4年ぶりの新車に復活をかける三菱自動車、背後では三菱商事に動き

4年ぶりの新車に復活をかける三菱自動車、背後では三菱商事に動き

2018.03.09

三菱自動車が発売したコンパクトSUV「エクリプス クロス」。国内で4年ぶりとなる新車は、三菱自の乗用車開発が今後、SUVと電動車に特化していく方向性を示す第一弾のクルマでもある。三菱グループ内では、三菱自の新車発売に合わせるかのように三菱商事が動きを見せた。

三菱自動車の方向性を示す新型コンパクトSUV「エクリプス クロス」

新車が背負う三菱自動車の歴史

「エクリプス」というのは、三菱自の歴史の中で、かつて輝いた車種に与えられた名称だった。三菱自と米クライスラーの資本提携時、1980年代後半の米国生産進出として、米イリノイ州にクライスラーとの合弁生産会社を設立し、現地生産の第1号車として作ったスポーツクーペが「エクリプス」という名前だったのだ。この米国合弁工場で生産されたエクリプスは、北米市場で高い評価を受けるとともに、日本市場にも逆輸入されて話題を呼んだ。

今回、新開発のコンパクトSUVを市場投入するに際し、三菱自の益子修CEOは「過去の遺産と新技術への挑戦を込めて『エクリプス』の名前を復活させた。自画自賛ではないが『いいクルマ』に仕上がった」と新生三菱自動車への意欲と覚悟のほどを示した。

「エクリプス クロス」の出来栄えに自信を示した益子CEO(左)。隣は商品企画を担当した林祐一郎チーフ・プロダクト・スペシャリスト(CPS)

アライアンス参加以前に走り出した「エクリプス クロス」

新型車「エクリプス クロス」は、三菱自の新中期経営計画「DRIVE FOR GROWTH」を達成するためのグローバル戦略車と位置づけられ、日本市場発売に先行して2017年10月から欧州、11月から豪州・ニュージーランド、アセアン地域、2018年1月から北米に向けた出荷が始まっている。最終的には約80カ国で販売する計画だ。三菱自はディーゼル搭載車を欧州向けに投入する計画を明かしており、将来的にはプラグインハイブリッド車(PHV)も用意する構えだ。

燃費データ不正問題から窮地に陥った三菱自は、2016年10月に日産自動車による34%の出資を受け入れ、ルノー・日産・三菱自の3社連合という新たな国際アライアンスの一員として再スタートを切った。日産傘下の三菱自では、日産主導による再建が進んでいる。だが、この「エクリプス クロス」は、日産との資本提携前から開発に着手していた新型車であり、三菱自が得意とするSUVとして、いろいろな意味で復活への思いを込めて、その橋頭堡としたいと意気込むクルマなのだ。

三菱グループ内で変化する三菱自と三菱商事の関係性

三菱自が復活再生に向け新型車「エクリプス クロス」を国内発売する直前の2月20日には、三菱商事が三菱自への出資比率を引き上げて従来の1割弱から20%とし、同社を持分法適用関連会社にすると発表した。三菱商事は株式公開買い付け(TOB)を実施し、三菱重工業などが持つ三菱自株式を取得する。

TOBが済んでも、三菱自の筆頭株主は発行済み株式の34%を所有する日産のままだが、第2位には変化がある。従来、三菱自株式の9.24%を持つ三菱商事は名目上の第2位株主だったのだが、三菱重工は子会社保有分などを合わせて実質的に三菱自株式の約10%を所有していた。TOBが完了すると、三菱重工の三菱自に対する出資比率は1.45%となり、三菱商事は同20%となるので、三菱商事は名実ともに三菱自の第2位株主となる。

これにより、日本最強財閥といわれる「スリーダイヤ」の三菱グループ内で、三菱自への出資関係は三菱商事に集約されることになる。日産とともに、三菱商事も三菱自の経営面への関係性を強めそうだ。「商社」としては、自動車関連事業の強化にも結びつけたい意図が感じられる。

「エクリプス クロス」の国内販売に合わせたかのように、三菱グループ内では三菱自動車に対する力関係に変化があった

そもそも三菱自は三菱重工の自動車部門だったのだが、1970年に三菱重工100%子会社として分離し、三菱自動車工業としてスタートした経緯がある。本来、三菱重工と三菱自は親子の関係であり、三菱自がリコール隠しなどの不祥事で経営破綻の危機に直面した2004年に、支援に加わった三菱グループの中で最も深く関わったのは三菱重工だった。

三菱自の人事にも注目

しかし、三菱重工はここへきて、民間ジェット機「MRJ」の開発遅延や火力発電設備の不振に加え、造船など不採算事業のテコ入れを迫られるなど、業績の立て直しが急務となっていることから、三菱自株の大半を売却することを決めた。これにより、歴史ある三菱重工と三菱自の親子関係は完全に解消することになった。

逆に三菱商事としては、これを機に三菱グループの代表として、日産やルノーとも連携し、商社としての自動車関連事業を一段と強固なものにしたいと考えていそうだ。すでに三菱商事は、リコール隠し問題の後、ダイムラーと三菱自の提携関係が崩れたことから、2005年に益子修氏を送り込んでいる。その後も三菱自の東南アジアやロシアでの海外販売の一端を担い、すでに37人を三菱自の海外部門を中心に派遣しているのだ。

三菱商事も「エクリプス クロス」の成功に期待していることだろう

今回、特に注目されるのは、三菱商事が日産に次ぐ2位株主となったことにより、2018年4月1日付けで三菱商事の辻昇執行役員・自動車事業本部長が三菱自の経営戦略担当専務執行役員に就任することである。日産からの役員派遣との兼ね合いもあろうが、三菱自では三菱商事出身の益子氏が長くCEOを務めているだけに、ポスト益子の有力候補とも目される。

かつては総合自動車メーカー、これからは何を目指す?

かつては軽自動車から乗用車、コンパクトカーから大型車「デボネア」までの幅広いバリエーションを抱え、これに商用車も軽トラから小型トラック「キャンター」、中・大型トラックと取りそろえた三菱自は、世界にも類を見ない総合自動車メーカーだった。このうち、トラック部門の「三菱ふそう」は分離独立し、ダイムラーの傘下となった。

三菱自としては、軽自動車で初の電気自動車(EV)「i-MiEV」(アイ・ミーブ)を市場投入し、SUV「アウトランダー」のPHV(三菱自ではPHEVと呼称)は、世界の市場で高い評価を受けている。今後の商品戦略も得意のSUVに照準を絞り、このタイプのクルマのバリエーションを広げるとともに、電動化を進めていく方針だ。今回の「エクリプス クロス」はその第一弾でもある。

三菱自動車が得意とするSUVの「エクリプス クロス」。将来的にはPHVも追加となる

新型車効果で国内販売に明るい兆しも

ただ、今回の国内投入が4年ぶりの三菱自の新型車ということで、国内の三菱ディーラーは、ようやく士気が上がってきていることだろう。この間の辛抱は、大変なものだったと想像できる。かつては「ギャラン店」と「カープラザ店」という2つの販売チャネルがあったが、一本化されても商品力が伴わないと厳しい。「エクリプス クロス」に続く三菱の商品力強化の方向が、国内三菱ディーラーの立て直しにもつながることになる。

三菱自動車が掲げる商品力強化がうまくいくかどうかは、国内ディーラー網の士気に直結する問題だ

数字的に見れば、三菱自の業績V字回復は今期にも見えることになる。だが真の復活は、日産とのシナジー効果に頼るだけでは達成できないはずだ。

三菱自にとってグローバル販売は100万台レベルだが、主体は東南アジアのタイとインドネシアであり、収益力の依存度も高い。100万台のうち、同社が強みとするアジアでの販売台数は約39万台と4割近くを占める。すでに米国生産からは撤退し、アジアに次ぐのは欧州の約19万台だ。燃費不正問題で大幅に販売減となった日本では、信用回復とともに新型車効果で10万台復活を狙うことになる。

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

2019.01.21

CESで存在感を放つアマゾンとグーグル、各社の最新動向は?

レノボはGoogleアシスタント、Alexaに対応した新製品を発表

アップルは各社にプライバシー問題を警告、独自路線を貫くか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」で、別格の存在感を放っていたのがアマゾンやグーグルだ。2018年はグーグルがCESに初めて本格出展したことで話題となったが、2019年も大がかりなブースを設置して来場者の注目を浴びた。

ラスベガスのCES会場前に設置されたグーグルのブース

アマゾンやグーグルは音声アシスタントで競争しており、家電製品への組み込みを進めている。2019年のCESではどうだったのか、両社の最新動向をレポートする。

グーグル対アマゾンの音声争いが加速

グーグルは今年もCES会場に「Googleアシスタント」を目玉にした大型ブースを設置。巨大な壁面広告やモノレールのラッピング広告で存在を示し、家電メーカーのブースには白い帽子のスタッフを派遣するなど、CESを乗っ取る勢いだった。

「Googleアシスタント」に対応した家電製品が並ぶグーグルブース

一方、Alexaで先行するアマゾンも展示エリアを拡大。業界やメーカーの枠を越えた「Alexa対応製品」を一挙展示することで、エコシステムの強大さを示した。家庭向けのスマートホーム用途だけでなく、オフィスで使う事例も示すなど、応用範囲を広げている。

アマゾンは「Amazon Alexa」対応製品をブースに集めた

具体的な対応製品として、音声で操作できるスマートスピーカーやスマート電球はもちろんだが、これまでにないジャンルの製品も増えている。たとえばレノボは「目覚まし時計」と「タブレット」の2機種を発表した。

レノボの目覚まし時計「Smart Clock」(左)とタブレット「Smart Tab」(右)

Googleアシスタントに対応した「Smart Clock」は、目覚まし時計の置き換えを狙った製品だ。音声だけでなく画面のタッチ操作にも対応しており、カレンダーの予定や寝覚めのいい音楽、室内の照明と連動した目覚まし機能を提供する。

一方、Amazon Alexaに対応した「Smart Tab」は、一般的なAndroidタブレットとして使えるほか、ドックに置くと音声とタッチで操作するスマートディスプレイに早変わりする。自宅でも外出先でも1台2役で使えるお得さが特徴だ。

アップルが投げかける「プライバシー」問題

CESに両社が注力する背景には、音声アシスタント市場におけるシェア争いがある。「Amazon Echo」や「Google Home」といったスマートスピーカーの売上ではグーグルがアマゾンを猛追しており、2018年第1四半期には逆転劇を果たした(英Canalys調べ)。しかし第3四半期にはアマゾンが再び首位に立つなど、接戦が続いている。

その勢力はスマートスピーカーを越えて、家電全体に広がりつつある。家電の操作といえばスイッチやリモコン、タッチ操作が一般的だが、音声に対応する製品は増えている。これまで独自の音声アシスタント「Bixby」を展開してきたサムスンも2019年にはグーグルとアマゾンとの連携を発表した。

サムスンはスマートTVでグーグル、アマゾンと連携

このまま音声が普及していけば、世界中の人々がインターネットのサービスやコンテンツにアクセスする手段になる可能性がある。音声アシスタントのシェア争いは、スマホOSのシェア争いと同じくらい重要というわけだ。

ただ、音声操作はプライバシーに関する懸念もある。音声操作を受け付けるには、マイクが常時オンになっている必要があるからだ。マイクをオフにする機能はあるとはいえ、家庭内のプライベートな会話を常にマイクに拾われるのは心地よいものではない。

この問題に一石を投じたのがアップルだ。CES会場からよく見えるホテルの壁に意見広告を掲載。ラスベガスの有名なコピーをもじって「iPhoneで起きることはiPhoneの中にとどまる」と訴え、サードパーティと広く連携するアマゾンやグーグルを牽制した。

アップルはCESでプライバシー重視をアピール。元々の言葉は、「What happens in Vegas stays in Vegas.(ラスベガスで起きたことはラスベガスに残る)」というもの

アップルも独自の「Siri」をiPhoneに搭載し、スマートスピーカー「HomePod」も販売している。だがサードパーティとは積極的に連携していないため、音声のシェア争いでは不利な立場に追い込まれている。アップルがこのまま「プライバシー重視」路線を貫くかどうかも、音声アシスタント市場の行方を左右しそうだ。

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第30回

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

2019.01.21

いまや当たり前の「ワイヤレス充電」スマホ

開発も販売も、実は日本が世界初だった

過去にナゼ廃れたのか、今はナゼ流行っているのか

最近、ケーブルに接続する必要なく充電ができる、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンが増えてきている。一時は姿を消していたワイヤレス充電が、ここにきて再び脚光を浴びるようになったのはなぜだろうか。

世界初のワイヤレス充電対応スマホは日本製

スマートフォンを充電する際、多くの人は充電用の電源ケーブルに接続して充電していることだろう。だがここ最近、スマートフォンをケーブルに接続することなく、専用の充電台に置くだけで充電ができる「ワイヤレス充電」に対応したスマートフォンが増えているのだ。

例えばアップルのiPhoneシリーズであれば、2017年発売の「iPhone 8」シリーズ以降からワイヤレス充電に対応している。他にもグーグルの「Pixel 3」やサムスン電子の「Galaxy Note 9」、そしてファーウェイの「HUAWEI Mate20 Pro」など、海外製のハイエンドスマートフォンを中心として、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンは着実に増えている。対応スマートフォンの広まりとともに、ワイヤレス充電をするための充電器も数が増え、家電量販店などで目にする機会も増えている。

ワイヤレス充電対応機種は急増しており、「iPhone XS」など最新のiPhoneもワイヤレス充電に対応している

充電をするためにケーブルに接続するというのは手間がかかるし、何よりケーブルは絡まりやすく取り回しが面倒なもの。それだけに、スマートフォンを置くだけで充電できるワイヤレス充電は消費者にとって非常に便利だ。したがってスマートフォンに搭載するという動きも比較的古くから進められていたのだが、現在のように広く普及するまでにはかなりの時間を要している。

実は、スマートフォン単体でワイヤレス充電ができる機種が最初に投入されたのは日本で、開発したのも日本企業である。2011年にNTTドコモから発売された、シャープ製の「AQUOS PHONE f SH-13C」がそれに当たり、Wireless Power Consortium(WCP)が策定したワイヤレス給電規格の1つ「Qi」に対応。Qi対応の充電器に置くだけで、スマートフォンを充電できる仕組みを備えていたのである。

世界初のワイヤレス充電対応スマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」は、2011年にNTTドコモが提供。専用の充電器も提供していた

しかも当時、NTTドコモはQi対応のワイヤレス充電ができるスマートフォンの開発に力を入れており、「おくだけ充電」という名称まで付けて積極的なアピールを進めていた。さらにシャープだけでなく、NTTドコモと関係の深い他の国内スマートフォンメーカーともQi対応のスマートフォン開発を進め、市場に多くのワイヤレス充電対応スマートフォンが存在した時期があったのだ。

規格や充電性能の問題が解決し採用機種が増加

だが2013年を境に、NTTドコモのラインアップからワイヤレス充電対応のスマートフォンが一時期姿を消し、ワイヤレス充電は急速に存在感を失うこととなる。当時ワイヤレス充電に力を入れていたパナソニックモバイルコミュニケーションズやNECカシオモバイルコミュニケーションズなどが、iPhoneなどに押されてスマートフォン市場から撤退した影響も大きいが、より本質的な要因は2つあると考えられる。

1つは、急速充電に対する消費者のニーズが高まっていたためだ。当時はバッテリーの性能が現在より低かったため、スマートフォンを使っているとあっという間にバッテリーを消費してしまい、不満の声が多かったため、何よりも素早く充電できることが強く求められていたのだ。しかしながら当時のQiは電力の出力が弱く、充電速度が遅かったことから、消費者のニーズとマッチせず姿を消してしまったのである。

そしてもう1つの理由は、ワイヤレス給電規格が複数存在し、業界全体で、どの方式を採用するか方向性が定まっていなかったため、後続するスマートフォンがなかなか出てこなかったことだ。実際、2015年に日本でも発売されたサムスン電子の「Galaxy S6」「Galaxy S6 edge」はQi規格だけでなく、Power Matters Alliance(PMA、現在はAirFuel Alliance)が策定したワイヤレス給電規格も採用することで、ワイヤレス充電に対応させている。

2015年発売の「Galaxy S6 edge」は、当時まだ事実上の標準規格が定まっていなかったこともあり、複数のワイヤレス給電規格に対応していた

そして最近になってワイヤレス充電が再び日の目を見ることができたのは、それらの課題が解決したことが大きく影響している。急速充電に関しては、当初Qiのモバイル機器に向けた「Volume I」という規格では、送信できる電力が5W以下とされていたため充電速度が遅かったのだが、その後10W、15Wといったより大容量の送信ができる規格の策定が進んだことで、より速く充電できるようになったのである。

また規格の統一に関しては、アップルなど影響力の大きな主要スマートフォンメーカーがQiの採用に傾いたことで、Qiがスマートフォン向けの事実上標準規格となった。そのため多くのスマートフォンメーカーがQiを採用しやすくなり、急速に数が増えたといえる。

さらにもう1つ、高いデザイン性や防水性能など、スマートフォンに求められる要素が年々増えていることも、ワイヤレス充電が復活した大きな要因として挙げられるだろう。一方で、かつて必要だったPCへの接続など、スマートフォンに何らかのケーブルを接続する必要性は年々薄くなっている。将来的にはスマートフォンのワイヤレス充電対応が当たり前となり、充電用のUSB端子やLightning端子がなくなることも十分あり得るだろう。