“トクホの次”の健康食品が激増?

“トクホの次”の健康食品が激増?

2016.06.22

「脂肪の吸収を抑える」などのうたい文句のCMでおなじみ「特定保健用食品」通称「トクホ」、「栄養機能食品」、サプリメントなどなど、“健康”をうたった食品が巷に溢れている。さらに昨年には、「機能性表示食品」という制度も始まった。市場規模はどんどん拡大している一方で、正直何がどう違うのかよくわからないのが本音だ。制度が始まって1年、浮上している課題とは。

機能性表示食品の一例

どんな機能が期待できる食品なのかをうたった言葉が目立つところに表示されたパッケージ。よくよく見ると「機能性表示食品」の文字が枠に囲まれて印字されているのが目に入ってくる。こういったものを最近多く見かけるようになったのではないだろうか。

機能性表示食品とは

食品については、原則として効果や機能を表示することはできないが、国が個別に許可した特定保健用食品と国の規格基準に適合した栄養機能食品のみ機能性を表示することが認められてきた。そして商品の選択肢を広げようと2015年4月に始まったのが機能性表示食品制度だ。

食品の区分など 消費者庁HPより

同制度は、事業者の責任にもとづいて、食品の安全性と機能性に関する科学的根拠など必要事項を販売前に消費者庁長官に届け出れば機能性を表示できるというもの。対象となるのは生鮮食品を含めるすべての食品で、機能性については、臨床試験または研究レビューによって科学的根拠を説明すると定められている。

消費者向けの「機能性表示食品」のパンフレット。消費者庁HPより

メーカーは消費者庁に安全性や機能性の根拠となる情報を届け出るものの、審査を受ける必要がないため、1年間で100以上の企業が届け出ており、300件以上の食品が公表されている。食品を項目別にみると、およそ半数がサプリメント形状の加工食品である一方、生鮮食品の届け出もある。また今までの制度では難しいといわれていた中小企業の参入もみられている。こういったことから機能性が表示された食品は2015年度には、前年度のおよそ5倍にまで増加したと消費者庁が公表している。

「機能性表示食品制度の施行状況について」消費者庁HPより

企業側からすれば、今まで「具体的にこんな効果が」とうたえなかった食品が、うたえるようになるので売り上げの増加に期待が持てる。さらには、機能性に着目した新しいコンセプトの商品開発を促す効果が見込めるだろう。

2倍以上に市場拡大か

富士経済によると、トクホは2015年3862億円の見込み、2016年には3840億円と6年振りにマイナスとなることが予想されている。栄養機能食品については、2015年の見込みが1029億円、2016年の予測が1034億円。両者ともほぼ横ばい状態となっている。このデータから、両市場とも一定の市場規模はあるものの、大きな拡大は見込めないことがわかる。

機能性表示食品の市場については、初年である去年は303億円の見込み、今年は699億円を予測。上記2市場と比較するとまだまだ規模は小さいものの、2倍以上拡大するとみられており、トクホからシフトする企業も現れてくることなどを考慮するとさらに拡大することが予想されるとしている。

課題はまだまだ山積

消費者庁のHPには、企業が消費者庁に届け出た内容が公開されており、今までの制度と比べると透明性が高いとの評価がある機能性表示制度。今まで述べてきたとおり、企業の参入も今までに比べてしやすいし、表示方法にも柔軟性があるといったメリットがある一方、企業の責任によって健康効果が表示できてしまうため、届出情報のレベルに企業間で差あることや、消費者が届け出情報を読んでも理解するのが困難であったり、広告で可能な表現の明確なルールが存在しなかったりといった課題が残されている。消費者庁ではこれらの課題解決に向けた検討を進めていて、今年の秋ごろには報告書が取りまとめられる予定だ。

よくわからないまま利用している人多し!?

食と健康に関する情報サービスを手がけるリンクアンドコミュニケーションが2016年5月に実施したインターネット調査によると、特定保健用食品や栄養機能食品など、複数の健康表示(ヘルスクレーム)制度が存在する中、健康食品を日常的に利用している消費者が多い一方、これらの制度に対応した健康食品の違いをきちんと認識しておらず、どのように選択すればいいのかわからない人が多いことが明らかになった。

健康食品の利用頻度について週に1~7回消費している日常的な利用者がおよそ7割と多く、残る3割もなんらかのタイミングで利用していることから、健康食品が、私たち日本人にとってとても身近な存在になっていることがわかった。

健康食品の利用頻度について。リンクアンドコミュニケーションHPより

その一方で、「機能性表示食品」や「特定保健用食品」「栄養機能食品」といった健康食品の違いの認識について尋ねたところ、違いを認識していた人は3割にとどまり(「はっきりと違いを認識」と「ある程度違いを認識していた」)7割が違いをわかっていない現状が明らかになった。

健康食品の違いを知っていたか。リンクアンドコミュニケーションHPより

客観的データを集約、提供するというビジネス

同社は、機能性表示食品に対する専門家の客観的な評価などを掲載する情報発信サイト「キノウノミカタ」を開設した。ここで評価するのは、管理栄養士などの食と栄養、健康情報に関する専門家で、公衆衛生学修士が届出情報を整理し、管理栄養士が実際に食べてレビューするなどして評価をするという。消費者は無料で、専門的・客観的な評価を見ることができるため、健康食品を購入する判断材料になる。

「キノウノミカタ」HP例

機能性表示食品を販売している業者に対しては、有料で専門家による詳細なレビュー情報を提供するという。それによって、今後の研究開発や、自社が取り組んでいる商品や成分に対する専門家の認知や考え方を把握することで今後の商品開発に役立てることができるという。

健康食品はそのほかの食品に比べて高額なものが多いため、購入には慎重になる人もいるだろう。一方で、日々の不摂生に対する免罪符的に利用してしまうこともある。自分に最適なものを選ぶための情報をどうやってキャッチできるか。機能性表示制度がスタートして企業の参入もこれから増加することが予想されるからこそ、第三者の目を利用しながら賢く判断していくことが消費者には求められる。

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

2019.01.21

CESで存在感を放つアマゾンとグーグル、各社の最新動向は?

レノボはGoogleアシスタント、Alexaに対応した新製品を発表

アップルは各社にプライバシー問題を警告、独自路線を貫くか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」で、別格の存在感を放っていたのがアマゾンやグーグルだ。2018年はグーグルがCESに初めて本格出展したことで話題となったが、2019年も大がかりなブースを設置して来場者の注目を浴びた。

ラスベガスのCES会場前に設置されたグーグルのブース

アマゾンやグーグルは音声アシスタントで競争しており、家電製品への組み込みを進めている。2019年のCESではどうだったのか、両社の最新動向をレポートする。

グーグル対アマゾンの音声争いが加速

グーグルは今年もCES会場に「Googleアシスタント」を目玉にした大型ブースを設置。巨大な壁面広告やモノレールのラッピング広告で存在を示し、家電メーカーのブースには白い帽子のスタッフを派遣するなど、CESを乗っ取る勢いだった。

「Googleアシスタント」に対応した家電製品が並ぶグーグルブース

一方、Alexaで先行するアマゾンも展示エリアを拡大。業界やメーカーの枠を越えた「Alexa対応製品」を一挙展示することで、エコシステムの強大さを示した。家庭向けのスマートホーム用途だけでなく、オフィスで使う事例も示すなど、応用範囲を広げている。

アマゾンは「Amazon Alexa」対応製品をブースに集めた

具体的な対応製品として、音声で操作できるスマートスピーカーやスマート電球はもちろんだが、これまでにないジャンルの製品も増えている。たとえばレノボは「目覚まし時計」と「タブレット」の2機種を発表した。

レノボの目覚まし時計「Smart Clock」(左)とタブレット「Smart Tab」(右)

Googleアシスタントに対応した「Smart Clock」は、目覚まし時計の置き換えを狙った製品だ。音声だけでなく画面のタッチ操作にも対応しており、カレンダーの予定や寝覚めのいい音楽、室内の照明と連動した目覚まし機能を提供する。

一方、Amazon Alexaに対応した「Smart Tab」は、一般的なAndroidタブレットとして使えるほか、ドックに置くと音声とタッチで操作するスマートディスプレイに早変わりする。自宅でも外出先でも1台2役で使えるお得さが特徴だ。

アップルが投げかける「プライバシー」問題

CESに両社が注力する背景には、音声アシスタント市場におけるシェア争いがある。「Amazon Echo」や「Google Home」といったスマートスピーカーの売上ではグーグルがアマゾンを猛追しており、2018年第1四半期には逆転劇を果たした(英Canalys調べ)。しかし第3四半期にはアマゾンが再び首位に立つなど、接戦が続いている。

その勢力はスマートスピーカーを越えて、家電全体に広がりつつある。家電の操作といえばスイッチやリモコン、タッチ操作が一般的だが、音声に対応する製品は増えている。これまで独自の音声アシスタント「Bixby」を展開してきたサムスンも2019年にはグーグルとアマゾンとの連携を発表した。

サムスンはスマートTVでグーグル、アマゾンと連携

このまま音声が普及していけば、世界中の人々がインターネットのサービスやコンテンツにアクセスする手段になる可能性がある。音声アシスタントのシェア争いは、スマホOSのシェア争いと同じくらい重要というわけだ。

ただ、音声操作はプライバシーに関する懸念もある。音声操作を受け付けるには、マイクが常時オンになっている必要があるからだ。マイクをオフにする機能はあるとはいえ、家庭内のプライベートな会話を常にマイクに拾われるのは心地よいものではない。

この問題に一石を投じたのがアップルだ。CES会場からよく見えるホテルの壁に意見広告を掲載。ラスベガスの有名なコピーをもじって「iPhoneで起きることはiPhoneの中にとどまる」と訴え、サードパーティと広く連携するアマゾンやグーグルを牽制した。

アップルはCESでプライバシー重視をアピール。元々の言葉は、「What happens in Vegas stays in Vegas.(ラスベガスで起きたことはラスベガスに残る)」というもの

アップルも独自の「Siri」をiPhoneに搭載し、スマートスピーカー「HomePod」も販売している。だがサードパーティとは積極的に連携していないため、音声のシェア争いでは不利な立場に追い込まれている。アップルがこのまま「プライバシー重視」路線を貫くかどうかも、音声アシスタント市場の行方を左右しそうだ。

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第30回

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

2019.01.21

いまや当たり前の「ワイヤレス充電」スマホ

開発も販売も、実は日本が世界初だった

過去にナゼ廃れたのか、今はナゼ流行っているのか

最近、ケーブルに接続する必要なく充電ができる、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンが増えてきている。一時は姿を消していたワイヤレス充電が、ここにきて再び脚光を浴びるようになったのはなぜだろうか。

世界初のワイヤレス充電対応スマホは日本製

スマートフォンを充電する際、多くの人は充電用の電源ケーブルに接続して充電していることだろう。だがここ最近、スマートフォンをケーブルに接続することなく、専用の充電台に置くだけで充電ができる「ワイヤレス充電」に対応したスマートフォンが増えているのだ。

例えばアップルのiPhoneシリーズであれば、2017年発売の「iPhone 8」シリーズ以降からワイヤレス充電に対応している。他にもグーグルの「Pixel 3」やサムスン電子の「Galaxy Note 9」、そしてファーウェイの「HUAWEI Mate20 Pro」など、海外製のハイエンドスマートフォンを中心として、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンは着実に増えている。対応スマートフォンの広まりとともに、ワイヤレス充電をするための充電器も数が増え、家電量販店などで目にする機会も増えている。

ワイヤレス充電対応機種は急増しており、「iPhone XS」など最新のiPhoneもワイヤレス充電に対応している

充電をするためにケーブルに接続するというのは手間がかかるし、何よりケーブルは絡まりやすく取り回しが面倒なもの。それだけに、スマートフォンを置くだけで充電できるワイヤレス充電は消費者にとって非常に便利だ。したがってスマートフォンに搭載するという動きも比較的古くから進められていたのだが、現在のように広く普及するまでにはかなりの時間を要している。

実は、スマートフォン単体でワイヤレス充電ができる機種が最初に投入されたのは日本で、開発したのも日本企業である。2011年にNTTドコモから発売された、シャープ製の「AQUOS PHONE f SH-13C」がそれに当たり、Wireless Power Consortium(WCP)が策定したワイヤレス給電規格の1つ「Qi」に対応。Qi対応の充電器に置くだけで、スマートフォンを充電できる仕組みを備えていたのである。

世界初のワイヤレス充電対応スマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」は、2011年にNTTドコモが提供。専用の充電器も提供していた

しかも当時、NTTドコモはQi対応のワイヤレス充電ができるスマートフォンの開発に力を入れており、「おくだけ充電」という名称まで付けて積極的なアピールを進めていた。さらにシャープだけでなく、NTTドコモと関係の深い他の国内スマートフォンメーカーともQi対応のスマートフォン開発を進め、市場に多くのワイヤレス充電対応スマートフォンが存在した時期があったのだ。

規格や充電性能の問題が解決し採用機種が増加

だが2013年を境に、NTTドコモのラインアップからワイヤレス充電対応のスマートフォンが一時期姿を消し、ワイヤレス充電は急速に存在感を失うこととなる。当時ワイヤレス充電に力を入れていたパナソニックモバイルコミュニケーションズやNECカシオモバイルコミュニケーションズなどが、iPhoneなどに押されてスマートフォン市場から撤退した影響も大きいが、より本質的な要因は2つあると考えられる。

1つは、急速充電に対する消費者のニーズが高まっていたためだ。当時はバッテリーの性能が現在より低かったため、スマートフォンを使っているとあっという間にバッテリーを消費してしまい、不満の声が多かったため、何よりも素早く充電できることが強く求められていたのだ。しかしながら当時のQiは電力の出力が弱く、充電速度が遅かったことから、消費者のニーズとマッチせず姿を消してしまったのである。

そしてもう1つの理由は、ワイヤレス給電規格が複数存在し、業界全体で、どの方式を採用するか方向性が定まっていなかったため、後続するスマートフォンがなかなか出てこなかったことだ。実際、2015年に日本でも発売されたサムスン電子の「Galaxy S6」「Galaxy S6 edge」はQi規格だけでなく、Power Matters Alliance(PMA、現在はAirFuel Alliance)が策定したワイヤレス給電規格も採用することで、ワイヤレス充電に対応させている。

2015年発売の「Galaxy S6 edge」は、当時まだ事実上の標準規格が定まっていなかったこともあり、複数のワイヤレス給電規格に対応していた

そして最近になってワイヤレス充電が再び日の目を見ることができたのは、それらの課題が解決したことが大きく影響している。急速充電に関しては、当初Qiのモバイル機器に向けた「Volume I」という規格では、送信できる電力が5W以下とされていたため充電速度が遅かったのだが、その後10W、15Wといったより大容量の送信ができる規格の策定が進んだことで、より速く充電できるようになったのである。

また規格の統一に関しては、アップルなど影響力の大きな主要スマートフォンメーカーがQiの採用に傾いたことで、Qiがスマートフォン向けの事実上標準規格となった。そのため多くのスマートフォンメーカーがQiを採用しやすくなり、急速に数が増えたといえる。

さらにもう1つ、高いデザイン性や防水性能など、スマートフォンに求められる要素が年々増えていることも、ワイヤレス充電が復活した大きな要因として挙げられるだろう。一方で、かつて必要だったPCへの接続など、スマートフォンに何らかのケーブルを接続する必要性は年々薄くなっている。将来的にはスマートフォンのワイヤレス充電対応が当たり前となり、充電用のUSB端子やLightning端子がなくなることも十分あり得るだろう。