら3列シートが選べて、多人数乗車のニーズを満たしつつ、走りも楽しめることを売りするクルマが充実してきている。こういうSUVはミニバン市場を脅かす存在にも見えるが、この流れはデリカにとってプラスなのか、マイナスなのか。

「プラスだと思っている」。大谷氏は即答した上で、マツダ「CX-8」がディーゼルエンジンを搭載していることに触れつつ、「欧州でディーゼルの評価は下降気味だが、国内はマツダさんのおかげもあり、ディーゼルのボリュームが伸びている。我々もディーゼル中心でやっているので、刺激になっている」とした。つまり、ディーゼルの選択肢があって、大勢で乗れて、走りもいいクルマが求められているのが、今の市場環境であるとの認識のようだ。

次の「デリカ」はどんなクルマになるのか

これらの話を踏まえると、今年中に登場予定の次期デリカにとって、市場環境は悪くなさそうだ。クルマとしては、走行性能へのこだわりを堅持するのは間違いないようだが、外装・内装にトレンドをいかに反映させるかには注目したい。スペース重視の客層に向けては、車内の使い方、シートアレンジなどで何か工夫があるかもしれない。

ただし大谷氏は、「『これがデリカかよ』といわれるようなものになってはいけない」し、「『デリカでなければ』というところ、それを求めるお客様が多いので、その期待には応えなければ」とも明言していたので、少なくとも、突拍子もない格好のデリカが誕生する可能性は低いと見てよさそうだ。

「Z900RS」だけが原因? レトロデザインのバイクが増えている理由

「Z900RS」だけが原因? レトロデザインのバイクが増えている理由

2018.04.28

1960~70年代のデザインを今に蘇らせたような姿のバイクが、新型車として登場することが目立ってきた。なぜこうしたバイクが増えてきたのだろうか。この傾向はすべてのクラスについて言えることなのか。販売台数やユーザー層のデータを見ながら考えた。

なぜレトロなデザインのバイクが増えているのだろうか(画像はカワサキ「Z900RS CAFE」)

ガラリと変わった小型二輪の販売状況

全日本軽自動車協会連合会(全軽自協)が発表している二輪車の月別販売台数で、去年の暮れから数字が激変している。

我が国の二輪車は、50cc以下が原付一種、51~125ccが原付二種、126~250ccが軽二輪、251cc以上が小型二輪に分かれており、運転免許は原付一種が原付、原付二種は普通二輪小型限定、126~400ccが普通二輪、401cc以上が大型二輪になっている。微妙な違いがあるのは、免許は道路交通法、登録は道路運送車両法と異なる法律でルールが決まっているためだ。

前述の全軽自協が統計を取っているのは、このうち軽二輪と小型二輪だ。後者で昨年12月以降、状況がガラッと変わった。日本には本田技研工業(ホンダ)、ヤマハ発動機、スズキ、川崎重工業(カワサキ)の4メーカーがあり、このクラスではホンダが1位になることが多い。ところが昨年12月以降は、カワサキがトップをキープしている。

カワサキの人気上昇を牽引する「Z900RS」

最も驚くのは前年同月比の数字で、昨年12月以降、カワサキの伸び率は軒並み200%を超えている。つまり、昨年の倍以上を売っているのだ。おかげで2017年度は、小型二輪全体でもこの5年間で最高の販売台数を記録した。伸び率のトップはもちろんカワサキで136%をマークした。

なぜここまで変わったのか。かつての名車「Z1」を彷彿とさせるカワサキ「Z900RS」が昨年の東京モーターショーで発表された効果だろう。

「Z900RS」の登場でカワサキの状況は変わった

カワサキは1989年にも「Z1」を彷彿とさせるスタイリングの「ゼファー」シリーズ、5年後には“ローソンレプリカ”の愛称を持つ「Z1000R」のイメージを継承した「ZRX」シリーズを登場させ、1998年には60~70年代の名車「W」シリーズの復刻版と言える「W650」を発表するなど、往年の名車のエッセンスを今に蘇らせた車種を送り出しヒットにつなげてきた。でも、「Z900RS」ほどの人気ではなかったという記憶がある。

懐かしさだけではない「Z900RS」人気の理由

なぜ「Z900RS」の人気がここまで高まっているのか。理由を自分なりに考えれば、アドベンチャーツアラーの記事でも書いたように、まず背景として、大型バイクのライダーは高齢化し、マシン選びはスピードよりも乗りやすさ重視に変わりつつある。そんな中、彼らが若い頃に憧れたマシンに乗りたいと考えたとしても、近年「Z1」の中古車価格は高騰しており、程度の良い個体だと200万円以上の値がつく状況にある。そこに登場した「Z900RS」にライダー達が注目したのではないだろうか。

しかも「Z900RS」、見た目は懐かしさを感じるけれど中身は最新だ。エンジンは「Z1」や「ゼファー」のような空冷ではなく、モダンなロードスポーツ「Z900」と基本的には共通の水冷並列4気筒を搭載する。電子制御による安全装備も、ABSとトラクションコントロールを備えており平均以上と言ってよい。旧車のような不安感はなく、逆に安心感を抱かせる内容だ。

見た目はレトロでも「Z900RS」の中身は最新だ

もうひとつ、レトロなデザインの新型車が登場しているのは外国車が作った流れでもあり、ベテランライダーたちが気になっていたところにカワサキから「Z900RS」が登場し、決断に至ったというケースもありそうだ。

欧米のレトロデザインバイクも選択肢が充実

バイク人気について書いた記事の中で、二輪車の世界は日本メーカーが主役であり、欧米のブランドは昔から使っているエンジン型式を核とした、味で勝負する車種が中心になっていると書いた。

米国のハーレーダビッドソンはその代表だろう。懐かしさを感じるデザインに、大排気量のV型2気筒エンジンを組み合わせ、ゆっくり走っても満足できる車種が中心となっている。

ハーレーダビッドソンの「ロードキングスペシャル」

英国のトライアンフも、モダンな車種と並行して、1959年にデビューした空冷並列2気筒「ボンネビル」の復刻版を2001年に発表。水冷化された近年はモダンクラシックシリーズとしてバリエーションを増やしている。

トライアンフのモダンクラシックシリーズ

さらに2013年には、ドイツのBMWが1970年代の高性能車「R90S」に範を取った「R nineT(ナインティ)」シリーズを登場させた。イタリアのドゥカティも、1960年代に米国で人気を博したオフロードも走行可能なスタイルを、2015年に昔と同じ「スクランブラー」の名前で復活させた。

左がBMW「R nineT」、右がドゥカティ「スクランブラー」

アドベンチャーツアラーについて書いた記事では、ライダーの高齢化が日本だけでなく欧州でも進んでいることにも触れた。昔から変わらぬスタイルを貫いているハーレーやトライアンフはともかく、近年、BMWやドゥカティがレトロデザインのモデルを送り出したのは、現地の事情も関係しているだろう。

様相を異にする軽二輪カテゴリー

しかし、このレトロデザインブーム、カテゴリー別では小型二輪に限った現象だと思っている。同じバイクでも軽二輪のカテゴリーは、やはり前年度比で販売台数を伸ばしているものの、レトロデザインはほとんどないからだ。

メーカー別に前年度比の販売台数を見ると、ホンダの149%、スズキの169%が目立つ。スズキは150ccの「ジクサー」など、安価な車種をいくつか送り出したことが効いているようだ。一方のホンダは、クラストップの38psエンジンを積み、価格も75.6万円と飛び抜けた「CBR250RR」が注目されている。

スズキの「ジクサー」

ホンダによれば、この「CBR250RR」の購入者の約半数は、驚くことに20~30歳代だという。ライバルのヤマハ「YZF25R」も若いライダーが多いそうだ。

ユーザー別の商品開発が可能な小型二輪と軽二輪

日本自動車工業会が4月に公表した2017年度二輪車市場動向調査によると、原付を含めたバイクの購入理由として多く挙がったのは、「身軽に動ける」「移動の時間が短縮できる」「自転車より楽」「燃費が良い」などだった。

昔はバイクに乗りたい理由として、スピードや爽快感という理由が多かったという記憶があるけれど、現在は機動的かつ経済的という、自転車に近い理由で選ぶ人が多くなったということになる。

ホンダの「CBR250RR」

いずれにしても軽二輪と小型二輪とでは、ユーザー層が異なるようだ。ただ、車検がないなど維持費が安い軽二輪が若者向け、輸入車の選択肢も多い小型二輪がベテラン向けというのは理にかなっていると思うし、ユーザーの好みに特化したものづくりができるので好ましいのではないかという気もする。

警察庁は最近、原付二種AT車の教習所での技能教習を最短3日間から2日間に短縮する検討を進めるとともに、二輪車用駐車場の整備を働きかけ、道路状況によっては駐車禁止規制を緩和していくとの姿勢を示している。今までがバイクに対して厳しすぎた反動とも取れるけれど、これらも若者をバイクの世界に呼び込むきっかけになりそうだ。

トーンモバイルが「iPhone SIM」を投入する狙いとは

トーンモバイルが「iPhone SIM」を投入する狙いとは

2018.04.28

4月26日、「TSUTAYAの格安スマホ」を展開するトーンモバイルがiPhone用のSIMカードを発売した。特徴として、同社が強みとするスマホの「見守り」サービスをiPhoneでも使えるようになるという。

TONE独自端末(左)ではなく、iPhone(右)用のSIMを発売した

他のMVNOとは異なり、トーンモバイルはシニアや子どもを主なターゲットにすることで、競争の激しい市場で独自のポジションを確保している。このタイミングでiPhone用SIMを投入する狙いはどこにあるのだろうか。

iPhoneを欲しがる子どもと、親の不安要素に着目

多くのMVNOが「格安」競争を繰り広げる中、トーンモバイルは見守り機能「TONEファミリー」を中心に、独自のAndroid端末とSIMカードのセットをシニアや子ども向けに展開してきた。

2017年の夏には、子どもがスマホを使いすぎる問題への対策として、「夜間にスマホを使えなくする」機能を女性誌と組んで開発。MVNOとしては異例の施策だが、社会問題の解決に取り組む姿勢が他の格安スマホとは一線を画している。

「TONE SIM (for iPhone)」を披露する、トーンモバイル代表取締役社長CEOの石田宏樹氏

その結果、契約者の約7割をシニアと子どもが占めているという。他のMVNOは情報感度の高い20代〜40代が多いのに対し、真逆の構造だ。学割キャンペーンも展開しており、3月には新規加入の75%を19歳未満が占めたという。

だが、TONE独自のAndroid端末には課題もあった。富士通と共同開発した最新モデルは充実した見守り機能と頑丈なボディを備えるものの、人も羨むハイスペックモデルではない。クラスの友達と同じiPhoneを持ちたがる子どもの要求とは、大きくかけ離れていたのが現状だ。

iOSの比率が高い日本だが、高校生もiPhoneが65%を占める

一方で、子どもを持つ親から見れば、高価なiPhoneをそうそう買い与えるわけににはいかず、見守り機能にも不安があった。この親子間ギャップを解消し、子どものiPhone需要の取り込みを狙うのが「TONE SIM (for iPhone)」だという。

iPhone独自の課題も技術開発でクリア

これまでの子ども向けスマホとはどう違うのか。他の事業者も見守り機能は提供しているものの、自由に使いたい子どもはすぐに回避策を見つけ、無効化してしまうという。iPhone用に見守りアプリを提供しても、アプリを削除されるとそれまでだ。

そこでトーンモバイルはiPhone用アプリと、SIMカード、交換機を連動させ、子どもがアプリを削除するとSIMの通信を止める機能を開発したという。iOSの仕様を変えることはできないが、SIMと交換機はトーンモバイル側で制御できるというわけだ。

SIMと交換機を連動させ、iPhoneでも確実な見守りを実現

iOSには制限もあり、現時点で提供する見守り機能は、TONE独自のAndroid端末ほど詳細で強力なものではない。だが、アプリの利用制限や迷惑電話のブロック、フィルタリングなど需要の高い機能は搭載した。いずれも企業向けのモバイルデバイス管理(MDM)を、家庭向けに応用した形といえる。

iPhoneの端末はどうするのか。ドコモ版以外のiPhoneは、6s以降ならSIMロックの解除により利用できる。家庭に眠る旧型iPhoneは3000万台ともいわれ、子どもによる再利用も期待できる。さらに同じCCCグループのイオシスとも組むことで、TONE SIMの動作を保証した中古iPhoneも購入できるようにするという。

日本で最新のiPhoneを取り扱うのは大手キャリアのみで、型落ち品もサブブランドに限られてきた。だがiPhoneを格安で持ちたいという消費者の要求が高まる中で、MVNO各社は整備品や海外版などあの手この手で模索している。

これに対してトーンモバイルは、iPhoneの端末そのものではなく、シニアや子どもがiPhoneを使うときのSIMに着目したというわけだ。春商戦にやや出遅れる形になったものの、既存のTONEユーザーへの移行プランも提供する。この独自のアプローチで格安iPhone需要を取り込めるかに注目したい。