トヨタ、日産、ホンダが本腰? 水素で走るクルマは普及するのか

トヨタ、日産、ホンダが本腰? 水素で走るクルマは普及するのか

2018.03.06

トヨタ自動車、日産自動車、ホンダをはじめとする日本企業11社が水素ステーション整備の新会社「日本水素ステーションネットワーク合同会社」を立ち上げた。水素で走る燃料電池自動車(FCV)の需要を最大化させるべく、水素をクルマに充填する施設を全国的に整備するとして野心的な数値目標を掲げる。なかなか到来しない「水素社会」だが、新会社の登場で何が変わるのか。

トヨタ、日産、ホンダ、JXTGエネルギー、出光興産、岩谷産業、東京ガス、東邦ガス、日本エア・リキード、豊田通商、日本政策投資銀行の11社が新会社を設立。英語の社名「Japan H2 Mobility, LLC」を「JHyM」(ジェイハイム)と略す

水素の大量供給・大量利用を目指す

なぜ今、水素ステーションの整備を急ぐのか。その背景について、新会社設立の発表会に世耕弘成経済産業大臣が寄せたビデオメッセージから言葉を拾うと、「パリ協定の発効で脱炭素化の潮流は決定的。脱炭素に向けた投資は世界中で拡大しており、日本では(脱炭素化のキーテクノロジーである)水素の活用が鍵」ということになる。

つまり、気温の上昇を抑える環境対策としても、日本の産業界を発展させるためにも、水素の活用が不可欠ということのようだ。また、2016年の数字で日本のエネルギー自給率は8.4%である一方、化石エネルギー依存度は88.8%だというから、エネルギーの多様化という観点からも、水素の活用が広まることには意味があるという。

水素の活用を広げるには、水素の低コスト化が重要だと資源エネルギー庁・新エネルギー部長の高科淳氏は指摘する。ガソリンやLNGといった既存の資源と水素を同程度の価格にまで安くするには、大量供給と大量利用の双方が必要とした。その大量利用に向けて、先陣を切るのがクルマという位置づけだ。

日本政府の水素基本戦略

水素ステーションの数を9倍に

水素で走るFCVが普及するには、ガソリン車にとってのガソリンスタンドにあたる水素ステーションの整備が不可欠。それを“戦略的”に整備しようというのが新会社設立の狙いだ。

トヨタがFCVの「MIRAI」を商品化してから今年で4年となるが、日本で整備された水素ステーションは計画中の施設も含め現状で101カ所。日本政府はこれを2030年までに約9倍の900カ所に増やすと言っているが、ジェイハイム社長の菅原英喜氏は新会社もこの数字を「チャレンジングではあるが」目指していくとした。

トヨタの「MIRAI」

これまでの整備ペースを鑑みても、ステーションを利用するFCVをあまり見かけない現状から考えてみても、これは野心的な数字に違いない。ちなみに、FCVの台数は2018年1月末時点で約2,400台だが、2030年には80万台に増やしたいというのが日本政府の「水素基本戦略」にある数値目標だ。

では、どうやって水素ステーションを増やすのか。

水素ステーションの建設費を低減

まず新会社は水素ステーションの整備方針を提示し、広くインフラ事業者に参画を呼び掛ける。参画したい事業者は新会社に水素ステーションの整備計画を提出、同社と新会社は共同で当局に補助金を申請し、共同で施設を建設する。施設ができたらインフラ事業者は新会社にこれを資産譲渡する。新会社は譲渡を受けたステーションの運営をインフラ事業者に委託する。これが流れだ。

従来、ステーションの建設には場所や要件などにもよるが1基あたり4~5億円かかっていた。ここに国や自治体からの補助金が50%くらい入るわけだが、新会社の画期的なところは、資金を提供する参加者として、豊田通商と日本政策投資銀行(DBJ)という投資家が入っているところだ。この投資家から建設費の10~20%の資金が出てくるというのがおおざっぱなイメージだという。

水素基本戦略の数値目標には、水素の量、コスト低減、利用サイドなどで意欲的な数字が並ぶ

金融投資家の参加メンバーは増やしていく方針で、現在も数社と交渉中とのこと。FCVが普及するかどうかは現状、誰にも正確に見通せないわけだから投資にはリスクが伴うが、DBJの穴山眞常務執行役員は「(新会社は)業界をこえて日本の最強メンバーが集まっているので、参加者でリスクを分散できるのであれば、支援できると考える。FCVが普及すればアップサイドも狙える」との考えを示す。

水素社会を牽引するFCVは普及するか、鍵を握るのは…

日本企業の「最強メンバー」が集まり、政府も後押しする姿勢を示す今回の新会社だが、実際に、水素ステーションの普及が同社を中心に進んだとしても、FCVを筆頭とする需要サイドにボリュームが出てこなければ、水素充填施設の稼働率は上がっていきそうにない。

FCVが実際に普及するかどうかについて、新会社に参加するトヨタの寺師茂樹副社長は「FCVやEV(電気自動車)といったクルマの普及率は、グローバルで見ると現状で1%以下。これがどうなるかはお客様、市場が決めることだが、何を提供できるかが自分たちの課題だ。従来の(エンジンで動く)クルマよりも『こういういいところがある』『買ってみたい』と思ってもらえるような、付加価値をいかに付けるか」が重要との見方を示していた。

トヨタは風力で発電した電力を水素に変え、それを近隣の工場などに運んで燃料電池フォークリフトに供給するという実証も行っていた

消費者は欲しいクルマを買うだろうし、エンジンで動くクルマが無くなると決まった時、選択肢がますます増えていきそうなEVから次のクルマを選ぶか、何らかの理由でFCVにするかは、消費者が付加価値を見て判断することだ。そのクルマが格好いい(かわいい)から買う人もいるだろうし、家の近くに水素ステーションがあるからFCVを選ぶ人もいるだろう。買う人が何を重視するかが問題だ。

結局のところ、自動車メーカーが“欲しくなるFCV”を発売できなければ普及は難しそうだ。すでにEVでは、スポーツカーやSUVなど、多種多様なクルマが世の中に登場しつつある。FCVに幅広い選択肢が登場するかどうかも、クルマを選ぶ消費者にとっては重要な要素となりそうだ。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。