ソフトバンク副社長が退任、白紙に戻る後継者問題と尽きない憶測

ソフトバンク副社長が退任、白紙に戻る後継者問題と尽きない憶測

2016.06.22

ソフトバンクグループは22日に開催した定時株主総会で、ニケシュ・アローラ氏が代表取締役副社長から退任することを正式決定した。アローラ氏は孫氏の後継者とされた人物。7月1日より顧問としてソフトバンクグループのビジネスに携わることになるが、経営の中枢から身を引くことで、後継者問題は事実上白紙に戻ったことになる。

代表取締役副社長から退任したニケシュ・アローラ氏

後継者問題白紙のワケ

ニケシュ氏はグーグルの最高事業責任者を務めた人物。約10年間グーグルに在籍し、経営陣の一人として戦略的パートナーシップからマーケティングなど様々な分野で手腕を発揮してきた。そんな同氏がソフトバンクグループ(当時のソフトバンク株式会社)に参画したのは2014年10月。それから半年近く経過した2015年5月11日の決算説明会の場で、孫代表の後継者筆頭として紹介されたのである。

それまでにも、後継者問題について言及することはあったものの、具体名は示されることはなく、入社から1年足らずで後継者筆頭に上り詰めた人物として、世間を驚かせた。それからわずか1年。アローラ氏は代表取締役副社長を退任することになり、後継者問題は白紙に戻ってしまったわけだ。

今回の経緯について、ソフトバンクはプレスリリース上で、トップ交代の時間軸のズレが問題だったとしている。孫氏は当面の間、トップとして指揮を執り続けたいという意向があったのに対し、アローラ氏は数年内での交代を希望していたという。

株主総会では、現在58歳の孫氏は、60歳の誕生日を迎える2017年8月11日をトップ交代の時期としていたと明かす。グーグル共同創業者のラリー・ペイジ、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグらシリコンバレーの有名な経営者はまだ若い。そうした彼らから比べると、60歳は"化石のような存在"と自ら指摘する。さらに「60歳の誕生日にバトンを渡そうと本当に思っていた」(孫氏、以下同)とするが、60歳まであと1年余りに迫った今、やり残したことは多く「また欲が出てきて、もう少し社長を続けたいと思って今日の発表にいたった」と説明した。

当初は本気だったのか

アローラ氏へのバトンの引渡し、60歳での引退。孫氏は一時期、それを本気で考えていたと思われる。2015年の決算発表の場で、ソフトバンクが何世紀にも渡り、持続的に発展し続け、グローバル企業へ変革するために「ソフトバンク2.0」という考え方を公表した。「テクノロジーが古くなる」「創業者が年をとる」「ビジネスモデルが古くなる」のがテクノロジー企業が永続的に繁栄できない理由として、"アローラ・フォーメーション"と呼べき人事、組織編制を2015年5月に発表し、以後、実行したからだ。

これが、先のアローラ氏の代表取締役副社長への就任、同氏を有力な後継者とする対外的な発表だった。組織編制ではホールディング会社を設け(現ソフトバンクグループ)、そこに事業資産、投資資産がぶら下がり、それらを両輪とした企業体に生まれ変わった。

そして、この投資資産の部分に深く関わったのが、アローラ氏というわけだ。同氏は在任期間中に、インドで通販サイトのスナップディール、ホテル予約サイトのオヨ、タクシー配車サービスのオラなどの企業に投資、韓国のモバイルEコマースのクーパン、米国のフィンテック企業ソーファイなどへの投資も主導してきた。さらには、アリババグループ、スーパーセルの株式売却の成功により、数カ月で180億ドルの現金資産を生み出し、財務の健全化にも貢献した。孫氏もこうした功績を讃えている。

なぜ顧問なのか

今回の人事について、孫氏の発言を拾えば、自身のわがままながらも、代表取締役を続投したい、アローラ氏を待たせてしまうのが心苦しい、というのが趣旨だ。しかし、腑に落ちないこともある。アローラ氏が経営陣から外れる必要があったのかだ。アローラ氏にソフトバンクグループ以外で達成したい目標があるのならば理解もできるが、Twitter上で次のステップについて問われると「急かさないでほしい。時間をかけて決めたい」とコメントしている。身の振り方は決まっていない段階で中枢から外れたわけである。

さらに、7月1日からは顧問として、引き続きソフトバンクグループや投資先企業へのサポートを続けていくとしているが、なぜアドバイザー役に落ち着いたのか、理解しづらい。ソフトバンク 2.0の推進は、投資のプロであり、世界のテクノロジー企業に人脈を持つ、アローラ氏は重要な役割を担っていたのではないか。

副社長退任について、アローラ氏のTwitterをたどると「時間とともに人の心は変わることもある。創造とアイデンティティは密接に結びついている」といった意味深かつオブラートに包んだコメントが見受けられる。孫氏も代表取締役を続投したいというわがままを理由としているが、それは表向きに説明のように見えてしまう。投資を巡るスタンス、経営を巡る方針に違いがあったのか。今回の出来事を巡る憶測は尽きそうにない。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。