LINEが法人向け新機能「通知メッセージ」で目指すもの

LINEが法人向け新機能「通知メッセージ」で目指すもの

2018.03.02

LINEは3月1日、法人アカウント向けの新機能「通知メッセージ」を発表した。電気・ガスや交通、運送など6社が第一陣として採用する。この新機能でLINEは何を狙っているのだろうか。

友だち登録していないユーザーにも通知を送れる

LINEの法人向け機能としては、現在300アカウント以上が登録している「LINE公式アカウント」や、中小企業や店舗向けの「LINE@」(30万アカウント以上)の2種類がある。これらのアカウントは登録費用や通知機能に差はあるが、いずれも企業や店舗とユーザーを直接繋ぐコミュニケーション手段として広く普及している。

現時点でLINEを毎月使う(MAU)ユーザーは7300万アカウントに達する。毎日利用する(DAU)ユーザーはその84%、6132万アカウントに達するという。ほぼ日本の人口の半数に達する規模だ

また、こうしたアカウントが主に企業側からの情報提供用の手段として使われているのに対し、チャットbotを導入するための「Messaging API」や、LINEアカウントと企業システムを連携させる「LINEビジネスコネクト」といった仕組みを提供することで、サポート窓口やパーソナライゼーションされたコミュニケーション手段としても機能するようになっている。競合するコミュニケーションツールと比べてもこうした機能は充実しており、LINEが日本においてコミュニケーションインフラと呼ばれる所以だ。

ただし、こうした機能はあくまで企業側のアカウントとユーザーのアカウントが「友だち」として登録されている状況でしか利用できない。たとえば製品のリコール情報などをLINEを使って告知したい場合、自社のアカウントに登録してくれている、ロイヤルティの高いユーザーにしか届かないことになる。しかし、実際はむしろそういった登録作業を億劫がるようなユーザーにこそ、通知を届けたい場合も多いわけだ。

そこで今回新たに加わった「通知メッセージ」では、企業側のアカウントと直接つながっていないユーザーに対しても通知が送れるようになる。ただしこれは全ユーザーを対象とした同通メッセージではなく、あくまで企業が送りたい相手にのみ届くという仕組みだ。

メッセージを送る仕組み

どうしてこのようなことが可能なのか。LINEはユーザー情報として名前や電話番号といった情報を保有している。一方、企業側もユーザー登録などを通じて電話番号などの情報を保有している。そこで企業側がメッセージを送りたい相手の電話番号とメッセージをハッシュ化してLINEに送信すると、LINE側でマッチングし、対象になるユーザーにのみ通知を送る、という仕組みだ。

個人情報の取り扱いが気になるところだが、今年1月に改訂されたプライバシーポリシーに含まれており、基本的にLINEを利用しているユーザーには合意を得ている状態だという。もし通知メッセージを受信したくないユーザーは、「通知メッセージを受信」設定をオフにすればいいという(個人情報の取り扱いがなくなるわけではない)。

メッセージには制限も

大変強力な機能だけに利用は制限されており、「広告を除く、重要性や必要性が特に高い、公共性の高いメッセージ」だけが通知されることになるという。例えば市役所などがこの機能を使うなら、光化学スモッグ警報など、従来なら屋外の防災無線などを使って送信されていたようなメッセージになると考えればいいだろう。企業であればリコール情報なども考えられる。個人情報を含んだ通知も送信されないということなので、行方不明の人の捜索などに使えるかは微妙なところだ。

通知メッセージの利用は一定のルールに基づいて行われるため、公共性の低いメッセージが送られることはないとしている

発表会では「通知メッセージ」を利用する第一陣として、JAL、ANA、東京電力、中部電力、東京ガス、ヤマト運輸の6社が登壇した。いずれも航空会社、電力・ガス、宅配便といった公共性の高いサービスを提供する企業だ。通知メッセージの用途としては「飛行機の運航情報・遅延/欠航情報」や「予約確認」、「電気/ガス料金の確認と通知」、「宅配便の配送通知/受け取り確認」などが主となる。

ANAは予約時にLINE通知にチェックを入れることで、予約の確認やLINEトーク上でチケットのQRコードを表示できるといった機能を提供
東京電力エナジーパートナーでは、LINE上から電気の使用量や電気代を確認できる機能を提供する

こうした通知機能はすでにアプリやウェブ、メール、あるいはハガキなどを通じて提供している企業も多いが、LINEの通知メッセージはDAU/MAUが多くリーチ率が高いこと、ペーパーレスによるコストダウンとエコなオペレーションにつながる点がメリットといえる。

東京電力の例だが、LINEで電気料金の通知ができれば、年間約4800トンもの紙資源節約につながるという

公共サービスもカバーする生活インフラを目指す

今後はユーザーの反応を見ながら、行政や金融の通知、さらには飲食店やレジャーなどの予約通知などへと、通知メッセージを適用するジャンルを増やしていきたいとしている。これによって多くの企業や行政機関が通知手段としてLINEを使うようになれば、LINEはこれまで以上に生活に欠かせない、生活インフラとして認知されるようになる。コミュニケーションする相手の有無に関わらず、LINEをインストールしていなければ生活自体が不便になる社会が目標というわけだ。

今後LINEが取り込みを目指しているジャンルは多岐にわたる

従来、こうした役割は携帯電話網の緊急メールやSNSなどが担ってきたわけだが、こうした機能もLINEが取り込もうという目論見だろう。当然キャリア側もこれに対抗したいところだが、すでに普及率が非常に高いLINEと同等以上の機能を準備したり、企業アカウントを誘致するのはなかなか大変そうに思える。

キャリア側がLINEに対抗するべく、SNSのアップデートやそれに準じる新機能を用意しているという報道も一部で行われているが、現時点では、ここまで数年をかけて地道に機能を更新してきたLINEが一歩リードしているように見える。LINEとそのパートナーは今後2〜3年をかけて通知機能の向上を目指してるようだが、果たしてユーザーからはどのように受け入れられるのかが注目される。

根付き始めた「必ず座れる」通勤、 鉄道に続いてバス業界も熱視線

根付き始めた「必ず座れる」通勤、 鉄道に続いてバス業界も熱視線

2018.11.19

座席指定の通勤電車から”通勤の高級化”の流れ?

ハイエンド通勤バスの実証実験を東急電鉄が実施

たまプラーザを舞台にした、日本初の郊外型MaaS

全席指定の通勤電車が首都圏の私鉄で運行され始めている。西武鉄道を主体に東急電鉄、東京地下鉄(東京メトロ)、横浜高速鉄道の各路線を乗り入れる「S-TRAIN」や、京王電鉄の「京王ライナー」などだ。座席指定ではなく、着席整理券による着席定員制の東武東上線の「TJライナー」もある。

帰宅時間に運行される京王ライナー

なぜ、私鉄各社がこうした通勤電車を運行し始めたのか。ラッシュを避けゆったり座ってオフィス街に移動できる利便性を提供するためだ。京王ライナーの場合、帰宅時間に下り方面に運行されるだけだが、これも「仕事で疲れているのに立って帰りたくない」という通勤需要に応えている。

S-TRAINやTJライナーの場合、休日には観光列車としての役割も果たす。S-TRAINはデートスポットとして注目される豊洲や、“食の街”として名をはせる横浜中華街を結んでいる。TJライナーは“小江戸”と呼ばれる川越や森林の多い憩いの場「森林公園」にアクセスできる。森林公園は今の時期、紅葉をライトアップするイベントが行われており、相当の集客がある。

ただ、どちらも平日はビジネスパーソンの脚となるという特徴を考えると、観光色の強い西武鉄道の「レッドアロー」や東武鉄道の「スペーシア」とは性格を異にする。

ハイグレード通勤バスでゆったりと

こうした“通勤の高級化”が、バスにも波及しそうだ。

東急電鉄は「ハイグレード通勤バス」の実証実験を2019年1~2月に行うと発表した。

ハイグレード通勤バスの外観(写真提供:東急電鉄)

ハイグレード通勤バスは客席が24席と広々としており、しかもかなり深めにリクライニング可能。Wi-Fi対応、USB、ACアダプタも装備し、パソコンなどが置けるテーブルも用意されている。そして、長距離バスのようにトイレまで備えているのだ。

座席は3列で、シート数は24席とゆったりしている(写真提供:東急電鉄)
かなり倒れるリクライニングシート(写真提供:東急電鉄)
テーブルにPCを置いて作業可能。写真左隅にACコンセントも確認できる(写真:東急電鉄)
通勤用バスながら、トイレ洗面台を完備(写真提供:東急電鉄)

 以前、両備グループの中国バスが運用する「ドリームスリーパー」という、超高級バスを拝見したことがある。しかもこちらは、さらに座席数が少ない14席で、個室タイプだ。とはいえ、ドリームスリーパーは東京~大阪や東京~広島を結ぶ長距離高速路線バス。睡眠を取ることが必須になると思うので、個室という選択肢になったのだろう。

一方、ハイグレード通勤バスは、読んで字のごとく“通勤”という言葉が入っている。つまり、長距離高速路線バスであるドリームスリーパーとは、まったく性格が異なる。

さて、今回の実証実験では、実験区間にたまプラーザから渋谷が選択された。このたまプラーザ駅がある東急田園都市線は、首都圏屈指の混雑路線だ。二子玉川や三軒茶屋からも乗客があり、朝の通勤ラッシュはすさまじいと聞く。国土交通省によると、ラッシュ時は185%の乗車率であるらしい。この田園都市線の混雑を少しでも緩和しようと、ハイグレード通勤バスの実証実験を開始する意図がみえる。

ただ、田園都市線の混雑は、東急電鉄そのものにも原因がある。というのも、東急の本拠である渋谷の再開発を急激に推し進めたからだ。セルリアンタワーや渋谷ヒカリエ、そして渋谷ストリームも開業した。どれもオフィス、商業施設、ホテルといった施設からなる複合ビル。オフィスが増えれば通勤客が増えるし、商業施設も朝の仕込みなどでラッシュ時に通う場合も十分に考えられる。そうした混雑を緩和するために、今回ハイグレード通勤バスを実験し、本サービスにつなげたいのだろう。

一方、東急電鉄はハイグレード通勤バスだけでなく、あわせてたまプラーザでオンデマンドバスやパーソナルモビリティ、マンション内カーシェアリングの実証実験も行う。オンデマンドバスはスマートフォンで乗車予約を行い、病院や公共施設への移動手段になる。パーソナルモビリティは、坂道や細い道路を移動しやすく買い物などに向く。マンション内カーシェアリングは、余っているクルマのリソースを同じマンション内で共有しようというものだ。

東急電鉄これらを日本初の「郊外型 MaaS」(Mobility as a Service:利用者の目的や嗜好に応じて最適な移動手段を提供すること)の実験だとしている。

このMaaSという考え方には、あのトヨタ自動車も積極的だ。トヨタは東京2020オリンピック・パラリンピックを舞台に「Mobility for All」を実現したい考え。パーソナルモビリティもこの施策に組み込まれる。

トヨタが実用化を進める「i-ROAD」(写真提供:トヨタ自動車)

 東急電鉄は実証実験でどのような結果を得るのか。“地獄”とも表現される通勤ラッシュの課題や少子高齢化への対応、高齢者の移動手段確保など、MaaSが貢献できる問題解決はさまざまだ。たまプラーザ~渋谷という、屈指の住宅街と屈指のオフィス街を結ぶこの取り組みが、“住みよい街づくり”にどのように関わっていくのか、楽しみだ。

文明の利器を使ったIT露出狂「AirDrop痴漢」

カレー沢薫の時流漂流 第16回

文明の利器を使ったIT露出狂「AirDrop痴漢」

2018.11.19

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第16回は、Apple製品ユーザーを襲う「AirDrop痴漢」について

我々の生活はありとあらゆるものが電子化し、飛躍的に便利になった。

しかし、あらゆるものの中には当然「犯罪」も含まれ、さらに「痴漢」まで含まれるようになってしまったのだ。

皆さんはiPhone、iPad、Macなどを使っているだろうか。そして満員電車など人が密集する場所へ行く機会が多かったりするだろうか?

上記に当てはまる人、特に女性は注意が必要である。私はと言えば、スマホはアソドロイド、パソコンはウィソドウズ、人ゴミどころか人がいるところにさえ滅多にいかないので鉄壁と言える。

「IT露出狂」の出現

最近、Apple製品を使用した「AirDrop痴漢」なるものが現れているらしい。「痴漢も電子化の時代、わざわざ相手の前に立って局部を見せるような奴は時代遅れですよ」と「AirDrop痴漢」がろくろを回すポーズで語っているかは知らないが、当然褒められたことではない。

「AirDrop」とは、Apple製品間でデータをワイヤレスで送り合うことができる機能である。自分のMacからiPhoneにデータを送ったり、iPhone同士で友人と写真を共有したりできて便利なものだ。しかし、「AirDrop」は登録いらずで簡単な一方、半径9メートル以内にいる「AirDrop」をonにしている相手になら、誰にでもデータを送れてしまうのである。

これを使って画像を共有しようとすると、「Petagine's_iPhone」など、近くにあるApple製品の端末名が表示される。ペタジーニのiPhoneなら止めておこうと思うかもしれないが、ここで「Danmitsu's_iPhone」とか、明らかに女性と思われ、しかも何かエロスを感じる(※個人の感想です)名前を見つけた場合、その端末にわいせつ画像などを送り付ける、というのが「AirDrop痴漢」の概要である。

相手に直接手を触れるわけではないので、人が多い場所だと送ってきた相手の特定はかなり難しい。被害者はわいせつ画像を見せられた不快感と、周りにそういう人間がいるという恐怖感を味わうことになり、加害者はそれを見て楽しむという、いわば「IT露出狂」だ。

便利な機能が出来るたびに、それを使った犯罪が現れるのが世の中というものだが、これも「AirDrop」の機能を悪い意味で上手く使った犯罪である。その知恵を他の事に生かせなかった上に、そういった行為を「楽しい」と思うセンスに生まれて来てしまったことは二重に不幸なことだ。

被害者は女性が多いが、男性でも被害を受けることがあり、グロ画像を送られてきたという被害もある。

また、俳優の加藤諒さんは新幹線に乗っていたところ、車内で携帯をいじっている自分の後ろ姿の写真が「AirDrop」に送られてきたと言う。わいせつ画像でなくても、「お前のことを見ているぞ」というストーカー的恐怖感を相手に与えることも可能なのだ。

被害と「誤爆」を防ぐシンプルな解決法

「AirDrop痴漢」を防ぐ手立てはないのか、というと意外と簡単で、平素は「AirDrop」の設定を「受信しない」にしておき、使う時だけonにすれば良い。

そのほか、名前や性別を特定されないように、「Gorira's_iPhone」など、ユーザーネームを変更しておくのも効果的だ。

画像を共有する相手などいないという人間は、Apple製品を買ったらまず「AirDrop」機能を切るぐらいでもいいかもしれない。何故なら、この「AirDrop痴漢」は知らず知らずのうちに加害者になる可能性もあるからだ。

恋人に送るはずだった語尾が「ぞえ♪」のLINEを上司に送ってしまったり、ツイッターのアカウント切り替えを忘れて美容垢に推しカプがどれだけ尊いか語ってしまったりするような「誤爆」が「AirDrop」でも起こるのである。

しかも、LINEなら登録してある相手にしか送らないだろうし、SNSならある程度他人が読むことを想定して投稿するだろうが、「AirDrop」の場合、半径9メートル以内にいる赤の他人に、1人で楽しむためだけのお宝画像を送ってしまうという事態になりかねないのだ。受信してしまった方も不幸だが、送った方もある意味それ以上不幸である。

このように、「AirDrop」は便利だが、意図せず自分の性癖を含む個人情報を流出させてしまう恐れもあるため、使う時だけonにするのが今のところ一番良いかと思われる。

ちなみに、この「AirDrop痴漢」は犯罪にならないかというと、もちろんそんなことはない。わいせつ画像を送るのは「猥褻物頒布罪」になり得るし、わいせつでなくても相手が不快に思う画像を送り付けるのは「迷惑行為防止条例」違反になる場合がある。

実際、電車内で「AirDrop痴漢」を80件以上繰り返したという男が書類送検されたという。送信者が特定しづらいと言っても「本気を出せば特定できるしバッチリ逮捕もされる」ということはすでに実証されているので、もしイタズラ感覚でやっている人間がいるなら、逮捕されない内に今すぐやめた方がいい。

このような使い方は、Appleが想定していなかったことだろう。つまり、最初に考え着いた人間は、アイディア力にすぐれている。

その力を犯罪以外に使えなかったのは、重ね重ね残念である。