世田谷区と千代田線の結びつきを強める小田急

世田谷区と千代田線の結びつきを強める小田急

2018.03.02

多摩線と千代田線を直通する、現在の平日日中の急行。JR東日本の電車も、小田急線内まで乗り入れる

3月17日に実施される小田急電鉄のダイヤ改正は、代々木上原~登戸間の複々線化工事完成によるもの。これにより、朝夕ラッシュ時の混雑率低下やスピードアップなど、さまざまな改善が実施される。列車体系も大幅に変わり、従来の「遅い」「混む」というイメージの解消を、同社は図っている。

注目すべきポイントはいくつもあるが、ここでは、代々木上原を接続駅とする、東京メトロ千代田線への直通列車に焦点を当て、その狙いとするところを考えてみたい。特に通勤ラッシュ時間帯以外の、平日日中、土休日のダイヤにおいて、意図するところが明らかなのである。

多摩線から運転されている現在の千代田線直通

現在(ダイヤ改正前)、平日日中や土休日における、小田急線と千代田線の直通列車は、小田急多摩線の唐木田発着の急行が主力である。1時間あたりの運転本数は3本だ。一部の列車は、さらにJR常磐線柏・我孫子方面にまで直通しており、小田急、東京メトロの電車に加え、JR東日本の電車も充当されている。

なぜ多摩線~千代田線直通が主であるかと言うと、小田急多摩センターなど、同じ新宿をターミナルとする京王相模原線と競合する駅が複数あることが要因ではないかと思われる。多摩ニュータウン方面と新宿との行き来は、所要時間や運賃などから京王が有利であるため、千代田線方面に「活路」を見出していたと考えられる。

ただ、この急行。前身である多摩急行時代から乗車率は高くはなかった。特に快速急行が停車しない向ヶ丘遊園や登戸から新宿へ向かう客が敬遠しがちで、新宿発着の急行に利用客が集中する傾向があった。

千代田線直通列車は、複線のまま残っていた下北沢駅付近の「ボトルネック」が解消されることによって、今改正で大幅に増発される。ただし、運転区間が変わる。

従来の多摩線唐木田発着の列車は、種別は急行、運転本数は毎時3本のまま新宿へ振り向けられ、新宿~唐木田間の運転となる。これによって、新宿発着の優等列車が増強される。京王への対抗という面もあろうが、やはり、日中も変わらない新宿への大きな需要に応じたと見られる。

それに対し、向ヶ丘遊園発着の「準急」も毎時3本新設され、こちらが千代田線へ直通するようになる。さらに土休日に限り、成城学園前発着の準急が毎時3本加わり、成城学園前〜代々木上原間における千代田線直通準急は毎時6本となる。つまり、基本的に複々線区間内にのみ、千代田線直通が走ることになるのだ。

左:ダイヤ改正後、多くの千代田線直通列車の始発駅となる向ヶ丘遊園駅。右:完成した複々線(祖師ヶ谷大蔵~成城学園前間。提供:小田急電鉄)

各停用の線路を走る準急

準急の停車駅は、向ヶ丘遊園、登戸、狛江、成城学園前、祖師ヶ谷大蔵、千歳船橋、経堂、下北沢、代々木上原と千代田線内の各駅だ。注目されるのは、現在は各停しか停車しない狛江、祖師ヶ谷大蔵、千歳船橋にも停まること。これらの駅は複々線のうち、外側の各停用の線路にしかホームがない。

つまり準急は、特急、急行などが走る内側の線路ではなく、各停と同じ線路を走るということだ。各停用と急行などの優等列車用の線路を分離し、お互いが干渉することなくスムーズに走れるようにすることが、複々線化の主な狙いである。内側の線路には、快速急行などが日中も多数運転されるため、これ以上、列車を入れづらいという側面もあるが、敢えて各停用の線路に準急を走らせてまで、千代田線直通列車の停車駅を増やすという点に、小田急の狙いが透けて見える。

小田急の新宿~向ヶ丘遊園間は、おおむね東京都世田谷区と狛江市内を通っており、成城学園前を代表格に、戸建てを中心とする高級住宅街のイメージが強い。もともと東京都心に近く、開業時から人口も多かったため、駅も多めに設けられており、駅間の距離も短い。

左:ダイヤ改正により、準急停車駅となる祖師ヶ谷大蔵駅。右:複々線の内側線を走り、祖師ヶ谷大蔵を通過する特急。準急は外側の線路を走ることになる

東京メトロ千代田線の沿線には、日比谷や大手町といったビジネス街があり、通勤目的地として、小田急沿線からの大きな直通需要がある。世田谷区や狛江市はもちろんだが、朝夕ラッシュ時には本厚木、町田方面からの直通も設定されている。

さらに、初めて地下鉄線内に乗り入れた特急ロマンスカーとして話題になった「メトロさがみ」などもある。ダイヤ改正後は「メトロモーニングウェイ」「メトロホームウェイ」などとして増発されるが、2008年に登場した際、同社の特急としては初めて、千代田線直通列車の一部が成城学園前に停車したのだ。大手町〜成城学園前間は特急で30分ほどしかかからないが、通勤定期券の発行区間、発行枚数などから勘案して、小田急は座席指定制特急への通勤客の需要をつかんでいたと見られる。

買い物客を取り込む施策

今回のダイヤ改正で設定された、平日日中、土休日の準急は、ラッシュ時以外でも、世田谷区などと千代田線沿線を行き来する大きな需要があることを示している。土休日に増発されることなど、ターゲットは住宅街から都内へ出かける買い物客であることが鮮明だ。

確かに、千代田線沿線には表参道、赤坂など、特に女性に人気があるエリアが連なる。大手町は近年、ショッピングゾーンとしても注目されている。さらに進んで、根津、千駄木は、谷中も含めて「谷根千」と呼ばれる人気観光エリアに成長した。

これらはいずれも、高級あるいはトラディショナルというイメージでくくることができるエリアだ。世田谷の住宅街との親和性は高い。それゆえの、今回の直通列車増強である。 今後、沿線住民の相対的な高齢化が進むことは明らかだ。しかし、東京都心に近いエリアは、若年層を中心に郊外からの回帰や人口の流入も見られるという。末永い利用客の獲得のため、遠方だけではなく、今回「足元」をも固める策を取ったと見ていいだろう。

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

2019.03.22

ネットの学校「N高」の卒業式に潜入

開校時に入学したN高1期生が卒業した

世間の注目を浴び続けた生徒は、何を想う?

3月、角川ドワンゴ学園「N高等学校」の卒業式が東京・お台場にて開催された。

「ネットの高校」として、3年前に設立したN高。この日、2016年の開校時に入学した第1期生と、途中転入・編入した生徒をあわせ、計1593名が卒業した。3年前、『VR入学式』で世間を賑わせたこの学校を巣立つ卒業生たちは、N高での日々をどう捉え、今後はどのようなキャリアを描いていくのだろうか。

卒業式は2019年3月20日、お台場にて行われた

卒業式を彩る最新テクノロジー

N高は、ドワンゴとKADOKAWAの経営統合で誕生したカドカワが設立母体となり、2016年4月に開校された通信制高校だ。同校は開校後、2年次編入なども受け入れてきたため、これまでも卒業生を排出してきてはいたが、「1年生~3年生をN高で過ごした生徒」が卒業するのは、初めてのことだ。

卒業式には多くの報道陣も参加した。生徒にとって、「卒業式に記者がいる」「自分たちが卒業する様子がテレビやWebで取り上げられる」というのは不思議な感覚だろう。とはいえ、もう「VR入学式」に「ニコニコ超会議」へのブース出展(N高ではそれを「文化祭」と表現)などの経験を経て、メディアへの露出には慣れてしまっているのかもしれない。

そして、今回の卒業式も例によって独特だった。

卒業式は任意参加で、会場には袴や制服に身を包んだ生徒が集まる一方、その様子をライブ配信することで、会場に来られない生徒生徒も参加できる仕組みになっていた。会場のスクリーン上にはニコニコ生放送さながら、リアルタイムでコメントが表示されており、こうした演出は「N高らしい」といった印象を受けた。

卒業式の様子。オンライン参加者のコメントがスクリーンを流れる

中でも印象深かったのは、当日来られなかった生徒を代表して、米シリコンバレーに留学中の佐々木雅斗さんが「ロボット」に自分の顔を映して卒業証書を受け取ったシーンだ。

使用したのは、ANAが“未来の移動手段”として開発する、視覚・聴覚・触覚などを備えた、ユーザーの分身となるロボット「ANA AVATAR」。同校ではこのロボットを試験的に授業にも導入しているそうで、こういった最新のテクノロジーを使うあたりもN高らしい。

遠隔操作ロボット「ANA AVATAR(Beam Pro)」を用いて卒業証書を受け取った佐々木さん

と、テクノロジーにばかり目が行きがちではあるが、そもそも「高校生がシリコンバレーに留学している」という事実も驚くべき点だ。高校に通いながらも、シリコンバレーでビジネスを学ぶ――、というキャリアを選べるのは、学校という場所の制約を受けない、ネットの高校のメリットと言えるだろう。

卒業式にはほかにも「異色のキャリア」を持つ生徒たちが集まり、特に活躍した卒業生に対する特別表彰も行われた。

表彰を受けたのは、東京から鹿児島県に移住し、農業や水産業を手伝い地域活性化に貢献する白鳥優季さん、第18回アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン「ウイニングイレブン 2018」eスポーツ 金メダリストの相原翼さん、N高のプログラムを最大限に活用し、スタンフォード大学やオックスフォード大学のサマープログラムに参加した冨樫真凜さんなど。その活躍の幅は広い。

さまざまな分野で活躍したN高生に対しては、特別表彰が行われ、記念品としてクリスタルトロフィーが贈呈された

メディア露出が多いがゆえに高まる期待値

N高を卒業した個性豊かな面々は、今後は大学進学、就職とさまざまなキャリアを歩む。

日本初で唯一N高にのみ実在するという「起業部」に所属し、かつ起業第一号として「Easy Go」という会社を創業している、鈴木颯人さんと山田陽大さんから「N高で過ごした時間」についてコメントをもらった。

「元々は地元の進学校に通っていたのですが、『自分が好きなことをしたい』『起業したい』という想いがあり、N高に入学しました。年齢や場所に縛られず、多くの人とコミュニケーションを取れ、充実した3年を過ごせました」(鈴木さん)

「以前通っていた学校が自分と合わず、ネットで見つけたN高で『ここだったら新しいことができるかも』と入学を決意しました。今振り返ってみて、やはり『この学校に来てよかった』と思います」(山田さん)

Easy Go代表取締役の鈴木颯人さん(左)と取締役の山田陽大さん(右)

2人に限らず、卒業生のコメントを聞いていくと「この場所で挑戦してみたい」という想いの元、N高を選んでいる生徒が多い印象だ。

普通の高校とは違い、メディアに露出する機会の多いN高での生活は、良くも悪くも、世間からの注目を浴びる。まだ高校生の彼らにとっては、その視線が時に辛く感じることもあっただろう。ただ、その一方で鈴木さんは「初めて会う方とお話しする際、『N高出身です』と言うだけで、会話が広がることがよくあります」とその知名度を好意的に捉えている。

若くして、覚悟を持ってN高という環境に飛び込んだ生徒たちは、周囲の視線を浴びつつ、たくましく成長してきたことだろう。「N高出身」というキャリアは、彼らにとって1つの大きな武器になりそうだ。

カドカワは新たに2019年4月から、「N中等部」も開校する予定だ。「ネットの学校」という、世間の注目が集まる新しいコンセプトの学校だからこそ、在校生・卒業生の動向は、今後もしばらくは注目され続けそうだ。

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2019.03.22

中国スマホメーカーのOPPOが独自のカメラ技術を説明

開発競争が続くスマホカメラ、トレンドは「望遠」へ

高倍率ズームスマホの登場で、デジカメの優位性に危機?

中国のスマホメーカーとしてシェアを急拡大するOPPOが独自に新開発したカメラ技術、「10倍ハイブリッドズーム」が面白い。実際に2019年の新機種からスマホへの搭載を進め、日本市場へも製品を投入するという。

OPPOが「10倍ハイブリッドズーム」技術を紹介

メーカー間の開発競争が続くスマホカメラだが、「望遠」が次のトレンドになりつつある。デジタルカメラに匹敵する10倍もの高倍率ズームを、OPPOはどのように実現したのだろうか。

1年で7機種を投入、気付いた「日本市場の難しさ」

OPPOは世界のスマホ市場で熾烈な4位争いを繰り広げている。サムスン、アップル、ファーウェイのトップ3社に続く集団の中で、2018年は中国Xiaomiに僅差で迫る5位になった(IDC調べ)。

OPPOは2018年、日本市場で7機種のスマホを発売した。OPPO日本法人の鄧宇辰社長は、これまでに国内販売チャネルを12に拡大し、あわせて認定修理店を全国に展開したことを挙げ、「日本のSIMフリー市場でいち早く成長するブランドになった」と振り返る。

オッポジャパン 代表取締役社長の鄧宇辰氏
2018年の1年間にスマホを7機種投入

2019年は国内展開をさらに加速する。日本の消費者に向けたコミットメントとして、件の「10倍ハイブリッドズーム」機能を備えたスマホや、FeliCa・防水対応のスマホ、新たに立ち上げたブランド「Reno」シリーズの市場投入を約束する。

また、話題の「5Gスマホ」の市場投入も急ぐ。日本では5Gの周波数がまだキャリアに割り当てられていないものの、ドコモ、KDDI、ソフトバンクを含む世界の事業者と標準化に向けて連携しており、準備を整えていることを強調する。

MWC19のQualcommブースではOPPOが5Gスマホを実演

一方で鄧社長は、日本市場の難しさについて、「1年の経験を通して、日本市場は他の国と違うことに気付いた。消費の習慣や求めるレベルも高い。グローバルのやり方を日本に持ってきても通用しない」とも述べている。日本市場における品質やサービスの要求水準の高さは、多くのメーカーが直面してきた課題だが、OPPOも同じ壁にぶつかったといえそうだ。

スマホカメラ、次のトレンドは「望遠」に

そのOPPOが市場攻略にあたり、特に注力をしはじめたのが「カメラ」だ。その中でも、業界では次の進化ポイントとして「望遠」技術に注目が集まっている。

そもそもスマホはデジカメと違い本体が薄いため、搭載できるレンズに物理的な制約がある。このレンズの制約から、スマホのカメラはどうしても焦点距離の狭さが弱点になってしまっていた。そこで最近はスマホに複数のカメラを内蔵し、それぞれで広角や望遠を使い分けることで、この弱点を克服しようと進化している。

OPPOの「10倍ハイブリッドズーム」技術は、この弱点に対し異なるアプローチで挑む。プリズムを使って光を屈曲させるペリスコープ(屈曲光学)構造をカメラモジュールに採用することで、レンズを従来の垂直方向ではなく水平に配置できるようにした。これにより、薄型のスマホであっても、光学レンズでは従来不可能だった高倍率ズームが搭載できる。

光を曲げるペリスコープ構造を採用

ただ、35mm換算での焦点距離は16~160mmの10倍となっており、一般的なコンデジの感覚では5倍ズーム程度の性能だ。8.1倍以上はデジタル処理を組み合わせた「ハイブリッドズーム」としているなど、いくつか注意点はある。とは言え、これまでにない望遠レンズをスマホで扱えるのは面白い。

10倍ハイブリッドズームによる画角の違い

OPPOは既に報道陣に向けて、この10倍ハイブリッドズーム技術を搭載するスマホの開発デモ機を公開している。2019年の第2四半期には製品化する計画で、日本市場へも2019年中に投入する見込みだ。

10倍ハイブリッドズームのデモ機。5Gにも対応できるという

特にカジュアルなカメラ需要の受け皿としてスマホに押されがちなデジタルカメラだが、高倍率ズームはスマホには無い、デジカメに残された得意分野のひとつだった。だが望遠もスマホで十分撮れるとなれば、いよいよその優位性も危うくなる。今回のズーム技術は、デジカメ市場をもう一段縮小させてしまう可能性を秘めているのだ。

最大のライバルであるファーウェイも「HUAWEI P30」シリーズで望遠カメラを搭載するとみられており、今後は各メーカーが高倍率ズームで競い合うことは間違いなさそうだ。

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