ゲーム・野球で有名なDeNAが

ゲーム・野球で有名なDeNAが"クルマ"に挑戦するワケ

2018.03.22

タクシーの配車アプリやカーシェアリング、ライドシェアなど、次世代型の交通サービス「MaaS(Mobility as a Service)」の発展が世界的に期待されている。MaaSは「モビリティのサービス化」とも言われ、移動手段を自動車や自転車という"モノ"としてではなく、人やモノを運ぶ"サービス"として提供することを意味する。

MaaSの取り組みが進むフィンランド・ヘルシンキでは、目的地を指定するだけで、タクシーや公共交通機関、レンタカーなどを組み合わせた複数の乗り継ぎルートから最適なものを選べ、予約や運賃の支払いを一括でできるアプリをベンチャー企業「MaaS Global」が提供している。

このようにMaaSは、既存の業界の枠組みを超えて新たな連携を生み、人やモノの移動手段のあり方を大きく変えるポテンシャルを持つ。日本でも、さまざまな業界の企業がこの市場に参入し始めているが、そのうちのひとつがディー・エヌ・エー(DeNA)だ。

DeNAといえば、モバイルゲーム事業が現在の主力。最近ではヘルスケアやスポーツといった他の事業領域を拡大しつつあるが、なぜ、これに加えてMaaSの領域に目をつけたのだろうか。そして、どのような戦略で市場シェアを拡大していくのか。DeNA オートモーティブ事業本部のシニアマネージャー 山下 淳氏に話を聞いた。

DeNA オートモーティブ事業本部 シニアマネージャー 山下 淳氏

日本が抱える交通の課題

山下氏はMaaSの考え方について「車や免許を持っていない人も含め、すべての人に対して『移動』という価値を提供するためには、移動をサービスとして捉えていく必要があります。これがMaaSの目指すところです」と説明する。

現代の日本の交通は少子高齢化に伴う移動弱者や買い物弱者の増加、交通や物流の担い手であるドライバー不足など、さまざまな課題を抱えている。DeNAは、逆にこの状況をビジネスチャンスであると捉え、MaaS領域に参入した。

「人口が減少し高齢化が進む日本において、このまま行けば『移動手段を減らす』という解しかありません。しかし、人間の移動したいという欲求は永遠に続いていくものです。市場規模は縮小していくかもしれませんが、さまざまな手段で移動を効率化し、このような日本の状況でも、移動そのものをアップデートさせ、MaaS領域を牽引していくことを目指しています」(山下氏)

こうした考えのもと、現在DeNAオートモーティブ事業部では、自動運転、AI、シェアリングをキーワードに、小型および大型車両旅客領域、物流領域で合計6つの事業を展開している。

車両やインフラなどは各パートナー企業から提供してもらい、DeNAは各事業をモビリティサービスプロバイダという立ち位置で牽引。将来的には、各サービスのコアとなる機能を統合してMaaSを進化させていきたい考えだ。現在はこれに向けて実証実験を行うなど段階的に各事業を進めている状況だという。

オートモーティブ事業におけるDeNAの強みとは

では、モバイルゲーム事業のイメージが強いDeNAが、国内外の大手企業が続々とMaaSの領域に参画するなかで勝機を見いだせるのか。山下氏は「モビリティサービスプロパイダというレイヤーとして参入するのであれば、ゲームのプラットフォームを作ってきたIT企業としての知見をうまく生かすことで、勝てる可能性があると考えました」と自信を見せる。

例えば、タクシー配車にしてもカーシェアリングにしても、膨大な車両台数を管理する必要がある。これらを瞬時に処理し、最適な配置やルートを提示することは、リアルタイムでのオンライン対戦ゲームなどの運営においてサーバ管理やデータベース運用を行ってきた経験を有効に活用していける。

また、多くの人が利用するモビリティサービスでは、わかりやすいUIが求められる。DeNAはこれまで、ゲームのユーザーに対して直感的でわかりやすいスマートフォンUIの研究を重ねてきた。

「スマートフォンを介したお客様との接点などを上手く設計してきた強みがある。最終的には、自動車や自動運転システム、インフラなどのハードとお客さまを繋ぐプラットフォーム部分を担っていければと思っています」(山下氏)

一方で、6つあるオートモーティブ事業のうち、特に力を入れているというのがタクシー配車サービス「タクベル」だ。

オートモーティブの6サービス

AIを活用した需要予測システムと車載端末およびユーザー向けの配車アプリを連動。効率的なタクシーの運行・配車を目指しており、実用化に向けて神奈川県タクシー協会とともに横浜市での実証実験を昨年実施した。そして今年春に正式リリースが予定されている。

山下氏は、「既存の有人タクシーと将来的に出てくる自動運転タクシーの双方を、同じプラットフォーム上で活かせる。だからこそ、早い段階から顧客接点を持つ神奈川県タクシー協会さんと共同で取り組みを進め、市場シェアを広げていく、という戦略で進めています」と、タクベルに注力している理由を説明する。

プラットフォームはスケールしなければ、簡単に別のプラットフォームへと乗り換えられてしまうリスクがある。なるべく早いタイミングでユーザーにサービスを体験してもらうことで、プラットフォームとしてのシェアを拡大させていきたいというわけだ。

移動の「選択肢」を増やしたい

世界の自動車や部品メーカーなどが、自動運転車の早期実用化を目指して急ピッチで開発を進めている。自動運転車自体の市場が今後拡大していくことは明らかだが、それを利用したサービスの市場はさらに広い。

MaaSという業界横断領域で、先行して自動運転車を利用したサービスを開発するという戦略をとるDeNA。日本政府が掲げている2025年の限定地域での無人運転サービスの拡大というロードマップに対して、DeNAは、今後のMaaSの方向性をどう見ているのだろうか。

「大きく見ると、移動主体をサービスとして提供しているタクシーも電車も、MaaSのひとつだと思います。場所や状況、ニーズによってアプリケーションの適用の仕方は変わります。従来のように1台のタクシーで1人で移動しても良いし、乗り合いでも良い。私個人としては、タクシーであろうと電車であろうと、お客様がその瞬間に一番安く早く便利に目的地へとたどり着ける移動の選択肢を増やしていくことが、MaaSの捉え方としては非常に重要であると考えています。お客様の移動の選択肢を増やすため、DeNAとしてはなるべくオープンに、海外のサービスも含めてさまざまな企業との提携を進めていきたいですね」(山下氏)

根付き始めた「必ず座れる」通勤、 鉄道に続いてバス業界も熱視線

根付き始めた「必ず座れる」通勤、 鉄道に続いてバス業界も熱視線

2018.11.19

座席指定の通勤電車から”通勤の高級化”の流れ?

ハイエンド通勤バスの実証実験を東急電鉄が実施

たまプラーザを舞台にした、日本初の郊外型MaaS

全席指定の通勤電車が首都圏の私鉄で運行され始めている。西武鉄道を主体に東急電鉄、東京地下鉄(東京メトロ)、横浜高速鉄道の各路線を乗り入れる「S-TRAIN」や、京王電鉄の「京王ライナー」などだ。座席指定ではなく、着席整理券による着席定員制の東武東上線の「TJライナー」もある。

帰宅時間に運行される京王ライナー

なぜ、私鉄各社がこうした通勤電車を運行し始めたのか。ラッシュを避けゆったり座ってオフィス街に移動できる利便性を提供するためだ。京王ライナーの場合、帰宅時間に下り方面に運行されるだけだが、これも「仕事で疲れているのに立って帰りたくない」という通勤需要に応えている。

S-TRAINやTJライナーの場合、休日には観光列車としての役割も果たす。S-TRAINはデートスポットとして注目される豊洲や、“食の街”として名をはせる横浜中華街を結んでいる。TJライナーは“小江戸”と呼ばれる川越や森林の多い憩いの場「森林公園」にアクセスできる。森林公園は今の時期、紅葉をライトアップするイベントが行われており、相当の集客がある。

ただ、どちらも平日はビジネスパーソンの脚となるという特徴を考えると、観光色の強い西武鉄道の「レッドアロー」や東武鉄道の「スペーシア」とは性格を異にする。

ハイグレード通勤バスでゆったりと

こうした“通勤の高級化”が、バスにも波及しそうだ。

東急電鉄は「ハイグレード通勤バス」の実証実験を2019年1~2月に行うと発表した。

ハイグレード通勤バスの外観(写真提供:東急電鉄)

ハイグレード通勤バスは客席が24席と広々としており、しかもかなり深めにリクライニング可能。Wi-Fi対応、USB、ACアダプタも装備し、パソコンなどが置けるテーブルも用意されている。そして、長距離バスのようにトイレまで備えているのだ。

座席は3列で、シート数は24席とゆったりしている(写真提供:東急電鉄)
かなり倒れるリクライニングシート(写真提供:東急電鉄)
テーブルにPCを置いて作業可能。写真左隅にACコンセントも確認できる(写真:東急電鉄)
通勤用バスながら、トイレ洗面台を完備(写真提供:東急電鉄)

 以前、両備グループの中国バスが運用する「ドリームスリーパー」という、超高級バスを拝見したことがある。しかもこちらは、さらに座席数が少ない14席で、個室タイプだ。とはいえ、ドリームスリーパーは東京~大阪や東京~広島を結ぶ長距離高速路線バス。睡眠を取ることが必須になると思うので、個室という選択肢になったのだろう。

一方、ハイグレード通勤バスは、読んで字のごとく“通勤”という言葉が入っている。つまり、長距離高速路線バスであるドリームスリーパーとは、まったく性格が異なる。

さて、今回の実証実験では、実験区間にたまプラーザから渋谷が選択された。このたまプラーザ駅がある東急田園都市線は、首都圏屈指の混雑路線だ。二子玉川や三軒茶屋からも乗客があり、朝の通勤ラッシュはすさまじいと聞く。国土交通省によると、ラッシュ時は185%の乗車率であるらしい。この田園都市線の混雑を少しでも緩和しようと、ハイグレード通勤バスの実証実験を開始する意図がみえる。

ただ、田園都市線の混雑は、東急電鉄そのものにも原因がある。というのも、東急の本拠である渋谷の再開発を急激に推し進めたからだ。セルリアンタワーや渋谷ヒカリエ、そして渋谷ストリームも開業した。どれもオフィス、商業施設、ホテルといった施設からなる複合ビル。オフィスが増えれば通勤客が増えるし、商業施設も朝の仕込みなどでラッシュ時に通う場合も十分に考えられる。そうした混雑を緩和するために、今回ハイグレード通勤バスを実験し、本サービスにつなげたいのだろう。

一方、東急電鉄はハイグレード通勤バスだけでなく、あわせてたまプラーザでオンデマンドバスやパーソナルモビリティ、マンション内カーシェアリングの実証実験も行う。オンデマンドバスはスマートフォンで乗車予約を行い、病院や公共施設への移動手段になる。パーソナルモビリティは、坂道や細い道路を移動しやすく買い物などに向く。マンション内カーシェアリングは、余っているクルマのリソースを同じマンション内で共有しようというものだ。

東急電鉄これらを日本初の「郊外型 MaaS」(Mobility as a Service:利用者の目的や嗜好に応じて最適な移動手段を提供すること)の実験だとしている。

このMaaSという考え方には、あのトヨタ自動車も積極的だ。トヨタは東京2020オリンピック・パラリンピックを舞台に「Mobility for All」を実現したい考え。パーソナルモビリティもこの施策に組み込まれる。

トヨタが実用化を進める「i-ROAD」(写真提供:トヨタ自動車)

 東急電鉄は実証実験でどのような結果を得るのか。“地獄”とも表現される通勤ラッシュの課題や少子高齢化への対応、高齢者の移動手段確保など、MaaSが貢献できる問題解決はさまざまだ。たまプラーザ~渋谷という、屈指の住宅街と屈指のオフィス街を結ぶこの取り組みが、“住みよい街づくり”にどのように関わっていくのか、楽しみだ。

文明の利器を使ったIT露出狂「AirDrop痴漢」

カレー沢薫の時流漂流 第16回

文明の利器を使ったIT露出狂「AirDrop痴漢」

2018.11.19

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第16回は、Apple製品ユーザーを襲う「AirDrop痴漢」について

我々の生活はありとあらゆるものが電子化し、飛躍的に便利になった。

しかし、あらゆるものの中には当然「犯罪」も含まれ、さらに「痴漢」まで含まれるようになってしまったのだ。

皆さんはiPhone、iPad、Macなどを使っているだろうか。そして満員電車など人が密集する場所へ行く機会が多かったりするだろうか?

上記に当てはまる人、特に女性は注意が必要である。私はと言えば、スマホはアソドロイド、パソコンはウィソドウズ、人ゴミどころか人がいるところにさえ滅多にいかないので鉄壁と言える。

「IT露出狂」の出現

最近、Apple製品を使用した「AirDrop痴漢」なるものが現れているらしい。「痴漢も電子化の時代、わざわざ相手の前に立って局部を見せるような奴は時代遅れですよ」と「AirDrop痴漢」がろくろを回すポーズで語っているかは知らないが、当然褒められたことではない。

「AirDrop」とは、Apple製品間でデータをワイヤレスで送り合うことができる機能である。自分のMacからiPhoneにデータを送ったり、iPhone同士で友人と写真を共有したりできて便利なものだ。しかし、「AirDrop」は登録いらずで簡単な一方、半径9メートル以内にいる「AirDrop」をonにしている相手になら、誰にでもデータを送れてしまうのである。

これを使って画像を共有しようとすると、「Petagine's_iPhone」など、近くにあるApple製品の端末名が表示される。ペタジーニのiPhoneなら止めておこうと思うかもしれないが、ここで「Danmitsu's_iPhone」とか、明らかに女性と思われ、しかも何かエロスを感じる(※個人の感想です)名前を見つけた場合、その端末にわいせつ画像などを送り付ける、というのが「AirDrop痴漢」の概要である。

相手に直接手を触れるわけではないので、人が多い場所だと送ってきた相手の特定はかなり難しい。被害者はわいせつ画像を見せられた不快感と、周りにそういう人間がいるという恐怖感を味わうことになり、加害者はそれを見て楽しむという、いわば「IT露出狂」だ。

便利な機能が出来るたびに、それを使った犯罪が現れるのが世の中というものだが、これも「AirDrop」の機能を悪い意味で上手く使った犯罪である。その知恵を他の事に生かせなかった上に、そういった行為を「楽しい」と思うセンスに生まれて来てしまったことは二重に不幸なことだ。

被害者は女性が多いが、男性でも被害を受けることがあり、グロ画像を送られてきたという被害もある。

また、俳優の加藤諒さんは新幹線に乗っていたところ、車内で携帯をいじっている自分の後ろ姿の写真が「AirDrop」に送られてきたと言う。わいせつ画像でなくても、「お前のことを見ているぞ」というストーカー的恐怖感を相手に与えることも可能なのだ。

被害と「誤爆」を防ぐシンプルな解決法

「AirDrop痴漢」を防ぐ手立てはないのか、というと意外と簡単で、平素は「AirDrop」の設定を「受信しない」にしておき、使う時だけonにすれば良い。

そのほか、名前や性別を特定されないように、「Gorira's_iPhone」など、ユーザーネームを変更しておくのも効果的だ。

画像を共有する相手などいないという人間は、Apple製品を買ったらまず「AirDrop」機能を切るぐらいでもいいかもしれない。何故なら、この「AirDrop痴漢」は知らず知らずのうちに加害者になる可能性もあるからだ。

恋人に送るはずだった語尾が「ぞえ♪」のLINEを上司に送ってしまったり、ツイッターのアカウント切り替えを忘れて美容垢に推しカプがどれだけ尊いか語ってしまったりするような「誤爆」が「AirDrop」でも起こるのである。

しかも、LINEなら登録してある相手にしか送らないだろうし、SNSならある程度他人が読むことを想定して投稿するだろうが、「AirDrop」の場合、半径9メートル以内にいる赤の他人に、1人で楽しむためだけのお宝画像を送ってしまうという事態になりかねないのだ。受信してしまった方も不幸だが、送った方もある意味それ以上不幸である。

このように、「AirDrop」は便利だが、意図せず自分の性癖を含む個人情報を流出させてしまう恐れもあるため、使う時だけonにするのが今のところ一番良いかと思われる。

ちなみに、この「AirDrop痴漢」は犯罪にならないかというと、もちろんそんなことはない。わいせつ画像を送るのは「猥褻物頒布罪」になり得るし、わいせつでなくても相手が不快に思う画像を送り付けるのは「迷惑行為防止条例」違反になる場合がある。

実際、電車内で「AirDrop痴漢」を80件以上繰り返したという男が書類送検されたという。送信者が特定しづらいと言っても「本気を出せば特定できるしバッチリ逮捕もされる」ということはすでに実証されているので、もしイタズラ感覚でやっている人間がいるなら、逮捕されない内に今すぐやめた方がいい。

このような使い方は、Appleが想定していなかったことだろう。つまり、最初に考え着いた人間は、アイディア力にすぐれている。

その力を犯罪以外に使えなかったのは、重ね重ね残念である。