「Osaka Metro」発足で、何が変わるのか?

「Osaka Metro」発足で、何が変わるのか?

2018.03.07

市営地下鉄と市バスを運営してきた大阪市交通局は、多額の負債を抱えていることから、2006年頃より民営化の検討に入っていた。そして2018年4月1日、地下鉄は「大阪市高速電気軌道株式会社(愛称:Osaka Metro)」へ、市バスは同社の子会社「大阪シティバス」へ、それぞれ全路線が引き継がれる。

地下鉄は一時、線路などの設備保有と、営業や列車の運行を別組織が担う「上下分離」が検討されたこともあった。だが、最終的には設備保有も営業もOsaka Metroが一括して行うこととなった。

左:大阪市営地下鉄を代表する御堂筋線の電車。右:現在、地下鉄の駅や車内には新会社移行をPRするポスターが随所に貼られている

「Osaka Metro」との愛称は公式には英文である。日本語で「大阪メトロ」と表記することは、厳密には正しくない。

公営地下鉄の全面移管は全国初

大都市圏の地下鉄の経営が別組織へ移された例としては、2004年に帝都高速度交通営団(営団地下鉄)を引き継いだ東京地下鉄(東京メトロ)がある。ただし、営団地下鉄は国鉄(JR発足後は政府)と東京都が株主であり、その出資は、東京メトロへそのまま移された。上場計画はあるが、現時点では完全な公的資本による会社である。

公営地下鉄が株式会社化される例は、Osaka Metroが初。しかしながら新会社は大阪市が100%出資する株式会社であり、経営決定権は大阪市と大阪市議会が持つ。現時点では民営化というより株式会社化と呼ぶ方が、イメージは近いかもしれない。

民営化に対応するため、市内の交通に関する基本政策の企画立案・推進、総合調整を目的として、大阪市は市長直轄の「都市交通局」を2017年7月に設置した。この部局がOsaka Metroと大阪シティバスの監理も行うことになっている。

大阪市は、市営地下鉄移管の目的、民営化の利点として、スピーディなサービス改善、不動産業など多様な事業展開、経営体質の強化を挙げている。市内交通の安全かつ円滑な実施については、もちろんのこと市営時代から退歩させるわけにはいかないがゆえの、大阪市の全株式保有。だから、今回の民営化の主たる目的は、経営の安定と多角化にほかならない。

大阪市営地下鉄単体では、単年度黒字決算を繰り返しており、累積欠損金も解消している。この状況を基礎として、今回の民営化により、税金を使う組織から、経営的に自立した税金を市に納める組織への転換が図られ、市の税負担を軽減するとしているのだ。一方、Osaka Metroは自らの意志決定と経営責任により事業を行い、公営企業ゆえの予算などの"縛り"からの脱却を図る。

なお、市バスについては資金不足。つまりは経営破綻状態に陥っているため、これは地下鉄と切り離して運行の継続を図り、経営再建を目指すことになる。

列車の運行と営業には影響なし

実際のところ、民営化されたとしても、すぐ何かが大きく変わるというわけではない。国鉄がJRとなり、営団地下鉄が東京メトロとなっても、すぐには変化がみられなかったのと同じ。電車や駅の看板についているマークが変わり、経営が移管されたのだなと、感じる程度だろう。

左:駅の看板類などは、新しいものに更新済みのところも多いが、これらもOsaka Metroのロゴ入りに変えられるのか? 右:多くの利用客に支えられ、Osaka Metroは安定した経営が見込まれる(淀屋橋駅)

列車の運行や運賃などは、大阪市営地下鉄時代と変わらないと発表されている。民営化直前の3月24日には御堂筋線と中央線のダイヤ改正が行われるが、さほど大規模なものではない。要するに、従来通りのダイヤがそのままOsaka Metroのダイヤとなるわけで、地下鉄に対する需要が大きく変わらない限り、列車の運行体系は変わらない、変えようがないということだ。

安定した経営が見込まれるだけに、運賃も当面はそのままであろう。すでに、民営化を前提として、2014年4月1日には1区の運賃を200円から180円に、2017年4月1日には2区の運賃を240円から230円へと引き下げている。一日乗車券(エンジョイエコカード)などの割引乗車券類や、ICカード利用の際の各種サービス、地下鉄と市バスとの乗り継ぎ割引なども従来通りだ。むしろ、民営化に伴う新サービスの展開の方が期待できよう。

他方、長年親しまれた大阪市営地下鉄の各種表示類は、やはり一新されるだろう。「○」と「コ」を組み合わせたマークや、ヒゲがついた独特な看板の書体、同じスタイルを貫いていた路線図などである。1月25日にはOsaka Metroのロゴも発表されており、それが4月1日には、一斉に駅や電車へ掲げられるはずだ。

左:現在の大阪市営地下鉄のマーク。4月1日には一斉に貼り替えられると思われる。右:「ヒゲ」がついているような、大阪市営地下鉄独特の書体。すでに新しい看板に取り換えられ、残っているところ自体、少ない

今後のデザイン戦略は、ロゴを基本として組み立てられるに違いないが、トイレのリニューアルや案内表示の刷新などは、すでに進められている。株式会社としての個性はどう発揮されるのかにも注目したい。

ただ、大阪市営地下鉄を単に「地下鉄」と呼ぶのが、これまでの利用客の常であった。「大阪メトロ」ならともかく、英文のOsaka Metroがどこまで浸透するのかは、わからない。イメージとかけ離れたとみなされる愛称が、利用客の批判を浴びる例が、昨今の鉄道業界には目立つのも不安要素である。

ましてや、見栄を嫌い実質を尊ぶ、運賃に見合うサービスが得られないと、すぐほかの鉄道へ逃げるなど、鉄道への関心が高い。そして"民尊官卑"などと揶揄される大阪人の気質が立ちはだかる。Osaka Metroが、これとどう折り合いをつけ、利用客に施策を認めてもらうのかが課題だ。民営化の成否は結局、電車に乗る利用客が判断することだろう。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。