本業がなくなる! なぜ米ヤフーはインターネット事業を売却するか

本業がなくなる! なぜ米ヤフーはインターネット事業を売却するか

2016.06.24

米ヤフーが同社のインターネット事業を売却するという話が昨年2015年末あたりから盛り上がりを見せているが、現在では事業買収候補も絞られ、もう間もなく決着がつくとみられている。ヤフーが同社のコアビジネスであるインターネット事業売却を考えるに至った背景を整理しつつ、ヤフージャパンを含む今後の周辺各社動き、そしてヤフージャパン最大の株主であるソフトバンクの反応について考えてみたい。

なぜヤフーは巨額赤字に陥ったのか

米ヤフーに関して最も衝撃的だったのは、2015年第4四半期(10~12月期)の44億ドル超の巨額赤字計上だろう。低迷といわれながらも健闘していた同社の業績は2015年に入り急速に悪化し、同年第2四半期(4~6月期)には赤字に転落、その後若干持ち直すものの、第4四半期に再び赤字に転落してしまい、直近の2016年第1四半期決算でも9900万ドルの赤字となっている。背景にはオンライン広告事業での競争激化のほか、トラフィック獲得コスト(TAC)の増加によるコスト増が重石となっているといわれる。

広告において重要となるトラフィック獲得コスト(TAC)の四半期ごとの推移。2015年に入り、際立って上昇したのが見て取れる
StatCounterによる、現在の米国での検索エンジンシェア。ここでのシェアは事業規模や競合に対する競争力の高さを示す指標でもあり、ヤフーが近年大きく苦戦する理由の1つでもある

2012年に現在のCEOであるマリッサ・メイヤー氏が就任して以降、CEO交替が相次いで迷走状態にあった同社を立て直すべく、「Mavens」と呼ばれる戦略を軸に業績改善を目指していた。「Mavens」は「Mobile, Video, Native Advertising, Social Network」といった現在のオンライン業界を牽引する分野を寄せ集めた造語で、「Legacy」と形容されるインターネット草創期を牽引してきたヤフーの既存ビジネスとは異なる分野を大きな収益源としていこうというものだ。

ヤフーCEOのマリッサ・メイヤー氏が掲げる「Mavens」への事業シフトの進捗状況。既存事業依存からの脱却は進んでいるものの、会社の業績そのものへの押し上げ効果にはなっていない

実際、ヤフーが2015年第4四半期決算で示したスライドによれば、この試みは一定の効果を上げつつあるようだが、遅きに失したというのが投資家やアナリストらの多くの見解だ。そこで、同社が成長のコアと見なさなかった事業や資産については売却を検討し、現金化を急いでキャッシュフローを確保しようとしているようだ。

これが、昨年末から続いている一連の買収関連報道までの経緯だ。ただし、ここまでの状況に至るまで、キャッシュの確保にあたってはさまざまなオプションを検討していたとみられる。1つは2013年に米ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場を果たした中国のアリババ株で、もしヤフーが同社株式を売却すれば300億ドル近い総額となりキャッシュ確保の問題解決の近道だった。ただ、これだけの資産売却を法人税を回避して別の企業や集団へと移転させるのは難しく、早期の段階で断念したといわれる。

その後出てきたのが、それまでヤフーをヤフーたらしめていた「インターネット事業」の売却であり、これが昨年2015年12月時点での話題だ。詳細は後述するが、このインターネット事業売却にあたっては複数の企業が名乗りを挙げている一方、ヤフー側はその提示額に満足しておらず、買収額引き上げの交渉や工作を続けている。

2015年第4四半期決算のタイミングで発表したコンテンツ/サービス事業のシンプル化を経て、現在同社が抱える資産を一覧としたもの。インターネットのコア事業として、このうちのいくつかが売却対象になるとみられる

そうしたなか、今年2016年6月には「米カリフォルニア州サニーベールにあるヤフー本社の不動産資産の売却」や「3000件にわたる保有特許の10億ドルでの売却」といった話題が出てきている。

これは至急でのキャッシュ確保のほか、後者については特に「インターネット事業」売却の際の提示額つり上げが目的にあるともいわれている。ただ、同社のインターネット事業買収に興味を示す企業は保有特許そのものには興味を持っていないため、どちらかといえば現時点ではキャッシュ確保の性格が強いようだ。なおウォールストリートジャーナルによれば、ヤフーは過去3年間の特許売却とライセンス料で6億ドルの資金を得ているという。

買収の最終候補となったベライゾンとAT&T

昨年末時点でのフォーブスの報道によれば、買収候補として名前が挙がっていたのはAT&T/DirecTV、コムキャスト、ベライゾン/AOL、CBSなどの企業だ。このほか4月時点では、メディア企業としてデイリー・メールやタイムといった名前のほか、投資ファンドが将来的な資産価値上昇を見越して買収に乗り込むことが報じられており、これだけ見るとヤフー人気と底力は非常に大きいと実感させられる。

なお、競合にあたるグーグルやマイクロソフトは資産買収が認可されない可能性を考慮、あるいは既存の提携を重視して参戦しなかったとされる。

6月中旬現在、この資産買収合戦の最終候補となっているのはベライゾンとAT&Tの2社だとされている。最有力候補はベライゾンだとされているが、一方で同社が提示している30億ドルという金額にヤフー側は満足しておらず、これがAT&Tが付け入る隙となっているようだ。実際、4月に行われた最初のヤフーによる募集でも、ベライゾンの提示額は決して全応募者の中でも高いわけではなかったようで、おそらくは40~80億ドルのレンジでヤフー側が調整すべく交渉を進めているとみられる。

なぜインターネット事業を欲しがるのか

では、なぜベライゾンとAT&Tがヤフーのインターネット事業を欲しているかという点だが、両社の狙いは共通で、ヤフーのオンライン広告技術の入手にある。ヤフーが買収したオーバーチュアという企業を源流に持つ検索連動広告や、広告そのものであるディスプレイ広告は、いまでこそグーグルが多くのシェアを握る分野だが、もともとはヤフーが強みとしていたものでもある。これを動画やWebサービスなど、各種オンラインサービスと結びつけることで収益化を図りたいというのが2社の狙いだ。

米ヤフーで「japanese food」と検索して表示された画面。右カラムと検索結果下に検索連動型広告が表示される

ベライゾンは2015年初頭に米AOLを44億ドルで買収しており、このメディア事業のてこ入れにヤフーの広告技術を利用したいと考えている。AOLは各種Webメディアやコンテンツ事業を抱えており、特にベライゾン子会社であるベライゾン・ワイヤレスのモバイル事業を通じてユーザーの利用を増やすことで、さらなる収益化が可能となる。

現在、FacebookやTwitterなどのSNSを中心に、こうしたコンテンツやメディア事業の利用比率がモバイルへとシフトしつつあることは広く知られているが、このアクセスを収益に結びつけるためには通信料収入だけでなく、広告を絡めたビジネスモデルの構築が重要というのがベライゾンの考えとみられる。

一方のAT&TはDirecTVを傘下に抱えており、現在は同社の家庭向けインターネット接続サービスでDirecTVの衛星TVチャンネル契約をセット販売するのがお約束となっている。ただ、やはり今後はモバイルでのコンテンツ利用へとシフトしていくのは明らかであり、やはり収益源としてオンライン広告連動の仕組みを構築すべきというのはベライゾンと同様の考えだ。

余談だが、AT&Tは2000年代よりヤフーとの提携を行っており、ヤフーをベースにオンラインポータルサービスをユーザーに提供していたことが知られている。もともとは現在のAT&Tの母体となっている地域系通信会社のSBC Globalが始めた提携だが、AT&Tを吸収合併して携帯電話事業を完全子会社化したいまでも、この取り組みは続いている。同様の仕組みはベライゾンも後にヤフーとの提携で実現しており、契約ユーザー向けのサービスとしてポータル提供を継続している

資産売却後のヤフーの行方

ベライゾンとAT&Tを中心としたヤフーの資産買収は、早ければ来月7月にも決着が見込まれる。ただ、現在行われている2回目の資産売却オークションには同2社以外の企業や団体も参加を表明しているといわれ、さらにそれぞれが異なる資産購入を申し出ているという。つまり、資産売却の形態は相手企業によって大きく変化し、その後の新生ヤフーのビジネスも大きく変化することとなる。

前述のように、CEOのメイヤー氏はMavensを戦略の中核と考えている以上、従来ながらのWebポータルや各種サービスはあまり重視していない可能性が高い。これらにはYahoo! NewsやYahoo! Mailなどのサービス、さらにはTumblrやFlickrのような過去の買収資産も含まれる可能性があり、もし同社によってモバイル連動しにくい、あるいは収益率が低いと判断された場合は有力な売却候補となる。広告事業はコアではあるものの、実際にこれを欲しているベライゾンやAT&Tとの交渉でどこまで切り売りされるかは未知数だ。

ただ、現時点で比較的明確なことが1点ある。それはヤフーの大きな資産となっているアリババ株とヤフージャパン株は今回の売却対象には含まれない可能性が高いことだ。

前述のようにアリババ株の譲渡が難しいという理由から、現金化を目的とした売却は当面見送られる可能性が高い。同様に、ヤフージャパン株そのものは今回対象となっている「インターネット事業」のコア資産ではないため、少なくともベライゾンやAT&Tが欲する可能性は低く、唯一の可能性は現金化を目的に一部株式を手放すことがあると考えられることくらいだ。ただ、ヤフージャパンの株式はその3分の1以上をソフトバンクが握っており、仮にヤフーが一部株を手放したとしても現在の経営環境は揺らぐ可能性が低い。

ソフトバンクはどうする?

今回の件を通じてソフトバンクがヤフーの資産買収、あるいは同社が持つヤフージャパン株取得に乗り出すという噂もあったが、少なくともソフトバンクが現時点で大きく動く可能性は低いというのが筆者の予想だ。

ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏。同氏は一連の騒動をどう見ているのか

ソフトバンクはアリババ株の売却のほか、スーパーセルのテンセントへの売却、ガンホーの持ち株比率減少などの施策を立て続けに出し、急速にキャッシュ資産を増やす動きを見せており、これが一連のヤフー騒動への介入資金になるという噂の所以の1つだった。ただアリババ株の売却準備には9カ月の期間を要したと社長の孫正義氏は説明しており、時期的にはオンライン事業の資産売却が取り沙汰された昨年2015年12月よりさらに前のタイミングにあたる。つまり、ソフトバンクの一連の資産売却はヤフーと連動している可能性が低いというのが筆者の予想だ。おそらくは、次の投資事業への種蒔きなど、スプリント買収後の次を見越して流動資産を増やしているのではないかと考える。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。