なぜ日本のフェラーリ販売店が世界一に? 店舗訪問で背景を探った

なぜ日本のフェラーリ販売店が世界一に? 店舗訪問で背景を探った

2018.03.01

港区六本木にあるフェラーリの正規ディーラー「ロッソ・スクーデリア」が2016年の「グローバル・トップ・ディーラー・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた。世界に186の正規ディーラーがある中、創業から10年にも満たない同社が世界一を獲得できたのはなぜか。実際に店を訪れて背景を探った。

六本木は飯倉片町の交差点にあるロッソ・スクーデリア。創業は2009年と歴史は浅いながら、世界62の地域に広がる186のフェラーリ正規ディーラーの世界一に上り詰めた

フェラーリの市場としては世界4位の日本

そもそも、フェラーリのグローバル・トップ・ディーラー・オブ・ザ・イヤー選考の仕組みは独創性にあふれている。

この賞は年間を通じ、セールス、マーケティング、アフターセールスの3つの領域において、最も優秀な成績を収めたディーラーに贈られるものだ。フェラーリにとって最も大きな市場は米国であり、英国、ドイツに次いで、日本は4番目の市場となっている。販売台数の優劣を競うのであれば、大都市にあり、富裕層がひしめく住宅地近隣のディーラーが最優秀を勝ち取ることは想像しやすい。しかし、それでは世界一の称号が与えられるディーラー競争において、世界に点在する186のディーラーが均等に実績を競ったことにはならない。

六本木のショールームがオープンしたのは2014年のこと。展示車は頻繁に入れ替わるそうだが、ロッソ・スクーデリアを訪問した2018年2月15日には、1階にF1マシン「F2005」のレプリカが飾られていた

そこでフェラーリは、独自の基準と計算式から導き出されるスコアによって、全てのディーラーが等しく世界一を競える仕組みを考え出した。その全容を明らかにするには情報量が膨大であり、簡単ではないようだが、概要を次に見ていく。

細分化された項目で達成率を競う仕組み

冒頭にも掲げた3つの領域、セールス、マーケティング、アフターセールスの各部門において、各ディーラーは複数の項目で個別に年次目標を課せられ、その達成率で競う。

例えば、年間100台を売るという目標が課せられた場合、1年間で100台売れば100%の達成率となる。90台で終われば達成率は90%だ。小さなディーラーで、年間20台の販売が目標であったとしよう。その場合、20台を販売できれば同じく達成率は100%となる。こうして、ディーラー規模の大小を問わず、目標をいかに達成したかでセールス部門の順位が決まっていく。

ロッソ・スクーデリアは5階建てで、延べ床面積1,468㎡強はアジアの正規ディーラーで最も広いフロア面積だという

では、マーケティングについてはどうか。例えば顧客情報(Customer Relationship Management)に基づき、新車を納入した客が新規か既存かによって、与えられる点数が違ってくるケースがある。なおかつ、単に客が新規か既存かの区別だけでなく、販売する車種が、新規客向けであるか既存客向けであるかといったように、その商品性と実際に売った客の属性の組み合わせにより、点数が違ってくることもある。このあたりの評価は、フェラーリの販売戦略と連動することになる。

アフターセールスでは、納車後に実施するフェラーリ独自の保守管理の件数や、部品販売の金額などによって点数が与えられる。

評価項目は他にもあるそうだが、以上のように、販売台数だけでなく、一見すると数値化が難しそうに思われる、マーケティングやアフターセールスの業務に関しても、仕事の成果を達成率で数値化し、成績を評価する。

エレベーターで2階に上がると、まずはゆったりと話ができるスペースが目に入る

徹底的な数値化はモータースポーツのDNA?

情緒的評価が排され、世界のディーラーが一目瞭然の数値によって判断されるので、公平さは保たれる。また、その年の勝者に対しても、皆が納得づくで賞賛することができる。それはあたかも、ルールの下で勝敗を競うスポーツのようである。この点についてフェラーリ・ジャパンは、そもそもフェラーリとはモータースポーツを発祥とするメーカーであり、その遺伝子に基づいた顕彰の仕組みだと説明する。

とはいえ、フェラーリ独創の仕組みがあったとしても、何十年もフェラーリの販売実績を持つ伝統あるディーラーではなく、新興ともいえるロッソ・スクーデリアが、なぜ世界一になることができたのか。

共通目標の設定で一体感を醸成

フェラーリ・ジャパンの見解は、世界一は正しい経営によってもたらされたものであろうというものだ。新車販売に直結したセールス部門だけが強いのではなく、アフターセールスやマーケティングにおいても、世界一を目指そうとする一体感のある経営が、ロッソ・スクーデリアでは行われたというのである。

ロッソ・スクーデリアの2階には「Ferrari 488 GTB」(中央の黒い車体)などのクルマが並んでいた

ロッソ・スクーデリアのサービス工場は目黒区碑文谷にあり、港区六本木のショールームとは地理的に約8キロの隔たりがある。離れた立地だと、一般的にいえば日々の意思疎通は図りにくい。その点、同社では物理的距離の遠さを、世界一を目指すという具体的な共通目標で突破した。

ロッソ・スクーデリアの松原隆文ゼネラル・マネージャー(GM)は、「この会社が目指すのは、老舗ディーラーのライバルであることではなく、2020年までに日本一のディーラーになることであるとすべての社員に徹底しました」(以下、発言は松原GM)と語る。

ロッソ・スクーデリアの松原GM

余力を残さない受注が奏功、達成率が向上

では、日本一とは具体的にどのような姿なのか。「まずフェラーリ・ジャパンの業績評価指標(KPI:Key Performance Indicator)で1位になること」、それがグローバル・トップ・ディーラー・オブ・ザ・イヤーの受賞にもつながるのだが、加えて松原GMは、「顧客満足度と従業員の満足度においても日本一になることを目指しています」と説明する。

「ことに2016年は、年間目標達成が見込まれた段階でも、新車を受注し、登録し続けました。それによって、日本一になることができました」。こうして、年間達成率は100%超えとなり、グローバル・トップ・ディーラー・オブ・ザ・イヤーの獲得へ大きく前進したことになる。

2階ではシートやブレーキキャリパーなどの品ぞろえを見ることができる

「あとは世界のディーラーという相手があることですから、世界一になれるかどうかの結果は、年次総会での表彰式を待たなければなりませんでした」

高級な嗜好品を売るディーラーとしての心構え

顧客満足度で日本一になるために行ったことは、「フェラーリ・ジャパンの顧客満足度調査で1位になることに加え、ミステリーショッピングでも1位を目指しました」と松原GMは振り返る。ミステリーショッピングとはミシュランガイドのような覆面調査で、調査員が顧客を装い、店の雰囲気や営業の対応を調査するものだ。

なおかつ松原GMは、「『フェラーリを買うならロッソ・スクーデリアで』という評判を得ることを目指しています。ただし、弊社は後発ディーラーで一朝一夕にはいきませんから、2020年を目標にしました。なおかつ、後発ディーラーらしい洗練を求め、都会的で革新的な特色あるディーラーとして、失敗を恐れずいろいろなことに挑戦しています。例えば、お客様と一緒にハロウィンパーティーを楽しみ、社員も自由に仮装して会場を盛り上げました」と語る。

「輸入車ビジネスの7割はブランドで決まる」とも語った松原GM

伝統や格式を重んじるだけでなく、新しい魅力を発信しながら、フェラーリの神髄に触れてほしいというわけである。

「はじめて来店されるお客様も、やや敷居の高いディーラーへ扉を開け入って来てくださっているのですから、例えすぐ成約につながらなくても、購入の可能性のあるお客様です。また、ショールームの外から(店内やクルマの)写真を撮っている少年も、ファンの1人であり、将来のお客様になるかもしれないので、裾野を広く大事にすることがブランドであるとの考えで営業活動をしています。クルマは嗜好品であり、ましてやスポーツカーはその最たるものです。したがって、お金があるからといって買って頂ける商品ではなく、クルマ好きな方の中で、資金に余裕のある方がフェラーリを選んでくださるという捉え方をしています」

認定中古車を置く3階には「Ferrari California T」などが所狭しと並ぶ

従業員にはフェラーリファミリーとしての実感を

では、従業員の満足で日本一になるとは、どういうことなのだろうか。松原GMは以下のように語る。

「働く喜びを感じることのできる職場であることです。簡単に言えば働きやすく、有給休暇をきちんと取得できて、ハラスメントの無い職場にする。ハラスメントでは、普段の何気ない言葉にも気を遣い、また部下に対して怒鳴らないといったことにも、私自身が気を付けています」

「加えて、フェラーリに勤めている実感を持てるよう、大きなイベントの際には店を閉めてでも全員で対応し、当日の現場で特に役割が無い人にも、雰囲気を味わってもらっています。ほかに、年末年始やゴールデンウィーク、夏休みなどには、社有車を社員に貸し出しています。自らフェラーリを実体験することで、扱う商品を深く理解するとともに、家族や友人にもフェラーリで働いていることを理解していただくためです」

フェラーリでは新車を注文すると納車までに平均で1年くらいの時間を要する。新車が届くまでの間に乗るクルマとして、ロッソ・スクーデリアでは認定中古車を顧客に勧めることがあるそうだ。このような提案が可能なのは、フェラーリの中古車価格があまり下落しないからこそ。つまり、新車が届くまで別のフェラーリに乗っておいて、納車の時には売ればいいというわけだ

以上のようなロッソ・スクーデリアの取り組み全てが、グローバル・トップ・ディーラー・オブ・ザ・イヤー受賞による世界一に、実はつながっているともいえるのではないか。会社が一丸となり、士気を高めながら、顧客満足度を向上させていくことで、それらが達成率という数字に反映し、業績にもつながっていくことになる。

では、フェラーリ本社にとって、グローバル・トップ・ディーラー・オブ・ザ・イヤーの仕組みと、それによる世界一のディーラー表彰は、どのような効果を生み出しているのだろうか。

統一ルールで競う世界のディーラー、トップの知見はシェア

セールス、マーケティング、アフターセールスの各部門における成績が、すべて数値で明らかにされ、その結果、世界一のディーラーが決まる仕組みであることによって、世界一になったディーラーが、それをどのように実現したかが具体的に明らかとなる。この知見は、他のディーラーが今後の業務改善に役立てることができる。それにより、フェラーリ正規ディーラー全体として、質の向上や発展につながっていくのである。結果、フェラーリが目指す「オール・フォー・エクセレンス」が強化されることになる。

フェラーリ独創のグローバル・トップ・ディーラー・オブ・ザ・イヤーの取り組みには、冒頭で紹介したように、モータースポーツが母体のスポーツカーメーカーであるという特色が背景にある。自動車レースも、ルールに基づき均等な条件の下で勝敗を競う。そのためのルール作りには多大な英知がつぎ込まれる。そのルールは、一方的な勝負が生じた際には改訂され、再び均等な条件をもたらされる。そうした仕組みをスポーツカー販売の現場にそのまま反映したのが、この賞なのである。

「グローバル・トップ・ディーラー・オブ・ザ・イヤー」を受賞するロッソ・スクーデリアの松原GM。右隣で拍手しているのはフェラーリ会長兼CEOのセルジオ・マルキオンネ氏だ(画像提供:フェラーリ・ジャパン)

従業員もフェラーリと共にある人生を楽しむ

表彰式は、場所や装飾、あるいは会食の仕方などが毎年、異なる演出によって催されるという。均等な条件で純粋に競い合い、その勝者へは惜しみない賞賛を送るという、あたかもオリンピック競技を見るかのような表彰式が展開されている。

単に金儲けのためではなく、仕事も人生を楽しむ時間の1つであるという価値観がそこにあるのではないだろうか。人生50年とかつては言われ、いまでは100歳まで生きると言われるが、それでも人の一生は時が限られている。フェラーリと共にある人生は、顧客のみならず、ディーラーも従業員も楽しくあるべきというイタリア人の生き様が、正規ディーラーを顕彰する仕組みに遺憾なく盛り込まれているのかもしれない。

フェラーリと共にある人生は楽しくあるべき。そんな考え方がディーラーの顕彰に盛り込まれているようだ(画像はフェラーリ70周年を記念して2017年10月に開催されたイベント「Driven by Emotion」にて編集部撮影)

ちなみに日本からは、1976年にフェラーリのインポーターを開始した歴史あるコーンズ・アンド・カンパニー・リミテッドの大阪ショールームが、2014年にグローバル・トップ・ディーラー・オブ・ザ・イヤーを受賞している。

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Googleマップが突然の劣化、ゼンリン地図から自社地図に変更か?

Googleマップが突然の劣化、ゼンリン地図から自社地図に変更か?

2019.03.22

Googleマップが壊れた? 3月21日以降、表示がおかしい

地図のダウンロード機能でゼンリンと決裂したか?

新しい地図は機械学習で地図データ生成という指摘も

Googleマップの表示がおかしい。3月21日頃から、Googleマップの不具合を訴える声が各所で相次いでいる。道路の表示や建物の位置が正確でなかったり、地形すら間違っている場所もある。Googleマップにいったい何が起こったのか。

地図データの提供元がゼンリンではない?

Googleマップの日本地図データはこれまで、地図データで国内大手のゼンリンから提供を受けていた。両社の契約状況は公開されていないが、少なくとも不具合が発生している現在のGoogleマップ上からは、以前までは記載されていたゼンリン社の権利表記が消え、「地図データ (C)2019 Google」へと変更されている。

Googleマップからゼンリン社の権利表記が消えた

Google社は今月のはじめ、今後「数週間以内」に、日本のGoogleマップをアップデートすると予告していた。このアップデートでは、特にダウンロード可能なオフラインマップを追加することに注目が集まっていた。オフライン環境でもダウンロード済みの地図を利用できる便利な機能だが、地図データの契約上の課題があり、日本のGoogleマップでは制限されていた機能だからだ。結局、両社は契約の課題を解決できず、ゼンリンが地図データ提供から降りてしまったことが、今回の不具合の原因と見られる。

新しい地図は使い物になるのか?

現在のGoogleマップは、Googleが新規開発した自社製の地図データを利用しているようだが、いまだに不具合が報告され続けている状態状態であり、混乱が収束する目途は見えていない。

なお、この新しい地図は、航空写真で山脈の陰部分が湖になっていたり、並木の多い道路が公園になっていたりする間違いや、ほかにも交差点に面したコンビニエンスストアの駐車場が道路と語認識されていたりすることから、航空写真をもとにした機械学習や、スマホ位置情報の移動軌跡から地図データを生成しているのではないかと指摘されている。

航空写真では山の陰になっている部分が、川と湖になってしまっている
地図では鎌倉街道から大栗橋公園を抜ける道があるが、実態はただの公園広場だ。スマホ位置情報の移動実績をもとに道と認識したか?

新しい地図の仕組みや改善の見込みについては、Google側のアナウンスを待つほかないわけだが、GoogleマップはAndroidの標準地図として利用されており、影響を受けるユーザーがあまりにも多い。他の地図サービスを駆逐して大きな影響力を持っているのだから、責任も伴うはずだ。

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ペットボトルコーヒーに対抗? キリンが目指す「午後の紅茶」

ペットボトルコーヒーに対抗? キリンが目指す「午後の紅茶」"仕事のお供"戦略

2019.03.22

「午後の紅茶」に微糖のミルクティーが登場

新CMでは無糖・微糖を中心に新しい飲用シーンを訴求

ペットボトルコーヒーに対抗? 今後の戦略は

昨年まで、ビジネスマンの仕事のお供として「ペットボトルコーヒー」に注目が集まっていたが、今年は「紅茶」が主戦場になるかもしれない。

3月26日より発売されるキリンの「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」は、これまでの“ペットボトルのミルクティーは甘い”というイメージに反して、缶コーヒーでいちカテゴリを築いている「微糖」が特徴。また、同社が長らくカテゴリ内最大シェアを誇る「午後の紅茶 おいしい無糖」についても、あらたな消費イメージを打ち出す方針だ。

今春から「午後の紅茶」新CMに出演する新木優子さん、深田恭子さん、リリー・フランキーさん

ペットボトル紅茶飲料のトップブランドと言える「午後の紅茶」。この春から公開する新CMには、既存の紅茶飲料のイメージを覆す狙いが透けて見えた。

2つの軸で「紅茶」のイメージを変える

紅茶飲料のイメージと言えば、「午後の紅茶」の名前の由来となっている「アフタヌーンティー」(英国発祥の喫茶習慣)に象徴されるように、「女性の飲み物」であり、「時間的・金銭的余裕がある人の趣味」というところだろうか。それも紅茶という商品のひとつの側面だが、近年の消費者層のメインストリームではなくなっている。

今回、キリンが「午後の紅茶」新CMで打ち出したのは、大きく分けてふたつの飲用イメージだ。深田恭子さんが仕事で車を走らせ、駐車して一服するのに選んだのは微糖のミルクティー。一方、アーティスト然としたリリー・フランキーさんが飲んでいるのは無糖の紅茶。2本ともに「仕事のお供」としての訴求が挙げられる。

車を止め、「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」をひとくち飲む
絵を描く合間にのどを潤すのは「午後の紅茶 おいしい無糖」

もうひとつは、おなじくリリー・フランキーさんがカレーと紅茶飲料を一緒に味わうというCM。過去には同社の無糖紅茶が「おにぎりに合う」と訴求したこともあるが、あらためて食事中の飲料として「フードペアリング」を提案する。

カレーのような香りの強い食べ物とも合わせられる点を訴求
最年少の新木優子さんは、無糖紅茶を飲むようになった自分を「大人になった」と評するCMに出演。若者への無糖紅茶訴求を担う

紅茶を、コーヒーや緑茶と並ぶカテゴリに

カフェなどでは食後の飲み物をコーヒーか紅茶から選ぶのが定番だが、ペットボトル飲料市場では状況が異なる。コーヒーに次ぐ大規模市場は緑茶飲料で、紅茶はそこから比べるとかなり小規模だ。日本全体の清涼飲料市場で見れば、そのシェアは5%以下。仕事中の飲料としてメジャーなコーヒーが14.5%、緑茶飲料が13.3%という数字を見ると、半分以下という状況となっている。

清涼飲料市場において、紅茶はコーヒー、緑茶と比べて市場が小さい

こうした市場背景を確認した上で、今後「紅茶を、コーヒーや緑茶などの無糖茶と並ぶカテゴリに成長させたい」と意欲を示したのは、午後の紅茶を担当するキリンビバレッジ マーケティング部 商品担当 部長代理の加藤麻里子氏。世界での紅茶飲料と茶葉生産量の伸び、国内紅茶市場の回復傾向を論拠に、RTD紅茶のトップブランドとして、新しい紅茶文化を創っていきたいと語った。

「午後の紅茶」ブランド全体としては、既存の定番3種は甘さを求める若年層に対して継続投資を実施。甘さから離れる20代~30代の働く女性に向け、紅茶飲料としては珍しい「微糖」の新製品「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」を投入する。

午後の紅茶ブランドにおける年代別の主要商品マッピング

また、30代後半意以降の年代を健康意識や嗜好の変化から「糖離れ・無糖飲用層」と位置づけ、すでに市場で受け入れられている「午後の紅茶 おいしい無糖」の訴求強化を行っていく。

狙うはペットボトルコーヒーへの「対抗」ではなく…?

「2年前までコーヒーのCMをやっていたのにどのツラ下げて…というのはありますが」と茶化しながらも、自分のような「おじさん」にこそ紅茶は飲みやすいとコメントしたリリー・フランキーさん

製品ごとに異なる年齢層を狙って投入される新CM。「キリン 午後の紅茶 おいしい無糖」「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」のCMでは、商品をことさらには誇張しない画面作りやキャスティング、出演者の自然体な演技とは裏腹に、「コーヒーから寝返っちゃおうかな」(リリー・フランキー出演「寝返り」編)、「ラテよりこっちかな」(深田恭子出演・「裏切られた」編)など、“コーヒー飲料からの転向”を示唆するようなセリフが目立つ。

働く大人がコーヒーから紅茶に「乗り換え」することを示唆するCMは、ここ2年でワーカー向けのペットボトル飲料の拡大を牽引し、ちょうど先日同ブランドから紅茶飲料を発売したサントリーの「クラフトボス」をはじめ、昨今増えているワーカー向けのコーヒーペット飲料に対する宣戦布告にも読める。だが、加藤氏にペットボトルコーヒー飲料のヒットに紅茶で対抗する構えかどうか尋ねると、決してそうではないという。

「今やひとつのカテゴリとなっているペットボトルコーヒー飲料も、複数社から新商品を展開し、協力して棚の広さを獲得した経緯があります。現状、紅茶飲料の棚は一段程度ですが、これを各社協力して2段へと増やしていきたいです」 

オフィス需要に対して、企業とコラボレーションし飲用機会を設ける試みも

また、「仕事のお供」需要を喚起する施策として、三菱地所に対して仕事中の飲料として「キリン 午後の紅茶 おいしい無糖」を提供。働き方改革推進企業とコラボレーションし、オフィスでの休息機会に手に取る飲料として配布する。今後、他の企業からオファーがあればそちらにも対応するとのこと。想定シーンに対して直接サンプリングすることで、需要の広がりを見込んでいる。

「午後の紅茶」は、日本国内の紅茶飲料としてはNo.1ブランドの地位を獲得しているだけに、紅茶飲用の文化を牽引して、先述の通りコーヒー・緑茶に並ぶ市場規模への拡大を狙っている。

昨今はスターバックスの「TEAVANA」、タリーズコーヒーの紅茶業態などが定着しており、タピオカミルクティーブームも依然続くなど、カフェ業界でも紅茶に追い風が吹いている。今後、午後の紅茶が「コーヒー党」や「緑茶党」をどれだけ引き込めるか、注目したい。

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