東北で初開催、KDDIが防災訓練で伝えたかった

東北で初開催、KDDIが防災訓練で伝えたかった"多様性"

2018.03.13

7年前の3月11日、誰もが忘れもしない東日本大震災が起こった。さまざまなライフラインが寸断されるなか、通信網とて例外ではなかった。例えば、2011年3月12日時点で可動できなかったau携帯基地局は1933局あった。「津波被害があったから…」と思いがちだが、そのうち77%は停電によるもので、回線の断線や機器の破損、津波被害などによる電波のストップは22%に過ぎなかった。

東日本大震災で被災した携帯基地局の内訳(資料は2014年のもの)

KDDI 理事 技術統括本部 運用本部長の奥山 勝美氏は、「通信を届けられなかった」と振り返る。7年が経つ直前の3月8日、甚大な被害を出した東北の宮城の地で、KDDIとして初めて災害対策訓練を行い、その開会宣言の場で語った言葉だ。KDDIはその後、東日本大震災の教訓を生かして太陽電池パネルや蓄電池を組み合わせた「トライブリッド基地局」などを展開している。

災害時に"多様性"を

なぜ、7年の時を経て宮城県・仙台市の宮城県総合運動公園で災害対策訓練を行ったのか。KDDI 技術統括本部 運用本部 運用品質管理部長の大内 良久氏は、「災害時に陸・海・空のすべてで通信を確保できる"多様性"を実現できたためだ」と話す。

KDDI 技術統括本部 運用本部 運用品質管理部長 大内 良久氏
陸・海・空におけるKDDIの取り組み

KDDIは、2010年より防衛省や陸上自衛隊の各方面隊と災害協定を締結しており、災害時におけるインフラ復旧の協力関係にある。「陸」では、事前に災害時における協力体制を取り決め、基地局の修復や臨時基地局の設置などで自衛隊車の協力を仰ぐ。「インフラ復旧ならば、パトランプがあるのでは?」という疑問もあるが、自衛隊の協力によって、例えばがけ崩れなど危険な場所を通行する場合など、孤立地域への迅速なインフラ復旧が可能になる。

一方で「海」についても「船舶型 携帯電話基地局」を2012年より実証実験を進め、2017年にはグループ会社が所有する海底ケーブル敷設船に実践配備している。東日本大震災の記憶も新しいが、沿岸部は海岸線の基地局が利用できなくなる可能性が高く、かと言って周囲の山々の基地局も断線など"万が一"の可能性がある。海岸線から少し離れた位置であれば津波被害の影響を受けない船舶が通信を担うことで、助かる地域があることから考案された。

船舶型 携帯電話基地局の設営作業も行われた(スライドは2014年資料より)

最後の1ピースである「空」は、ドローンを活用した"空飛ぶ基地局"。こちらも実証実験を進めており、昨年12月には鹿児島県の屋久島で実稼働に成功している。ドローンはスペック上で40分、実稼働で30分程度しか可動できないものの、高度100mほどに飛ばすことで半径800m程度のエリアをカバーできる。災害直後の急を要する際、迅速に通信手段を確保するという意味でも用意された「空」なのだ。なお、「空」の取り組みではもう一つ、自衛隊機による輸送も想定されている。

ドローン基地局
自衛隊ヘリも参加し、KDDIの作業員・機材を運搬した

KDDIは同時に、グループ会社のUQコミュニケーションズやイオン、東北インテリジェント通信(TOHKnet)とも"多様性"を実現する。例えばイオンは、震災直後の混乱時に現金を必要とする地域住民に対して簡易的な避難場所となるバルーンシェルターと車載ATMを提供している。KDDIとイオンは今年1月に災害協定を締結しており、災害発生時、イオンモール内に避難所が開設された場合に、車載型基地局の設置場所を確保し、避難所周辺での通信エリア復旧を実現させるという。

一方でUQコミュニケーションズとTOHKnetは、災害時のインフラ復旧で元来の通信復旧のサポートを行う。KDDIはUQが提供するWiMAX/WiMAX 2+回線を借り受けており、同社の車載型基地局も活用する形だ。TOHKnetは東北地域の通信インフラを提供しており、災害時にはUQの車載型基地局に光通信のアクセス伝送路を貸与する形でサポートする。

イオン銀行のバルーンシェルター
UQコミュニケーションズも車載型基地局を用意した

もちろん、KDDIに限らず、携帯主要3キャリアはさまざまな災害対策を進めている。

例えばソフトバンクの「空」対策では、ドローンではなく「気球基地局」を用意。ドローンとは異なり、地上に係留する形で基地局を設置するため、1カ月の連続使用が可能になるのが強みだ。NTTドコモも、仙台市と「ICTを活用したまちづくりに関する連携協定」を締結しており、防災・減災にとどまらず、包括的な協力体制を自治体と組んでいる。

ソフトバンクの「気球基地局」

また、3キャリア共同で推し進めている災害対策が「00000JAPAN」だ。2016年に起きた熊本地震の際にクローズアップされたが、各キャリアが提供するWi-FiスポットのSSIDを無償開放したり、00000JAPANという名前で各避難所でSSIDを開放することで誰もが通信インフラを利用できるようにしたものだ。東日本大震災を教訓にスタートした施策で、冒頭の大内氏がこの施策に携わっており、熊本地震では一定の成果を挙げたと、以前に語ってくれた

さまざまな方法で通信を確保する手段を用意している携帯キャリアだが、早くも次世代通信規格「5G」を活用した災害対策の事例も出てきた。

3月8日のKDDIの訓練では、5G基地局の実験免許をわざわざ取得して臨んでおり、5Gで被災地と遠隔地にいる人をつなげるデモンストレーションが行われた。デモは、避難所に避難した母子が、遠隔地にいる父親とVRを介して連絡するというものだ。KDDIは同様の仕組みを使った一般用途の実験を1月にも行っている。VRは臨場感溢れる映像体験によって、従来の映像とは違う新たな価値を生み出す。災害時にこそ、「あたかも隣りにいるように感じられる価値」を提供したいというのが、今回のデモの狙いだろう。

VRの映像を瞬時に伝送した5G
28GHz帯の電波を利用した
360度カメラを用意し、避難所の母子の映像を親に届けた
実験ではサムスン電子の機材を使用してデモが行われた

LTEから5Gへの進化では、「大容量」と「低遅延」「多接続」が3大メリットとなるが、VRはその中でも「大容量」と「低遅延」を活かしたものだ。VRは4K、8K映像を360度に引き伸ばして見せる。フルHDでさえ高画質なものはビットレートが数十Mbpsに及ぶ。解像度が4倍、16倍にも達する4K、8Kの映像を送信するには、既存のLTEでは容量が足りなくなることは、想像に難くない。

今回の訓練では、200Mbps程度のアップロード速度を記録しており、避難所側でVR向け動画を処理、送信して遠隔地側の父親へと瞬時に届けていた。低遅延についても、電波の搬送路としては数ms程度の遅延を実現していたが、「むしろ映像のエンコード/デコードで数百ms単位の遅延が生じる」と、KDDI モバイル技術本部 次世代ネットワーク開発部 アクセスグループ グループリーダーの黒澤 葉子氏は話す。

5GはLTEの通信技術をさらに昇華させたもので、根本的な新技術ではない。それであっても、将来的には20Gbpsという大容量、1msという低遅延、1km2あたり100万台という多接続環境が実現する。「通信がボトルネック」という時代が終わる未来が、そこまで来ているいい例だろう。

KDDI モバイル技術本部 次世代ネットワーク開発部 アクセスグループ グループリーダー 黒澤 葉子氏
5Gは多大なるメリットをもたらす

災害対策に5Gを、というアイデアは、あくまで試験段階。そもそも、各携帯キャリアは2020年に5Gのスタートを予定しているものの、都市部、特に三大都市圏でしか当初は利用できない公算が高い。これは、LTEはもちろん、3Gも通ってきた道のりであり、いずれ全国に広がるはずだ。

ただ、商用サービスがスタートしてから数年が経ってようやく全国で利用できる環境、しかも中長期的にLTEと共存していくとみられる5Gありきで、どこまでこうした利活用の方法を模索できるかは難しい側面もあるように思う。

とはいえ黒澤氏は、5Gのその他の活用手法として、遠隔監視システムの高度化による予兆保全などが実現できると話す。例えば、KDDIのドローン基地局に4Kカメラを搭載して、基地局機能を提供しつつ、自衛隊などと協力して山間部における土砂崩れの把握といったことも実現できるはずだ。

5Gは、通信の可用性を大きく広げる存在。各キャリアとも、さまざまな企業と利用用途の想定を模索して実証実験を繰り返しているが、日本人なら誰もが災害と隣り合わせで生きている中で、防災という側面でも同様の取り組みに期待したい。

マーケティングと恋愛が似てるってどういうコト?Facebookで聞いてきた

恋するSNSマーケティング講座 第1回

マーケティングと恋愛が似てるってどういうコト?Facebookで聞いてきた

2018.11.14

Facebook社員に「マーケティングのイロハ」を聞く新連載!

第1回は、講師の紹介と「マーケティングと恋愛」の関係性について

フェイスブック ジャパンのSNS運用コンサルタントに「SNSマーケティング」について聞く短期連載。初心者~中級者に知ってほしい「マーケティングの考え方」について、全5回にわたって説明します。

キーワードは「恋愛」。とっつきづらいマーケティングも、恋愛に喩えて考えてみると、意外とわかりやすいようです。

「恋愛とマーケティングは似ていると思うんです」

FacebookやInstagram、TwitterなどのSNSを活用したマーケティングは今や企業にとって欠かせないものになっている。

一方で、「どこから始めればいいのかわからない」「そもそもSNSマーケティングって?」といった疑問もまだまだあるだろう。そこで今回は、フェイスブック ジャパンのクライアントソリューションズマネージャ リードを務める丸山祐子さんを講師に迎え、SNSマーケティングを“恋愛”に喩えてわかりやすく解説してもらうことにした。

フェイスブック ジャパンのクライアントソリューションズマネージャ リード 丸山祐子さん

なぜ“恋愛”なのか。それは「日々のお客様とのやりとりの中で、恋愛とマーケティングは似ていると感じることが多かったから」と丸山さんは言う。

丸山さん自身も現在婚活中の身。これまで仕事最優先で生きてきたが、最近になってパートナーを探すべく婚活を開始したという。その過程で感じたのが、前述の恋愛とマーケティングの共通点だったというわけだ。

「流行」は人の手でつくられるモノ

今回は連載初回ということもあるので、まずは講師である丸山さんの経歴から紹介しよう。

東京で生まれ育った丸山さんは、中高大一貫校に通っていた。小学生時代から「自分の知らない世界に行ってみたかった」という丸山さんは、高校時代に初海外となるカナダを訪れる。

「知らない言語で話しかけられたり、東京では見られない地平線や水平線を見たりして、私の知っている世界はなんて狭いんだろうと思いました」(丸山)

海外に魅了された丸山さんは、一念発起してカリフォルニアの大学に進学。そのころ、「ファッションの流行は自然に生まれるのではなく、必ず裏には仕掛人がいる」ということを実感したのがキッカケとなり、「自分も人の心を動かす仕事がしたい」と考えるようになった。

大学卒業後は日本に戻り、人材業界で働くことに。長くアメリカで過ごしていたこともあり、日本の業界事情がつかめない中、「まずはいろいろな業界を知りたい」と考えたためだ。

その後、「リーマンショック」が起こり人材業界の業績が悪化したこともあり、業務を通して興味を持つようになったデジタル業界への転職を決意。転職先は、IT業界を中心にメディアプランニングなどを行う電通の子会社。メディア担当として、デジタル広告のイロハを学んだ。

そこで担当していたクライアントが、当時日本に上陸したばかりのFacebookだった。その後、それまで培ったデジタル広告のノウハウをより活かすべく、フェイスブック ジャパンへ転職し、現在に至る。

広告はラブレター「相手に届かないと意味がないんです」

丸山さんは現在、FacebookやInstagramの広告メニューについて、運用コンサルやメディアプランニングなどを行っている。また、Instagramをより企業に活用してもらうためのプロジェクトメンバーとしても活動しているそうだ。

さて、そんな丸山さんがFacebookのコンサル業務を通して常々感じていたのが「恋愛とマーケティングの共通点」である。

どんな業界でもそうだが、良い製品だからといって何もせずに売れるわけではない。“届けたいメッセージを届けたい相手にちゃんと伝える”必要がある。これがマーケティングの目的だ。

「広告はよくラブレターに例えられます。いくらラブレターを書いても、それがちゃんと届けたい人に、その人の心に響くかたちで届かないと意味がありませんよね。ラブレターを届けるために恋愛にもマーケティングが必要なんです」(丸山)

婚活において“ラブレターを届けるべき相手”とは、まだ見ぬ将来のパートナーだ。その相手はどこかに存在しているはずだが、まだ出会ってはいない状態である。運命の相手と出会うために重要なことの1つは「とにかく出会いの数を増やすこと」だという。

「1人と会ってみて、その人が運命の相手ならラッキーですし、そういうケースもあるでしょう。でも、そうでない場合には、たとえば運命の相手と出会える確率が1/100だとして、10人と会うのと100人と会うのではどちらの方が出会える確率が高いか、言うまでもありません」(丸山)

これはそのままマーケティングに置き換えても同じことが言える。自社の製品を購入してくれる潜在的な顧客の態度変容効果が一緒であるなら、できるだけ多くの人数に広告を届けた方が売上は伸びるはずだ。

「そう考えると、婚活でもせっかくの週末に部屋にこもっているのはもったいないなと思いますよね。積極的に行動をおこして、多くの人に出会う機会を増やすことが大事なんです」(丸山)

一方で、重要なのは数だけではないと丸山さんは言う。多くの人にリーチすることは大前提として、そこからさらに“出会いの効率”を上げていく必要があるのだ。

では「数」に続いて大事なこととは? 次回は効率を上げるために必要な「ターゲティング」について、これまた恋愛と絡めて聞いていく。

第2回「恋するSNS講座」は11月20日に掲載予定です。

クルマ新時代の駐車場は何を目指す? 「CASE」で見えてきた未来像

クルマ新時代の駐車場は何を目指す? 「CASE」で見えてきた未来像

2018.11.14

日本自動車研究所が「自動バレーパーキング」の実証実験

駐車をシステム任せにできる仕組みとは?

未来の駐車場はクルマの“ハブ”になる

自動運転、電動化、カーシェアリングなど、新たな技術・サービスの登場により変革期を迎える自動車業界。クルマの乗り方、使い方を根本的に変えるかもしれないこれらの要素をまとめて「CASE」というが、この文字を目にする機会も増えてきた。クルマが変わればクルマに関連するモノや場所も変わりそうだが、例えば駐車場は、どのような姿になっていくのだろうか。日本自動車研究所(JARI)の実証実験で、その一端を垣間見た。

「CASE」の進展で駐車場の姿も一変する?

「バレーパーキング」を自動化

「CASE」とは「Connected」(コネクティッドカー)、「Autonomous」(自動運転)、「Shared & Service」(カーシェアリングなど)、「Electric Drive」(クルマの電動化)という4つの言葉の頭文字をとってダイムラーが使い始めた概念のこと。そのうち、コネクトと自動化の2つを使って、JARIが実用化の道を探っているのが「自動バレーパーキング」というシステムだ。

JARIは経済産業省および国土交通省の委託を受け、2016年度から「一般車両による自動バレーパーキングシステムの社会実装に向けた実証」というプロジェクトを進めている。「バレーパーキング」とは、例えばホテルやショッピングセンターなどにクルマで乗りつけたとき、キーを従業員に預けて、代わりにクルマを駐車しておいてもらうサービスのこと。その自動化に向けて、JARIはシステム、制度、事業性などを検証してきた。

JARIは今回、自動バレーパーキングシステムの機能的な確認を行うためとして、東京都港区にある「デックス東京ビーチ」の駐車場で実証実験を実施。その模様を報道陣に公開した。そこではクルマが勝手に動き、定められた駐車スペースに止まり、再び動き出す様子を見ることができたし、自動バレーパーキングを含めた駐車場の未来像に関する話も聞くことができた。

JARIはデックス東京ビーチ駐車場の2階で実証実験を実施した

自動バレーパーキングとはどんなシステムなのか

自動バレーパーキングをドライバー目線で説明するのは簡単だ。例えばショッピングセンターのエントランスにクルマで乗りつけたならば、降車してスマートフォンのアプリで「入庫」を指示し、そのまま買い物にでも食事にでも向かえばいい。用事が済んだ頃に「出庫」ボタンを押して出口に向かえば、クルマ寄せには愛車が迎えに来ている。

自動バレーパーキングの指示はスマホで行う

では、そのシステムはどのようなものなのか。自動バレーパーキングは「クルマ」「管制センター」「駐車場」の3者による協調で機能する。駐車場の構造を把握している「管制センター」は、ドライバーから入庫の要請を受けると、安全性や効率を考慮して駐車場所とそこへ向かう経路を決め、「クルマ」に無線で指示する。「クルマ」は「駐車場」にあるランドマーク(目印)をカメラやセンサーなどで読み取り、「管制センター」が持つ駐車場の構造情報(地図)と擦りあわせて自らの位置と経路を確認し、指示された駐車スペースに向かう。そんな流れだ。

自動バレーパーキングの様子。運転席に人は乗っているが、ハンドルからは手を離している

同システムが実用化となれば、駐車場の「利用者」は手間を省けるし、「事業者」は駐車効率の向上を図れる。無人で自動運転を行うクルマであれば、ドアの開閉スペースは不要だし、ぶつけたりこすったりする心配もないはずなので、クルマをギュウギュウに詰め込めるからだ。JARIによれば、駐車効率は従来比で20%向上する可能性があるという。また、自動車事故の3割は駐車場で発生しているので、自動化は事故削減にもつながる。

ただ、実用化には当然ながら、いろんなハードルがある。自動バレーパーキングの実用化に向けて動いているのは日本だけではないが、JARIとしてはまず、同システムの国際標準化に向けた手続きを進めたい考え。2021年のISO国際標準化に向け、各国と協議を重ねているところだ。

また、システムが実用化となったとしても、最初から全てのクルマが自動バレーパーキングを利用できるわけではない。まず、通信機能が備わっていないクルマはアウトだし、通信できたとしても、管制センターの指示通りに自動運転をこなせるクルマでなければ、やはり同システムの恩恵は受けられない。

JARIの考えでは、まずは同システムが求める要件を満たすクルマだけが使える専用の駐車場を実用化し、段階的に「混在型」を目指すのが現実的だそう。ただし、混在型を実現するためには、人が運転するクルマと自動運転のクルマを駐車場内でうまく交通整理する工夫が必要になるだろう。

未来の駐車場はクルマの「ハブ」になる?

自動バレーパーキングの実用化には時間が掛かりそうな雰囲気だが、その先の駐車場の在り方についてもJARIは考えをめぐらせている。JARIのITS研究部に所属する深澤竜三さんによると、未来の駐車場が目指すのはクルマのハブ、つまり、クルマにまつわるさまざまなサービスの結節点だ。

JARIが描く未来の駐車場の姿

ハブ駐車場とはどのような施設なのか。深沢さんの描写はこんな具合だ。

「自動バレーパーキングで、勝手に駐車しておいてくれるのはもちろんですが、そこが自動車整備の拠点としての役目を果たしたり、電気自動車(EV)であれば、勝手に充電しておいてくれるとか。買い物が終わる頃には充電が済んでいるというのが理想ですね。あとは、観光地であれば情報配信拠点としての機能も想定できます」

「ほかのアイデアとしては、クルマを駐車しておいたら、宅配便がトランクに届いている、といったような使い方も考えられます。その場合は、トランクを開けられるような仕組みが必要にはなりますが、届け先を1件ずつ回る必要がなくなるので、配送業者の方も楽ですよね」

未来の駐車場は、クルマにまつわるいろんな機能を提供する拠点になるかもしれない

深澤さんの話を聞いていると、おそらくハブ駐車場はホテルに1つ、ショッピングセンターに1つという具合にではなく、地域に1つ、しかも大型の施設として存在するもののように想像できた。用事で近くまで来た人も使えば近隣の住人も使うし、カーシェアやレンタカーなどのクルマも混在している大きな駐車場。そんなイメージだ。

こういう駐車場が必要かどうかについては、地域によって状況が違うだろう。コンビニエンスストアですら広大な駐車場を備える地域がある一方で、例えば銀座のように、数台しか止められないけれど、短時間で驚くべき値段になるコインパーキングが稼動している場所もある。おそらく、ハブ駐車場が必要になるのは後者の方だ。

銀座に大きなハブ駐車場を作る余地があるかどうかは別としても、クルマの駐車以外には使いみちがないという点で「デッドスペース」化している駐車場に、さまざまな機能を持たせるというJARIの構想には可能性を感じた。一般道の自動運転も実用化となれば、例えば東京オリンピックの後、有明かどこかに残された広いスペース(会場の跡地)に大きなハブ駐車場を作り、そこと銀座などの繁華街を結ぶということも、夢のようではあるが不可能ではないはずだ。