三菱が「エクリプス クロス」を発売、4年ぶりの新車が背負う使命

三菱が「エクリプス クロス」を発売、4年ぶりの新車が背負う使命

2018.03.01

三菱自動車の新型SUV「エクリプス クロス」がいよいよ発売となった。同社にとって4年ぶりとなる新車の市場投入を益子修CEOは、「国内事業の中で最も重要なプロジェクト」と位置づける。燃費不正問題からの完全復活にこのクルマの成功は必須だ。

三菱自動車は3月1日、同社として4年ぶりの新車となる「エクリプス クロス」の販売を開始した

パリダカ2連覇の増岡氏も予約済み

「エクリプス クロス」は2014年2月に発売となった「eKスペース」以来、三菱自動車としては実に4年ぶりとなる新型車だ。クーペスタイルを特徴とするSUVで、走りには同社がラリーで培ってきた技術を盛り込んでいる。このクルマについて弊紙では、これまでに商品企画を担当した林祐一郎チーフ・プロダクト・スペシャリスト(CPS)から聞いた話や、モータージャーナリストの岡本幸一郎さんによる試乗記事新たに導入されたウェブ施策についてなど、複数回に分けて取り上げてきた。

新車発表会にはダカール・ラリー(パリダカ)で日本人初の2連覇を達成したドライバーで、現在は三菱自動車の広報部に所属する増岡浩氏が登場。エクリプス クロスは一般ドライバーの運転はもちろん、増岡氏がテストコースで行うようなアグレッシブな運転にも対応できるクルマだとして、その走りに太鼓判を押した。ちなみに増岡氏は、エクリプス クロスをすでに予約済みだそう。3月中にも納車されると話す様子は嬉しそうだった。

パリダカ2連覇の増岡氏も「エクリプス クロス」を予約したそうだ

エクリプス クロスの価格(税込み)は253万2,600円~309万5,280円からという設定。発表会に登壇した三菱自動車の益子修CEOによると、日本国内では2017年12月下旬から予約の受け付けを開始しており、これまでに約5,000台の受注を獲得しているという。月間販売目標は1,000台だ。このクルマは世界80カ国での販売を予定する三菱自動車の世界戦略車だが、すでに欧州、豪州、ASEAN、台湾、北米では販売を開始しており、2018年1月末時点で受注台数は5万3,000台に達しているそうだ。

このように、販売も予約も好調そうなエクリプス クロスだが、このクルマの成功は、三菱自動車の今後にとって非常に重要な意味を持つ。

日産にも立派なクルマと思わせたい?

2年前に燃費不正問題が発覚し、三菱自動車はブランドイメージに大きな傷を負った。同社は2017年10月に発表した中期経営計画「DRIVE FOR GROWTH」において、「信頼回復に最優先で取り組み、V字回復軌道に乗せて、持続的成長の土台をしっかり作ること」(益子CEO)を掲げるが、その鍵を握るのが商品刷新計画であり、第一弾となるのがエクリプス クロスなのだ。

新車発表会に登壇した益子CEO(左)と林CPS

燃費不正問題の発覚を受けて三菱自動車の社内では、何が問題だったかを追求すること(過去を振り返ること)と新しいクルマを開発すること(前に進むこと)という、互いに相反する2つの課題に同時並行で取り組んだと振り返った益子CEOは、「開発、生産の苦労は大変だっただろう」と述懐する。それだけに、エクリプス クロスには特別な愛着があり、中期経営計画の達成を引っ張ってくれるものとの期待を抱いているという。

新車が登場しなかった4年間の間に、三菱自動車は日産自動車との資本提携も経験している。エクリプス クロスは、見方によっては三菱自動車が単独で企画・開発した最後のクルマと考えることもできる。日産との資本提携後に世に出る宿命を負ったクルマだったので、「日産にも、立派なクルマだといってもらわなければならないという強い思い」(益子CEO)が三菱自動車にはあったという。

益子CEOは「エクリプス クロス」の出来栄えに手応えを得ている様子だった

SUV、4輪制御、電動化が三菱自動車の方向性

エクリプス クロスから始まる三菱自動車の商品刷新計画。今後について益子CEOは、まずプラグインハイブリッSUVの「アウトランダーPHEV」を刷新して今年の夏頃に投入し、その後は発売から50周年を迎える「デリカD:5」をモデルチェンジするとの計画を提示した。

「エクリプス クロス」(画像)から始まる三菱自動車の商品刷新計画にも注目だ

車種が多く、取り組むクルマの焦点が絞りきれなかったと過去の三菱自動車を振り返った益子CEOは、今後のクルマ作りについて「SUVと4輪制御に重点的に取り組んで大きな柱とし、そこに電動車両を組み合わせるという明確な方針」のもとに進めると宣言。エクリプス クロスについても、早期にプラグインハイブリッドモデルを投入したいと話していた。

ASUSが「iPhone X」にそっくりなスマホを発表、その背景とは?

ASUSが「iPhone X」にそっくりなスマホを発表、その背景とは?

2018.03.01

ASUSは2月27日(現地時間)、スペイン・バルセロナでの「Mobile World Congress 2018」において最新スマートフォン「ZenFone 5」シリーズを発表した。

MWC 2018で「ZenFone 5」を発表する、ASUS CEOのJerry Shen氏(左)とQualcomm社長のCristiano Amon氏(右)

だが、その外観はiPhone Xによく似ており、画面上部には特有の「切り欠き」があることが賛否両論を浴びている。なぜこれほどまでにデザインが似てしまったのだろうか。

大画面と狭額縁を追求するスマホメーカー

スマートフォン市場では、画面サイズの大型化が進んでいる。かつては5〜5.5インチが中心だったが、いまや6インチ前後のモデルも珍しくない。ASUSのZenFone 5も、6.2インチの大画面を採用してきた。

単純に画面を大きくするだけでは端末が大きくなりすぎるが、ASUSが採用する「19:9」のように、画面を縦長にすれば横幅を抑えることができる。さらに狭額縁化を進め、本体前面の大部分を表示領域が占める「フルビュー」デザインがスマホ業界のトレンドになっている。

ZenFone 5では本体前面の大部分を画面が占めている

ただ、本当にすべてが画面になってしまうと、自撮りに必須のインカメラやスマホの使い勝手を高める各種センサー類を搭載する場所がなくなってしまう。

そこでiPhone Xでは、表示領域が凹型になるような切り欠き(ノッチ)を設けることで、必要な部品を搭載するスペースを確保した。最近ではASUSだけでなく、複数のスマホメーカーが同様の切り欠きを設けている。

ZenFone 5も「切り欠き」デザインを採用した

こうしてZenFone 5では、画面周囲の無駄なスペースを大きく減らすことに成功。6.2インチの大画面を、片手でしっかり持てる5.5インチクラスのボディに搭載できたというわけだ。

たしかにZenFone 5の外観は、iPhone Xを模倣したかのような印象を与えることは否めない。だがそれは、大画面化と端末サイズの維持を両立させる上で避けて通れない道でもある。

ASUSも「AI」機能に全力投入

ZenFone 5におけるもう1つの見どころは、人工知能(AI)技術の活用だ。ASUSは従来機能を拡張したものを含め、ほとんどの機能のネーミングを「AI」で統一してきた。

たとえば「AIカメラ」では被写体の種類を自動的に認識し、「AIディスプレイ」で画面表示を調整。「AI着信音」は環境に応じて音量を変え、「AIブースト」はアプリの動作を最適化。「AIチャージ」によりバッテリーをほどよく充電できるという。

ZenFone 5が搭載する「AI」機能

たしかにAIという言葉を多用することで、やや安売りしている感はある。だがQualcommの最新プロセッサーの機能を活かすことで、ディープラーニングや機械学習など人工知能分野の技術により、機能を改善していることは事実のようだ。

AIといえば、人間と知的な会話をするSF映画に出てくるようなロボットを想像しがちだが、現実にそういうAIは存在しない。そうではなく、画像認識や音声認識の精度が飛躍的に高まることで、日常のスマホ体験をさりげなく便利にしてくれる裏方としての働きのほうが重要だ。

スマホ市場ではサムスン、アップル、ファーウェイのトップ3がますます勢いを強めている。その中でASUSは2018年も引き続きスマホ市場にコミットし、ハードウェアとソフトウェアの両面で食らいついていくという強い姿勢が明らかになったといえる。

「良いオフィスづくり」のために用意された、180枚のカードの意味

「良いオフィスづくり」のために用意された、180枚のカードの意味

2018.03.01

オフィス環境の設計などを手がける文祥堂。会社としてはこれまで、JXグループやエーザイといった企業のオフィス作りにも携わってきた。同社 クリエイティブプランニング室 室長代理の山川 知則氏は、さまざまなオフィスづくりに携わる中で、「良いオフィスを造りたいけど、良いオフィスとは何か、改めて考えた」と話す。

これまでのオフィス設計は、プロの手にすべてを委ねるケースが多かった。それはもちろん、専門性の高い建築士という特殊な作り手を必要とするからでもあるのだが、「人間の根幹を成す『衣食住』のうち、衣食は個人の感覚で簡単に選べる。だけど、住はその現場にいるユーザーが『場作り』に参加できない。それがもどかしかった」と山川氏は指摘する。

では、改めて「いいオフィス環境」とは何か。それは、業種・業態を問わずすべてに通じる共通の価値観が存在するというわけではなく、あくまで働く人たちが求めるオフィス環境が最良である、というものだ。ただしそれでは、山川氏らがビジネスとして顧客に価値提案できない。

そこで開発したものが「成果行動カード」だ。さまざまな企業の成果が出ているチームに山川氏らがインタビューし、どのような行動が成果に繋がっているかと自己分析してもらった上で、それらに共通する項目を180件抽出し、まとめた。そのカードをクライアントの社員に選んでもらった上で、「その会社にとって最適なオフィス」を見出す。

オフィスづくりワークショップで利用する「成果行動カード」

変えてはいけないコアを見つける大切さ

ソフトバンクの子会社で、流動人口データを活用したビッグデータ分析・データ販売を行う「Agoop」は、その成果行動カードを活用した「オフィスづくりワークショップ」の最初のクライアントとなった。

Agoopの取締役 兼 CTO/技術本部 本部長の加藤 有祐氏は当初、「木を利用したオフィスづくり」を最優先に考えていたが、それはあくまでオフィスの雰囲気を「ベンチャーっぽく明るいものにしたいだけで、オシャレな感じというイメージでストップしていた」(加藤氏)という。

(左から)Agoop 取締役 兼 CTO/技術本部 本部長 加藤 有祐氏、Agoop 代表取締役社長 兼 CEO 柴山 和久氏、文祥堂 クリエイティブプランニング室 室長代理 山川 知則氏

ワークショップでは、オフィスで働く社員全員が一人3枚、カードを選んで「私が働きたいオフィス」の理想像を見出す。とは言え、文祥堂が用意したカードの内容は「しゃべらないコミュニケーション」「数字、結果に貢献する」といった、オフィスとは一見無縁なものも多くある。

「カードを選んだら、なぜそれを選んだのか、なるべく普段は話さない社員同士でインタビューし合ってもらいました。オフィスを構成する要素は、インテリアやモノ、制度などで、インタビュー後にアイデアを全員で出していきます。選ばれたカードを元に膨らませたアイデアを、具体的にに落とし込んでいく、という作業です」(山川氏)

例えば、「ビジョンや理念を共有する仕組みが必要」というアイデアに対しては、オフィスの中央の柱にビジョンを書き込めるよう、ホワイトボードを全面的に貼り付けた。「経営メンバーと現場のコミュニケーションの活性化」というお題目に対しては、Agoop 代表取締役社長 兼 CEOの柴山 和久氏のデスクの裏に本棚を設置して、"頭の中を覗ける"ようにしたほか、掘りごたつ式の会議スペースをデスクの横に配置した。

中央の柱に貼り付けたホワイトボードには、Agoopの理念を書き込んでいる
デスクの前方にもホワイトボードを用意、気軽かつ簡単にアイデアを書き込めるようにした
柴山氏のデスクの奥に本棚を配置。誰でも本を手に取れるようにした
掘りごたつ式のミーティングスペース

「当初は長机や椅子がいくつというだけで良いと思っていたが、このオフィスづくりのプロセスで気付いたことは、『考え方を意識することは大切』だということ。変えてはいけないコアを見つけることで、根幹がぶれないし、全員が求めるオフィスになった」(加藤氏)

文祥堂はカード制作にあたって、「イケてるオフィス」を最優先するITベンチャー企業よりも、富士通やリクルート、ワコール、オムロンといった長年の老舗日本企業の成果を残しているチームにフォーカスしてインタビューした。その中で見えてきたものは、能力の高さよりも「当たり前をこなす姿勢」だったという。

「もちろん、みなさん凄いことをやってるとも思うんですが、それ以上に人間的に素晴らしくて、『やって当たり前』を着実に履行しているんです。その中でも一番共通していたポイントは『良いチームは、お客さんに関するコミュニケーションが多い』ということ。クライアントやユーザーに対して何を実現するのか、営業と企画、エンジニアが一体となって前へ進める。そんなオフィスが重要なんだなと」(山川氏)

山川氏は、オフィス設計でクライアントからの要望について「スターバックス風やロンハーマン風、西海岸風という依頼が多い」と苦笑いする。もちろん、雰囲気が仕事に対するマインドを変える要素はあるだろう。だが、それはあくまで副次効果であって本質ではないし、あくまで本質を捉えた後の「最後に決めるべきスタイルだ」と山川氏は話す。

例えば社員のコミュニケーションを増やすことを考えて会議室を増やしたいといった要望がある。だが、それが成果に繋がるのかと言えば箱を無駄に増やすだけで、むしろ「普段からコミュニケーションを容易に、多様なメンバーで議論できる立ち会議の場を作った方がいい」(山川氏)。

イケてるオフィス、はあくまで最後の味付けだ

Agoopはビッグデータの解析・販売という「クライアントが求めるデータ加工・分析」が重要になる。そのため、営業とエンジニアの距離が可能な限り近くで顧客目線を貫かなくてはならない。

「移転前は、(親会社の)ソフトバンクのオフィスで仕事する営業が多かったんですが、移転後はメンバーみんながオフィスに集うようになりました(笑)。我々は機械的な営業・技術であってはいけない。一緒に話してちゃんと顧客に寄り添って改善を続けないといけない。移転して2カ月弱ですが、顧客課題に対して、技術的にフィットしたものをより一層出せるようになってきたという手応えはありますね」(加藤氏)

立ちながらミーティングする加藤氏ら。カジュアルに議論できる場があるからこそ、コミュニケーションが活性化できると話す

文祥堂がワークショップで描いたオフィスのイメージ、実はコンペで他社にも共有されていた。「そこは公平にやらなくてはいけないですから」と山川氏は語るが、そうやすやすとできるものでもない。ただ、文祥堂としては手応えがあった。それは「オーナーシップ」だ。

「最終的に、Agoopさんの満足度は、これまでで一番高いものでした。何故かというと、自分たちで作り上げたオフィスだから。文祥堂としても、『文祥堂の提案』ではなく、『文祥堂とAgoopの提案』として捉えていた。オフィスづくりの正解を知っているのはデザイナーや設計ではなく、お客さま。そのお客さま自身が自分たちの手で作り上げたイメージだから、良いものが出来上がるんだなと」(山川氏)

Agoopの加藤氏も、その意見に賛同した上で、「コンペで他社に見せたレポートですが、やはり最終的なアウトプットは、共に作り上げてきた文祥堂さんと大きく異なるものでした。フォーカスすべきポイントを握っていることは、Agoop、文祥堂の双方にとって大きかった」と話す。

Agoopのオフィスでは、最初に加藤氏らが望んだ通り、木の素材をふんだんに利用することになった。国産木材を利用して、机は高知四万十のひのき、床が岡山西粟倉村の杉、照明には福島の杉を利用した。顧客の要望をうまく抽出するのみならず、大命題も叶える。単なる「オフィスづくり」の枠を超えた「働き方改革」を実現する文祥堂の取り組みは、緒に就いたばかりだ。

文祥堂は、国産木材をふんだんに利用したオフィス家具も手がけている