守りから攻めへ、クリスピー・クリームは再び急成長できるか

守りから攻めへ、クリスピー・クリームは再び急成長できるか

2018.03.16

クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパンが再び攻めに転じる。2015年度下期の大量閉店から出店を抑制していたが2018年度から一転、年間10-20店の出店を目指す。店舗改装や新業態の展開も実施するなど、再成長への挑戦が始まった。

3月15日にリニューアルオープンした旗艦店の有楽町イトシア店

大量閉店の真相

クリスピー・クリーム・ドーナツは米国発のドーナツチェーンだ。日本には2006年に上陸、かつては店舗前に行列ができ、大きな話題となった。それも今や昔。行列を目にすることはなくなった。

ドーナツに関する大きな動きを見れば、最大手のミスタードーナツが長年苦戦を強いられている。市場も緩やかに縮小しており、ドーナツそのものの人気が低下しているとも思わせる状況だ。だからこそ、流行が去り、業績が悪化してクリスピー・クリーム・ドーナツは大量閉店に追い込まれたのでは? と想像されてしまう。

2015年度下期に大量閉店を開始。最盛期には64店舗あったという

しかし実態は違うようだ。同社の若月貴子社長は次にように説明する。

「業績が悪いから大量閉店をしたのではない。当社が20年、30年と日本で残っていくために、店舗の営業力の再評価をする必要があった。関東、東海、関西に店舗を集中させて建て直しを図ろうと考えた」(若月貴子社長、以下、発言同氏)

2015年度下期に実施した大量閉店の真相は、再成長に向けて、経営資源の集中の結果に過ぎないというのが同社の説明だ。

今は第2創業期

では、大量閉店以降、現在まで同社は何をしてきたのか。若月社長はこの間を「第2創業期」と位置づける。これまでは再成長のための地盤固め、今年度からが飛躍という位置づけだ。

これまでに実施したのは商品力とサービスの向上。商品では看板商品のオリジナルグレーズドに迫る人気のブリュレグレーズドを日本発で企画・開発。ブリュレグレーズドは2017年度のグローバルの商品開発賞を受賞したほどだ。その他、日本発の企画・開発商品が多数生まれており、日本での開発商品は、世界のクリスピー・クリーム・ドーナツでも注目を集めているという。

クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパンにはブリュレグレーズドなど日本発の開発商品が多い

サービス面では属人的ナレッジに依存したやり方から、トレーニングツールと評価ツールを刷新。サービスが生み出す顧客単価の違いなど具体的なデータを提示しながら、意識を改革し、スタッフの育成に努めた。

結果として、顧客・従業員満足度が上昇。既存店売上も2017年8月以降7カ月連続してプラスになっている。あらゆるところから上向いていることについて「目新しいことはやっていない。QSC(クオリティ、サービス、クレンリネス)といった当たり前のことに取り組んだだけ。社員一人ひとりがよりよい品質を、よりよいサービスをと意識したことで業績に結びついた」とする。

スタッフ育成にはデータという納得感も必要かもしれない
業績改善の秘訣は顧客・従業員満足度にありそうだ

新店舗はどこにできるか

第2創業期の仕上げが、2018年度からの再成長である。これまでに築き上げた商品力とサービスをベースに、新規出店、新業態としてテイクアウト専門店の展開ほか小売販売の本格化を通じて、タッチポイントの拡大を図り、存在感を増したい考えだ。

2018年度から第2創業期の総仕上げが始まる

冒頭にも述べたが、2018年度は10-20店のオープンを予定(テイクアウト店含む)している。先々については「当面の店舗数目標については定めていないが、2019年度以降も2ケタの出店を継続していきたい」としている。現在、同社は関東・東海・関西を中心に46店舗あり、ここに数十店舗が加わるならば、2年で2倍近くになることもありえる。いかにチャレンジングな取り組みかわかるはずだ。

テイクアウト専門店も出店

では、出店先はどうなるのか。過去に閉店したエリアへ再進出するのか。若月社長の発言から察すると、現在、注力する関東・東海・関西の大都市圏が中心となりそうだ。エリアを絞ってドミナント的な出店戦略を展開していくと見られる。

客席を減らす

新規出店でもうひとつ注目したいのは店舗デザインだ。画一的だった店舗デザインを改め、郊外、都市と立地に応じたデザインを取り入れる。郊外型はファミリー層が楽しめる施設やスペース作りを行い、都市型は客席数を減らす。

「客席を減らす?」とお思いかもしれないが、間違いではない。従来は他のファストフード店にならい、客席数をいかに増やすかを重視してきた。しかし、店内を観察すると、どうやらそれが最適解でないことがわかってきたのだ。

特に2人掛けの対面式の客席。お客の向かいにあるのは、その人の荷物。客席は埋まっているがお客の数は想定よりも少ない。そうした店内の現状を目にし、ダイニングテーブルを店内に取り入れることにした。結果的に客席数は減っている。減った分のスペースを居心地の良い空間作りに費やしたほうがいいという結論に至ったわけだ。

これは何も仮説ではなく、実際に関西の店舗で検証した結果を踏まえてのことであり、客席を減らしたほうがトータルの客数が増え、売上も伸びたという。

旗艦店となる有楽町イトシア店、渋谷シネタワー店では客席数は従来比で約2割減。くつろげる空間を創出。内装に木目調のデザイントーンを採用するなど、店内での過ごす時間のイメージは大きく変わりそうだ。

改装前後でイメージは大きく変わる

また、旗艦店では限定メニューが提供されることが発表された。スイーツのドーナツとしてではなく、食事としてのドーナツ「ドーナツ キッシュ」「ドーナツ バーガー」といった新メニューも出していくようだ。

有楽町イトシア店、渋谷シネタワー店2店舗限定のモーニングメニューも販売。写真は「モーニング B セット」でドーナツバーガー、フルーツヨーグルト ドリンクがセットに(税込み580円)

最高のドーナツ体験の提供を維持できるか

一連の施策を見ると、クリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパンが再成長に向けて多方面から取り組み努力してきたことがわかるだろう。

先々の店舗数は数年で倍増近いイメージだ。販売先も店舗のみにこだわらない。メニューも食事としてのドーナツを提案していく。

気がかりなのは、一気に変わろうとし過ぎているようにも見えることだ。同社の店舗はすべて直営。つまり、店舗ごとに社員の配置が不可欠となる。そのために人材も獲得していかなければならない。人材育成についても、属人的な育成方法から脱却したとはいえ時間がかかるはずだ。

若月社長は発表会の席上で「最高のドーナツ体験を多くの人に」という言葉を何度も繰り返しており、これをないがしろにして出店を進めるつもりはまったくないと断言する。

その言葉を信じるならば、問題はなさそうだが、掲げた目標に近づくには、スピード感も無視できない。大きな成長を遂げるために、理念とスピードのバランスをどう保つかが課題となりそうだ。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。