日産とDeNAの「イージーライド」に試乗、クルマ×ITは次世代へ

日産とDeNAの「イージーライド」に試乗、クルマ×ITは次世代へ

2018.03.02

日産自動車とDeNAが2月23日、無人運転車両を活用した交通サービスの実証実験を始めると発表した。「イージーライド」(Easy Ride)である。両社が組んだ理由とは何か。そして、目指すクルマ社会はどのようなものなのか。同乗走行の体験記ともどもお届けしよう。

日産とDeNAが無人運転車両を活用する交通サービス「イージーライド」の実証実験を始める

手を組んだ両社に共通点

日産とDeNAには、自動運転に積極的という共通点がある。

2013年に日産は、2020年までに革新的な自動運転技術を複数車種に搭載する予定と発表。日本の自動車メーカーとしては、いち早く自動運転の実現に言及した。筆者は同時期に米国のテストコースで実験車に同乗。ステアリングに触れずにコーナーを曲がり、歩行者を模したボードが飛び出すとペダルを操作しなくても急停止するなど、当初から完成度の高さに驚いた覚えがある。

その後も日産は自動運転の研究開発を進め、2016年には高速道路の同一車線でアクセルとブレーキ、ステアリングの自動化を実現する「プロパイロット」をまず「セレナ」に搭載。その後は「エクストレイル」と「リーフ」にも採用した。

日産が2017年10月に発売した電気自動車(EV)の2代目「リーフ」(画像)もプロパイロットを搭載している

ちなみに日産は、このプロパイロットについて「高速道路同一車線自動運転技術」という表現を使っているが、現状では人間が運転主体である点でスバル「アイサイト」などと大差なく、筆者は運転支援技術と認識している。

自動運転で交わった日産とDeNAの進む道

一方のDeNAは、2015年にまず「ロボットタクシー」事業の新会社を設立。過疎化や高齢化の進む地域の高齢者や子ども、障がいのある方などの交通弱者に快適な移動をもたらすという目標を掲げた。

翌年にはフランスのITベンチャー「イージーマイル」(Easymile)と提携し、同社の無人運転小型バス「EZ10」に「ロボットシャトル」という名を与え、国内各地で実証実験を始める。続いて物流大手のヤマト運輸とも手を結び、「ロボネコヤマト」というネーミングで、自動運転社会を見据えた次世代物流サービスの実現を目指すと発表した。

DeNAは無人運転を用いた複数の取り組みを進めている(画像はロボネコヤマト)

そして2017年1月、両社は手を結ぶ。米国ラスベガスで開催された世界最大のIT展示会ともいわれるCES(家電見本市)において、日産はDeNAとともに、無人運転技術を活用したモビリティサービスの活用を進めていくと明言したのだ。

自動車メーカーとIT企業が別々に歩みを進めてきた自動運転分野が、次のフェーズに入ったということができるだろう。

モニター募集は応募多数

あれから1年。ついに両社のコラボによる実証実験が始まることになった。それが「イージーライド」である。「無人運転車両を活用した交通サービス」と“無人”という言葉を入れたところや、イージーライドという名前の付け方から、DeNAのセンスを感じる。

実証実験開始の発表会には日産の西川廣人社長(左)とDeNAの守安功社長も駆けつけた

実証の場所は日産の本拠地である神奈川県横浜市のみなとみらい地区周辺で、コースは日産グローバル本社と横浜ワールドポーターズの間となっており、間に2カ所のステーションがある。2台の車両が用意され、参加者は昨年12月からイージーライド公式サイトで募集した一般モニター約300組。1,500通以上の応募から抽選で選んだという。

スタートは3月5日だが、その前に報道関係者向けの発表会および体験取材会が開かれたので、後者に参加した印象を交えながら内容をお伝えしよう。

横浜の日産グローバル本社で無人運転車両に乗り込んだ

コネクテッド技術でサービスも多彩に

イージーライドを一言でいえば、自動運転とコネクテッドカーの融合といえる。自動運転技術は日産、コネクテッド技術はDeNAが主に担当した。自動運転ライドシェアの予約や目的地設定だけでなく、移動中には周辺のレストランのクーポン取得なども行えるという。

まずはモニター参加者に提供される専用モバイルアプリを起動。ここで目的地の設定を行うが、地名や施設名だけでなく、「ハンバーガーが食べたい」などの検索もできる。入力は音声でも可能。リストの中からお店を選ぶと、最寄りのステーションまで乗せて行ってくれる。

アプリの画面。地図で乗降地を選んだらルートを確認する
ルートを確認したら時間を決めて予約を確定させる

ほどなくして車両が到着したとの情報が入り、外に出ると、日産の電気自動車「リーフ」をベースとした実験車両がやって来た。後席に乗り込むと、目の前に装着されたタブレット端末のディスプレイが、まずはシートベルトの着用を促す。ベルトを着用しなければ発進しないシステムにすれば安全性が高まるだろう。

今回はまだ(?)運転席にスタッフが乗っていたが、彼の両手はステアリングの近くで待機していて操舵はしない。足もペダルを踏んではいない。しかし、車両は日産本社のエントランスから公道に出ると、赤信号で止まり、青に変わると発進し、交差点では対向車が途切れたところで右折した。

運転席にスタッフは乗っているが、ステアリングは握っていない

終点のワールドポーターズ近くに路上駐車の車両があったときだけ手動運転に切り替えたが、ここも自動制御は可能とのこと。筆者が公道で自動運転車に乗るのは3度目だが、過去2回以上に安心して過ごすことができた。

将来的には運転席が空席でも走る車両に

ちなみに、今回の自動運転は車両側だけで制御しているわけではない。走行中の位置や状態をリアルタイムで把握可能な遠隔管制センターを設置しており、両社の技術を融合させた遠隔管制のテストも行うという。

警察庁は昨年、遠隔型自動運転システムの公道実証実験を許可すると発表。12月に石川県輪島市で電動カートを使った走行が最初に認められた。今回の遠隔管制センターもこの流れの中で導入したのだろう。将来的には運転席に誰も座らない無人運転を想定していることが分かる。

管制システムにはNASAにルーツを持つ技術も組み込まれている

乗車中には走行ルート周辺のおすすめスポットや最新のイベント情報など、約500件の情報が目の前のタブレット端末に表示されるほか、店舗などで使えるお得なクーポンを40件程度、用意しているという。お気に入りのクーポンがあれば手持ちのスマートフォンに転送し、あとで使えるという仕組みだ。

体験走行は10分ほどで、クーポンを試す時間はなかったが、目的地設定のときを含め、既存のタクシーやライドシェアでは味わえない多彩なメニューを持っていると感じた。IT企業ならではの感覚が反映されていると思った。

ディスプレイには走行ルート上にある店舗のクーポンが表示された

実証で価格などを検討、2020年代早期には本格展開へ

3月5日からの実証実験中には、参加したモニター向けにアンケートを行い、乗車体験についての評価や周辺店舗と連動したサービスの利用状況、実用化した場合の想定利用価格などについて情報を収集し、今後の実証実験やサービス開発に活用する予定とのことだ。

もちろん、今回の実証実験が全てではなく、車両配置や多言語対応、サービス内容などの検討を続けつつ、2020年代の早い時期に本格的なサービス提供を目指していくという。

「イージーライド」が本格展開の時期を提示しているのも画期的だ

自動運転はこれまで、いつ導入するかという話題が多かった。その中で日産とDeNAは、その車両をどう使うかというテーマについて、コネクテッド技術を用いて踏み込んだ提案を行った。しかも、自動車を所有してもらうことが前提のメーカーとしては珍しく、シェア(共有)による価値を提言した。未来のモビリティシーンのためには、自動車メーカーとIT企業のコラボは大切だと痛感した。

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

2019.03.22

ネットの学校「N高」の卒業式に潜入

開校時に入学したN高1期生が卒業した

世間の注目を浴び続けた生徒は、何を想う?

3月、角川ドワンゴ学園「N高等学校」の卒業式が東京・お台場にて開催された。

「ネットの高校」として、3年前に設立したN高。この日、2016年の開校時に入学した第1期生と、途中転入・編入した生徒をあわせ、計1593名が卒業した。3年前、『VR入学式』で世間を賑わせたこの学校を巣立つ卒業生たちは、N高での日々をどう捉え、今後はどのようなキャリアを描いていくのだろうか。

卒業式は2019年3月20日、お台場にて行われた

卒業式を彩る最新テクノロジー

N高は、ドワンゴとKADOKAWAの経営統合で誕生したカドカワが設立母体となり、2016年4月に開校された通信制高校だ。同校は開校後、2年次編入なども受け入れてきたため、これまでも卒業生を排出してきてはいたが、「1年生~3年生をN高で過ごした生徒」が卒業するのは、初めてのことだ。

卒業式には多くの報道陣も参加した。生徒にとって、「卒業式に記者がいる」「自分たちが卒業する様子がテレビやWebで取り上げられる」というのは不思議な感覚だろう。とはいえ、もう「VR入学式」に「ニコニコ超会議」へのブース出展(N高ではそれを「文化祭」と表現)などの経験を経て、メディアへの露出には慣れてしまっているのかもしれない。

そして、今回の卒業式も例によって独特だった。

卒業式は任意参加で、会場には袴や制服に身を包んだ生徒が集まる一方、その様子をライブ配信することで、会場に来られない生徒生徒も参加できる仕組みになっていた。会場のスクリーン上にはニコニコ生放送さながら、リアルタイムでコメントが表示されており、こうした演出は「N高らしい」といった印象を受けた。

卒業式の様子。オンライン参加者のコメントがスクリーンを流れる

中でも印象深かったのは、当日来られなかった生徒を代表して、米シリコンバレーに留学中の佐々木雅斗さんが「ロボット」に自分の顔を映して卒業証書を受け取ったシーンだ。

使用したのは、ANAが“未来の移動手段”として開発する、視覚・聴覚・触覚などを備えた、ユーザーの分身となるロボット「ANA AVATAR」。同校ではこのロボットを試験的に授業にも導入しているそうで、こういった最新のテクノロジーを使うあたりもN高らしい。

遠隔操作ロボット「ANA AVATAR(Beam Pro)」を用いて卒業証書を受け取った佐々木さん

と、テクノロジーにばかり目が行きがちではあるが、そもそも「高校生がシリコンバレーに留学している」という事実も驚くべき点だ。高校に通いながらも、シリコンバレーでビジネスを学ぶ――、というキャリアを選べるのは、学校という場所の制約を受けない、ネットの高校のメリットと言えるだろう。

卒業式にはほかにも「異色のキャリア」を持つ生徒たちが集まり、特に活躍した卒業生に対する特別表彰も行われた。

表彰を受けたのは、東京から鹿児島県に移住し、農業や水産業を手伝い地域活性化に貢献する白鳥優季さん、第18回アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン「ウイニングイレブン 2018」eスポーツ 金メダリストの相原翼さん、N高のプログラムを最大限に活用し、スタンフォード大学やオックスフォード大学のサマープログラムに参加した冨樫真凜さんなど。その活躍の幅は広い。

さまざまな分野で活躍したN高生に対しては、特別表彰が行われ、記念品としてクリスタルトロフィーが贈呈された

メディア露出が多いがゆえに高まる期待値

N高を卒業した個性豊かな面々は、今後は大学進学、就職とさまざまなキャリアを歩む。

日本初で唯一N高にのみ実在するという「起業部」に所属し、かつ起業第一号として「Easy Go」という会社を創業している、鈴木颯人さんと山田陽大さんから「N高で過ごした時間」についてコメントをもらった。

「元々は地元の進学校に通っていたのですが、『自分が好きなことをしたい』『起業したい』という想いがあり、N高に入学しました。年齢や場所に縛られず、多くの人とコミュニケーションを取れ、充実した3年を過ごせました」(鈴木さん)

「以前通っていた学校が自分と合わず、ネットで見つけたN高で『ここだったら新しいことができるかも』と入学を決意しました。今振り返ってみて、やはり『この学校に来てよかった』と思います」(山田さん)

Easy Go代表取締役の鈴木颯人さん(左)と取締役の山田陽大さん(右)

2人に限らず、卒業生のコメントを聞いていくと「この場所で挑戦してみたい」という想いの元、N高を選んでいる生徒が多い印象だ。

普通の高校とは違い、メディアに露出する機会の多いN高での生活は、良くも悪くも、世間からの注目を浴びる。まだ高校生の彼らにとっては、その視線が時に辛く感じることもあっただろう。ただ、その一方で鈴木さんは「初めて会う方とお話しする際、『N高出身です』と言うだけで、会話が広がることがよくあります」とその知名度を好意的に捉えている。

若くして、覚悟を持ってN高という環境に飛び込んだ生徒たちは、周囲の視線を浴びつつ、たくましく成長してきたことだろう。「N高出身」というキャリアは、彼らにとって1つの大きな武器になりそうだ。

カドカワは新たに2019年4月から、「N中等部」も開校する予定だ。「ネットの学校」という、世間の注目が集まる新しいコンセプトの学校だからこそ、在校生・卒業生の動向は、今後もしばらくは注目され続けそうだ。

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スマホは「望遠」でデジカメに追い打ち? OPPOの10倍ズーム技術が面白い

スマホは「望遠」でデジカメに追い打ち? OPPOの10倍ズーム技術が面白い

2019.03.22

中国スマホメーカーのOPPOが独自のカメラ技術を説明

開発競争が続くスマホカメラ、トレンドは「望遠」へ

高倍率ズームスマホの登場で、デジカメの優位性に危機?

中国のスマホメーカーとしてシェアを急拡大するOPPOが独自に新開発したカメラ技術、「10倍ハイブリッドズーム」が面白い。実際に2019年の新機種からスマホへの搭載を進め、日本市場へも製品を投入するという。

OPPOが「10倍ハイブリッドズーム」技術を紹介

メーカー間の開発競争が続くスマホカメラだが、「望遠」が次のトレンドになりつつある。デジタルカメラに匹敵する10倍もの高倍率ズームを、OPPOはどのように実現したのだろうか。

1年で7機種を投入、気付いた「日本市場の難しさ」

OPPOは世界のスマホ市場で熾烈な4位争いを繰り広げている。サムスン、アップル、ファーウェイのトップ3社に続く集団の中で、2018年は中国Xiaomiに僅差で迫る5位になった(IDC調べ)。

OPPOは2018年、日本市場で7機種のスマホを発売した。OPPO日本法人の鄧宇辰社長は、これまでに国内販売チャネルを12に拡大し、あわせて認定修理店を全国に展開したことを挙げ、「日本のSIMフリー市場でいち早く成長するブランドになった」と振り返る。

オッポジャパン 代表取締役社長の鄧宇辰氏
2018年の1年間にスマホを7機種投入

2019年は国内展開をさらに加速する。日本の消費者に向けたコミットメントとして、件の「10倍ハイブリッドズーム」機能を備えたスマホや、FeliCa・防水対応のスマホ、新たに立ち上げたブランド「Reno」シリーズの市場投入を約束する。

また、話題の「5Gスマホ」の市場投入も急ぐ。日本では5Gの周波数がまだキャリアに割り当てられていないものの、ドコモ、KDDI、ソフトバンクを含む世界の事業者と標準化に向けて連携しており、準備を整えていることを強調する。

MWC19のQualcommブースではOPPOが5Gスマホを実演

一方で鄧社長は、日本市場の難しさについて、「1年の経験を通して、日本市場は他の国と違うことに気付いた。消費の習慣や求めるレベルも高い。グローバルのやり方を日本に持ってきても通用しない」とも述べている。日本市場における品質やサービスの要求水準の高さは、多くのメーカーが直面してきた課題だが、OPPOも同じ壁にぶつかったといえそうだ。

スマホカメラ、次のトレンドは「望遠」に

そのOPPOが市場攻略にあたり、特に注力をしはじめたのが「カメラ」だ。その中でも、業界では次の進化ポイントとして「望遠」技術に注目が集まっている。

そもそもスマホはデジカメと違い本体が薄いため、搭載できるレンズに物理的な制約がある。このレンズの制約から、スマホのカメラはどうしても焦点距離の狭さが弱点になってしまっていた。そこで最近はスマホに複数のカメラを内蔵し、それぞれで広角や望遠を使い分けることで、この弱点を克服しようと進化している。

OPPOの「10倍ハイブリッドズーム」技術は、この弱点に対し異なるアプローチで挑む。プリズムを使って光を屈曲させるペリスコープ(屈曲光学)構造をカメラモジュールに採用することで、レンズを従来の垂直方向ではなく水平に配置できるようにした。これにより、薄型のスマホであっても、光学レンズでは従来不可能だった高倍率ズームが搭載できる。

光を曲げるペリスコープ構造を採用

ただ、35mm換算での焦点距離は16~160mmの10倍となっており、一般的なコンデジの感覚では5倍ズーム程度の性能だ。8.1倍以上はデジタル処理を組み合わせた「ハイブリッドズーム」としているなど、いくつか注意点はある。とは言え、これまでにない望遠レンズをスマホで扱えるのは面白い。

10倍ハイブリッドズームによる画角の違い

OPPOは既に報道陣に向けて、この10倍ハイブリッドズーム技術を搭載するスマホの開発デモ機を公開している。2019年の第2四半期には製品化する計画で、日本市場へも2019年中に投入する見込みだ。

10倍ハイブリッドズームのデモ機。5Gにも対応できるという

特にカジュアルなカメラ需要の受け皿としてスマホに押されがちなデジタルカメラだが、高倍率ズームはスマホには無い、デジカメに残された得意分野のひとつだった。だが望遠もスマホで十分撮れるとなれば、いよいよその優位性も危うくなる。今回のズーム技術は、デジカメ市場をもう一段縮小させてしまう可能性を秘めているのだ。

最大のライバルであるファーウェイも「HUAWEI P30」シリーズで望遠カメラを搭載するとみられており、今後は各メーカーが高倍率ズームで競い合うことは間違いなさそうだ。

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