お酒市場に新風を! 次々仕掛けるキリンの戦略

お酒市場に新風を! 次々仕掛けるキリンの戦略

2018.03.21

ここ数年、酒類の消費量は横ばいを続けている。だが、平成5~6年ぐらいに大いに消費されたビールは低迷。酒類全体の消費量が横ばいなのは、チューハイといった酒類が市場を伸ばしているからだ。

大きな支持を得ていたビールが低迷している理由は何か。まずは先に挙げたチューハイや発泡酒といった酒類にシェアを奪われたことが大きい。ただ、それだけではない気がする。ビールのマンネリ化が、消費者離れを招いているのかもしれない。

売れ行きナンバー1の「アサヒスーパードライ」とナンバー2の「キリン一番搾り」

どういうことかというと、アサヒなら「スーパードライ」、キリンなら「ラガー」か「一番搾り」、サッポロなら「黒ラベル」、サントリーなら「ザ・プレミアム・モルツ」といったブランドが強すぎるからだ。もちろん、こうしたブランドのなかで「これしか飲まない」という消費者もいるだろう。だが、わりと多くの人が「どれでもいい」と考えているのではないか。筆者の場合も、このあたりのブランドの缶ビールが数種類用意されていたら、わりと無作為に手に取ってしまう。

酒税法改正がクラフトビールの個性を生む

そんなマンネリ化に風穴を開けそうなのが、クラフトビールの存在だ。1990年代、いわゆる地ビールブームが起こったが、それがクラフトビールという呼ばれ方で再び注目されている。

大手ビールメーカーも、このクラフトビールをビジネスチャンスだと感じている。アサヒは独特のオブジェが目立つ本社ビルの隣に醸造所を建て、「TOKYO隅田川ブルーイング」というブランドを展開。キリンはクラフトビールが楽しめる「スプリングバレーブルワリー」という、醸造所を横浜、代官山、京都に持つ。この醸造所は横浜に上陸したノルウェーの醸造家が1870年に設立したもので、キリンビールの起源となった。サッポロ、サントリーもクラフトビールブランドを展開する。

クラフトビールというジャンルをいち早く用いたのはキリンだ。そのキリンがさらにクラフトビール戦略を加速するために、4月3日から「グランドキリン」ブランドで、3種類を投入する。

左:期間限定で投入されるグランドキリン。右:新商品とオレンジを手に持つキリンビール マーケティング部 部長 田山智広氏

その背景には、4月の酒税法改正がある。まず、これまで麦芽比率が67%以上でなければビールとして定義されなく、それ以下は発泡酒とされた。改正後は麦芽50%以上がビールと定義され、果実や香味料を一定以下なら副原料として使用できるようになる。この果実や香味料といった副原料の使用がポイントで、これによりビールに個性を与えやすくなり、それがクラフトビールの多様化につながる。

さて、お酒の楽しみ方のひとつに、好みの“味”を見つける、というのがある。たとえば日本酒なら1,500以上もの醸造所があり、居酒屋でも数種類のメニュー、店によっては数十の銘柄がストックされている。

ワインはフランス、イタリア、チリといったワイン原産国からの輸入はもちろん、近年では日本固有のブドウ種「甲州」や「マスカット・べーリーA」を使った、純国産ワインに注目が集まり始めている。

クラフトビールとして展開されるグランドキリン「タップ・マルシェ」シリーズ。味わいのほかビールの色も楽しめる

一方ビールは、前出のとおり、強いブランドが幅を利かせ、しかも「どれでもいい」という風潮が消費者にはある。お酒の楽しみ方のひとつである“選ぶ”という考え方からもっとも遠い存在がビールだったのだ。クラフトビールは、そうしたビールのマンネリ化から脱却するための起爆剤になりそうだ。

クラフトビールが注目され始めた背景には、食の多様化がある。ずいぶんと昔からだが、フランスやイタリア料理、中華料理、和食といったように日本は多国籍な料理が楽しめる国柄だ。当然、こうした食事を楽しむ際に、お酒を同時に注文する人は多いだろう。自分が好きな料理に、お気に入りの日本酒やワインをオーダーするというシーンは珍しくない。

「とりあえず生」という風潮からの脱却

ところが、ビールだと「とりあえず生」というのが前提になってしまっている。そこで多様な味わいが用意されているクラフトビールに大手メーカーが本腰を入れ始めたのだ。

ビール大手のキリンがクラフトビールにかける鼻息は荒い。数々のイベントを仕掛け、クラフトビールの認知度を上げようと、努力を惜しまない。先日も横浜・みなとみらいでメディア向けイベントを開催し、チーズやパスタ、ローストビーフといった料理とクラフトビールのペアリングを楽しめるセミナーを開催した。チーズの種類ごとに合わせるクラフトビールを提案するなど、これまでの「とりあえず生」という世界観とは異なるものだった。

みなとみらいの「good spoon」(写真上段)で開かれたイベントに提供された料理。左中:自家製チーズプラッター。右中:数量限定ブラックブッラータ。黒いチーズを切ると、白いチーズが現れる。左下:丸ごとブッラータチーズのボロネーゼ。右下:じっくり2時間火を入れた国産牛のローストビーフ

キリン傘下のワインメーカー、メルシャンでもユニークなイベントが行われた。ワインといえば「赤」「白」「ロゼ」がおもな種類だが、赤や白はなじみ深くてもロゼはなかなか飲まないという人は結構いるだろう。特に男性は「ロゼは女性向けのワイン」と思い込んでいる節がある。

ロゼという名称や、ピンク色のイメージで女性向けととらわれやすい。写真のボトルは、「悪魔の住む蔵のお酒」で有名な「カッシェロ・デル・ディアブロ」のロゼ

だが、今や世界中でロゼワインの人気が高まり、ここ13年間で30%増の伸びをみせている。日本での人気はさらに顕著で、5年間で約1.3倍の消費量になった。これは料飲店での消費量ということだが、ロゼワインをメニューに加えている飲食店が増えている証だ。ただ、チェーンの居酒屋といったお酒の消費量が多い飲食店では、まだ赤と白のみでロゼはメニューにないというところがほとんど。言い換えると、そうした飲食店が取り扱い始めれば、ロゼの消費量はまだまだ伸びる可能性が高い。

そもそもロゼは、赤ワインと白ワインの製法をミックスさせたもの。赤の複雑な味と白のすっきりした飲み心地が同居している。決して女性向けのワインということではない。

ギョーザとロゼという組み合わせ

メルシャンが行ったメディア向けイベントでも、その一端がみてとれる。このイベントではロゼワインとギョーザを楽しもうというものだった。ギョーザだけではなく、とんぺい焼きや鶏の唐揚げも用意されていた。正直、「ギョーザにロゼ!?」と不意を突かれたが、ある意図が浮き彫りになった。ギョーザもとんぺい焼きも鶏の唐揚げも、どれも男性がおつまみに選ぶことが多い料理だ。

ギョーザとロゼ、唐揚げとロゼという、これまでイメージしていなかった取り合わせ

こうした料理とビールという組み合わせは普遍的だが、そのビールをロゼに置き換えてもらおうというねらいが伝わってくる。そして、男性のロゼワインファンの開拓を目指しているといえよう。ちなみに海外ではロゼワインは普通に男性に飲まれている。

イメージ的にはギョーザや唐揚げにはビール、ロゼワインにはチーズやローストビーフというのが一般的だろう。だが、キリンはクラフトビールにチーズやローストビーフ、ロゼワインにギョーザやとんぺい焼き、鶏の唐揚げとクロスさせた提案を行った。食や飲料が多様化するなか、これまでの常識に縛られない組み合わせは、お酒を楽しむ上でポイントになってくると思う。

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

2019.01.22

セブン、ローソンに続きファミマも成人誌を販売中止

インバウンドの増加、オリンピックの開催も影響か

コンビニ最大手のセブン-イレブンと業界3位のローソンが成人向け雑誌の販売中止を発表したのに続き、業界2位のファミリーマートも同様の方針を打ち出した。大手3社の足並みがそろい、日本国内のほとんどのコンビニ店頭から成人誌が消える。

国内のセブン-イレブン店舗数は2万店を超え、ローソンとファミマが1万5,000店前後でこれに続く。それぞれ今年の8月末までに取り扱いを原則中止するという。これまで一部店舗で成人誌の販売を中止していた例はあったが、今回は各社全店舗で取り扱いを中止する。業界では昨年1月から、ミニストップが他社に先駆けて全店で取り扱いを中止していた。

もともと諸外国にくらべ、女性や子どもの目につきやすいコンビニ店頭などに成人誌が置かれている日本のゾーニングの現状は特殊であるとの批判があった。また、インバウンドで訪日外国人が増え、この論調に拍車がかかっていたほか、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、イメージ低下を防ぐ要請が強まっていたという背景がある。

コンビニでの成人誌の購買層は近年、高齢男性に偏るとともに売り上げの減少も顕著であったといい、ゾーニングの問題が取り扱い中止の大義名分になったという見方もある。ある出版関係者は、「一部では電子版などネット展開を強化している流れはあるが、今でもコンビニは重要な販路なので、相当な混乱があるだろう」と話す。どちらにせよ、日本の成人誌は岐路に立たされることになる。