IIJが始める「フルMVNO」、これまでの格安スマホとはどう違う?

IIJが始める「フルMVNO」、これまでの格安スマホとはどう違う?

2018.03.22

インターネットイニシアティブ(IIJ)が、「フルMVNO」サービスの開始を発表した。まずは法人向けに提供開始し、2018年初夏には個人向けのサービスも始まるという。

IIJが「フルMVNO」で提供するSIMカード

フルMVNOでは、これまで大手キャリアに依存していた加入者管理機能を自社で持つことで、これまでにないSIMカードのビジネス活用が可能になるという。格安スマホで知られている従来のMVNOとは、どのように違うのだろうか。

「SIMライフサイクル」をコントロール可能に

格安スマホとともに認知度が高まったMVNOは、大手キャリアから通信の帯域を購入することでサービスを提供してきた。だが、システム面では多くの部分をNTTドコモを始めとする大手キャリアに依存しているのが実態だ。

IIJによる「フルMVNO」も、ドコモが全国に張り巡らせた基地局によるLTEや3Gのネットワークを利用する点は変わっていない。だが、加入者に電話番号を発行する機能を自社で持つなど、基地局以外はすべてコントロール可能になるのが最大の違いだという。

従来型MVNO(ライトMVNO)とフルMVNOの違い

フルMVNOで大きく変わるのがSIMカードだ。これまでMVNOはドコモが1枚394円で発行したSIMカードを借り受け、毎月の回線維持費を支払ってきた。IIJによれば、全国のコンビニに10万枚のSIMカードを在庫として持つ場合、毎月1000〜1500万円の費用がかかるという。

インターネットイニシアティブ MVNO事業部長の矢吹重雄氏

しかしフルMVNOではIIJが独自にSIMカードを発行できるため、在庫費用を大きく削減できることになる。以前にSIMカードを雑誌の付録として配布したMVNOが話題になったが、コストが下がればこうした「ばら巻き」も再び可能になるというわけだ。

「サスペンド」でコスト削減、法人需要を狙う

フルMVNOの特徴として、まずはSIMカードに注目したが、加入者情報管理を活用すれば契約中の課金状態も自由にコントロールできるようになる。こうした「SIMライフサイクル」を自社で握れるできることが、フルMVNOの強みといえる。

フルMVNOなら「SIMライフサイクル」をコントロールできる

これを活用できそうなシナリオが、IoTや保守業務の分野だ。業務用機器の制御にLTE通信を活用する例は広がっているが、除雪車のように通年で利用しないものであっても、毎月の回線費用がかかる問題があった

サスペンドにより月額費用をカットできる

そこでIIJがフルMVNOで提供するのが「サスペンド」機能だ。回線を解約するのではなく休眠状態にすることで、毎月の維持費はわずか30円になるという。しかも遠隔から操作でき、月内にサスペンドした場合は日割り計算になるため、本当に必要な日数だけ通信機能を利用できるのが特徴だ。

海外展開にも注目だ。6月には海外ローミングを開始予定となっているが、フルMVNOでは海外キャリアとのローミングではない直接接続も可能になるという。これまで海外との通信は割高なイメージがあったが、接続形態によっては海外現地の安い料金で使える可能性も見えてくる。

一方でフルMVNOは、従来型MVNOにはなかった課題も抱えている。まず、音声通話サービスは提供されず、当面はデータ通信のみに限られる。そのためスマホのメイン回線ではなく、IoTやプリペイドなど用途はやや限定的になるだろう。

また、ドコモとは別のキャリアという立て付けになることから、フルMVNOのSIMを使うには、ドコモの端末であってもSIMロックを解除する必要がある。これまでドコモ系のMVNOはSIMロックされた端末でも使えていただけに、注意を要する点だ。

このようにフルMVNOにはメリットとデメリットの両面があるものの、従来型のMVNOとはうまく棲み分けていく存在になりそうだ。従来型MVNOが似たような料金プランやサービスに落ち着きつつある中で、フルMVNOがこれまでにない市場を開拓できるか注目したい。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

ご愛顧いただいた読者の皆様、また関係者の皆様に、編集部一同、誠に感謝いたします。

なお、NewsInsightに掲載中の記事につきましては、引き続きマイナビニュース(https://news.mynavi.jp)へと掲載場所を移管いたします。

掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

○安東弘樹のクルマ向上委員会!
https://news.mynavi.jp/series/andy

○森口将之のカーデザイン解体新書
https://news.mynavi.jp/series/cardesign

○清水和夫の自動運転ソシオロジー
https://news.mynavi.jp/series/autonomous_car

○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
https://news.mynavi.jp/series/game_heisei

○岡安学の「eスポーツ観戦記」
https://news.mynavi.jp/series/e-Sports_review

○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
https://news.mynavi.jp/series/komuginokotoba

○藤田朋宏の必殺仕分け人
https://news.mynavi.jp/series/shiwakenin

○「食べる」をつくる科学と心理
https://news.mynavi.jp/series/food_science

○阿久津良和のITビジネス超前線
https://news.mynavi.jp/series/itbiz

○山下洋一のfilm@11
https://news.mynavi.jp/series/filmat11

○モノのデザイン
https://news.mynavi.jp/series/designofthings

○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
https://news.mynavi.jp/series/mobile_business

○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
https://news.mynavi.jp/series/bungu

○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
https://news.mynavi.jp/series/font-history

○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu