マクドナルドが春の採用キャンペーンを開始、積極増員の理由とは

マクドナルドが春の採用キャンペーンを開始、積極増員の理由とは

2018.03.14

日本マクドナルドが「マクドナルドは大歓迎!!」と銘打って春の従業員(パートタイマーやアルバイトのことで、マクドナルドでは「クルー」と呼称する)採用キャンペーンを開始した。背景には、外食産業における人手不足があるのではないかと考えたのだが、同キャンペーンの発表会に登壇した日本マクドナルド執行役員で人事本部長の長敦子氏は「人手については、今は充足している」とする。それでは、「大歓迎!!」キャンペーンの目的とは何なのだろうか。

「マクドナルドは大歓迎!!」キャンペーンの発表会には日本マクドナルド代表取締役副社長兼COOの下平篤雄氏(右端)と日本マクドナルド執行役員・人事本部長の長敦子氏(左端)が登壇。現役高校生で女優・声優の春名風花さん(中央右側)も駆けつけた

回復から成長へ、積極増員の姿勢を示すマック

マクドナルドは2017年の春に「クルーになろう。」キャンペーンを展開し、史上初となる全店舗でのクルー体験会を実施した。このキャンペーンでは、当初予想2.5万人のところ約2.8万人のクルーを採用したという。2017年秋には「マックなら、大丈夫」と銘打った採用キャンペーンを実施して、若者向けの職場というイメージの強いマクドナルドが自ら、主婦やシニア層の不安に対し「大丈夫」とのメッセージを発信した。

長人事本部長によると、今回の「大歓迎!!」キャンペーンは人手不足を解消するためのものではなく、マクドナルドの成長をより確かなものにするための募集だという。採用目標人員について具体的な数値は示さなかったが、「昨年と同程度を目指す」とのことだった。

マクドナルドの売上高は右肩上がりで、2017年は上場以来最高の業績を残したと下平副社長は説明する。同社のビジネスは「回復」から「成長」へとステージを変え、新たな局面に入っているそうだ。つまり、今回の採用キャンペーンについては、人手不足の解消というよりも、事業拡大に向けた増員という積極的な意味合いが強いと考えるべきなのだ。

日本マクドナルドの業績は右肩上がりで、今後も年平均5%以上の成長を目指すという。成長を支える基盤の1つが人材だ

LINEで応募が可能に! 卒業シーズンに合わせた施策か

今回のキャンペーンで発表された採用ツールは「LINE応募」とTwitter上の「#質問箱」だ。「LINE応募」は文字通り、LINEを通じてクルー応募ができるサービス。働きたい店舗、あるいは場所を打てば候補が返ってくる仕組みで、名前などを打ち込みLINE上で顔写真を送っておけば、面接希望の際に履歴書などの書類は不要となる。こういった施策からは、春の卒業により学生が抜けた穴を、若者向けのツールによって補おうとしているという印象を受けた。

アルバイトの応募は気が重いと感じる人もいるかもしれないが、LINEで応募できて、顔写真を送れば書類不要ということであれば、動きやすいだろう

クルーが約14万人で、昨年は年間を通じて7万人以上を採用したというマクドナルドだが、昨春のキャンペーンでは2.8万人を獲得したというから、年間の採用計画の中で、この時期のキャンペーンは特に大きな意味を持つものと考えられる。

2018年採用のキーワードは「多様性」

マックが「大歓迎!!」キャンペーンを展開する1つ目の狙いが積極的増員だとすれば、2つ目の狙いは何か。それは「多様性」を打ち出すことだ。

下平副社長は「マクドナルドのビジネスはピープルビジネス。働く環境を整備し、クルーの採用と育成、満足度を大切にする。昨年12月に実施したクルー満足度調査では、84%のクルーが満足しているという結果だった。クルーが充実していることが、お客様へのサービス向上につながり、ご満足いただける店舗を生む。よいサイクルの継続を目指していく」とする。クルーの満足度に直結する要因として、多様性を重視する姿勢は不可欠なのだ。

マックのクルー満足度は84%。友人による紹介採用は60%、新卒社員のクルー経験比率は75%との数字も紹介された

マクドナルドのクルーには、学生、若者、主婦、シニア、外国人が含まれる。クルーのライフスタイルはさまざまだ。今回、採用キャンペーンに向けて発表された新しいCMにも、多様な職種経歴を持つ現役クルー7名が登場する。

マクドナルドは人材採用・教育にあたり、多様性を重視する方針を打ち出す。特に教育面においては、クルートレーニングプログラム、そして働きながら学べる場所として開校46年を迎える「ハンバーガー大学」の存在を強調する。クルートレーニングプログラムは、外国語にこそ対応していないものの、ロールプレイングや画像を多用し、シニアや外国人でも分かりやすいツールとして活用している。

トレーニングツールでは動画も活用。さらに進化したシステムも開発中とのことだ

多様性の確保にマクドナルドならではの強み

マクドナルドの持つ強みは、採用やトレーニングだけではない。最大の強みは求人面における多様性だ。学生が多い町、ショッピングセンター、駅前など多くの店舗を持ち、異なる営業時間で運営しているマクドナルドでは、働き手が自分の希望に合わせて選べる店舗の選択肢が豊富だ。働く側の希望と店舗側のニーズを完全にマッチさせることは難しいが、マクドナルドは多様な店舗で間口を広くとり、このマッチングの精度や確率を上げているのではないだろうか。

いくつかの店舗のアルバイトを検索をしてみると、店舗の営業時間や特徴に加え、勤務時間・募集対象が記載されていた。店舗ごとにニーズはさまざまだ。働き方について多用なニーズを持つマクドナルドだからこそ、クルーの多様性を受け止め、尊重することが可能なのだろう。

ライフスタイルが多様化すると、働き手の要望も細分化する道理だ

人出不足の代表業種としてよく名の上がる「外食産業」。人手不足を解消するため、多くの企業が賃金を上げるなどの取り組みを重ねているが、解消されたという事例はあまり耳にしない。

賃金上昇とコスト上昇は価格への転嫁につながり、値上げは客離れに直結して業績の悪化を招く。これは企業だけでなく、消費者も幸せにならない図式だ。クルーによし、顧客によし、そして企業によし。近江商人の「三方よし」ではないが、商いの基本にのっとった取り組みが、マクドナルドの業績回復につながっているという印象を受けた。

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

2019.01.18

中国メーカーが自在に折り曲げられるスマホを実現

「大画面×コンパクト」を両立する夢のデバイス、実用性は?

端末の魅力を引き出すアプリ登場が普及のカギか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」では、2019年のトレンドを先取りする新ガジェットが一堂に会した。その中でも一際大きな注目を浴びたのが「折り曲げられるスマホ」だ。商品化にこぎ着けたのは世界初という。

折り曲げられるスマホ「FlexPai」

スマホの画面サイズが大型化を続ける中、iPhone SEのような小型スマホを求める声は依然として多い。そこで登場した折り曲げられるスマホは、「大画面」と「コンパクト」を両立する夢のデバイスに見える。果たして普及の可能性はあるだろうか。

自在に折り曲げられるスマホ、中国メーカーが実現

折りたためる2画面のスマホというアイデア自体は、実はそれほど目新しいものではない。NTTドコモとZTEが共同開発した「M Z-01K」などは、現行モデルとして国内で販売中だ。

だが、従来の2画面スマホはヒンジを用いて2つの画面をつなげたものに過ぎなかった。その後、液晶とは異なる特性を持つ有機ELが登場したことで、ディスプレイを紙のように自在に折り曲げられることも夢ではなくなった。

有機ELの「曲げに強い」という特性は、多くのスマホに活用されている。サムスン電子のGalaxyシリーズが画面端を曲面にしたスマホを発売後、ソニーモバイルシャープもこの形状を採用している。

これを推し進め、開くとタブレットのような大画面、2つに折り曲げるとスマホサイズという端末の可能性が見えてきた。そして2018年10月、中国のRoyoleが、世界で初めての折り曲げられるスマホ「FlexPai」を商品化したのだ。

中国Royoleのブース。フレキシブルディスプレイを使った様々な製品が並んだ

CES 2019では韓国のLG電子が巻き取り式のテレビを発表するなど、「曲がるディスプレイ」が会場全体で話題になっていた。そうした下地もあって、Royoleの出展ブースには来場者の行列が絶えず、展示機がバッテリー切れを起こすほどの盛況となっていた。

実用性はさておき、スマホの進化の可能性を示した

FlexPaiの特徴は、開いた状態ではタブレットに近い形状になり、そこから自由に折り曲げできる点にある。従来の2画面スマホとは異なり、広げた状態でも画面の境目がないため、タブレットと同じ感覚で利用できる。

広げた状態ではタブレットのように使える

メーカーが挙げるメリットは、複数のニーズごとの端末を1台に集約できることだ。大画面が欲しい人の中には、スマホとタブレットを両方持ち歩いている人もいるだろう。だがFlexPaiなら持ち歩くのは1台で済むというわけだ。

折り曲げた状態では一般的なスマホと同じように使える

折り曲げというギミックから、耐久性に不安を覚えるものの、20万回程度の折り曲げに耐えられるという。ただ、折り曲げると厚みが出るため、スマホのようにコンパクトに持ち歩くことはまだ難しい。

アプリの対応も課題だ。FlexPaiを折り曲げた状態では「表面」と「裏面」に加え、折れ曲がった「エッジ」の3画面を利用できる。FlexPaiの魅力を引き出すには、これら3画面を活用するようなアプリの登場が待ち望まれる。

そこでRoyoleは、FlexPaiをアプリ開発者向けに1,318ドルの価格で先行販売している。まずは開発者にデバイスを手に取ってもらい、どのような活用方法が考えられるか、アイデアを募っていく段階といえる。

会場で実機を試した印象だが、現段階での折り曲げスマホは実用的とまではいえないと思えた。しかしRoyoleという会社の名前を世界に知らしめ、フレキシブルディスプレイの技術を示したという意味では、この発表は大成功を収めたといえるのだろう。

また、サムスン電子など大手スマホメーカーも折りたたみや折り曲げ端末の開発を進めており、グーグルはAndroid OSとして公式サポートを表明している。スマホの次なる進化の可能性を真っ先に示したFlexPaiを、この場の実用性で語るのはお門違いなのかもしれない。

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

森口将之のカーデザイン解体新書 第12回

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

2019.01.18

国内主要メーカーの内装デザイナーが集まり展示会を開催

テーマは“1kgの価値”をどこまで高められるか

実車に応用できる? 独創的な作品の数々

国内主要自動車メーカー8社のインテリア・カラーデザイナーが参加する団体「JAID」が初の作品展を開催中だ。“1kg”という重さにこだわり、最新の3Dプリンターを駆使して各社のデザイナーが生み出した作品は独創的で、会場の「GOOD DESIGN Marunouchi」(東京・丸の内)は小さな現代美術館のような雰囲気になっている。

ダイハツ工業のデザイナーが出品した「受け継がれる樹脂」という作品

雑誌の対談が契機となり生まれた「JAID」

「JAID」という名前を初めて目にした人も多いだろう。「ジャパン・オートモーティブ・インテリア・デザイナーズ」の略で、「ジャイド」と読むそうだ。

創立のきっかけとなったのが、自動車雑誌「NAVI CARS」(ナビカーズ)での対談だったと聞いて、「あの号だ!」と即座に思い浮かんだ。クルマのインテリアを特集したナビカーズの2015年7月号で、筆者も別の対談に参加させていただいていたのだ。その号に国内メーカーのインテリアデザイナーが語り合うページがあったことは記憶の片隅に残っていた。

雑誌の売れ行きが落ちているといわれて久しい。それだけに、1つの雑誌の企画からJAIDのようなコミュニティが生まれたことは、モータージャーナリズムに身を置く者として嬉しい気持ちになる。

日産自動車のデザイナーが出品した「∞ Fluff」

価値ある1kgの創造に挑んだデザイナーたち

そのJAIDが企画したのが「1kg展」だ。なぜ“1kg”にこだわるかといえば、クルマの開発に携わる人たちにとって切実な「kg単価」という指標に理由がある。

「kg単価」とは、クルマの開発で使われる値段の単位だ。インテリアデザイナーとしてはkg単価が高い、いわゆる良い素材を使いたいという気持ちは大きいだろう。快適性や安全性の追求、さらには電動化への対応、重量の削減といった視点も持ちながら素材を選んでいるはずだ。

しかし、贅を尽くしてばかりでは車両価格の上昇を招くので、妥協が必要になる。おそらくインテリアデザイナーは、このような状況で悩みながら、新しい素材や仕立て、色などを取り入れるべく、奮闘の毎日を過ごしているのだろうと想像している。

では、そういった制約がなくなったとき、デザイナーたちはこのkg単価をどこまで価値あるものに仕上げられるのだろうか。これが、今回の展示会のテーマだ。最新の3Dプリンターを駆使し、時間や空間、物質としての限界などを飛び越えた作品を独自の着眼点で製作すると同時に、広くカーインテリアデザインの魅力を伝えたい。そんなメッセージのこもった展示会なのである。

ホンダのデザイナーが出品した「風速1kg」

素材と色のコーディネートが味わえる「ハンバーガー」

会場のGOOD DESIGN Marunouchiは、2013年度から通算5回、今年度も含めてグッドデザイン賞の審査員を担当している筆者にとってはなじみ深い場所だ。ところが、「1kg展」の内覧会を訪問した時には、状況がまるで違っていた。いつもは展示物をゆったりと眺めることができる空間なのに、この日はラッシュ時の駅のようにごった返していたのだ。それだけ、インテリアデザイナーの斬新な発想に期待する人が多かったということだろう。

日産のデザイナーが出品した「4D flower」。「1kg展」に作品を持ち寄ったのは、国内大手自動車メーカー7社(ダイハツ工業、ホンダ、三菱自動車、日産自動車、スバル、スズキ、トヨタ自動車)だ

作品の中には、クルマのインテリアデザインとは関係なく、最新の3Dプリンターならではの表現能力の高さをアピールするような作品も見られた。それらを業界の枠を飛び越えた独創的な作品と捉える人もいたようだが、クルマが好きで今の仕事に携わっている(はず)の方々だからこそ、もっとインテリアにこだわって欲しかった。

ただ、クルマのインテリアとの関連性が高い作品が大半を占めていることは確かで、中には独創的な発想や興味深いアイデアも見られた。本稿では独断と偏見で、そのうちの3つを紹介していこう。

まずは、会場の入り口近くに置かれていた「CMFバーガー」だ。「CMF」とはカラー、マテリアル、フィニッシュの頭文字で、ナビカーズでの対談が行われた頃から、自動車に限らずデザイン分野でひんぱんに使われるようになってきた言葉だ。造形だけでなく色や素材、仕立てにも気を配ることで、より完成度の高いデザインが生まれるというような意味が含まれている。

「CMFバーガー」はトヨタのデザイナーが出品

この作品は、CMFのコーディネートを1kgのハンバーガーに見立てて表現したもの。レザーのバンズ、クリアレンズのトマト、加飾素材のチーズやパティ、シート素材のレタスがさまざまな色で用意してあり、好みのバーガーを作り出せる。

3つの作例では、CMFの違いでかなり雰囲気の異なるバーガーを作れることが分かった。バンズを肉抜きタイプにすると総重量が1kgを切るなど、計量化を実感できる仕掛けも盛り込んである。ディーラーが車種別にCMFハンバーガーを用意すれば、顧客は楽しみながらカラーコーディネートを試すことができるかもしれない。

ディーラーに「CMFバーガー」が置いてあったら面白いかも

インテリアをボールにした斬新な作品も

続いて紹介するのは「トランスフォームステアリング」。自動運転が実用化された未来を想定した変形機構を持つステアリングで、手動モードでは伸びて操舵できる状態となり、自動モードでは縮めて格納しておける。全てがマットブラック仕上げだが、グリップ部分、変形部分、外枠部分を別のメーカーのプリンターで製作することで、素材の違いを表現している。

トヨタのデザイナーが出品した「トランスフォームステアリング」

製作したデザイナーはステアリング機能だけを想定していたようだが、左右のグリップをねじることでアクセルやブレーキの操作ができれば、この部分だけで基本的な運転操作ができる合理性の高いインターフェイスになると思った。ペダルがなくなれば、室内レイアウトの自由度も高まりそうだ。

伸ばせば手動運転に使えるし、自動運転中は縮んだ状態で格納しておける

最後は「インテリアボール」だ。写真を見てお分かりのとおり、クルマのインテリアを構成するパーツをボール状のアートとして表現したもので、多くのパーツをまとめ上げ、世の中というフィールドにデザインを“投げ”かけているインテリアデザイナーの仕事をボールの形に込めたのだという。

「インテリアボール」はホンダのデザイナーが手掛けた

展示してあるのは1個だけだが、スポーツの世界では競技によってサイズの違うボールを使うことにも製作者は着目している。使用する材料や加工方法を変えることで、同じ1kgでもサイズや見え方の違った表現ができるそうだ。

しかしながら筆者には、これがボールではなく卵に見えた。卵から生まれる前のクルマ、そのインテリアデザインは、こうなっているのではないかと想像したのだ。同じクルマのエクステリアデザインを卵の殻で表現することで、多くの車種を球形にできれば、一風変わったミニチュアになるのではないだろうか。

JAIDが企画した1kg展の作品群は、それ自体が柔軟かつ斬新な発想から生まれているだけでなく、見ているこちらも創造力が掻き立てられるものだった。この展示会を訪れて、日本の自動車メーカーにインテリアデザインの実力者が多いことに感心するとともに、メーカーには、この実力を引き出して製品に結び付ける能力が求められていることを教えられた。

1kg展の会期は1月25日まで。入場は無料だ。時間に余裕のある方は、一度訪れてみてはいかがだろうか。